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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
1章

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20/67

20:おいおい、またですか?

 男爵邸を出発して五日目。辺境のゼナスまでは、まだ道半ばにも届いていない。

 男爵領からゼナスまでは馬車で半月以上の距離にある。

 さすがに五日目ともなると、ジークとティファニーは退屈で仕方ないようだ。口数も少なくなったし、どこかの町へ立ち寄ろうか――という話を父上殿と母上がしていた時だ。


 馬車が突然停止し、ロバート卿がドアをノックした。


「男爵様。前方に王国騎士団が」

「王国騎士団が?」


 おいおい、またですか?

 父上殿が馬車を下りるので、俺もそれに続く。そしてジークやティファニー、母上も下りてきた。

 馬車に乗っているのも飽きたからだろう。


 少し丘のようになっているその頂上に、王国騎士団は陣取っていた。

 その先頭にいたのはあの師団長――ではなく。


「宰相閣下」

「ハルテリウス公爵」


 え? こうしゃく? どっちのこうしゃくだろう。宰相を務めているのだし、公爵の方かな?

 

「実はおぬしらに伝えたいことがあっての」

「我々に、ですか?」


 と、父上殿が俺を見る。

 え、俺にも?


「うむ。まずはぬしらに頼まれておった件じゃが、無事に全てのものを回収出来たと報告を受けておる」

 

 頼んだ件というのは、家財道具の全てを王室御用達商人に引き取ってもらうというものだ。

 名目上は、王室が差し押さえした――ということにしてもらって。

 そうすればクソ伯父上も手が出せまい。

 別に家具を手放すことに未練はないんだが、それをあの一家が使う――というのは腹立たしい。

 だからぜーんぶ空にしてもらったんだ。


「ありがとうございます、宰相閣下」

「うむ。それともうひとつあってな」

「もうひとつ、ですか? いったい何でしょう」

「実はな。そなたらが出て行ってすぐのようなのじゃが、鉱山で事故が起きたそうでな」


 よしきた。


「な、なんですって!」

「ま、まさか鉱山で!?」


 何も知らない父上殿と一緒に、俺も驚いておく。

 きっとこの話を後ろで聞いているドワーフたちは、今頃必死で笑いを堪えているんだろうな。


「なんでも崩落事故だったようでな。更に水が溢れ出て、坑道内は水没したらしいのじゃ」

「み、水が? ディルムット、もしかしてお前が先日知らせてくれた、十二番坑道のことじゃないか?」

「そうですね。だから伯父上には危険だってお伝えしたのに」


 そう言えば、深読みした奴が必ず鉱山へ行くと思ったからだ。


「鉱山内には、必ず内部を良く知る人物と一緒に行くようにとも言ったのに」


 そう言えば、無駄にプライドの高い奴は鉱夫を連れて行かず、自分たちだけで中に入ると思ったからだ。

 宰相閣下の話では、うちで働いていた鉱夫はその場で解雇になったらしい。もちろん、クソ伯父上が鉱山へ行く前にだ。

 うちで働いてくれていた人たちを巻き込むわけにはいかないので言ったセリフだが、見事なまでに引っかかってくれたな。

 まぁ彼らを同行させていれば、崩落や水没なんてことにはならなかったのだけれど。


「しかし残念な――いや、幸いなことに、伯爵と令息、数名の従者が怪我をしただけで済んでおる」


 え、宰相閣下? 今「残念」って言ったよね? 残念って。


「兄が怪我を……そうですか」


 父上殿は複雑な表情を浮かべる。

 心のどこかで、心配する気持ちもあるのだろう。あんなのでも、半分とはいえ兄だからな。

 俺にはわからない感情だ。

 

「さて、残るは――持って来てくれ」

「はっ」


 宰相閣下が命じると、騎士が巻物を手にしてやってきた。


「これは……預かり書!? し、しかしあのお金は、税金として納めていただきたく送ったものですっ」


 現金は辺境に持っていってはいるが、全部はさすがに持って行けない。重いからだ。

 そこで父上殿は、今回のお詫びとお礼を兼ねて税金として残りの財貨全てを送った。


「陛下からのお言葉じゃ。気持ちは嬉しく思うが、辺境の地での領地経営は楽なものではない。故に、この金は必要になった時に使うように――とのことじゃ」

「……なんと勿体ないお言葉」

「荷物になるゆえ、国税管へ送ったのであろう。財貨はわしの方で預かることになった。必要なものがあれば、手紙で寄越すがよい。すぐに送ってやろう」


 つまり、税金として送ったお金で、代理購入してやるということだ。

 それは助かる。非常に助かる。


「宰相閣下。何故ここまで僕たちによくしてくださるのですか?」

「ん? それは……それはのぉ……んんっ。んんーんっ」


 どうしたんだ? 急に咳き込みだして。それにチラチラ後ろの馬車を見ている。


「宰相閣下、お風邪ですか? 乾燥する季節になってきましたし、喉を傷めないようお気を付けください。温かいはちみつ湯などが、喉にいいですよ」

「そ、そうか。う、うむ……おぉ、そうだ。ディルムットよ、お前に言っておくことがある」

「僕に、ですか?」


 今度は名指し?


「なんでもな、ゼナスには一風変わった木が生えておるようじゃ」

「変わった木、ですか?」

「うむ。細い上に、中は空洞。だが相当硬いそうじゃ。ゼナスは不毛な土地として知られておるが、生えている木と言えばほとんどがそれ。材木として使えそうなのは、山の上にしか生えておらんと聞く」


 細くて中が空洞? どこかで聞いたような木だな。でもこの世界では見たことがないし。


「お主の錬金魔法で、その木をなんとか出来ればの――と思ってな。なんせ他に資源らしいものも一切ないでなぁ」

「な、なるほど。実際に見てみないとなんとも言えませんが、何かやってみます」

「うむ。それでこそ、わしが見込んだ男じゃ」


 ん? 宰相閣下が見込んだ男?


「では、行くがよい」

「あ、はい。いろいろとありがとうございました」


 深々と頭を下げ、宰相閣下に別れを告げる。

 馬車に乗り込み、俺たちは再び辺境の地ゼナスへ向け出発した。





  

「ちっ。死ななかったのかよあの野郎」

「あはは。まぁそんな気はしていました」


 ドワーフらが乗る幌馬車の中。

 俺たちは宰相閣下から聞いた話を振り返っていた。


「惜しいなぁ」

「そうですねぇ」

「けどまぁ、仕込みは上手くいったってこった」

「えぇ。上手くいきましたね」


 錬金魔法で、ほとんど金で出来た鉱石を十二番坑道に()()()()。 たまたま落としたんだ、たまたま。

 そんで、どうせ塞ぐ坑道だから柱を何本か引っこ抜いた。再利用するためにだ。

 その時、拾い忘れた柱が転がっていたかもしれない。


 俺たちがやったのはその程度の事。


「しっかし、金鉱脈を発見して、まだ十数年だってのになぁ」

「ははは。もう廃坑ですからねぇ」

「ふむ……また戻ってくるときになったら、どうすんでぇ?」

「出来たとして、少なくとも数年後でしょう。それまでに水は引くと思いますよ」


 もし引かなかったとしても、水を汲みだせばいい。

 そのためにも、ポンプの錬金を成功させないとなぁ。

 

 いくら地球の知識があると言ったって、俺だってなんでもかんでも詳しいわけじゃない。

 むしろ普通の人と同じ程度の知識しかないんだ。

 なんとなくイメージで錬金して、あとは試行錯誤するしかない。


 ま、時間はまだまだあるさ。

 まずは新天地の領地経営を優先させなきゃな。

 

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