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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
1章

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31/63

31:もちろん俺が殴るわけじゃない。

 館の敷地内にはテントがいっぱいで狭いから、ボロミオシとその部下の兵士、それから盗賊たちは村の中央に集められた。


「はぁ……もう二度と馬にゃあ乗らねえぜ」

「あぁ、俺もさ」

「馬のあぶみに足が届かねえんだ。振り落とされねえよう、鞍にしがみつので必死よ」


 とドワーフたちが愚痴をこぼす。

 お、お疲れ様です。


「兄ちゃん、なんでドワーフのおっちゃんたちを男爵様と一緒に行かせたんだよ。もしもって時のことを考えたら、危ないじゃんか。おっちゃんたちはさ、職人なんだしよ」

「チク、ドワーフ族は確かに腕のいい職人だけど、同時に戦士なんだよ」

「え? せ、戦士?」


 そもそも、樽のような体で筋肉モリモリなんだ。見た目からして強そうじゃないか。


「おう、坊主。わしらのことを心配してくれてんのか。だがまぁ、坊の言う通り、わしらは職人であるのと同時に戦士だ。その辺の腑抜け盗賊どもにゃ、負けやしねーよ」

「盗賊よか馬の方が怖ぇーぜ」

「がーっはっはっはっは。だとよ」


 よっぽど怖かったんだな。それでよくこの作戦に協力してくれたもんだ。

 これはどうにかして酒を手に入れないとなぁ。


「ふぅーん。おっちゃんたちが強いのはわかったとして、なんで男爵様たちの方に? おっちゃんたちだけでこの村を守ってもよかったんじゃ」

「うん。それも考えたんだけどさ、向こうは向こうで、きっと待ち伏せしているだろうからね」

「わしらドワーフは種族の特性として、全員、夜目が利く。夜行性の獣よりも遥かによく見えるのさ。だから坊は、待ち伏せしてる奴らを見つけるために、ドワーフ族を同行させたってわけだ」

「うへぇ~。すげーや!」


 その読みは当たった。自称蛮族を追いかける父上殿たちを、盗賊団は待ち伏せしていたのだ。


「バカな連中だぜ。岩陰からヒョコヒョコ顔を出さなきゃ、俺らだって気づけなかったのによ」

「相当気にしてたなぁ。おかげですぐ見つけたんだがよ」


 そう言ってドワーフたちが笑う。さすがに夜目が利くといったって、見えない位置に隠れている者には気づけない。ほんと、バカでよかった。

 ま、待ち伏せが成功していたって、うちの騎士団とドワーフがやられるなんてことはないんだけどさ。

 そして、いざ戦闘となれば父上殿の光魔法で周囲は明々と照らされる。


 明るくなることを事前に知っているこちら側と、知らずに驚く盗賊団。

 どっちが有利かなんて、聞かなくてもわかる。そのうえ、実力の差だってあっただろうし。


「ディル!」

「兄上っ」「にぃちゃま!」

「母上、ジーク、ティファニー。三人とも、怪我はありませんか?」


 と声を掛けてから、それがおかしなことだと気付いた。

 安全な場所に避難するよう指示したのは俺だし、なんだったら母上は治癒魔法も使える。怪我なんてあるはずがない。


「あなたの方こそ大丈夫なの? どこも怪我はない?」

「はい。大丈夫です、母上。父上の方も、怪我人を出すことなく終わったようです」

「そう、それならよかった」


 と言って、母上は俺をぎゅっと抱き寄せてくれた。

 温かい。荒地は夜になると冷え込みが激しくなり、だから余計に温かく感じるんだ。そうに違いない。


「だ、男爵殿。オレは自分の金を受け取りに来ただけですぞ。そ、それを何故、このような仕打ちを?」


 あっちはなんか凄いこと言ってるなぁ。

 オレの金? 村の金の間違いだろ。百歩譲ってそれも違うとしても、だったら国の金だ。


「辺境監督者としての報酬は、年十二万ペレーのはず。それをまるまる貯蓄していたとしても、十五年間で百八十万ペレーだ。地下にあった隠し部屋に蓄えられていた金貨は、それより一桁多いだろうね」

「そ、そんなことはないさ。はは、はははは」

「それに、自分の物だと言う金貨を受け取るのに、何故みんなが寝静まっている夜中に来るのか」


 盗賊団まで引き連れての来訪である。どこからどうみても「受け取りに来た」ではなく「奪いに来た」だろう。それにこいつ。


「父上。彼は僕を殺すと言っていました」

「な……に……。わたしの息子を……かわいい息子を殺す、だと」


 ざわり。

 辺りの空気が変わる。

 父上殿。父上殿ー。火、火を纏っておられますよ。落ち着きましょうねぇ。


「あなた、落ち着いて魔力を押さえましょうね」

「あっ。カティア、ついかッとしてしまって。すまない」

 

 はぁ……まったく。ご自分の魔力量が多いってこと、忘れないでいただきたいものだ。

 これに怯えたボロミオシや盗賊たちが震えあがった。


「た、助けてくれ男爵。オ、オレは仕方なくやったんだっ。全部、そう全部奴らの指示だったんだ!」

「んなってめぇ、俺らに罪を着せようっていうのか!?」

「オレは悪くないっ。こ、この通りだ。な? そ、そうだ。あの金の二割はあんたにやろう。な? い、いや三割……四? ご、五割。どうだ、半分くれてやろう。な?」


 はぁ。ここまで頭が逝っちゃっているとは、嘆かわしいことだ。


「あのお金は君のものではない。あれについては国王陛下にご報告して、ご指示を仰ぐことにする。金貨一枚でも、君のものではないからね」


 父上殿がそう言うと、ボロミオシは苦虫を噛み砕いたような顔をした。

 あんまり反省していないようだな。


「男爵様っ。こんな奴生かしておく必要があるんですか!?」

「そうだ。俺らはこいつのせいで、どんだけ苦しい生活をしてきたことか」

「男爵様っ」


 住民たちが声を荒げる。相手は縄で縛られているし、それを見て溜まっていた鬱憤が爆発したんだろう。

 でもここで処刑なんて出来ない。罪を犯したのなら、法の裁きを受けさせなければならないから。

 とはいえ、彼らの怒りも収まらないだろうし。


「父上。ここで死なせるとマズいんですよね?」

「う、うん。いろいろと調査もしないといけないだろうしね。取引内容との辻褄合わせも必要だし、たぶん他にも甘い汁を吸った者がいるだろうから」


 そいつらもまとめて捕まえる必要がある。だから殺すわけにはいかないのだ。


「では……――ならいいですかね?」

「ん? そりゃまぁ……どうするんだい?」

「はい。殴ります」

「ん? 殴る、だけ?」


 そう。殴るだけだ。もちろん俺が殴るわけじゃない。


「みなさん、聞いてください。この男は取り調べを受け、法の下で裁きを受ける必要があります。だからここで処刑は出来ません」


 そう言うと、不満そうな声が上がる。


「ですから、死なない程度にみなさんで一発ずつ殴ってください」

「一発……な、殴っていいのか……」

「どうぞどうぞ。死なない程度でお願いしますよ。あ、縄で縛ってますし、抵抗出来ないから安心してください。なんでしたらあっちの兵士や盗賊たちもどうぞ。んー、ひとり五十発ぐらいは殴れますよ」


 と笑顔で伝えると、村の人たちも笑みを浮かべて応えてくれた。

 うん。これで住民の怒りも収まってくれるだろう。


 荒れ地の夜に、男たちの悲鳴が響き渡る。

 さぁて、寝るかぁ~。

 

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