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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
3章

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73/101

73:いつもありがとうって。

「もう何日かゆっくり滞在すればよいものを。慌ただしいのぉ」

「申し訳ございません、陛下。なんせ片道半月もかかりますから。ここでゆっくりしていれば、それだけ帰りも遅くなってしまいます」

「家族が恋しいか。はっはっは。そうだな。そなたもまだ、十歳の少年であったな」


 今日は王都を出発する日。そんな時に国王陛下に呼び出された。

 今度は寝室ではなく、執務室だ。そこには公爵様もいらっしゃった。


 家族が恋しくないわけじゃない。でも、うわぁん寂しいよぉ~……なんていう歳じゃない。

 ま、普通の十歳なら半月以上も親と離れていれば、泣き出すかもしれないけど。

 生憎、俺は三十四歳おっさんの心も持っているからね。

 どちらかというと、早く領地に戻ってあれをやりたい、これをやりたいってのが先かな。

 あと……。


「あまり長居していると、アレ、ではなく、伯父と顔を合わせるんじゃないかと不安でして」

「んむ、そうだな」

「オズワルド伯爵は近々、王都の北にある伯爵家の別荘を手放すという話が持ち上がっておる。この二年で三つの別荘を手放しておるが、それでも借金の返済は終わらぬようだな」

「あはは。そうなんですか。いやまぁ、僕が知る限り、別荘を全て手放しても無理だと思いますよ」


 伯爵領の七割ぐらいを売却しないと、借金の返済は無理だろうな。

 伯爵領は気候も穏やかだし、農作物の収穫量も多い。オズワルドの首が繋がっているのは、農業面での収入があるからだろう。

 それも、土地を失えば終わりだ。

 まぁ、あの男が領地を手放すとは思えないけどね。


 でも、元男爵領はどうかな?

 金銀鉱山を諦めたら、手放すかもしれない。

 生まれ育った領地だから、人手に渡るのは悲しいけど。ま、オズワルドの手から離れるなら、そっちの方が断然嬉しいなぁ。

 

「陛下。例の件をお話しませんと」

「おぁ、そうだな」


 例の件?


「ディルムットよ、これを」


 陛下が手紙を差し出す。父上殿宛だろう。


「そなたの父に渡してほしいものであるが、内容は、移民の受け入れについてだ」

「移民、ですか? 確かに人手は欲しいですが、辺境まで来てくれる人が果たしているかどうか」

「その点は心配いらぬ。本人らの希望でもあるからな」


 本人ら? いったい誰のことをおっしゃっているのやら。


「実はの、ディルムットよ。お主の故郷でもある、元男爵領の領民らじゃ」

「え、男爵領の?」


 聞けば、オズワルドが何もしないせいで領民の暮らしは貧しくなる一方なのだとか。

 ほとんどの人は早い段階でオズワルドを見限り、他の領地へ移り住んでいる。

 でも故郷だからと残っている人達もいて、ただ限界を迎えて結局は全員、男爵領を出たらしい。


 え、まさか無人の領地になっていたりするのか?


「近隣の領地に移り住んではおるが、できれば男爵家の元で働きたいと申しておるそうだ」

「父上の……きっとそれを聞いたら、父上は泣いて喜びます」

「そうであろうな。だが辺境はようやく、食べるのに困らぬ量の作物が育つようになったばかりだと言っておったな。であるならば、やはり受け入れは難しいか」

「当面の食料輸送の支援はしようぞ。どうだの、ディルムットよ」


 そうか。それで王都へ到着した夜に、俺を呼んだんだな。

 元男爵領はそれほど大きな領ではない。むしろ小さく、町ひとつ村ひとつという、本当にこじんまりした領だ。

 それでも、町と村の住民は合わせて三百から三百五十人ぐらいはいただろう。

 元男爵領の周辺も似たようなもので、百人ぐらいがいきなり引っ越してきても困ってしまうかもしれない。

 元々そこで暮らす人との兼ね合いもあるし。


「わかりました。父上を相談して、なるべく早く受け入れられるようにいたします」

「受け入れできるのか?」

「畑を拡張すれば、なんとかなると思います。二ヵ月ぐらいはご支援いただければと思いますが。でも、一番の問題は住居です。住む家がなければ、移民を受け入れても野宿させてしまうことになりますから」


 俺の言葉に陛下も公爵様も頷く。

 辺境のゼナスは砂漠まで数十分の距離にあるだけあって、日中は暑く夜は寒い。

 俺たちがゼナスに到着してしばらくの間、騎士たちはテント暮らしをしている。

 でも鍛えている騎士だからこそ耐えられたのであって、普通の人だと体調を崩すだろう。

 ということで。


「僕がゼナスに到着するのは半月後です。父上は拒んだりしないでしょうから大丈夫だとして、それでも二ヵ月はお待ちください」

「む? に、二ヵ月でよいのか?」

「はい。あ、今日からという意味です。一ヵ月半あれば、四、五十軒は建てられると思いますので、人数よりも世帯数で受け入れさせてください。念のため、四十世帯までで」


 その人数を受け入れ、畑を広げよう。移住者には畑仕事を任せ、新しい畑で野菜が収穫できるようになればまた追加の移民を受け入れる。


「い、一ヵ月半で、家を四、五十軒……」

「そ、そういえば、ディルムットの所にはドワーフの職人がおるのであったな」

「はい、そうです」

「陛下。ドワーフ族は生粋の職人でございますれば、きっと彼らであれば可能なのでしょう」

「いえ。家は全部、僕が錬金します」

「「ん?」」


 なんだよ、その宇宙猫みたいな顔をして。


「錬金魔法で、家を錬成するんです」

「「んん?」」

「まだ大きな建物は無理なんですけどね。一階五部屋ぐらいの家なら、錬金できるようになりました」


 5LDKってやつだな。

 もっとも、これは平屋面積であって、二階建ても可能だ。ま、一般家庭でこの大きさの家は必要ないけど。

 新しく錬金するとしても、4LDKの物件かなぁ。

 目指すは一階面積20LDKだ。それぐらいの大きさになれば、立派な屋敷になるだろう。

 ふふ。早く新築の屋敷を、錬金したいなぁ。


「そ、そうか。はは、ははははは。お主の錬金魔法も、かなり熟練度が上がっておるようだの」

「はい、おかげ様で。使う場面が多いですから、必然的にそうなります。あとは、砂漠エルフの方に、魔法の特訓を受けていまして。いや、受けさせられているというべきかな?」


 俺の魔力はかなり高いらしい。だから魔法を学ぶべきだってリディアレーゼがうるさくって。

 まぁ結果的に魔力がさらに増え、一日に使える錬金魔法の試行回数も増えたからいいんだけど。


「おっと。また長話をさせてしまったな。では父君によろしく伝えてくれ」

「はい。承知しました」


 深々と頭を下げ、執務室から退出しようとして思い出した。


「あの、公爵様」

「ん? なんじゃ、ディルムット」

「これを」


 懐から飛び出したのは長細い箱だ。リボンもかけてある。

 中に入っているのは竹の髪飾り。


「エヴァンゼリン嬢へお渡しいただけますか? こちらのお手紙と一緒に」

「ほぉ。孫娘に贈り物か」

「え、いや、あの。い、いつも竹細工のデザインなんかの相談に乗っていただいていますので、そ、そのお礼です。贈り物だなんて、そんな大層なものではありませんよ」

「ほぉ。大層では無い物を、わしの可愛い孫娘に渡そうというのか?」

「いい、いや、別にそういうわけじゃ」


 じゃあなんて言えばいいんだよ!


「はっはっは。バランよ、子供をそう虐めるでない。ディルムットが困っておるであろう」

「はっ。ディルムットよ、冗談じゃ。心配せずとも、エヴァにはちゃんと渡しておく」

「は、はい。よろしくお願いします……あ、それから。健康が一番ですとも、お伝えください。体が丈夫でなければ、強くはなれませんから」


 最近、何かが上手くいかないらしく、悩んでいると手紙にもあった。

 きっと健康に関することだろう。

 悩んでばかりいては、余計に落ち込んでしまう。

 前を向いて健康でいれば、心も元気になるはずだ。そうすれば悩みも吹き飛ばせ、心も強くなるだろう。

 うん。心の強さは健康から!


 ま、知らないけど。


「つ、強くか。伝えておこう」

「はい!」


 王都に来れば、また会えるかもと思っていたけど。

 まぁエヴァンゼリン嬢は、ティファたちと同じで七歳だもんな。今回は参加できないから、来ていなかったんだろう。

 そっか。三年後のティファとジークのお披露目会の時には会えるんじゃないか。

 その時、改めて面と向かって伝えよう。


 いつもありがとうって。


「それでは陛下、公爵様。失礼いたします」


 こうして俺は、遠い我が家へ向け出発した。

 

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