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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
2章

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40/62

40:この手紙見たくなーい。

 王都から届いたのは、キャット・ルー族が待ちに待った情報だった。

 手紙には「たった一日でゲロった」「根性がない」「拷問のし甲斐がなかった」という旨のことも書かれていた。

 根性がないって……もっと粘って欲しかったってこと?


「あ、ディルムット様。こっちのお手紙もどうぞ」

「手紙? 僕にですか?」


 手紙を渡すとき、フィッチャーの顔がにちゃあっと緩む。

 送り主の名は――。


「エヴァンゼリン嬢からですか」

「先日のお返事じゃないですかー? いやぁ、罪な男やねぇ」

「なんですか、罪な男って。そもそも僕はまだ八歳の子供なんですよ。どんな罪を作るっていうんです」


 こういう時だけ子供をアピールしておく。

 まったく。変な言いがかりを付けられるのは困ったものだ。


「ふむ。ディルムット様は貴族の令息にしては、色恋に関してまったく無頓着ですなぁ」

「八歳児に何を期待しているんです」

「いやいや。貴族のぼんぼ――令息令嬢なんかは、六、七歳で将来の伴侶となる相手を物色している方も意外と多いんですよ」

「え……そうなの?」


 でも六、七歳ってまだまだ子供じゃないか。性格だって、外見だってどんどん変わって来るだろうに。

 それで将来を約束して、いざ結婚って年齢になった時「こんなハズじゅなかった」ってことにならないのか?


「こんな年齢からぐいぐい来る子は、将来心配だけどなぁ」

「そうですねぇ。幼少期から異性に飢えてるような子は、大人になったらどんな猛獣になるのやら……あ、忘れてました。お手紙、もう一通あるんですよ」

「え? もう一通って、それも僕ですか?」

「はい。しっかしどこで繋がりをお持ちになったんで?」


 もう一通の差出人名義はクリスティーナ・ローズメイン。

 んー……誰?


「えっと、フィッチャーはこの差出人名義に心当たりがありますか?」

「えぇ!? ディ、ディルムット様、ご存じなかったんですか?」

「いや……僕はまだ社交界には疎くて。幼い令息令嬢のお茶会も、先日侯爵家で開かれたアレが初めてだったんです」

「あー、まぁそうでしょうねぇ。大人しい方ってのは、だいたいそうですし。あと公爵、それからもう一つの侯爵家、伯爵家ぐらいが盛んですからねぇ」


 俺の家門は男爵家だ。本来ならああいった場に男爵家が呼ばれるのは珍しいこと。

 主催したホーヘンベルク侯爵家が、うちお懇意にしてくれているから招かれただけだ。


「それで、ローズメイン家ってのは?」

「あ、そこは侯爵家ですわ。ローズメイン侯爵家。一男一女でしてね、まぁ……恐ろしいほど我儘なお嬢様ですよ」


 我儘なお嬢様?


「あの、このクリスティーナって令嬢は……金髪に赤い瞳、ですか?」

「ほっほぉ。やっぱ知ってはるんですね。そう、その通りです」


 あの時の子だ。お茶会の帰りに、門の所で馬車が大渋滞していた時の。

 俺を奴隷にしてやる、なんて言ってた変な子だ!?

 うわぁ、嫌だぁ。この手紙見たくなーい。


「フィ、フィッチャー。僕の代わりにこれ、読んでください」

「え? それはマズいのでは?」


 フィッチャーがドン引きすると、俺の頭上から腕が伸びてきて手紙を掴んだ。

 ロバート卿だ。


「失礼します。……短いですね」

「内容がですか?」

「はい。読み上げます」


 ごくり。


「わたくしの屋敷に来ることを許します。今すぐ来なさい」

「……はい?」

「わたくしの屋敷に来ることを許します。今すぐ来なさい」

「あ、いえ。律儀に読まなくてもいいですから。え、それだけですか?」

「はい。これしか書かれておりません」


 ロバート卿が手紙をこちらに向ける。

 うん。それしか書いてないね。しかも字が綺麗だ。これは本人じゃなく、誰かの代筆だろう。

 その場合、この内容はその代筆した人が改変したものなのか、令嬢がそう書けと指示したのか。


 俺に自分の奴隷になれ――なんて言った子だ。後者だろうなぁ。

 怖い。めちゃくちゃ怖い。


「これ、万が一ローズメイン家に行こうものなら、そのまま監禁とかされそうですよね」

「はは、まさかそんなはず――」

「いやぁ、あり得るかもしれまへんなぁ」


 ほらぁー! フィッチャーはこう言ってるよっ。


「これ、どうしよう……」

「無視でいいんちゃいます? ローズメイン家の領地は、ここから王都を経由して更に北東の端ですからねぇ。馬車でもひと月半はかかりますよ」

「いかに侯爵家と言えど、他家に命令する権限はございません。ディルムット様がおいやであれば、念のため、その旨を手紙にしたためて送られるのがよろしいでしょう。領地のことで忙しいからと」


 忙しいのは本当だし、ロバート卿が言うようにしよう。

 エヴァンゼリン嬢からの手紙はあとで読むとして――。


「キャロ、どうでしたか?」

「はぁ……奴ら、あんな所に隠れていたとは思わなかったにゃ」

「というより、隠れる場所があったことすら、他の砂漠の民は知らなかったはずだ」


 ん? キャロとオルマンさんが言ってるのは、どこのことなんだろう?


「うちらはおとんに連絡して、このまま真っ直ぐ奴らのアジトに向かうにゃ」

「このまま真っ直ぐって、準備もせずにですか?」

「途中にキャット・ルー族の里があるにゃ。おとんたちも出て来るだろうし、途中で合流するにゃよ」


 武具の類は里から出発する人たちに任せるのか。


 うぅん。俺も何か手伝うことが出来ればな。

 ここでキャット・ルー族に……いや、砂漠の民に恩を売ることが出来れば、今後、彼らと様々な交渉も出来るだろう。

 何より、南の蛮族対策も出来る。


「キャロ。出発はいつですか?」

「ん? 今日はもう遅いから、明日の朝、日が昇る前に出発するにゃ」

「わかりました」


 俺は急いで父上殿の元へと向かった。

 

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