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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
2章

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43/66

43:ひとりも逃がさないために必要なことだな。

「いやぁ、いい眺めですねぇ。ほとんど砂ばっかりですが」


 二十回ほど階段を錬成し続けて、ようやく頂上へと到達した。

 岩山の外周に目を向けると、見渡す限り砂、砂、砂。地平線までずっと砂だ。

 でも、岩山の内側を見ると――。


「あれがアジトのようですね」

「あぁ。まさかサンドロックの内側に、こんな空間があったとはのぉ」

「まぁあの亀裂から中に入るか、もしくはここに登ることでもなければわかりませんよ」


 この岩山はドーナツ型になっていて、内側に野球場三つ分ぐらいの空間があった。そこにはオアシスがあり、木々もあれば畑も見える。

 大型のテントがいくつもあって、周りには人影も見えた。


「では夜になるまでここで待つとするか」


 ダンド族長の意見にみんなが賛成し、日が暮れるまでここで待機することになった。

 ここにテントを張れば下からも見えるかもしれないな。じゃ、見えないように錬金魔法で盛り土ならぬ、盛り岩をしますかね。

 足元に両手をついて錬金魔法を発動させる。コの字をイメージして岩をそり立たせ、上に砂と同色の布を被せれば日陰の完成だ。

 あと三時間ほどで日が暮れるけど、それまで日向でぼぉっとしていたら熱中症になりかねない。それでなくても今朝から歩きどおしだったんだし、日陰で涼みたいよ。


「ところでディル坊よ。ちょっと頼まれてくれるか?」

「はい、僕に出来る事なら」

「あぁ。階段を作ったお前になら出来る。実はな――」


 ふむふむ、なるほど。ひとりも逃がさないために必要なことだな。

 ドーナツの上をロバート卿たちと進んで、現場へと向かった。

 頼まれたことを終わらせた後、みんなと合流。

 日陰で休みながらこっそり、見つからないよう作業を進めていく。

 襲撃をするなら、今度は内側に下りるための通路も必要だ。でもこれがなかなか面倒。

 なんせ魔法陣の範囲しか錬成出来ないから、俺自身も下に移動しなきゃならない。


「うぅん……階段の上り下りするときは、体を起こさないといけないしなぁ」

「ディルムット坊ちゃん。何も階段じゃなく坂道でもいいのでは? それなら匍匐前進でいけるっしょ」

「おぉ! キース卿、頭いい!」

「えへへ。それほどでも~ありますけどねぇ」


 キース卿がそう言うと、隣でロバート卿が彼の頭をこつんと叩いた。

 調子に乗ると怒られるぞぉ。

 でも助かった。考えすぎると単純なことが見えなくなるからね。


「なになに、坂道を作るにゃ?」

「はい。下にいる奴らに見つからないようにするために」

「にゃあ。じゃ、この布を被るにゃ。岩の色にも似てるし、何より日差しを遮れるにゃ」


 キャロが差し出してくれたのは、日陰を作るのに使った布と同じ素材のものだ。軽くて通気性もいい、砂漠では重宝する布だと聞いた。


「ありがとうございます。ではお借りしますね」


 そうして俺はせっせと坂道を錬成しはじめた。

 魔法陣の光が少しでも見えないよう、錬金魔法によって凹んだ岩の分を内側に向かって壁として成形。一度の錬金で進む距離は短くなるが、見つかっては元も子もない。

 暫く進んでは休憩、また進んでは休憩。

 巨岩を繰り抜いたように作ったからなのか、錬成した坂道はひんやりして気持ちいい。

 こうして無事、日暮れ前には地面まであと七、八メートルのところまで錬成し終えた。


「おう。ご苦労だったな坊主」

「あ、ダンド族長。下りていらっしゃったのですね」


 族長は水筒とパンをくれた。水筒は持っていたんだけど、ここまでにほとんど飲んでしまっている。ありがたい。

 その中身はほんのり甘く、疲れた体に染み渡るようだった。


「あとはわしらがやる。お前さんは安全のため、上に戻ってろ」

「いえ、そういう訳には行きません。まだ地面まで七、八メートルはあるんですよ。飛び降りるわけにもいかないでしょう」

「む……それはそうだが……」


 さすがに地面近くまで坂道を錬成していたら見つかってしまう。ここも今は見つからないよう、蓋をしている状態だし。

 

「せめて突撃のその瞬間はここで坂道を錬成しますので」

「むう……わかった。では最後の仕事まで任せよう」

「おとんっ」

 

 キャロも上から下りてきた。


「ディルにもしものことがあったら、どうするにゃ」

「しかしなぁ、キャロよ」


 なるほど。族長が来たのはキャロの差し金だったのか。


「キャロ。心配してくれてありがとう。でも僕が最後の錬成をしなきゃ、ここからみんな飛び降りることになるよ? そんなことしたら、戦う前に負傷者を大勢出してしまう」

「そ、そうにゃけどぉ。ううぅぅ。じゃあ、うちも一緒に」

「ダメだキャロ。お前は上で待ってろ」

「でもおとんっ」


 声を荒げようとする彼女の腕を掴む。振り返った彼女に、口元で指を立てて見せた。


「キャロ。僕は最後の錬成が終わればすぐ上に戻ります。族長、例の件は誰がやることに?」

「あ、あぁ。うちの若いもんにやらせる予定だ」

「そうですか。ではその仕事、僕とキャロにやらせてください。僕が坂を上るのを待ってからでも、十分間に合うでしょうから」


 そうすればキャロを下に行かせなくて済む。更に、俺も一緒なのだから不満も言わないはずだ。

 俺の意図を理解したのか、族長はニィっと白い歯を見せて笑った。声は出さずにね。


 俺とキャロはこのままここで待機。

 上に戻った族長が再び、今度は仲間たちを連れて坂道を下りてきた。


「こっちの準備は出来たぜ」

「ディムット様。我々は彼らに協力いたします」

「うん。頼みます、ロバート卿、キース卿、ウェイド卿。三人とも気をつけて。必ず無事に戻って来てくださいね」

「え、無傷で戦えと? いやぁ、難易度高いなぁ」


 え、いや、そういうつもりじゃないんだけど。命大事に、死ぬなって意味だったのに。

 でも、なんだろう。キース卿の軽いノリの返事は、まるでこれから行う盗賊の討伐戦が簡単な任務のように聞こえた。


 そして、俺がそう感じたのは間違いではなかったと、この後実感させられることになる。

 

「さぁ、行こうか。ディルよ、頼むぜ」

「はい。錬金魔法――」


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