第四話 「ギルド」
【第四話・『ギルド』】
俺の名前はミュラ・アイム。
なんやかんやで異世界に転生した中一だ。
今は、自由都市エレンのギルド『ロイヤル・ロード』で属性診断をしてるんだけど……。
「…?なんか反応ないな。」
「どうしちゃったんでしょう…。」
受付嬢さんが心配そうに水晶を見つめている。
その瞬間。
突然水晶が光りだした。
「うおっ!?ま、まぶしっ!」
俺は思わず手を離してしまう。
だが、水晶は輝きを増していく。
「こ、これやばいんじゃないですか!?」
カリナがパニックになりながら叫ぶ。
ど、どうする!?逃げるか!?いやでもな、ここで逃げたらなんかダサい…。
ん?水晶の奥に何か見えるぞ?どれどれ…。
……なんだこれ。星か?
俺が見えた星は、それこそ小さいが、その中にはまるで無限の宇宙が広がっているのかのような景色が見えた。
「ちょ、ミュラさん!近づいたら危ないですよ!」
「あっ、ごめん…!」
カリナに注意され、俺はゆっくり下がる。
しばらくすると、段々と輝きは消えていった。
そして、完全に輝きを失ってしまった。さっきの宇宙のような星が冗談かのように。
「なんだったんでしょう…?」
カリナがへこたれながら言う。
「こんな反応…、私も見たことがありません。基本属性ではこんな過大な反応は普通は出ません。なら特殊属性…?いやでも、こんなパターンあったっけな…。」
受付嬢さんはブツブツと考察を初めてしまった。流石は受付嬢なだけあるな。
さて、どうしたものか。
幸い今このロビーには、俺とカリナ、受付嬢さんしかいない。
誰かに見られなかったのは安心していいんだろうが、それよりももっと深刻な問題が目の前で起こってしまった。
そう、水晶がぶっ壊れたのだ。
「あれ、この水晶…壊れてません?」
ヤバい!カリナに気づかれた!
どうにかしてこの状況を乗り越えるんだ…。
……………思いつかない。
やっぱり素直に白状して、弁償するしかないな。
そう決断すると、俺は早速受付嬢さんに対する謝罪の言葉を口にする。
「あ、あの…受付嬢さん…。」
「は、はいっ!なんでしょうか!?」
受付嬢は突然話しかけられびっくりしたのか、声が裏返ってしまった。
「実はですね…、水晶を壊してしまいまして…。」
「す、水晶を…?」
「はい…。」
俺は下にうつむきながら、上目遣いで受付嬢さんの方を見る。
これなら許してもらえるとでも思っているのだろうか、俺の体は実に馬鹿である。
多分、「なんてことしてくれたんだ!」って言ってくるんだろうな。
心の準備をしておこう。
「……全然大丈夫ですよ。」
「…へ?」
「属性診断水晶なんて、予備が腐る程ありますから!」
「べ、弁償は…。」
「弁償?そんなの要求するわけないじゃないですか〜!」
「あ、そ、そうなんですね…。それはよかった…。」
よかった~!!
本当にドキドキしたぞ。胸ぐら掴まれて、弁償代を要求されられると本気で思ってたからな。
そんなことより、だ。
さっきの水晶の反応は何だったんだ?
「さっきの反応、何だったんでしょうか…。」
受付嬢さんが改めて言ってきた。
「まさか…、あの星属性だったり…。」
「ま、まさか!そんなわけないですよ!」
でも、水晶には星のようなものが写っていたんだよな。
もしかしてマジで星属性なのか?
そうだとしたら……とんでもないぞ。
「え、えっと…とりあえず、星属性ということにしておきますね。お、おめでとうございます!」
「あ、ありがとう…ございます。」
確定じゃないのに褒められてもな…。
「と、とりあえずは属性診断は終了ですね!お次はランクを測定させていただきます。」
「ランクですか?」
カリナが聞いた。
「はい。ランクとは、十段階から構成される階級のことです。ランクはギルドや国が定めているものではなく、『この世界の理』なのです。」
「ということは?」
俺が確認をする。
「世界が定めているということですね。」
「それでは、あちらの『ランク測定機』にお乗りください。」
受付嬢さんが指を指したその先には、円上の板が置いてあった。
幾何学的な模様が描かれており、どうやらこれも魔力を使って測定するようだ。
俺達は指示に従い、その『ランク測定機』に近づいた。
「さっきは私を優先してくれたので、今回はミュラさんが最初に乗ってください!」
「おお、ありがとう。」
俺が板の上に乗ると、模様が赤紫色に光りだした。
オーラが俺を包み込む。
しばらくすると、オーラはフッと消えた。
「え、もう終わり?」
そう言うと、測定機が喋りだした。
《測定が完了しました。ミュラ・アイムの想定ランクは、『D』ランクです。》
「Dランク…?」
「あ、すいません!ランクの種類について説明するのを忘れていましたね。」
「ランクには十種類が存在します。H<G<F<E<D<C<B<A<S<Xの順番ですね。」
「なるほど…。ありがとうございます。」
「それにしてもD!駆け出し冒険者にしては高ランクですね。」
「え、みんなはどのくらいのランクなんですか?」
「駆け出し冒険者の皆様ですと、大体H〜Eくらいが多いですね。」
受付嬢さんはそう言いながら、俺に一枚の紙を見せてくれた。
そこには、最近登録した冒険者のランクが書いてあった。
確かに下位ランクが多いな…。
「じゃあ次、カリナの番だ。」
「はい!見ててくださいね、きっとAランクですよ!」
「あはは、そんなわけがないだろう!」
そんな冗談を交わしながら、カリナは自信満々に板に乗る。属性診断の時とはテンションが別人のように違う。
《測定が完了しました。カリナ・ムイムの想定ランクは、『H』ランクです。》
「…え?」
カリナが呟いた瞬間、彼女の体が床に崩れ落ちた。
どうやらとてつもないショックを受けたようだ。
これだから高望みは良くないんだよ…。
「こ、こ…この装置ぶっ壊れてるんじゃないですか!?」
《ランク測定機の作動検査を実施します。…完了しました。結果は正常です。》
「うっそーん!?」
「まあまあ、カリナはその程度の人間だったということで。」
やべっ、ちょっと煽ってしまった。
俺がゆっくりカリナの方を向くと、顔はやせ細り、目が死んでいた。口からはなんか魂みたいのが出ようとしている。
これに効果音をつけるとしたら一択だな。『チーン』。
とりあえず謝ろう。
「ご、ごめん。ちょっと煽っちゃったね。」
「ミュラさ〜ん…!」
受付嬢さんは焦って手を振りながら「ま、まあまあ!ランクはあくまで想定なので!気にしないでいいですよ!」と言った。
「そんなこといったってぇ〜…。」
なんかお腹空いてきたな。あそこに食堂あるし…そうだ!誘えばいいんじゃないか?
「あそこの食堂でなんか食べよ?ね?」
「!?はいっ!ありがとうございます!行きましょう早く!」
切り替え早っ!
まさかここまで早く食らいついてくるとは。
「え、えっと…、ここで一連の登録手順は完了いたしました。これより、ミュラ様及びカリナ様の正式加入を認めます!」
「それでは、良い旅を!」
異世界に転生した俺。
ギルド加入を果たした今、壮大な冒険が幕を開ける!
【第四話・完】




