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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
2章

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45/63

45:まぁどっちでも俺には関係ない。

 両手をついて、錬金魔法で岩を砂へと変換した。

 サラァーと形を崩す岩。その向こうからは歓声が上がったが、次の瞬間にはガチャガチャと武器を地面に落とす音へと変わる。


「大人しく投降してくださって、ありがとうございます」


 俺が笑顔でそう言うと、岩の奥にいた男たち――盗賊どもが表情筋を引くつかせていた。

 お前ひとりだったらズタズタに斬り捨ててやったのに――とでも言いたげな顔だ。

 だけど俺の周りには屈強な男たちがずらりと立っている。

 ロバート卿やキース卿、ウェイド卿はもちろん、キャット・ルー族の戦士にキンバルの戦士もいるんだ。

 対するあちらさんは、岩山の亀裂に逃げ込んだ盗賊たち。向こう側には出られない。唯一の出口に俺たちが陣取っているんだ。地形的にも完全に不利。

 選択肢はなく、残された道は投降のみ。


「オルマンさん。族長さんにお伝えください。こちらも全員、捕まえたと」

「わかった。しかし、ここまで簡単に事が運ぶとは」

「ここが見つかるはずないという過信があったのでしょうね。いえ、もし見つかったとしても入り口は一カ所。そこさえ守ればどうにでも出来ると思ったのでしょう」


 普通、籠城戦というのはあまりいい戦法とは言えない。長い期間立てこもるとなると、食料や水の心配をしなきゃならないからな。

 だけどここは小さいながらオアシスがあるし、畑だってある。 

 逆に攻める側は水と食料を大量に運んできていないといけない。こんな砂漠のど真ん中にだ。

 どっちが不利か、少し考えればわかる事。


 地球のようにミサイルとか銃火器があるなら、また状況は違うのだろうけど。


 やがてキャット・ルー族の族長ダンドさんとキンバル族の戦士長バルシャさんらがやって来た。


「はぁ。思ったよりも人数が多いの」

「縄が足りませんな」


 縛っておくための縄が足りず、キャット・ルー族やキンバル族の人たちが直接、盗賊たちを押さえつけていると話す。

 うぅん。それは抵抗される恐れもあるし、危ないな。


「では、僕が牢屋を錬成しますので」

「牢屋を? はっは、それはいい。ぜひやってくれ」






「これでよしっと。ふぅ、さすがに魔法を使い過ぎですかね。少し、いや、だいぶん疲れました」

「大丈夫ですか、ディルムット様」


 岩山を繰り抜いて石の牢獄をいくつも錬成した。岩を格子状に立てるときも、その太さは五十センチほどにしてある。いくら岩でも細くすれば、体当たりで簡単に折れるからな。

 十人程度が入れる牢屋を二十以上錬成したら、さすがに魔力が枯渇する一歩手前に。

 まぁ階段やら坂道やらも錬成していたし、完全回復する前にこの牢屋錬成だからなぁ。

 でも、もっともっと魔力量を増やさないと。


「はっはぁー。こりゃ見事な牢屋だ。ところでよぉ、商業国の奴らが来た時はどうやって引き渡す?」

「……ん?」


 し、しまった! 奴らを中に入れてから格子柱を錬成したから、扉がない!


「れ、錬成し直しますっ」

「ぶわはっはっは。いいってことさ。なぁに、柱を一本、ぶっ壊せば済む話だしな。そん時ちぃーっとばかり、砕いた石片を喰らって死ぬ奴が出るかもしれんが」


 ダンドさんが意味深な発言をすると、牢屋の中にいた盗賊たちが悲鳴を上げた。

 冗談で言っているのか本気なのか。

 まぁどっちでも俺には関係ない。


「坊主――いや、ディル殿よ。ここまでしてくれたことに感謝する」

「え? きゅ、急にどうしたんですか。僕なんて大したことはやってませんよ」

「いいや。お主がおらなんだ、我らは岩山を登ることは出来なんだし、そうなればあの小さな亀裂から突入するしかない。そうなれば確実に犠牲を払うことになったであろう」


 それは確かにそうだけど。いきなり改まって言われると、ちょっと恥ずかしくなってしまう。


「それでだな。ここまで手伝ってくれたお前さんに更に頼むのは心苦しいのだが」

「出来ることがあればやりますよ。もちろん、そのための見返りは期待していますけど」

「ぶわっはっは。なるほどのぉ。さすがは領主の息子ってわけだ。しかし砂漠に何を期待するんじゃ」

「ひとつは南の蛮族です。彼らは昔、僕らの国を襲撃していますから、警戒しているんですよ」


 ダンド族長は頷く。もちろん、蛮族がオルフォンス王国を襲ったことは、砂漠の民も知っている事実だ。


「出来れば、何かあった場合には共闘をお願いしたいのです。あと、交流もしていただければと」


 なんせゼナスは人手が足りない。開拓をするにしても、絶対的に働き手が少ないのだ。

 贅沢な食事は提供出来ないけど、フィッチャーのおかげで定期的に穀物といった日持ちする食材を仕入れることは出来る。

 腹を満たす程度なら出せるだろう。

 大人数で押しかけられては困るけど。


 という話を、包み隠さず族長へ伝えた。


「なるほど。あの辺境の村を開拓か。たしか蛮族の襲撃に備えて城壁を作るという話を昔聞いたがの」

「あ、はは。村を囲む壁さえ完成していませんよ」


 まぁそのあたりの理由は、前任者――いや、ボロミオシ以前の役人たちも横領をしていたに違いない。

 その結果、他所からの移民の受け入れもせず、少人数の村の人だけでなんとかしようとした結果が今の有様だ。

 村の人口が増えれば、横領出来る金額も減るからな。


「ふんっ。貴族だなんだのがいる国というやつは、やはり面倒くさいのぉ」

「はい。僕もそう思います」


 そう答えると、族長は大きく目を見開いて俺を見下ろした。周りにいる砂漠の民たちもしーんっとしている。

 そして……みんなが笑い出した。


「ぶわぁーっはっはっは。貴族のお前すら面倒だと思っているのか。貴族の当事者だろう。ぶわっはっはっは」

「あ、ははは……」

 

 いやいや。当事者だから余計に面倒くさいって思うんだよ。

 何かあればあんなのと顔を突き会わさなきゃいけなくなるんだからな。

 ほんっと、貴族って面倒くさい生き物だ。


「で、頼みってのはだな」

「はい。なんでしょう?」


 族長は俺の顔を見てニィっと笑った。


「砂漠の族長会議に出て欲しいんだ」

「はい、わかりま――えええぇぇぇ!?」


 ちょ、ま、え?

 俺、族長どころか砂漠の民でもないんですけど!?


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