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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
2章

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57/62

57:まず、人手が足りない。

 問題は山住だ。

 まず、人手が足りない。


「親方。岩塩の採掘に、どのくらいの人手が必要になると思いますか?」

「そうだな。ノームの模型を見る限り、わしらの住居からさらに掘り進めていけば、岩塩層にぶちあがるだろう。わざわざここまで採掘に来る必要はねぇ。それを考えてもだ、少なくとも二、三十人はいるだろうぜ」


 その人数は、村の働き手の男性全員に匹敵する人数だ。さすがに女性にやってもらうには力仕事があまりにも多すぎる。

 だからといって男性全員を採掘に回せば、今度は畑仕事の人手がなくなってしまう。

 どうしたものか。


 絶対アカン選択肢は、アスデローペ卿に採掘権を委ねること。そして彼は、こちらが人手不足だと知れば――いや、村にいるんだ。辺境の村ゼナスに、余分な人手がないことぐらいすぐ理解するだろう。

 岩塩の取引を持ちかければ、必ず言うはずだ。


 ――ご心配なく。採掘用労働者ならこちらでご用意いたします。

 ――ですので、採掘権をぜひわたくしめに。


 とね。

 それはダメだ。そんなことしたら、取引の主導権をあちらに握られてしまう。

 だから自前で労働者は確保しなきゃいけない。


「先ほどから何を考えておるのじゃ?」

「ディル。キャット・ルー族はディルに恩があるにゃ。だから困ったことはあるなら、力になるにゃよ?」

「わ、妾たち砂漠エルフも、ディルの力になるぞえっ」

「にゃにぃ。真似するにゃ!」

「黙りゃっ。真似などしておらん! 妾はそのつもりでここまで来たのじゃっ」

「「きぃーっ」」


 頼むからここで言い争わないでほし――ん?

 だったら、労働力の提供とかお願いできるのだろうか。





「お、コロコロじゃ」

「コロコロ?」


 滝のそばで一泊し、翌朝にはゼナスへ戻るため出発した。その道中でリディアレーゼが足を止め、何かを見つけたようだ。

 その何か――とは、カブトムシ?


「砂漠にのみ生息しておるのかと思ったが、こんな緑の多い場所にもおったのじゃな」

「でも小さいにゃ~。栄養が足りてないにゃねぇ」


 いや、カブトムシにしては大きいと思うんだけど?

 八歳児の俺の掌より少し大きいぐらいだ。

 その時、オルマンさんがしゃがんで、俺に教えてくれた。


「あれは一応、モンスターなのです。コロコロは糞尿を餌として食います」

「え!? あれでモンスターなんですか?」


 それを聞いて親方が唸った。


「そういや、聞いたことあるぜ。気温の高い地域に生息するモンスターで、そいつらは他の生き物の糞やしょんべんを食料にしてるってな。で、そいつらが出す糞ってのが」

「もしかして畑の肥料に!?」

「お、おう。その通りだ。知ってたのか、坊?」

「なんとなくそんな気がしただけです」


 っていうのは嘘で、まぁ日本で暮らしていれば普通に入ってくる雑学みたいな知識だ。

 生ごみをミミズに食わせて分解させ、その土で家庭菜園をする。そういうのを見聞きしたことはあった。

 ほかにも糞虫だとか、虫の糞も肥料としてはいいっていうのも。

 この世界ではモンスターがその役目を担っているのかぁ。


「ということは、砂漠でもこの虫で、あ、モンスターを使って、肥料を作っているのですか?」

「そうにゃ。じゃないと、砂漠で野菜なんて育たないにゃ」

「うむ。それにの、コロコロは土を豊かにしてくれる。それはすなわち、砂漠化の進行を食い止めておるということじゃ」


 砂漠にコロコロがいなければ、今よりもっと広い範囲で砂漠化が進んでいるのだとリディアレーゼは言う。

 彼女ら砂漠エルフは、砂漠を緑化させることを至高の喜びとしている種族だ。だからコロコロをとても大事にしているのだと話した。

 ということで、彼女は小さなコロコロを連れて帰るという。

 

「主の村にも必要じゃろ」

「そうですね。よい肥料を作ってくれるというのは、大変ありがたいことですから」


 それに、下水――というか汚物処理もしてくれるなら、衛生面にもいい。

 村へ帰ったらさっそく、共同トイレの改造錬金をしよう!

 

 が、その前に――。


「やぁやぁ、おかえりなさいませせディル殿。四日も戻られないので心配しましたよ。西の山に登ったとは聞きましたが。はてさて、どのような『イイモノ』が見つかったのですかな?」


 家に帰るなりいきなりアスデローペ卿に捕まった。

 その目は儲け話を聞きつけた守銭奴商人のそれだ。


「申し訳ありませんが、一カ月も家族と離れていたのです。こんなに長く両親や弟、妹たちと離れて暮らしたことはなかった……。僕は凄く……凄く寂しかったんです」

「ハッ。わ、わたしとしたことが、うっかりしておりました。貴殿と話をしていると、どうにも子供だということを忘れてしまいそうで。いや、申し訳ない。ご両親は応接室の方にいらっしゃいますよ」

「ありがとうございます、アスデローペ卿。またお話は明日にでも」


 そうにっこり笑って答える。

 すまない。俺、中身はおっさんなんだ。

 アスデローペ卿と別れて、応接室へと入る。

 そこで両親と双子たちが、俺を出迎えてくれた。


「ただいまもどりました、父上、母上」

「おかえり、ディルムット」

「まったくこの子ったら。家には戻らず、先に山へ行っちゃうんだもの」

「すみません。アスデローペ卿がいましたので」

「わかっているよ。わかっている」


 二人にぎゅっと抱きしめられ、少し恥ずかしく感じながらも満たされる自分がいる。

 あぁ、やっぱり父上殿と母上の子供に生まれてきて、よかった。


「にぃちゃま、おかえりなさい」

「兄上、アスデローペ卿の足止め、上手くできましたよ」

「うん。ありがとうジーク。ティファニーもね」


 へへへっと笑う二人が、本当に愛らしい。

 こんなかわいい双子の兄になれたなんて、神様マジでありがとう。


 ひとしきり抱擁を交わした後、俺は本題に入った。


「父上。砂漠の民の出稼ぎ労働者の受け入れを、ご許可ください」


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