自己責任系のタセキ
久しぶりに初夏の陽射しもまぶしい晴れた日の放課後、われわれ都市研が向かった先は手芸部の部室だった。
早矢仕さんは今日バイトがあるということで、先輩と僕のツーマンセルでの突撃である。
突撃、なんて言うとまるで敵対行為のようだが、僕に限って言えばあながち間違いでもない。
これから会いにいく相手に、僕は結構嫌われているっぽいのだ。
かといって先輩ひとりに任せれば、「じゃあいまからその呪いの儀式やってみようよ」とでも言いだしかねないから、彼女のあらゆる危険を取り除く使命を背負った僕は、同行するほかない。
可能であればダーッと行ってバババッと用を済ませてササーッと帰りたい。強襲、撃破、転身。ヒットアンドアウェイが今日の行動目標だ。
「しほちゃーん、あっそびにきたよおー!」
手芸部の部長とはもともと同輩ということもあってか、あるいはナチュラルな無礼か、先輩はノックもせずに部室の戸を開け、馴れ馴れしく中へと踏み込んだ。
まさに突撃の様相ながら、ドアやら戸を開けるとき、そこがどんなに厳かな空間であっても躊躇なく全力で開扉するこの人の将来が少し、いやかなり心配になる。
「真魚果!」
先輩を一目見るなり奥から髪の長い女生徒が両手を広げ、姿勢よく足早に進み出る。対する上ノ下先輩は合点承知とばかりに自分も手を広げ、部屋の中央で二人は磁石が引き合うようにパッサリと抱き合った。
「ああ~……二日と三時間ぶりの真魚果成分……シャンプー変えた?」
「しほちゃん、あいかわらず記憶力がいいねえ」
手芸部の部長は万感の思いといった様子で先輩の背中と頭を抱き、頭皮のにおいを掃除機の如く一心不乱に鼻から吸い込んでいるが、周りの部員は部長の異常行動など毛ほども気にしていない様子で、黙々とハンドクラフトにいそしんでいる。
おそらく僕が思っているより頻繁に繰り返されている光景なのだろう。
部員がなにも言わないのは“慣れ”や“気遣い”ではなく“諦め”だ。
同じ部長として、まったく嘆かわしい。ああはなるまいよ。
「よくものこのこと顔が出せたものですね、月宮」
先ほどまでの猫なで声と同一人物とは思えない、冷たい刃で突き刺すような、文字通り剣呑な声が僕を呼び捨てた。
それまで部室の中を満たしていたミシンの駆動音が、彼女の声を合図にして一斉にピタリと止む。
先輩の頭越しに、長い黒髪の狭間から親の仇でも見るような鋭い視線がまっすぐこちらに向いていた。
三年C組、田堰しほ瑚。
数多の部活が乱立する我が校において一二を争うほど統率の取れた手芸部に女帝として君臨する彼女こそが、『チェンジ様』怪談の投稿者にして、上ノ下真魚果の守護者を気取るモンスターペアレント。
そして以前校内に巻き起こっていた怪談ブームで名を馳せた〈怪談四天王〉のひとり、〈自己責任系のタセキ〉その人である。




