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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
2章

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48/64

48:惨めですね。

 砂漠の族長会議。

 普段はお互い干渉せずに過ごしている砂漠の民たちだが、同じ砂漠で暮らす者としてある程度のルール決めを行っている。

 例えば、お互いの里を襲撃しないだとか、砂漠を行き来する者を襲わないだとか。

 

「前者はもちろんですが、後者も我ら砂漠の民にとって大事な掟なのだ」

「大事なんですか?」


 オルマンさんが頷く。彼は今、客として招かれることになった僕の護衛として傍にいてくれている。そしていろいろと教えてくれてもいた。


「そうだ。辺境で暮らすあなた方にもわかるはずだ。生きていくためには、自分たちの土地で手に入る物だけでは限界があると」

「あ……つまり商人との取引、ですね」


 オルマンさんは頷く。

 砂漠と横断する商人は、何も他国に移動するためだけに行き来しているわけではない。

 砂漠には砂漠の、貴重な資源がある。主にモンスターの素材だけれど、砂漠にしか生息していない種も多いから貴重なのだ。

 きっと商人との取引に使っているのだろう。

 そして砂漠の民は、砂漠では手に入らない食料や日用品を仕入れている。

 だから砂漠を行き来する人を襲ってはいけないという掟が出来たんだろうな。


 それからオルマンさんに各部族のことを教えてもらった。

 砂漠にはキャット・ルー族以外にも獣人族が暮らしている。

 フォックル・リー族。狐の獣人だ。


 あとはさっき話をした砂漠エルフと、共闘したキンバル族。もう一つ、バトラス族がいる。

 もちろんサルージ族も砂漠の民、このキンバル、バトラス、サルージが人間族だ。

 そしてなんと。捕縛したサルージ族の中に族長もいた。ロクでもない族長だ。

 この会議では、その族長も参加している。もちろん、縄で縛ったままの状態でだ。そのことが不服なようで、彼はさっきからずっと声を上げていた。


「わしはサルージの長だぞっ。族長に対しこの扱いは、不当ではないか! 掟を忘れたのかっ」

「掟を持ち出すか。だがなゲダス、掟を破ったのは貴様だろうがっ!!」

「ハン。なんのことだ? わしらは盗賊に捕まっていただけのこと。わしらサルージは被害者だぞ!」


 なんて無茶苦茶な。そんな嘘が通用するとでも思っているのか。

 そもそも俺たちが突撃した時、思いっきり交戦してただろ。

 それに、商船を襲って戻ってきた砂船はサルージ族のものだ。操舵していたのもサルージ族だ。

 鎖で繋がれていた訳でもなく、自由に動ける状態にあって「捕まっていた」なんて通用するはずがない。

 ここにいる人たち全員がそう思っているし、商業国の兵士が来て同じことを言っても通用するもんか。


「まったく、呆れた男じゃな。目先の欲に目が眩んで、一族を伴なって盗賊などに身をやつすとは」

「ほんとに。その結果、サルージ族全員が処刑台送りになること、考えなかったのかしら?」


 砂漠のエルフ族。そしてフォックス・リー族は族長は女性だ。二人は蔑むような視線を、サルージ族の長ゲダスへと向けた。

 二人ともなまじ美人だから、余計に圧が凄いなぁ。


「黙れ売女め! 目先の欲だと? 砂漠で生き残るための知恵だろうが! どこを見ても砂、砂、砂っ。わしゃな、こんな砂漠で生まれとうなかったわ!!」

「なっ。長ともあろう者が何を言うておるっ。ご先祖に謝らぬかっ」

「罰当たりめ! 貴様の父親はもっと男気のあった人物じゃったのに」


 とご老人たちが眉間に管を浮き上がらせ、ついでに腰も上げて怒鳴った。


「あの方々は族長ではなく、各部族の長老方です。エルフ族以外は長老会というのもありまして」

「なるほど。族長たちも頭が上がらない方々、ですか?」


 こっそり耳打ちしてくれるオルマンさんにそう訊ねると、彼は静かに頷いた。

 元気なお年寄りという奴だね。

 しかしサルージの族長は、どうやら自分が生まれ育った環境に嫌気がさしているようだ。

 まぁいつだって水や食料の心配をしなきゃならないんだし、そう思う者がいてもおかしくはない。

 ただ、それが一族を統べる長ってのは問題だ。


「はぁ……ゲダス。わしらは貴様の愚痴を聞くために集まったのではない。貴様と、貴様の一族の処遇について話し合うためだ。その処遇も決まっている。貴様らは全員レトン商業国に引き渡す」

「うむ。一応形式的に、みなにそのことを共有するために集まったのだ」

「妾たち砂漠の民全てが同意の元、主らをレトンへ差し出すという名目が必要じゃてな」


 そして族長たちは俺を見た。

 あ、なるほどね。俺が呼ばれたのは、証人になってもらうためか。

 子供とは言え、俺はオルフォンス王国の男爵家長男だ。部外者である、貴族でもある。ロバート卿たちもいるし、証人としては十分な役割を果たせるだろう。


「みなさんの意思は確認させていただきました。レトン商業国の方がいらっしゃった時には、僕の方からもご説明しますね」


 そう話すと、族長たちはにっこり笑って頷いた。

 納得いかないのがひとりだけいる。もちろん、サルージ族の族長だ。


「認めん! 認めんぞ!! わしはただ、無断で砂漠を横断する者たちから通行料を取っただけだ! この砂漠がなければ奴ら、今より数倍、いや十倍の金を使って荷を運ぶことになるんだ。たまにその荷をこちらが奪ったところで、すぐに元は取れるだろう!」

「はっ。強奪を認めたかゲダス」

「しかしなんと自分勝手な。貴様のその愚かな考えのせいで、我ら他の部族にまで疑いがかけられたのだぞ!」

「だったらお前たちも商人を襲えばよかっただろうっ。わしらは奴らに搾取されるだけの存在か? いいや違うっ。わしらこそが奴らから搾取するべき強者だ!」


 この男は……バカだ。正真正銘のバカだ。

 盗賊はそこに付け込んだんだろうな。強いのだから、奪って当然だとかなんとか言って。

 

「協力しろ。な? 資金はたんまりある。いくらでも武器を買うことも出来るぞ」


 なっ。こいつまさか……他の国に戦を仕掛けようとしているのか!?

 砂漠で生まれた自分の境遇を呪って、他の国を責めて豊かな土地を手に入れようって考えているのかっ。


「チェトス王国は王と王弟が争っていると聞く。今なら容易に攻め落とせるぞ。そうすれば緑の大地がわしらのものになるんだ!」

「な、何を言っとるか!」

「ほんっと、どこまでバカなのじゃ主は」

「砂漠エルフのお前たちが協力してくれれば、出来ないことはないだろう。そう思うだろう? 女王よっ」


 あぁ、ほんっとバカだ。


「ゲダスさん。チェトス王国の話は誰から聞いたんですか? あ、やっぱり答えなくていいです。盗賊どもにですよね? そんな奴の話、信じちゃったんですか。はぁ……」

「な、なんだとガキ! 貴様は誰だっ」

「僕ですか? 僕はディルムット・シュパンベルクと申します。オルフォンス王国のシュパンベルク男爵家の嫡男です」

「男爵……き、貴族がここへ何をしに来た!」

「それはご想像にお任せしますが、ここで重要なのはあなたが盗賊から聞いたであろう話です。あれ、まぁ本当のことではあるんですけどね。国弟が内乱を起こしたのは十年前のこと。その内乱はわずか三カ月で終わって、とっくに処刑されてますよ」

 

 内乱後の国力低下もほぼない。なんせ三カ月で終わったのだからな。

 砂漠とチェトス王国の間には大きな山脈が連なっている。その山脈が、砂漠化を食い止めていると言っても過言ではないのだけれど、それでもチェトス王国はお隣さんだ。お隣さんの事情すら把握していないなんて、情けない族長だな。


 他の族長たちはどうやら知っていた様子。呆れた顔でサルージの族長を見つめていた。


「騙されていたんですよ、あなたは。そしていいように利用されていただけ。惨めですね」


 俺がそう言うと、サルージの族長は膝から崩れ落ちた。

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