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第2章:灰からの記憶

酔った男は震えながら差し出された手を取り、よろめきながら立ち上がった。彼の目にあった恐怖は、今やアルコールと純粋な、正気に戻った畏敬の入り混じった感情になっていた。酒場の騒乱は再開していたが、彼らを中心とした半径には、緊張した泡のように静寂が漂っていた。


若者は彼をもとの椅子に導き、向かい側に座った。彼の眼差しは元の、読み取りにくい暗い色に戻っていた。


「俺はサマエル……サマエル・アッシュボーンだ」彼は言った。その声は澄んで落ち着いており、背景の騒音を鋭いナイフのように切り裂いた。「そして今度はお前が話せ。この惨めさに溺れていない時のお前は、本当は何者なんだ?」


男は、その直球な問いとサマエルの強烈なオーラに面食らい、空のグラスを見下ろした。酒が与えてくれた勇気は消え去り、生々しい真実だけが残っていた。


「俺はエド・トナーだ。それで…俺の恋人が…俺を捨てたんだ」彼はつぶやき、言葉の重みに声がひび割れた。「だからここにいる。だから…飲むんだ。」


「世界で一番立派な男じゃないのは分かってる、クスン…クスン!」エドは続けた。涙がアルコールで赤らんだ彼の頬を伝った。「でもあの子はあんな風に俺を捨てる必要なんてなかった。俺はそれを受け入れられない。いや、受け入れられないんだ」


サマエルは長い間彼を見つめた。顔には非難の色は微塵もなかった。ただ、火と痛みで刻まれたかのような、深い理解だけがあった。


「まじかよ?」彼は尋ねた。皮肉ではなく、純粋な好奇心と、その理由の単純さに対する…哀れみとでも言うべきものの仄かな響きを込めて。「そんなことで…」


「な、なんだって?『まじかよ?そんなことで?』ってどういう意味だ!」エドは叫んだ。彼の声は喧噪を掻き消し、悲しみは即座に防御姿勢に変わった。


サマエルは一瞬間を置き、汚れた窓の向こうの暗い夜を見つめた。彼は何か決断を量っているようだった。それから、酔っぱらいの方を見戻した。


「俺が誰なのかを教えてやる」彼は言い、口調が変わった。長く胸に秘めてきた記憶を語るような響きを帯びていた。「少なくとも、俺がどこから来たのかをな。そしたら、お前の不運がなぜ俺には…贅沢なものに思えるのか、分かるかもしれない」


男は、サマエルの言葉が氷水のバケツをぶっかけられたかのように、突然落ち着いた。彼は椅子に沈み込み、怒りは蒸発し、恥ずかしさが取って代わった。サマエルよりずっと年長であるにもかかわらず声を荒げたことを詫びた。


「驚かせてすまなかった…許してくれることを願うよ」彼は呟き、頭を垂れた。若者の眼差しを見つめ続けることができなかった。


サマエルはただ、軽く手を振っただけだった。謝罪を退けるように。許すべきことなど何もない。本当の侮辱は、彼は思った、そんなはかないものにそんなに多くの苦痛を費やすことだ。


そしてこうして、酒場が彼らの周りで狂騒を続ける中――笑い声、口論、絶え間ないグラスの軋む音――サマエルは語り始めた。今日からでも、昨日からでもなく。始まりから、灰の中から語り始めた。


ドゴオオオオーン!


轟音は酒場からではなく、サマエルの記憶から来た。生々しい物語の如き鮮明さで、彼らの間の空間に投影された。エドは瞬きし、一瞬、岩石の粉塵と焦げた土の匂いが、古びたビールの臭いよりもリアルに感じられた。


「わしを止めたかったら、もっと強い壁を作るべきだったな、反抗的な孫よ」老人の声がこだました。荒っぽいが、猛々しい誇りに満ちた声だ。


サマエルの内なる光景では、瓦礫が、簡素だが完璧な一振りの剣を構えた老人のシルエットの周りを飛び散っていた。空気は濃厚で、呼吸が苦しかった。


「お爺ちゃん、『手加減』って言葉の意味知らないの?」子供じみていながらも、不思議に真剣な小さな声が応えた。


それはサマエルだった。いや、サマエルがかつてあったものだ。わずか三歳の少年。戦いですでに乱れた黒髪、肩まで届く木の杖を手に、瓦礫の中に立っている。彼の瞳は、その時点ですでにあの厳しい眼差しを持っていた。


「ははは、お前は面白い。お前のような化け物相手に、手加減しろと?」お爺ちゃんが応えた。白い顎鬚の下に広がる笑顔だ。


粉塵は収まっていなかった。むしろ、ざわめき始め、凝縮し、不吉な赤みを帯びた色へと変わり始めた。完璧で怒りに満ちた一つの火の玉が、小さなサマエルの目の前に具現化し、ミニチュアの隕石のように老人に向かって撃ち出された。


お爺ちゃんは後退しなかった。剣を掲げると、その武器は青みがかった輝き――純粋で鍛えられたマナ――に包まれた。短い叫びと共に、彼は薙ぎ払った。空気そのものが切り裂かれるようだった。火の玉は完璧な二つに割れ、彼の両脇の地面に爆発し、彼の足元の地面は深い裂け目を開いた。衝撃波は、音波の力を帯びて、容赦なく子供に向かって押し寄せた。


しかし、サマエルはすでに反応していた。素早い動きで、彼は自由な手を上げた。地面から、次々と、圧縮された土でできた五つの分厚い壁が出現した。衝撃は最初の四つを容易に粉砕した。五つ目、最後の壁は乾いた音でひび割れたが、持ちこたえた。


それでも、子供はまだ終わっていなかった。彼は、天才児の本能的な確信を持って、これが最後ではないと知っていた。そして彼の思いは正しかった。


最後の壁の粉塵が収まる前に、一つのシルエットがそれを突き破った。お爺ちゃんだった。その年齢を否定するような速さで動く。彼の剣は、今や槍のように伸び、ひび割れた壁を貫き、子供の心臓を真っ直ぐに突き刺そうとした。


その瞬間、サマエルの感覚は、小さな体の中を奔流のように流れていたマナによって研ぎ澄まされ、危険を捉えた。彼はありえない動きで身をよじり、剣の先端をミリ単位でかわした。


直接打たれたわけではなかったが、一撃の摩擦、刃の周りを覆う圧縮された空気と力に満ちたオーラは十分だった。細く、正確な一本の線が彼の頬に開いた。口元から耳の真下まで。彼の黒髪の一房がふわりと離れ、きれいに切り落とされた。


血は、赤く鮮やかに、瞬時に溢れ出た。最初は温かく、そして山の空気に触れて冷たくなった。痛みは鋭く、刺すようなものだったに違いない。


子供は泣かなかった。叫びもあげなかった。彼の目は一瞬見開かれ、そして…微笑んだ。小さく、挑戦的な、片側が赤く染まった微笑みだ。


血が首筋を伝っていても、彼は杖を、お爺ちゃんが着地した地点に向けた。杖の先端で、新たな球体が形成され始めた。今度は混沌とした炎ではなく、白と青みがかった光の閃光だ。圧縮され、彼の腕ほどの大きさだが、空気を振動させるエネルギーで脈打っていた。


「はあっ!」彼は叫び、攻撃を解き放った。


閃光は、弾丸のようにではなく、純粋な破壊力の凝縮したビームのように撃ち出された。お爺ちゃんは、反撃する時間もなく、重力に逆らうような空中回転を行い、間一髪でビームをかわした。光は数百メートル先の大きな岩に命中し、鈍い轟音と共に粉塵と蒸気へと還元した。その音は一瞬遅れて彼らの耳に届いた。


「ははは、ずるいよ」小さなサマエルは呟き、杖を下ろした。微笑みは消え、疲れた諦めの表情に取って代わられた。彼は自分の敗北を受け入れた。


「降参する時を知っているじゃないか」お爺ちゃんが言った。幽霊のように彼の横に現れている。剣の先端が今は、優しくしかし確かに、子供の首に触れていた。


「何言ってるの、お爺ちゃん。お爺ちゃんがずるしたんだよ」サマエルは抗議し、埃っぽい地面に座り込んだ。疲れ果てていた。


「言葉に気をつけろ、小僧。誰がずるした?」老人は応え、それ以上何も言わず、剣の柄で彼の頭を軽くトンと叩いた――愛情がありながらも戒めを含んだ、そんな音だった。


その光景はゆっくりと薄れ、酒場の薄暗がり、タバコとビールの匂い、呆然としたエド・トナーの顔へと戻っていった。


エドは口を少し開けていた。唾を飲み込んだ。


「そ、それで…もしあの攻撃をかわしてなかったら、あるいは本当に顔に大怪我を負わされてたら、どうなってたんだ?」彼は尋ねた。声はかすれた細い音だった。彼は自分の酒を大きく一口飲んだ。何か確かなものにつかまろうとしているかのように。


サマエルは、物悲しい距離感を持ってその記憶を見つめていたが、瞬きをして現在に戻った。彼は皿の上のジューシーな肉を一切れ切り、口に運び、落ち着いて噛んだ。


「今になって言われるとさ」彼は飲み込んでから言った。その口調は妙に軽やかだった。「そんなこと考えたことなかったな。もっと痛い教訓になってたんだろう。それか、ここでお前に話してる俺はいなかったかもしれない」


エドは身震いを感じた。サマエルが子供時代の命の危険についてあの気軽さで話す様子は、気味が悪かった。


「それで…」サマエルはもう一切れ肉を切った。「話を続けさせてくれ」彼は言い、パンの一切れで手を拭った。彼の眼差しは再び遠のいたが、今度は彼の暗い瞳により深い影が宿っていた。まるで次に来る話が、語るのがさらに難しいものであるかのように。


夜はまだ浅く、サマエル・アッシュボーンの物語は、その暗い翼を広げ始めたばかりだった。

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