27:うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
「そうか。村長という役職はないんだね。しかしよくそこまで町の住民から話を聞くことができたもんだよ」
「たぶん、子供だから話しやすかったのだと思いますよ」
館に戻って来て、今日の出来事を父上殿に全部伝えた。
深刻な水不足と、水源は山にあるということ。滑車を錬金したこと。それから空き家の件、各民家の屋根が限界に近い件も。
「屋根に関しては、竹が使えるかなと思っています」
「お前が命名したあの緑の木か。まぁ木なんだし、使えるんだろうけど……中が空洞だし、板に加工出来そうかい?」
「いえ、加工はせずそのまま使います。まぁ縦に割りはしますが」
半分に割った竹を上下で交差させて、屋根材として使っている施設を見た気がするんだ。
「そうか。ならそっちはディルムットに……はぁ、わたしはダメな父親だ」
「え、どうしたんですか急に?」
「お前はまだ八歳だというのに、当たり前のように頼り切ってしまっている自分が情けなくてね」
ち、父上殿……。
俺は……俺は……。
「僕は父上に頼られて、嬉しいですっ」
「ディ、ディルムット」
前世の俺は……頼ることも、頼られることもなかった。頼ったところで何も解決しないし、むしろ状況は悪化。
親なんていらない必要ない。毒にしかならない存在ならなくなってしまえ。なくならないのなら、俺がなくなってしまえばいい。
そう、考えていた。
なのに俺は生まれ変わって、しかも前世の記憶を持ったままの転生。
神を恨んだ。
でも……今の俺にはわかる。
世界には優しい親という存在があるということを。それが今、俺の目の前にいる人だ。
前世で最後に見た、あの若い母親の顔が脳裏に浮かんだ。
きっとあの女性も、優しい母親だったのだろう。
車ごと川に落ちて自分は脱出できる状況だったのに、あの人は必至に我が子を助けようとしていた。
だから俺は飛び込んだんだと思う。
自分が得られなかった親の愛情を見て、あの子供と赤ん坊が羨ましく思ったんだ。
だから助けないとって……思ったのかもしれない。
家族愛。それを教えてくれたのがこの人と、母上だ。だから――。
「感謝しているんです……」
「感謝?」
「あっ……えっと、その……ぼ、僕は父上と母上の子に生まれて、感謝しているんです。ほ、ほら、もしク、伯父上の子に生まれていたらと思ったら」
それはもう俺の異世界転生の最終目的は、神殺しになっていただろうな。うん。
「兄上か……それは確かに、感謝されて当然かもしれない」
「あはは。そうですよ。あの人の子供として生まれていたら、きっと今頃僕は、馬車馬のように働かされていたでしょうし」
しかも、どんなに働いてもその金はあっという間に使い切られて、事業は赤字しか生み出さない。そんな最悪な未来しか見えないっていう。
「だから、ありがとうございます。僕を産んでくれて。あ、産んだのは母上ですね」
「はは、そうだな」
その時、父上殿が俺を抱きしめた。
「あ、あの、父上?」
「うん。うん。ありがとう、ディルムット」
「え?」
「わたしたちの元に生まれてきてくれて、ありがとう」
ち、父上殿……や、止めるのだ父上殿!
そんな事言われたら俺は……俺は……。
「お前は最高の息子だ。本当に、本当に……お前のような息子を持てて、わたしは誇りに思うよ」
「ち、父上……うっ」
うああああぁぁぁっ、耐えるんだ! 耐えろ俺、耐えるんだあぁぁぁぁぁぁ。
「ありがとう、ディルムット」
「ひひ、うえぇ」
うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
「うぅ、うああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん。ぢぢうえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
その日、俺は久しぶりに漢泣きをした。
翌日。
「おぅ、坊。昨日は随分とギャン泣きしてたじゃねえか。なんかあったのか?」
「え……」
「坊ちゃま。昨晩は何かあったのでしょうか?」
「え……」
「ディルムット様。何かお辛いことがおありでしたら、このロバートがお話を聞きますが」
「いや……」
「お坊ちゃま、もし何かありましたら――」
「ないよ! 何もない! ぼ、僕は泣いていませんっ。泣いてないんだってばあぁぁぁぁ」
漢泣きしたことを、全員に知られていた。しかもなんか勘違いまでされてるし!
「し、仕事に行きますから! 親方も一緒に来てくださいっ」
「むわっはっはっは。わかったわかった」
は、恥ずかしい。だから泣きたくなかったのに。
この日、ドワーフ族のみなさんと竹切りに屋根の修繕とやったけれど、一日中弄られた。
「もう、ほんっとーに何もないんですっ。それよりこうですよ。縦に割った竹の内側を上にして並べて――」
その上に、今度は内側を下にした竹を、蓋を被せるようにして並べる。
こうすることで雨水も下段を流れていく――あ。
でもそのためには傾斜を付けなきゃな。
「親方。屋根に傾斜を付けようと思うんですが」
元々ある屋根は傾斜がなく、板を横に並べただけのものだ。
ここに傾斜をつけるとなると、側面に隙間が出来る。
その隙間には、これまで使っていた屋根材を利用させてもらおう。
比較的痛みの少ない板を、親方がカンナで表面を削ってくれる。それを俺の錬金魔法でカットして――。
「坊。壁に使う石を錬金してくれ。んで、この板を差し込める溝を掘って欲しいんだがな」
「わかりました。素材は……」
ドワーフ族が用意してくれている。
「竹が生えてるとこの近くに、穴があったんでさぁ」
「穴ですか?」
「たぶんここの住居を建てる際に、岩を切り出した場所でしょうな」
その穴には掘削した石がごろごろしていて、それを運んできてくれたらしい。
「んでな坊。わしらドワーフ族は、そこを住居にしようと思ってんだ」
「え、穴ですよね?」
「あぁ。なぁに、わしらドワーフは、元々穴ん中で暮らしてんだ。人間の町に暮らしてるから、家なんてもんに住んでんだがな」
あ、あぁ、そうなのか。他のドワーフたちも「穴の方が落ち着く」と言っている。
まぁそういうことなら異論はないけど。
いや、むしろ有難いかもしれない。建てなきゃいけない家の数が少なくて済むんだし。
「ほれ坊、手が止まってるぞ。なんだ、昨日の夜のことを思いだ――」
「思い出してないよ!」
もうほんと止めてっ。
俺のHPはもう残り1よ!




