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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
1章

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30/63

30:ちょっとアニメみたいにカッコよく出来たぞ。

 カンカンカンと、真夜中にけたたましく鳴る鐘の音。

 遠くで「蛮族が攻めて来たぞーっ」という声も聞こえた。


 暗闇の中、俺はじっとその時を待つ。

 

 チクに盗賊団の話を聞いた二日後。今日は新月で普段よりも外は暗い。

 でも盗賊なら、このぐらい慣れているだろう。

 だから今日あたりに来るんじゃないかなって思ったんだけど、ドンピシャだ。


 外ではずーっと「蛮族だー」「逃げろー」って騒いでいる声が聞こえる。聞き覚えの無い声だ。

 父上殿は少し前に、ロバート卿と他四十九名と馬に跨って出撃している。()()を追い払うために。

 母上たちと使用人、騎士たちのご家族も、今は館にはいない。

 いるのは俺と――


 その時、カタンという音がした。

 真っ暗で何も見えないが、灯りを付けるわけにもいかない。そのまま待つこと数分、階段下から悲鳴が聞こえた。


「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁっ」

「わーっはっはっはっはっはっはっはっは」


 楽しそうだな、()()

 ガタッ、ゴトッ、バキッと音がして、下から灯りが揺らめくのが見えた。


 ここは二階。厨房正面にある使用人用階段を上った所だ。

 もういいだろうと思い、光魔法を付与してもらった細かく砕いた魔石をばら撒いた。

 一階の床に落ちた衝撃で光が灯る。

 階段の手すりを滑り降りて一階へと到着したとき、小太りした髭面の男が地下から飛び出してきた。

 

 男と目が合う。

 そして男は勝ち誇ったように笑った。


「お前だな。領主の息子とやらは。ひ、ひひひひひひ。お前を人質にすれば、全部丸く収まる!」

「ボロミオシって名の役人であってるよね?」

「ボロミオシ様と呼べ!」

 

 伸ばされた手。足元の光石が反射し、奴の掌がぬめっと光る。

 脂ぎってる! 触んな!


 しかしこの程度の突進、日頃から騎士たちに鍛えて貰っているからな。余裕で躱せる。

 躱すついてに足を引っかけると、ボロミオシは恨めしそうな顔で俺を見たあと真っ青になった。


「おう。こっちは片付いたぜ」

「あんな狭い部屋に十人も押しかけてきやがって、あぁ、狭かったですぜ坊ちゃん」


 明かりも持たずに平然と現れた親方とお弟子さん。その肩にはそれぞれ、男を二人ずつ担いでいた。

 その男たちをその場に捨てる。聞こえたうめき声が、奴らが息をしている証拠。


「な、なんで……なんであんだけ暗い部屋で立ち回れるんだっ」

「なんでって、彼らを見ればわかるでしょう。ドワーフ族ですよ? 暗がりに慣れている人間より、夜目を持つ種族の方が有利に決まっているでしょう」


 元来ドワーフ族は崖なんかに穴を掘って、その中で暮らす種族だ。

 穴というよりは洞窟。太陽の明かりは届かないし、昼間だって真っ暗だ。そんな暮らしがデフォな彼らは、生まれながらにして闇に目が慣れている。

 一切灯りを点していない地下室にいたって、侵入者の動きはよーく見えてんだよ。


「ク、クソッ。こうなったら――」


 俺たちにくるりと背を向け、重そうな体で駆けだす。


「逃がすわけないだろ? ――錬金!」


 手のひらに魔力を集め、床に手をつく。魔法陣の位置は、奴の足元。

 突然の光に奴の足が止まった。


 今日のために昨日の朝から敷き詰めておいたんだ。石の床を。

 元々石造りの上から更に石を錬金して作ってあるから、あいつは気づいていない。


「なっ、なんだこの光は!?」

「粉砕っ」


 途端に奴の足元が砕け散り、驚いたあいつが尻もちをついた。

 勢いよく粉砕した石の欠片で、意外とダメージを与えられたようだ。


「びやあっ」

「からのぉ、再形成」


 奴のケツの下やその周りで砕けた石が光を放ち、形を変える。

 うぅん、魔法陣内の石材が少し足りないか。もっと厚みのある石を敷いておけばよかったな。


「ちょっと足りねえか? ほれ」


 親方がハンマーで叩き割ってくれた床石を魔法陣に放り投げてくれた。


「助かりました。これで――完成!」


 ズゴッズゴッっと鉄パイプのようなものが床から生えてくる。もちろん鉄製ではなく、石材だ。

 それがボロミオシをぐるりと囲い、石の牢獄が完成した。


 うん。ちょっとアニメみたいにカッコよく出来たぞ。


「んなっ。なんだこりゃあぁぁぁっ。だ、出せ。おい、オレ様を出せ!」

「え、なんで?」

「な、なんでって……えっと……とにかく出せ! でないとお前を殺すぞっ」


 檻に閉じ込められている状況で、よくそんなことが言えたもんだ。


「今すぐ出さないと後悔するぞ!」

「え、なんで?」


 本日二回目のなんで。


「なんでって、決まってるだろ! オレ様の仲間が直に戻って来るんだ。それに屋敷の周りにだって――」

「ディルムット様。周囲の雑魚は片付けました。あ、そちらも終わったんですね」


 タイミングよく、騎士が報告に訪れた。


「な、なんで騎士が……全員出撃したんじゃなかったのか!? 人数はちゃんと数えたんだぞっ」

「でも騎士だったかどうかは、確認しましたか?」

「へ?」


 きょとんとするボロミオシに「ドワーフの職人たちは十五人いるんですよ」と教えてやる。

 ここにいるのは二人だけ。残り十三人は――。


「あいつら、ちゃんと馬に乗れたのか?」

「さぁ、どうでしょうかねぇ」


 自称蛮族を追いかけた一行に、ドワーフ族が十三人含まれている。その分、十三人の騎士が民家に身を潜めて待機していた。

 

「ド、ドワーフがいたからなんだっていうんだ! 男爵は夜目もないし、夜に慣れた盗賊にかなう訳がっ」

「それに、僕の父上は光魔法の使い手なんですよ。知らなかったんですか?」

「へ? ひか、光魔法?」


 俺は足元を指さす。

 そこかしこに散らばった無数の光石。これを作り出したのは父上殿だ。

 暗い夜を明るく照らすぐらい、造作もないこと。


 その時、窓の外を明るく照らす光が上がった。

 それはまるで夜明けを知らせる、朝日のようでもあり。でも当然、まだそんな時刻ではない。


「どうやら父上たちが、自称蛮族を追い詰めたようですね」

「あ……あぁ……そんなバカな」

「いやぁ、あなた方がバカでよかったですよ」


 それを聞いたボロミオシが項垂れる。

 

「ぶはぁーっはっはっは。辛辣だなぁ、坊」

「え、そうですか?」


 きょとんとして見せると、親方とお弟子さんがもう一度笑った。

 

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