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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
2章

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55/66

55:違ったらなんか嫌なんだけど。

「その昔の、この大陸は一つではなく、二つに分かれておったのじゃ。それがちょうど、この辺りでの」


 砂漠エルフの族長の娘リディアレーゼは、祖母から聞かされた話を俺たちにしてくれた。


「つまり、ここは大昔、海だったということですか?」

「その通りじゃ。であれば、こんな内陸で塩が見つかった根拠にもなるじゃろう」


 なるほどね。地球でも岩塩が見つかる場所って、大昔は海だった所だしね。


 俺たちは館には戻らず、そのまま山へと登った。ロバート卿と二名の騎士には父上殿への報告を頼んである。

 館へ戻ればアスデローペ卿に捕まってしまう。フィッチャーが必死だったのもあるし、レトンと万が一取引することになっても、こちらで主導権を握る必要がある。

 そのためにも現物を彼には見せたくなかった。


「ぜぇ、はぁ……ま、まだ到着せぇへんのですか?」

「うん。途中で一度野宿して、それからまた歩くから――」

「明日の昼過ぎには到着すんだろうぜ」

「ひぃーっ。あ、明日の昼過ぎ!?」


 最初は意気揚々と歩いていたフィッチャーだったけど、二時間もしないうちに値を上げてしまった。

 今度ロバート卿に稽古をつけてもらう時には、彼も同行させよう。


「まったく、だらしない大人だのぉ」

「ほんとにゃ。この程度の山道なんて、砂の上を全力で走るのより楽にゃ」


 ……何故この二人は、当然のようについて来ているのだろうか。

 二人がいるから、当然、お付きの人も一緒だ。


「い、いいですね、お二人とも。ぜぇ……岩塩、を見つけたのは、男爵家、の、ドワーフ族、なのですから。お、お二人の部族が、その権利を――」

「わかっておる。妾はただ見てみたいだけじゃ。それに、権利を貰ったとて砂漠のエルフ族の里から遠く離れておるのじゃ。どうすることもできぬわ」

「うちも見るだけにゃ。塩なんて貰ったことろで、腹は膨れないにゃ」


 塩の価値がわかっていない子供がここにいる。


「お嬢。塩があれば肉が美味く食えるんですよ」

「にゃ!? お、お肉が美味しくなる魔法の塩にゃか!?」


 塩の価値ををいまいちわかってない大人もいた。


「ディ、ディル。物々交換するにゃ!」

「現物を見てもいないのですから、何とも言えません。それに、僕は領主ではないのですから。父上と相談してくださいね。あ、もちろん、実際の取引の時にはフィッチャーを通すように」


 そうじゃないと、父上殿は優しいから岩塩を安価に設定してしまうかもしれない。

 ただ……俺には一つ、不安要素がある。

 岩塩が十分な量があるとして、採掘に割ける人手がどのくらいあるか……だ。




 


 親方が言った通り、滝のあった場所へ到着したのは翌日の昼過ぎだった。

 滝は相変わらず、ちょろちょろとした水量しかない。


「流れを堰き止めていた岩を今砕くとな、全部地下の岩塩洞窟に流れ込んでしまうんだ。水を通すにゃ、新しい流れを作らなきゃならねぇぜ」


 井戸水がなんとなくしょっぱく思えたのは、気のせいじゃなかったんだな。

 

 親方たちが掘った螺旋状の坂道を下っていくと、その壁が途中から白くなった。


「これ、岩塩ですか?」

「舐めてみりゃわかるぜ」


 え、違ったらなんか嫌なんだけど。

 と思ったら、なんと後ろのフィッチャーが躊躇することなく壁をぺろり。


「どう?」

「塩、です。えぇ、塩ですよこれ!」


 マジか。マジで岩塩か!

 そこから更に少し下りると、突然開けた場所へと出た。

 天井の高さは二メートルとちょっと、だいたいコンビニぐらいの広さがある。


「坊、あそこだ。上から流れてきた水だ」

「あぁ、天井にヒビが入ってますね」


 天井からチョロチョロと水が落ちてきている。その水は岩塩の床を流れ、壁に空いた小さな穴の奥へと続いていた。

 たぶん、あの穴の先は村の方だな。


「天井から地表までは三メートルぐれぇだ。滝つぼの深さがどんなもんだったか知らねえが、まぁ大岩で床がぶち抜けたのも仕方ねぇわな」

「んー、では滝つぼの底を完全に埋めて、水の流れを地表に戻す必要がありそうですね。フィッチャー。リーガル領の方には書状を――フィッチャー?」


 フィッチャーが、壁に頬ずりをしている。


「フィッチャー?」

「岩塩や。これ全部岩塩やで。全部岩塩なんや。いくらになる? 国内だけでさばける量やろか」

「うん、そうだね。それよりも聞いて。お願いだから僕の話聞いてねフィッチャー」

「はっ!? じ、自分、何か言うてましたか?」


 お金の事とか言ってたね。まぁ商人だし、そんなもんさ。

 俺だってこれがどのくらいの富を生むのか気になるしね!!

 でもその前に、水の流れをどうにかしないと。

 

「も、もちろん。男爵様ともご相談して、あちらのご領主様に書状を送りましてん。そのお返事も既にいただいております。あちらも水害に困っておられますから、二つ返事で了承を頂いてますよ」

「よし。それじゃあ地表の土木錬金は問題ないとして。ここの岩塩量だけど……親方、ざっくりとでいいんですが、わかりますか?」

「無茶言うな。かなりの量だとは思うが、どのくらいかってのはちょっとなぁ」


 大地の妖精族であるドワーフなら、そういうのわかったりしないのかなって思ったんだけど。甘かったようだ。


「ふん、ふんふん」


 錬金魔法じゃ埋蔵量なんてわからないしなぁ。


「ふんふんふんふん~」

「仕方ないですね。フィッチャー、岩塩の質はどうでしょう?」

「肉が欲しいですね。実際に食べてみて、味がどうか」

「ふふんふ~ん。ふんふんふふ~ん」


 なら一度上に戻ろうかな。

 

「ふんふんふんふふんっふふふんふんふふ~んふんっ」

「あの、さっきから何ですか、リディアレーゼ」

「ふ……はぁ、はぁ……。コホンッ。あー、妾ならば、埋蔵量がわかるぞえ」


 ……え?


「わかるんですか?」

「んむ。待っておれ」


 リディアレーゼが聞きなれない言葉を口にする。いや、これは呪文だ。もしかして精霊魔法?


「なぁにがわかるにゃ。そんなの嘘っぱちにゃよ」

「黙っておれ、猫娘めっ」

「にゃにぃ~」


 リディアレーゼは呪文を中断し、キャロと揉めだした。

 はぁ、こういうところはお子様だなぁ。

 

「キャロ、静かにしましょう。精霊魔法の邪魔をしてはいけません」

「ふにゃ!?」

「ふふん。黙ってそこで見ておるがよい――」


 再び呪文を再開するリディアレーゼ。

 すると、彼女の足元の岩塩がひび割れ、そこから石でできた人形――いや、岩塩でできた不細工な人形が出てきた。

 ゴ、ゴーレム?


「こやつはロックン。岩の精霊じゃ。じゃが、やはり岩塩で体を作ったようじゃのう」


 い、岩の精霊ロックン!?


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