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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
3章

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68:文通してたら、何か悪いのか!?

「まぁ、そう緊張するでない。すまぬな、長旅で疲れているであろうに。しかし、こんな遅くにしか、お前と話す時間を作れなくてな」

「お気遣い、ありがとうございます。それで、僕に話とは?」


 寝間着姿の陛下がソファーに腰を下ろし、俺にも座るよう勧める。

 お、俺の服、汚れてないかな? このソファー、金貨何枚分だ?

 内心ガクブルしながらソファーに座ると、陛下が満足げに笑って執事を呼んだ。

 

 ティーカップに注がれるお茶の香りに、甘酸っぱさを感じる。

 はちみつレモンティーかな?


「うむ。辺境領ゼナスのことでな。バランから報告は受けておる」

「バラン?」

「おぉ、そうであったな。お前は家名しか知らなんだな。バランシェット・フォン・ハルテリウス。口うるさい、余の片腕である宰相だ」

「そうだったのですね。公爵様のお名前を記憶しておらず、申し訳ありません」

「よいよい、そう畏まるな。それよりも、砂漠の民と友好を築いたこと、ようやってくれた。これで万一蛮族がゼナスに攻めてきたとしても、砂漠の民と協力し、挟み撃ちにできるであろう」


 俺もそれを期待して、彼らに恩を売ったわけだしね。そこを褒められるのは純粋に嬉しい。


「それに、あのゼナスで特産物を作り出すとはな。しかも人気だそうではないか」

「竹細工のことですね。ゼナスの村近くにあった、細くて真っ直ぐ伸びた木を見て、なんとなく思いついたものなのですが。たくさんの方に気に入っていただいて、嬉しく思っています」


 嘘ですごめんなさい。

 古くから日本で作られていた、伝統工芸みたいなもので。テレビや、実際に売られているものを見て、うろ覚えながら作ってみたヤツなんだよね。

 竹筒に点で絵を描いたランタンは、綺麗にできたものが貴族用に。竹が細いものや、切った時に少しヒビが入ったもの、穴あけを失敗したものなんかは値段を安くして庶民にも売り出している。

 特に、村の子供たちが虫やモンスターを描いたランタンは、貴族の令息たちに人気らしい。

 コロコロランタンが一番人気だと聞いた時には、どの世界の男の子もカブトムシやクワガタが好きなんだなと笑ったものだ。


 その後も、山から水を引いたことや畑のこと、村を囲む壁が完成したことなどを報告。

 お隣リーガル伯爵から木材や食料の支援もあって、辺境の開拓が予想以上にうまく進んでいると告げる。

 持つべきものは義理堅い隣人だ。


「自給自足ができるようになったか」

「いえ。まだ『できる』とは程遠いかと思います。あくまでも、一部の野菜が必要な量、収穫できるようになった程度ですから」


 いわゆる夏野菜。栽培できるのは、そういった暑さに強い野菜だけだ。

 まぁ気候ばっかりは、どうすることもできないしね。

 

「暑い気候は、どうやっても変えることはできません。ですので、これからは温暖な地域で育つ果物を、栽培してみようかと思っているんです」

「ほぉ、果物か。ふはは。不毛と呼ばれた辺境で、果物か。男爵家を辺境へ行かせたのは、正解であったようだ。領民の暮らしぶりも、二年前までとは雲泥の差であろう」

「だといいのですが」

 

 ゼナスの村の子供たちは、みんな果物を知らない。栽培されていないものだからだ。

 キャロやリディアレーゼもまた、果物と言えばバナナとヤシの実の二つしか知らなかった。

 パイナップルやマンゴー、ライチあたりなら、栽培できるんじゃないかなって期待している。

 あとはブドウだ。ワイン作りもいいかなと思って。

 ドワーフ族が喜ぶだろうから。


「しかし、何といっても塩だ。まさかあの地が大昔に海であったとはのぉ」

「はい。驚きましたが、長寿なエルフ族がそう言っていたので、間違いないかと」

「うむ。おかげで辺境の地は、財政という点では随分と豊かな領地になったであろう」

「えぇ。おかげでゼナスでは手に入らないものも、他の領地から十分に取り寄せることができるようになりました」

 

 綿花の栽培なんかもいつかはと思っているけど、とてもじゃないが手が回らない。

 だから布や、他にも生活に必要なものはフィッチャーを通して近隣の領地から買い取っている。

 そうすることで、近隣の領主との交流も深まるから、何かあればお互い助け合えるしね。

 

 そんな話をしていて、つい……出てしまった。


「それで、ふあぁ~……うわっ!? もも、申し訳ございません、陛下っ」


 欠伸だ。まさか国王陛下の前で、欠伸をしてしまうなんてぇ!?


「おっと。つい長話をさせてしもうたな。ゆるせ、ディルムットよ」

「そ、そんなっ。陛下が謝れることなんて、何もっ」

「いや。長旅で、王都に到着したばかりだというのに無理をさせた。明日は庭園での昼食会がある。それまでゆっくり休むとよい。楽しい時間であったぞ、ディルムットよ。さぁ、戻るといい」

「恐れ入ります、陛下」


 ソファーから立ち上がり、陛下の寝室を出ようとした。


「ディルムットよ」

「あ、はい。陛下」


 呼ばれて振り向くと、陛下が髭を撫でながらにこやかな顔を俺を見た。


「そなたももう十歳だ。どこぞ、心に決めた令嬢はおるのか?」

「え……と、突然ですね……えっと、心に決めたも何も、辺境にいたらどこぞの令嬢に会う機会もありませんから。何より、もうと仰いますが、まだ十歳、ですよ」

「はっはっは。そうだな。まだ、であるな。うむ。ではゆっくり休むがよい」

「はい。では失礼いたします」


 寝室から出て、その扉が閉じられる。

 陛下の寝室の前には近衛騎士がいて、それからロバート卿が待っていてくれた。

 帰りの道中でさっきの話をすると、ロバート卿も苦笑い。


「ディルムット様には、文通のお相手がいらっしゃいますからねぇ」

「うん、そうなんだよ……あれ?」


 待って。それってどういう意味?

 ロバート卿? ねぇ、ロバート卿?


「ではディルムット様。明日の朝は、少しゆっくりお休みください。しっかり疲れをとりませんと」

「う、うん。わかってる。ところでさっきの――あ」


 部屋に到着し、そんまま寝室の方へ追いやられてしまった。

 文通してたら、何か悪いのか!?

 ねぇ!?

 

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