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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
1章

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8:お茶会がついに開催された。

 ホーヘンベルク侯爵家でのお茶会がついに開催された。

 はぁ……気が重いなぁ。

 男爵領近くの貴族家で参加する家門には、事前に俺と父上殿とでそれとなくランドファスの参加を伝えてある。どの家門も渋い顔をしていたし、交流のある令息には泣かれもした。


 ランドファスに何かされた令息令嬢がいたら、すぐに止めに入ること。それから後日――本当はこういうのでお詫びをするのは間違っているとは思うのだけれど、謝罪の品を送るということを侯爵様の方から参加家門の方には伝えてもらっている。


「にぃちゃま、元気出してください」

「ありがとう、ティファニー。はぁ、今日もかわいいなぁ」

「にぃちゃまもステキです」


 双子であるティファニーとジークは金髪だ。天使だ。そこは母上に似たのだろう。

 俺は祖父似の黒髪だ。

 ティファニーには、今日のために俺が必死に錬金して純度を高めた、ローズクォーツ=ピンク水晶で作った髪飾りをプレゼントした。

 金銀を含む鉱石には石英――水晶も混ざっていて、たまに色付きのものも出てきた。

 ピンクは凄く珍しかったけど、コツコツ溜めた甲斐があったな。

 とってもかわいくてマジ天使。

 

「ジーク。お前もランドファスに絡まれないよう、気をつけるんだぞ」

「はい。ロバート卿はついてくれていますし、きっと大丈夫です」

「ロバート卿。ジークを頼みますね」

「はっ。お任せください、ディルムット様」


 ロバート卿は厳つい人相というわけではない。だけどランドファスが悪戯をした時に、ロバート卿が怖い顔をしたようで、その時、ランドファスはおしっこを漏らしてしまった。

 以来、ランドファスはロバート卿を避けている。ジークにとっては、ランドファス除けのお守りみたいな人だ。


「じゃあ僕は、ランドファスを遠巻きに監視してくるよ。ティファニー、あちこち歩き回って迷子にならないようにね」

「もうにぃちゃまは過保護なんだから。ティファ、もう子供じゃないのよ」


 いやまだ五歳だろ。


「レディーなんですから」


 五歳のレディーね。うん。

 でも、ぷぅっと頬を膨らませているティフアニーもかわいい。

 二人に手を振って別れ、お茶会の中央会場へと向かう。


 するとさっそくだ。


「痛いっ、痛いよぉ」

「はははははははは。なんだこの変な髪型は。このオレ様が切ってやろうか? なぁ」


 天然パーマだと思われる令息の髪を引っ張っているのは、紛れもなくランドファスだ。


「ランド!」

「んあ? なんだ、ディルムット。オレ様に用か?」


 オレと来たか。年々、図々しさが増していくな。


「用というほどじゃないんだ。ジークを探していてね」

「何? 泣き虫ジークも来てるのか」


 ランドファスがにたりと笑う。お前が蹴ったり殴ったりするから泣くんだろう。ジークはお前より二つ年下なんだぞ。

 と思いつつも、俺はさりげなく髪を引っ張られていた令息の隣に立ち、彼を背後に下がらせた。


「この広い会場で迷子になっていないといいのだけれど」

「迷子だって。ククク。だったらオレ様が探してやるよ」

「そうしてくれるか? 助かるよランドファス。今ロバート卿も探しているから、彼と一緒にジークを探してくれるかい」


 ロバートの名を口にした瞬間、それまでニタニタ笑っていたランドファスの顔が青ざめた。

 

「んげっ。ロバ、ロバート!? や、奴も来ているのかよっ」

「もちろんさ。ジークとティファニーはまだ五歳だからね。父上と母上は大人の茶会の方に出席しているし、二人の面倒を見る大人といったらロバート卿しか――「オオ、オ、オレ様は用事を思い出した。じゃあな!」――はいはい、じゃあね」


 と、最後は奴に聞こえないように言う。


「ま、待ってよぉ、ランドくーん」


 やれやれ。あんな奴でも子分が出来るもんなんだな。確かグランシュ子爵家の嫡男だっけか。伯爵家のお隣にある、小さな領地の。

 気の弱そうな少年だ。きっと親の言いつけて嫌々ランドファスにくっついているんだろう。


 さて、次はこっちだ。

 髪を引っ張られていた令息。彼の乱れた髪を、頭を撫でながら整えてやる。


「ごめんよ。僕の従弟が酷いことをして。そうだ、お詫びに何か錬金しよう。何がいいかな。君はどの動物が好きかい?」

「え……えっと、お馬さん……」


 まぁ貴族の令息というのは、だいたいこう答えるよね。

 たいていの貴族家では馬を飼っている。特に男児は馬に乗れなきゃ恥ずかしい――なんて風潮もあるぐらいだ。そのせいで、男の子は馬に対して憧れを抱く。


「馬だね。マーガレット」

「はい、坊ちゃま」


 お茶会に参加する令息令嬢には、大抵世話役のメイドが付き従っている。まぁ全員じゃないけど。

 マーガレットは去年、俺の専属メイドとしてやってきた。彼女の母親が元々祖父の代の伯爵家で働いていて、父上殿が独立した時に一緒について来た人だ。

 

「ごめんね、マーガレット。重たい荷物を持たせて」

「いいえ、大丈夫ですよ坊ちゃま。軽い木材ですもの。金や銀だと重たくて無理ですが」


 そう言って彼女は笑った。確かに彼女に運んで貰っている箱の中身は、軽い木材ばかりだ。ほんの少し色付き水晶も混ざってるけど。

 中から木材と、それから真っ黒な石――黒水晶の小さな粒を取り出す。

 そして錬金――。


「ま、魔法陣だ!?」

「きれぇ~」


 周りにいた令息や令嬢たちも集まって来る。

 俺の錬金魔法自体は秘密ではない。公にされているのは――。


「僕の錬金は、木を一瞬にして加工することが出来る魔法なんだ――ほら、木馬だよ」

「うわぁぁぁ、カッコいい!」


 ふっふっふ。そうだろうそうだろう。

 馬の目にはさっきの黒水晶をはめてある。最初から小さな粒だったし、ちょこっと錬金で磨いたことなんてバレないさ。


「今にも動きそうだ。凄いなぁ」

「ふっふっふ。すっごく鍛えられたからね」

「え、鍛えた?」

「そう。妹のティファニーにね、毎回ダメだしをされるんだ。可愛くない! 不細工! 下手くそ! 本物をもっとよく観察して! ってね。三年掛けて鍛えられ、今じゃこの通りさ」


 これ本当の話。


「ぷっ。ディルムット様は面白いなぁ。これ、いただいてもいいんですか?」

「もちろんだよ。それから僕のことはディルって呼んで欲しいな。君はトゥーチェ男爵家のセドリックだったよね? セドリックって呼んでもいい?」

「はいっ。じ、じゃあ……ディ……ディル! 僕、このお馬さん、大事にするよ!」


 よかった。笑顔になってくれて。

 何とかこの場は丸く収まったけど、ランドファスの奴、これ以上騒ぎを起こさなきゃいいけど。

 

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