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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
2章

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59:机の上には十四通の手紙が置いてあった。

 机の上には十四通の手紙が置いてあった。

 一通はハルテリウス公爵令嬢――つまりエヴァンゼリン嬢からのもの。

 残り十三通はローズメイン侯爵令嬢――つまりクリスティーナ嬢からの手紙だ。


「何故十三通も……しかも筆跡を見ると、書いている人物は二人だな。まぁそれもそうか」


 ローズメイン侯爵令嬢からの手紙は、いったい何を書いたらそんなに封筒がパンパンになるんだってほど分厚い。

 たぶん最初に代筆していたメイドが手を痛めたかして、二人目にバトンパスをしたんだろう。

 十三――という数字は、外国では不吉とされている。もちろんこの世界の外国ではなく、前世の話だ。

 そして……筆跡の違う手紙は、それぞれ九通と四通に分かれていた。

 四=し。九=く。

 こちらは日本で不吉とされる数字だ。

 十三と四と九。偶然にしては出来過ぎじゃね?


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


 まるで魂が抜けるほど、深く長い溜息を吐く。


「とりあえずエヴァンゼリン嬢の手紙から読もうっと。えぇっと、何々?」


 手紙の内容は他愛もないものだった。

 先日書いた返事に対する、また返事のようなもの。

 それから、ゼナスでの暮らしはどんなものかという質問だ。


「あ、水の味かぁ。まぁしょっぱいって返事を……いや、書かない方がいいな」


 まだ岩塩が見つかったことは伏せておきたい。他の貴族が国内の商人に横取りされたくないからな。クソ伯父には特に知られたくない。

 エヴァンゼリン嬢が外部に漏らすことは絶対にないだろうけど、公爵家の使用人なんかがうっかり漏らすといけないからな。

 それに、直接岩塩のことを書かなくても、しょっぱいという単語で真っ先に思い浮かぶのは塩だ。そこから岩塩にたどり着くかもしれない。


「そうだなぁ……変な味って書いておくか。体にもよくなさそうですっと――。ま、嘘じゃないし」


 こういう書き方だと心配させてしまうかな?

 なら、綺麗な山水を村へ引く計画があるので、大丈夫というのも書き足そう。


「ん? なんだかほんのり、花の匂いが……押し花?」


 封筒も花柄だけど、その中に薄紫色の押し花が五つ入っていた。

 手紙の最後に俺や双子たち、それに父上殿と母上へのプレゼントだと書いてある。

 わざわざ自分で用意してくれたんだろうか?

 優しそうな子だったし、きっとそうに違いない。あとでみんなに渡してこよう。


「そういえば、ここへ来てから花を見てないな。山の上のようなら咲いてそうだけど、俺が気づかなかっただけかな」


 花、か。きっとこの村で生まれ育った子供たちも見たことないんじゃないかな。

 頼んだら、種を送ってくれるだろうか。

 でも公爵家のご令嬢だぞ? 下級貴族の俺なんかが頼みごとをしていいのか?


 うぅーん。うぅーん……よし、書こう!

 あのお嬢様ならきっと何も気にせず、種を送ってくれるはずだ。


「にしても、医者と一緒に頑張ってますって、いったい何を頑張っているんだ? お体が弱いのだろうか。やっぱり王都暮らしだし、何かストレスとかあったりするのかなぁ」


 都会の喧騒から離れ、静かな所でゆっくり穏やかに過ごされればいいのだけれど。公爵家のご令嬢ともなると、難しいよな。

 無理はせず、ゆっくりお過ごしください――で締めくくろう。

 さて、あとの十三通だけど……。






「どれも内容同じじゃないか! 十三通も書く必要ある?」


 その内容は――


【私のお屋敷に招待して差し上げますわ。来なさい】

【私は真っ赤なドレスが好きなの。貢ぎなさい】

【もちろんルビーが好きよ。でもダイヤもエメラルドもサファイアも好き。安っぽいものはいらないわ。高いものにして】

【男爵家には金鉱山があるのでしょう? 純金で作った蝶のブローチをもらってあげるわ】


 ――と、自分の好みを一方的に伝え、プレゼントしろという催促だった。

 えっと、確かティファニーと同じ五歳だったよな? それにエヴァンゼリン嬢とも同じ年のはず。

 信じられない……。

 男に貢がせることが当たり前だと思っている五歳児……恐ろしい。


 返事、書かないわけにもいかないもんなぁ。

 とりあえず――。


【国王陛下からの勅命を受け、辺境のゼナスを開拓する義務があります】


 これは本当。


【だから僕はゼナスを離れることはできません】


 これは嘘。というか、出てはいけないという命令は聞いていない。

 砂漠に行ってるしね。


【それにとても忙しいので、ローズメイン侯爵家へ行く暇もありません】


 これは本当。


【令嬢に贈り物ができるほどの財力もありませんので――】


 これは嘘。お金ならある。そしてこれからやることが軌道に乗れば、男爵家はまた豊かになるはずだ。金銭面では――だけど。

 そもそも、たった一度顔を合わせただけの相手に、なんで贈り物をしなきゃならないんだ。

 俺がお世話になったとかならだましも、お世話してやった方だってのに。


【――相応のお相手を見つけて、その方に頼んでください】


 白い便せんにその五行を書き、封をした。

 フェアリー・ワイバーンに明日届けてもらおう。

 願わくば、もう返事が来ませんように。


「さぁって、明日から大忙しだぞ。まずは村に水を流すための錬金工事をして――それから水の流れを滝のところまで作っていって――それからそれから――」


 岩塩だけじゃなく、村の特産品を作りたいな。

 せっかく竹があるんだ。あれを生かしたい。

 俺が思い浮かぶのは、竹カゴか脱臭用の竹炭か。カゴはまぁ置いておくとして、消臭用の竹炭はいいんじゃないかなって思う。

 貴族の衣裳部屋なんて、結構汗臭いんだよな。ドレスなんてまともに洗濯もできないから仕方ないんだけど。


「うん。物は試しだ。やってみよう」


 やることがまた一つ増えた。

 あ、コロコロの巣も作ってやらなきゃな。

 

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