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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
1章

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22/63

22:ついにゼナスの村へと到着。

「ふわぁぁぁ。やぁっっっっっと到着だぁ」

「にぃちゃま、本当!?」

「兄上、村は見えますかっ」


 到着――という言葉に、ティファニーとジークが馬車の中で反応した。

 俺は暇なこともあって、御者台に座らせてもらって景色をずーっと眺めていたのだが――。


「あぁ、見えてきたよ。辺境領ゼナスだ」

「「わぁっ」」


 嬉しそうに窓を開けて、馬車の進行方向を見つめる二人。

 ここまで長かった。

 道中の町へ寄る事三回。長旅の疲れもあって、それぞれで三泊して移動の再開。

 二十日ぐらいかかるだろうという予想を大幅に越え、男爵家を出発してもう一カ月だ。

 それがやっと……やっと……。


「にぃちゃまの嘘つき!」

「え?」

「まだあんなに遠いじゃないですか!」

「いや、でも見えてるだろ?」

「「嘘つきぃー!」」


 そんなぁ。だって見えてるし。そりゃずーっと遠くの地平線にポツンと見えてるだけだけどさぁ。


「はっはっは。坊ちゃま、嬢ちゃま。あの距離だと、もう三十分もしないで到着しますよ」

「え、本当!?」

「そんなに近いの?」

「えぇ。何時間もかかるような距離あら、さすがに目視出来ませんから」


 と、長年うちで働いている御者のセダストンがフォローしてくれる。

 ふぅ。なんとか二人の機嫌もよくなったようだ。


「それにしても、全然木が生えてないのね」

「うん。草もほとんど生えてないね」


 二人の声が後ろから聞こえてくる。

 ここは不毛の地と言われているような場所だ。木が生い茂っていたら、不毛なんて呼ばれないだろうし。

 だけど右手に見える山には、緑の部分もあった。

 宰相閣下が言っていた通り、その緑は山の上の方――特に西側に集中しているようだ。


「あの山の標高、そう高くないようだけど」

「えぇ、そうですね。ですが……ありゃ登るとなると命がけですなぁ」

「断崖絶壁を登っていかなきゃダメそうだね」


 麓に斜面はなく、いきなり切り立った崖になっている。

 それに町はこちらから見て山の左手――東側だ。西側には木々があって、東側にはない。

 この差はいったいなんだろう?


 山はずっと西に続いており、西に行けば行くほど標高が高くなっていた。あの山が山脈の一番端っこなんだな。

 そんなことを考えていると、ついにゼナスの町へと到着。


 うん……うん……予想以上にこれは……寂れている。


「に、にぃちゃま……ここ、村?」

「う、うぅん……村……いや、集落かな」


 建物は三十軒あるかどうか。その全てが石造りで出来ている。

 一軒だけ大きな造りの家があるけど、あれがきっと領主――いや、これまで領主はいなくて、国からの役人が常駐していたってことだけど、その人が暮らしていた家だったのだろう。

 ちなみに、役人はもういない。先に到着していた騎士がそう言った。

 引継ぎも何もしないなんて、なんて無責任な。


 それにしても……ここで暮らす人たちが誰も出てこない。

 みんな畑で作業でもしているんだろうか?


「さぁさぁ、みんな。荷物を家の中に運び入れるから手伝うんだよ」

「おとうちゃま、お家ちっさいわ」

「ティファニー。ここでは大きな家を建てるのは、物凄く大変なことなんだよ。それに小さいと言ったって、ここで暮らす人の家と比べてごらん。本当に小さいのかい?」


 そう。前の屋敷と比べればものすっごく小さい。

 だけど他の家と比べれば、確実に大きい。元の男爵家の領地にあった、町の人の家よりもだ。


「ティファニー。家が前より小さいってことは、父上や母上の寝室が近くなるってことだよ。食堂も、厨房も、お風呂もね」

「トイレも近くなるね」


 とジークが一言余計だったせいで、ティファニーに足を踏まれた。


「ち、小さいと、いいこともあるってことね」

「はは、そういうことだ。さ、荷物の片づけを手伝おう」

「は~い」


 男爵家からここへは、ドワーフ族が四十名ほど――鉱山や選別場兼工房で働いていた人とその家族でこの人数――。それから騎士が五十名とその家族が二十名ほど。そして屋敷で働いていた人たちの、総勢百三十人がここ、辺境領ゼナスへと来ている。

 この村の住民が何人なのかわからないけど、たぶん、人口が一気に倍以上になったんじゃないかな。


「まずは急いで、住居の建造を行わないといけないな」

「そうですね、父上」

「ここの村は木造じゃなく、石煉瓦を使ってんな。これならわしらも造れるし、坊が手を貸してくれりゃあ作業も捗るだろうぜ」

「本当ですか、親方。もちろんお手伝いしますよ」

 

 やっぱりドワーフ族は頼りになる。

 それまではこの()()()()の敷地内でテントを張って、騎士たちにはそこで休んでもらうことになる。

 あと馬車も寝泊まりするための部屋替わりに使って、残りは家の中だ。

 暫くは俺たち一家も一つの部屋で寝ることにした。


「にしても、住民がひとりも挨拶に来ねぇたぁ、どういうこった」

「うぅん。歓迎されていない……のかもしれないね」

「あ? そりゃどういうことですかい、男爵様よぉ」


 父上殿は家の中にあった、一冊のノートを俺と親方に見せた。


「ページが……破られてますね」

「こいつぁ帳簿か? ページを破ってるってこたぁ、男爵に見られたくねぇもんが書かれていたんだろうぜ」


 父上殿に見られたくないものってことは、国から支給されたお金の使い道か。

 この家、外から見ると石造りで他の住居をただ大きくしただけの質素な感じがするが、中に入ってビックリ。ずいぶんといい調度品を置いてるじゃないか。家具なんかも、なかなかいいお値段のするものばかり。


「国から送られてくる支援金で、いい買い物してたようだな」

「たぶんそうなんだろうね。住民にとっては、役人も貴族もそう変わらないだろうし」


 新しく着任する領主も、どうせ同じような奴なんだろう。

 そんな風に思われているんだろうなぁ。

 でもこれじゃあダメなわけで。


「父上。持ってきた食料って、どのくらい残っていますか?」

「そりゃあ、この大所帯での移動だったからね。移住後もこの人数の食料をしばらく賄えるように、それなりの量を持ってきているよ」

「酒は少ないがな」

「そこはまぁ、我慢して頂くとして」

 

 となれば、やることはひとつ。

 

「僕らの歓迎パーティーを開きましょう」

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