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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
2章

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46:だけど念には念を。

「じゃあこの手紙、お願いします」

「がってん! 任せときな、坊ちゃん」


 砂漠の族長会議に出ることになった。帰路につくのが遅くなります――という旨を手紙に書き、それをキャット・ルー族に託した。彼らは砂船でゼナスの近くまで移動し、そこからラクダに乗りかえ手紙を届けてくれる。


 砂船……いいな。

 砂漠の面積は、オルフォンス王国の1.5倍はある。まぁ横に広いというのもあるけど、それでも地図を見る限り王都から辺境のゼナス、ゼナスからこの大岩まで同じ距離だ。

 馬車を使っても二週間は掛かる道のりを、砂船では僅か四日だ。早い。

 まぁだからこそ、大陸の西側と東側の国とで貿易する時に、船を使って砂漠を横断するのだろう。

 盗賊団のせいで荷物が奪われ、船員に犠牲者が出て、利益より損失の方が大きくなってきたから国が動いてしまったけど。


 そして俺たちは今、盗賊たちのアジトだったドーナツ岩で他部族の族長たちが来るのを待っていた。

 ただ待つだけでは退屈だし、日課の錬金魔法鍛錬も欠かしたくない。


「じゃ、やりますね」

「おう、やってくれ」

「やっるにゃ~」


 ドーナツ岩に両手をつく。そこは唯一の出入り口である亀裂だ。

 通ってみたところ、本当に狭かった。ラクダが一頭、ギリッギリ通れるだけの幅しかない。

 強奪した積荷はどうやって運んだのか。まさかラクダで襲撃して、ラクダで運んでいる?


 そんなことはなく、捕らえたサルージ族曰く「砂船を二隻持っているんだ。今、仲間が商船を襲いに行ってる。な? 話したから見逃してくれよ、な?」と教えてくれた。

 もちろん、見逃すはずがない。そんな取引すらしていないのだから。

 とにかく商業国の兵士が来た時、スムーズに罪人を引き渡せるようにしたい。ということで、この入口を拡張しようってわけだ。俺の錬金魔法鍛錬も兼ねてね。


「おおぉ。やっぱり魔法陣いっぱいに錬成すると、魔力の消費も多いなぁ」

「ご無理はなさいませんよう、お願いしますよディルムット様」

「ウェイド卿、大丈夫です。まだ涼しい午前中のうちに終わらせたいですしね」


 アジト襲撃後、俺は少し休ませてもらった。

 明け方に目を覚まし、すぐに父上殿への手紙を書き、そして太陽が真上に来る前にここを終わらせたいと作業を開始。

 岩肌に魔法陣を押し当て、触れている面を砂に変換していく。その砂をスコップを使って手押し車に乗せ、外へと運んで捨てる。

 もちろん、俺がやるのは砂に変換するところまで。

 他はキャット・ルー族やキンバル族の人たちが手伝ってくれた。


 しばらくすると、表から「砂船が戻って来たぞ」という声が聞こえた。

 もちろん、盗賊の船だろう。


 トンネル作業を止め、出てから坂道を登って岩山の上へ。


「盗賊の仲間、ですか?」

「あぁ。なーんにも知らないで、奴ら意気揚々と帰ってきたようだな」


 望遠鏡片手にダンド族長が楽しそうに話す。

 この人、まだ暴れたりないのか?


「族長、奴らどうやって捕まえますか?」

「うぅーむ。そうだな……オルマン、お前ならどうする?」

「うちなら今すぐ下りて行って乗り込んでとっ捕まえるにゃ」

「お前には聞いておらんわい」


 族長がそう言うと、キャロは唇を尖らせた。

 さて、どう捕まえるかだ。

 向こうは機動力のある砂船に乗っている。下りて行って乗り込もうとすれば、ピューっと逃げられるだろう。

 まだ距離があるし、俺たちも伏せているから見つかりはしないはず。もし見つかっていれば、とっくに逃げているだろうしな。

 そういう訳で、下手に立ち上がって弓で攻撃するわけにもいかないっていう。

 それに、弓だと大してダメージは与えられない。いや乗船している奴には致命的なダメージは与えられるけど。全員を捕えるためには、砂船に逃げられてはいけないわけで。


「ディルムット殿。何か作っていただけないだろうか?」

「えぇ!? オ、オルマンさん……うぅん。何かといわれても……作れなくもないんですが、いかんせん、スピード勝負ですし」

 

 砂船は二隻。これを同時に落とすのは難しい。

 せめてあの浮遊石をなんとか出来れば……あそこまで、俺の錬金魔法が届けばなぁ。

 あ……そう言えば昨日、岩の玉を錬成していた時に、勝手に飛んでいくのがあったっけ。

 

 上手くいけばいいけど、行かなかったときは……。

 すぐさま両手を地面につけ、錬金魔法展開!

 魔法陣内にビーダマサイズの石が何十個と錬成される。そのまま石よ、転がれ!


 頭の中で強く念じた瞬間。石は、物凄い速さで転がっていった。


「な、なんだこりゃっ」

「うにゃ。気持ち悪い石にゃっ」

「出来た……お、僕にもカッコよく出来た!」


 錬金魔法で錬成したものは、俺の意思で動かせる!

 あとはどのくらいの距離まで動かせるかだけど、大丈夫だ。あの勢いなら、障害物でもない限りそれなりの距離を()()はず。

 だけど念には念を。


「ギリギリまで引き付けます」

「うむ、わかった。お前さんに任せよう」

「一応失敗した時用に、フォローしてくださいね」


 族長が頷き、合図を送る。すると弓を持ったキャット・ルー族が身を屈めて並んだ。


「ディルムット様。砂船との距離、およそ百五十メートルです」

「どこまで届くかわかりません。砂船がこの岩山から五十メートルの、ギリギリ範囲まで近づいてからです」

「わかりました。合図はいたします」

「うん。頼んだよ、ロバート卿」

「それと、自分からもひとつお願いがございまして」


 ロバート卿がお願い? 珍しいな。


「石の槍を数本、錬成していただけませんか?」

「投げるの?」

「操舵手を倒せば、少しぐらいは時間を稼げますので」


 なるほど。代わりの奴が舵を握るまでの間、船は止まるからな。

 頼まれた槍を錬成してロバート卿の側に置く。それから指先にありったけの魔力を流し込んでその時を待った。

 そして――


「今ですっ、ディルムット様!」

「わかった!」


 体を起こし、二隻の船の――浮遊石の石を目視する。

 浮遊石はマストの根元……あれだ! ほんのり光を放つ石。あれを破壊する!

 岩山の縁に両手を突き「錬金魔法っ」という掛け声とともに魔法陣を展開。

 鋭利に尖った三角錐型の石を錬成し、浮遊石を貫くイメージで――。


「いっけぇぇぇえぇぇぇぇ!」


 グンッと浮かび上がった石の錐が猛スピードで飛んでいく。


「な、なんだ? んあ、岩山の上にガキがいるぞ!?」

「なっ。キャ、キャット・ルー族だ!?」


 砂船から男たちの声が聞こえた。それと同時に、バキャっという音が響く。

 直後、どすんっどすんと二度、激しい音がして砂煙が舞い上がった。


 砂の上を浮くことが出来ない砂船は、陸に打ち上がったただの船と一緒だ。

 あとは。


「乗り込めぇぇ、にゃ~」

「乗り込め、野郎ども!!」


 うん。族長とキャロに任せておこうっと。

 

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