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第三話 「自由都市エレン」

【第三話・『自由都市エレン』】


 俺の名前は三浦 歩…じゃなくて、ミュラ・アイム。

 なんか色々あって異世界に転生したんだ。

 そんで今は、仲間になったカリナ・ムイムと一緒に、自由都市エレンに入ったところ。

「カリナ、すげぇ盛り上がりだな。」


「そうですね、エレンは経済が活発なので、人々もたくさん入ってくるんです。」


「お、なんかいい匂いがするぞ。」

 俺は興味を持ち、無意識に匂いがする方へと歩き出した。


「あ、ちょっとミュラさん!勝手にどっか行かないでくださいよ!」


「あ、ごめん。ちょっと気になるお店があったからさ。一緒に行ってみないか?」


「…まあいいですよ。」

 カリナは興味なさげな表情をしながらも、同意してくれた。


 匂いがする方を覗いてみると、そこは屋台だった。

 商品を見てみると、何やら見たことがない食べ物がいくつも並んでいた。

 俺は特にこの焼き鳥のようなものに興味を持った。

「なあカリナ、これなんだ?」


「これはゴブリン串と言って、ゴブリンのお肉を焼いて塩をふりかけただけの串物です。一見素朴に見えますが、食べてみるとすごく美味しいんですよ!」


「へぇ〜、ちょっと食べてみようかな。」

「あ、でもお金がな…。」


「それなら心配無用です!さっき、揉め事をしていたヒョロヒョロな男性から、お礼金として500シルバーをもらったんです!」


「し、しるばー?」


「え、もしかしてシルバーも知らないんですか!?」


「う、うん。ごめん。」


「い、いや、全然大丈夫ですよ!説明しますね。」

「シルバーは、この大陸で使われている通貨の事です。」


「へぇ〜。」


 ちなみに一シルバーは日本円で約百円じゃな。


 うおっ!?なんだベテルギウスさんか。

 ベテルギウスさんは、俺を転生させてくれた全知全能の創造神だ。色々ムカつくところもあるけど、根はいい人だよ。多分。

 それで、一シルバーが百円ってことは…?


 カリナは今五万円を持っている事になるな。


 まじか!五万円って結構大金だぞ!?

 でもここは異世界だからな。日本円と一緒にしない方がいいかもしれない。

「ゴブリン串は…二十シルバーか。」


「買ってみますか?」


「そうだな。どんなもんか買ってみよう。」


 カリナはコクンと頷き、店員と取引を初めた。

 ところで一つ気になったんだが…

 異世界の料理って味とかどうなんだろうか。俺みたいな日本人の味覚とは絶対合っていないとは思うが、度というものがある。度が過ぎる可能性もなくはないので、覚悟はしておいたほうが良さそうだな。

 なんて思っていると、いつの間にかカリナが購入を終えていた。

 手にはゴブリン串が両手に一本ずつ。自分の分も買ったみたいだ。


「ミュラさん!買えましたよ!」


「おう、ありがとう。」


「早速食べましょうよ!」


「うん。どんな味なんだろう…。」


 俺は内心ビビりながらも肉を口に運んだ。

 モグモグ……うん。意外と悪くないぞこれ!

 素朴な塩味と赤みの風味が絶妙にマッチしており、すごく美味しい。


「どうですか!?」


「めちゃくちゃ美味しいよ!」


「そうですか!!良かったです!」

 カリナは満面の笑みを浮かべた。まるで…大切な人を見ているのかのような。

 …まあ気のせいだろう。

 気がつくと全部食べ終わっていた。

「あ…。」


「もう食べ終わっちゃったんですか!?早いですね!」


「ま、まあな。…それより!他にもいろんなところがあるみたいだから、回ってみないか?」


「いいですね。回りましょう!」


 そうして俺たちはいろんなお店を巡った。

 残念なことに、巡った中で口に合ったのはゴブリン串だけだった。他は…まあ察してくれ。

 そして今は休憩としてベンチに座っている。

「ふぅ……で、カリナ。これからどうする?カリナを追っている騎士団も放っておけないし…。」


「うーん…、困りましたね…。」


 ところでふと思ったのだが、この世界には『ギルド』はあるのだろうか。やっぱり異世界だから、ありそうだけどな。

「そういえばさ、ここってギルドとかあるのか?」


「ギルドですか?もちろんありますよ!」


「あ、あるんだ!」

「ちなみに、どういうギルドがあるの?」


「自由都市エレンでは、主に『ロイヤル・ロード』と言う名前のギルドが有名ですね。」


「ロイヤル・ロード…。近くに本部とかあるのか?」


「ありますよ!あそこの角を右に曲がれば…。」

 そうカリナが指を指した先には、いかにも本部という雰囲気を放っている建物があった。


「あそこか。ちょっと行ってみないか?」


「え、行くんですか!?ど、どうして…?」


「だって気になるもん。ギルドって入れたりする?」


「は、入る!?」


「え?ダメかな?」


「ま、まあ…ダメではないですけど…、もし入っちゃったら、騎士団にも知られてしまうかもしれませんよ…?」


「あ、確かに…。」


「で、でも、ミュラさんがどうしてもと言うのなら…!」


「いやいや!そんな気を使わなくていいよ!」


「でも…。」


「じゃ、じゃあ、行くだけ行ってみるか?」


「…分かりました!」


「よし、決まりだな!」

 そうして俺達は、『ロイヤル・ロード』に行くことになった。

 ギルドか…。俺のイメージだと、登録したりランク付けされたりするなんてイメージがあるのだが、この世界だとどうなのだろうか?違う箇所もあるかもしれないし、注意深く観察するべきだな。





 ピザンツ帝国___。

 今からおよそ七千七百年前に建国されたと言われている、世界最古の人間による国家である。

 人口は約三千四百八十七万人、大陸の西部のロイヤル平原に広大な領土を領有している。

 現在、この大陸に存在している国家の中ではトップクラスの経済力を誇っている。

 それだけではない。ピザンツ帝国を語る上でどうしても欠かせないのが、その強大な軍事力である。

 帝国の軍事は全てピザンツ騎士団による力だが、最先端の魔導技術や防具などを開発しており、その技術力は、ピザンツ帝国以外の全ての国家を合計した技術力を上回るほどだ。

 騎士団は第一から第五までグループがあり、それぞれのグループが団長を中心として独立している。

 それら全てを統率しているのが『将軍』である。

 帝国を統治しているのは、暴君と名高いアルキメデス大帝だ。

 ピザンツ神話によると、皇族の血は建国以来一度も途切れることはなく、代はアルキメデスで三百八代目であるそうだ。

 ここは、ピザンツ第二騎士団本部___。


「エレメント第二団長!御報告がございます!」

 突然兵士が慌ただしく執務室のドアを開けてきた。


「報告…?なんだ、聞いてやろう。」


「騎士団が現在追っている女の行方が、不明となりました!」


 エレメントは一瞬眉を潜めたが、すぐに元に戻った。

「ふっ、どうせすぐに見つかるだろう。」

「それで、新兵選別の件はどうなっている?」


「はっ、その件に関しては、すでに選別を終了しております。」


「…合格者数は?」


「……八十一人です。」


「過去最低、か。」

「まあしょうがないだろう。我ら帝国軍の選別は、難関と名高いのだからな。」


「私もあの時は実に大変な毎日でございました…。」


「そして一番気になる件についてだが…、第二騎士団の予算の方はどうなっている?」


「はい、それについてはご安心ください。予算は予定通り組めております。大体二万九千三百八十七プラチナです。


「ふむ、それは良かった。」


 この世界における通貨は、次の通りである。

 ・『シルバー』:通貨において最も価値の低い種類。一般的に日常生活でよく使う。


 ・『ゴールド』:まあまあ価値のある種類。普段はあまり使う機会はないが、何か大きな買い物や報酬金などの際に使われる。


 ・『エメラルド』:結構価値のある種類。庶民はほぼ使う機会はない。有力な国民や貴族などが、大規模な購入を手軽に支払いたい時などに使われる。


 ・『プラチナ』:通貨において最も価値が高い種類。国民は使用することが禁じられており、貴族や軍関係の者、皇族のみ使用が許されている。エメラルドと同様、手軽に支払いたい時などに使われるが、もはや国家規模の購入の際などにしか使用されない。


「以上が御報告でございます。」


「分かった。ありがとう。」

 エレメントがそう言うと、兵士は「失礼しました。」と言い、静かに部屋を出た。

 どうやら先程までの焦りは落ち着いたようだ。






「おお、ここが本部…。」

 俺がそう言っているのは、ギルド『ロイヤル・ロード』の本部である。

 ベンチで休憩していた時に、ギルドに行ってみようということになったのだが、予想以上に近かった。角を右に曲がるとはいえ、ほぼ曲がり切る前に到着してしまったのだ。

 もしかしてカリナ、説明下手くそなのかな?

「早速入ってみるか。」


「は、はい!」


 俺達は建物のドアに近づく。

 ……開かない。ドアノブもなければ、押しても開く気配はない。

 どうやって開けるんだよこれ…。

 俺がどうやって開けるか戸惑っていると、突然ドアが右にスライドするように開いた。

 どうやら自動ドアだったようだ。

 それにしても…この世界にも自動ドアとかあるんだな!

 多分魔力を使っているのだろうけど、ドアをいちいち開け閉めするのはめんどくさいと思っているのは生命共通なのかもしれない。

 ふと横を見ると、そこには引いたような顔をしているカリナがいた。


「そ、そんなのも知らないんですか…!?」


「いや、手動だと思ってな。」


「ああ!すいません、言い忘れていました。ここエレンは、ドアは全て自動式になっております。エレンは常に最先端の技術を導入しているんです!」


「へぇ…そうなのか。ていうか、やけに詳しいな?」


「そ、そうですか?誰でも知ってると思うんですけど…。」


 その言い方だと、俺が例外のヤバい奴みたいになってないか?

 まあいいか。それよりも早く内部を見てみたいしな。


「ま、まあ早く入ろうよ!」


「そ、そうですね!」


 自動ドアをくぐり抜け、いざ内部へ。

 おお……なんと豪華なシャンデリア!真っ赤なカーペットまで敷いてあるし、左右には…本棚か?本まで読めるようになっているのか。すごいなロビー!しかもいい匂いがするぞ!アロマみたいな匂いだ。

 そして奥の方に見えるのは…?

 あの人が受付嬢さんか。RPGとかで必ずと言っていいほど出てくる存在だな。

 年齢は…二十代前半と言ったところだろうか。長い黒髪のストレートの髪型をしている。

 …っていうか人の年齢推測するなんて、俺は本当に失礼な奴である。


「あそこの受付嬢さんに要件を話せば、多分登録できると思います!」


「分かった。行ってみよう!」


 俺が受付嬢さんに近づき、話しかけてみる。

「あの…ここで登録ってできますか?」


「はい!できますよ!」

 受付嬢さんは笑顔で対応してくれた。


「それはよかった。今から登録しようとしてるんですよ。」


「そうなんですね。では…お二人でよろしいでしょうか?」


 俺は申し訳なさそうに聞く。

「あ…、カリナ…いい?」


「はい!もっちろんです!」


 ホッ…よかった。


「では、こちらの水晶に手をかざしてください。あなた達の属性が分かりますよ!」


 属性か…そういえば、この世界に来てから気にした事なかったな。


「この世界には、基本属性として、火、水、風、地がございます。稀に特殊属性の反応が出る冒険者さんもいらっしゃるんですよ。」


「特殊属性?」


「はい。特殊属性には、闇と光があります。とても希少な属性なので、そうですね…、二千人に一人と言ったところでしょうか?」


「そ、そんなに希少なんですか!?」


「はいっ!そうなんです!」

「それと……。」


「それと…?」


「私はおろか、ギルド全体でも見たことがないのですが、伝説上に『星』と言う属性があるらしいです。」


「星……まあ、俺が出るわけないですよね!」


「そ、それは分かりませんね…。」

 受付嬢さんは俺の言葉にどう反応したらいいか困ったように言ってきた。

 なんか申し訳ない…。


「カリナは、何の属性なのか知ってるのか?」


「知らないです!」


「まあとりあえずかざしてみよう。カリナからどうぞ。」


「あ、ありがとうございます!それではお言葉に甘えて…。」

 そうカリナが言うと、少し震える手で水晶にかざした。

 その瞬間、水晶が淡い水色に変化した。


「これは…水属性ですね。おめでとうございます!」


「水…!なんかすごいです!」


 ほう、カリナが水属性か。なんか意外と言うかなんというか…。


「じゃあ次はミュラさんの番ですね。」


「え!?ああ、そっか。そうだったね。」


「もー!何忘れてるんですか!」


 俺は「ごめんごめん」と言いながら水晶に手をかざした。

 その瞬間___それは起こった。



 異世界に転生し、初めての都市を訪れた俺。

 これからの人生、どうなっていくのだろうか…。

【第三話・完】

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