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二年B組 日野仁兎の怪談

 都市研究部の皆さん、こんにちは。


 二年B組の日野です。


 私も怪談が大好きで、話下手なのでみんなの前で披露してる人たちをうらやましく思いながら、小説投稿サイトでオリジナルの怪談を書いてました。


 なので文章で応募する機会があって嬉しいです。



 私には霊感はありませんが、一度だけ幽霊を見てしまったかもしれない体験があります。


 ……ただ、こんな話を都市研さんに送るのは申し訳ないかなとも思ってます。


 もし不都合があれば、不採用にしてくだい。


 というのも、その話は都市研にまつわる話だからです。


 こんなウワサがクマ高生の間で流れているのを知ってますか?



 ──都市研に近づくと不幸になる。



 ごめんなさい。事実無根ならすごく失礼ですよね。


 だけど友達や後輩には真に受けている人が結構います。


 後輩たちの何人かは、それが怖くて都市研への入部を断念して手芸部に入ってきました。


 もし誤解であるなら、都市研の皆さんで発信したほうがいいかもしれません。




 前置きが長くなってすみません。


 どうして不幸になるのか、ウワサの内容をお話しします。



 都市研の部室の前を一日三回通ると、体調が悪くなる。


 部室棟の階段で、誰もいないのに背中を押されたり、足を引かれたりする。


 誰もいないときに通りかかると、扉の前に女が立っていて、目を合わせたり独り言の内容を聞いてしまうと死ぬ。


 女は身長二メートルくらいあって、あの伝説の“デス崎先輩”とタイマンを張ったくらい、幽霊のくせに物理的にめちゃくちゃ強いらしい。


 実際に都市研部室に近づいた男子が、女の幽霊に殴り殺されたなんてウワサもありました。



 あまりにも物騒だし、非現実的だし、もちろんデマがほとんどだと思います。


 たしかに、私が一年のときは変わった人が多い部活で少し近づきづらいかな? と思ったこともありました。


 半分くらいは伝承遊び研究部の先輩を誤認していましたし、近づくと不幸になる、なんてのはさすがに大げさだと思っていました。



 私、シットコム部の部長と友達なんですけど、同好会から正式に部活になって部室をもらえることになって、その手伝いで、部室棟の階段のいちばん上に積んである机とかホワイトボードとかを運んだことがあったんです。


 友達は部室でレイアウトをしてて、私はひとりで最後に少し、机のあった場所を掃き掃除して、その帰りのことでした。



 階段を上がってくる足音がして、友達が来たのかと思って「もう終わったよ」と声をかけました。


 だけどその足音の主は踊り場のあたりからちっとも上がってきません。


 数秒くらいだったでしょうか。なにも音がしなくて、姿が見えない相手と無言で向き合っているかのような変な間が空いたあと、パタパタと足早に引き返す音が聞こえました。


 もしかして別の人で、急に声をかけられて驚いたのかも、とその時は思ったんです。


 でも屋上は鍵がかかっていて入れないし、それまで机や椅子が積まれた狭いスペースしかなかったので、そこに用事がある人なんていないはずなんです。


 不思議に思いながら私も階段を下りました。


 廊下はとても静かで、夕暮れ時で薄暗く、蛍光灯の光の反射が床に転々と続いていたことを覚えています。



 廊下の奥に、誰かが立っていました。



 ちょうど影になっていてシルエットしか見えませんでしたが、私は反射的に「あ、さっきの足音の人かな」と思ったんです。


 でも、おかしいんです。


 その人は微動だにせず、ただじっと、閉まった扉を見つめていました。


 見つめたまま、なにかを喋っているようでした。


 遠かったのでほとんど聞き取れませんでしたが、低い声で、なんだかお経のように聞こえて、余計に不気味でした。



 その扉が都市研の部室のあたりだと気づいた瞬間、例のウワサが脳裏をよぎりました。


 シットコム部の部室は、その突き当りを折れて三つ目の部屋です。


 私はその日、何度も都市研部室の前を通っていました。


 ウワサを信じていたわけではありませんが、あまりにも条件が揃っていたし、ほかに人がだれもいない心細さも手伝って、少し寒気が走りました。



 遠回りしよう。高校生にもなって少し情けないですが、私はその人影に背を向け、階段をいちど下り、南側の階段から上がってシットコム部の部室に行こうと思いました。



 階段に足を踏み出したその時。



 私は「べちゃり」という水っぽい感触をスリッパ越しに感じました。



 私の記憶はそこまでです。



 気がつくと保健室のベッドに寝かされていました。


 シットコム部の友達によると、階段の踊り場に倒れていたそうです。


 幸い、たんこぶができただけで大きな怪我はありませんでした。


 時間が経ったせいか、スリッパの裏にはあの「べちゃり」とした感触の形跡はありません。


 階段に戻って確かめる気にはなりませんでしたが、その後謎の液体が撒かれていたなんて話もありませんでした。



 偶然だと思いますが、私はその夜から高熱が出て、頭を打ったこともあり病院での検査と治療のため一週間ちょっと学校を休みました。(おかげでテストが大変でした)



 以上が、私の体験したお話です。


 偶然だとは思います。頭を打ったことで記憶が混濁しているのかもしれません。



 都市研の皆さんは、お変わりありませんか?


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