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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
1章

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17/63

17:ククク。最高の出発式だぜ。

「ティファー。そんなにたくさん持って行ったら、運んでくれるお馬さんが重たくてかわいそうだよ」

「ジークの荷物が少ないんだから、その分私がたくさん持って行ってあげるの!」

「えぇー、そんなの変だよぉ」


 弟と妹は旅行気分なのかな? 荷造りも楽しそうにやっている。


 国王陛下から辺境領へ行くようにとお達しが下ってから、俺たちはすぐさま男爵領へと戻った。

 荷造りだけじゃない。領民への事情説明、それから引き継ぎの件でいろいろあるからだ。


 我が男爵領は――歯痒いことだがクソ伯父上が領主になることが決まった。

 だが今すぐではない。

 


「シュパンベルク男爵不在の間、男爵領が国営領地として管理することとなる。安心して旅立つがよい」

「お、お待ちください陛下!? だ、男爵領は我がシュパンベルク家の領地でございますっ。当然、このわたくしの元に戻すべきではございませんか?」



 と、当然のようにクソ伯父上が騒ぎ出した。

 いやまぁ、国が管理するって言ってんのに、よく王様に口出し出来るもんだね。

 だけど王様も想定内だったようで、顔色一つ変えずにこう続けた。



「わかったわかった。では正規の手続きをいたせ。まず国に土地権利の譲渡書類を申請し、それに必要事項を記載してまいれ。もちろん、記載者はそなたの父親、前伯爵だぞ」

「は? な、何故父上なのでしょうか?」

「は、とはなんだ、は、とは。男爵家の土地は、元々貴様の父上の土地ではないか」

「はい。ち、父のものでございます。ですからわたしが――」

「貴様が前伯爵から譲り受けた領地は、今貴様が管理している土地だけであろう。男爵家の土地を元の持ち主に返納するのであれば、それは前伯爵の土地となるのだぞ」

「え、いや、え?」

「前伯爵がどうするかまでは、余は知らん。あの土地が欲しくば、父親に懇願して書類を用意しろ。さすれば晴れて貴様の領地となる。難しいことではなかろう」


 書類さえあれば自分の領地になる――狼狽えていたクソ伯父上はすぐご機嫌になり、傍にいた義理祖母も満足気だった。


「オズワルちゃま。お父様にはあたくしからしっかりと言って差し上げますわ。安心して、まずは書類申請から始めなさい」


 ――と、義理祖母はいい、一家は早々に謁見の間から出ていった。



 さて、回想終わり。

 そういう訳で、そのうちここはクソ伯父上の領地になることは決まっている。

 名目上監視役として同行したオルスフェス師団長の話だと、早くとも半年は先だろうとのこと。


「ですが数日後には、伯爵はここへやってくるでしょう。父君の名代だと言って、ちゃっかり居座る気だと思われます」

「はぁ……兄、いや、義母の考えそうなことだ」


 ということは、数日以内にここを出て行かないとクソ伯父上の顔を見ることになる。

 それに、領地権利の譲渡が終わらないうちからおじい様の代理としてここに来るとは。タングステンのような神経の持ち主だな。

 あ、タングステンっていうのは、最も硬いとされている鉱石のことだ。

 もちろん、地球での話だけど。


 しかし、おじい様には悪いけど、金銀鉱石の利益をみすみすクソ伯父上には渡したくない。


「オルスフェス師団長。折り入ってお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「ディルムット殿からお願い? なんでしょう」

「はい、実は――」


 男爵家の財産は没収にはなっていない。

 だがこのままだとクソ伯父上のものになってしまうし、だからといって全財産を新天地に運ぶのも難しい。現金の何割かは持って行くが、他は置いて行くしかない。現金以外もだ。

 それらを奴にくれてやるなんて、まっぴら御免だ。


 師団長は快く俺のお願いを聞いてくれ、すぐさま動いてくれた。

 さて、次は鉱山の方だな。

 クソ伯父上の狙いはあの鉱山だから、ここを奴に奪われるのは癪に障る。


「ってことで親方、お願いしていいかな」

「おう、任せろや坊。何をすりゃいいんだ?」

「そうだね。例の十二番坑道なんだけど――」


 親方にごにょごにょと内緒話。どうするか伝えている間に、親方の目がみるみるうちに輝いた。

 

「ほぉ、アレを使うのか」

「うん。ちょっともったいないけどね、でもあいつの手に渡るよりは……でも、そうなると親方たちが困るのか……どうしよう」

「なぁに言ってんだ。南のゼナスだろう? わしらドワーフはみな着いて行くさ」

「え、一緒に!?」


 それは嬉しい。嬉しいけど、本当にいいのだろうか?


「わしらドワーフなんざ、地面がありゃあどこでだって生きていける。それに未開拓の土地だろう。ワクワクすんじゃねえか」

「あはは。人間だって地面がなければ生きていけないけどね」

「はっはっは。そりゃそうだ」


 そう言ってくれるなら、これほど頼もしい存在もいない。ぜひ一緒に来て貰おう。

 それからドワーフたちは俺が錬金した鉱石を持って鉱山へ向かい、俺と親方は選別場にある鉱石と、抽出済みの金銀水晶を見た。

 

「こいつも渡したくはねぇな」

「そうですね。でも持っていくには重すぎる。だからこうします」

「こうって、どうすんだ」


 指先に魔力を流し、抽出済みの金に触れる。

 展開された魔法陣は、今の俺が広げられる最大幅だ。ざっと直径五メートルほど。

 素材を置く中心部でも、三メートル以上ある。

 そこには金・銀・水晶、それから木箱にゴミとなる鉱石の屑、インゴットにするための鋳型、ハンマー、炭、手袋と、いろいろなものが入っている。


「これをぜーんぶ、錬金する!」

「錬金ってお前……ああぁあ……はっは、全部混ぜやがった。こりゃ金銀を取り出すのは、普通の錬金術じゃ無理だなぁ。ぶわーっはっはっは」


 ふっふっふ。やってやったぜ。

 この調子で完成しているインゴットも全部、その辺のものと混ぜちゃおう。


 その三日後。生まれ育った男爵家から旅立つときが来た。

 と同時に、クソ伯父上も来た。

 あぁあ。顔を合わせたくなかったんだけどな。ま、いいや。最後の仕上げも出来るし。


「くくくく、我が弟よ。あの世で罪を償うがいい」

「兄上、辺境領に行くだけであの世に行くわけではありませんから」

「その減らず口も今日でお終いだなぁ。ひゃーっはっはっは」


 どっちが減らず口なんだよ。


「ディルムット、いいざまだな」

「ランドファス……」

「無能な地で野垂れ死ね!」


 ……ランドファス。それって不毛な地のことか?

 無能が無能をアピールしてるぞ。


「伯父上。最後ですのでご忠告いたします」

「何? この俺様に忠告だと? いいだろう、最期ぐらい聞いてやろう」


 最後のニュアンスがなんか違う気がするけど、まぁいいか。


「伯父上。鉱山は危険な場所です。決して、()()な者だけで入らないでください」

「な、なんだと?」

「鉱山を知る者を必ず同行させてください。いいですね」

「き、貴様。こ、この俺を無知だというのか!?」


 わかってるじゃん。


「それから十二番坑道ですが、あそこには何もありません。何もないんです! 絶対に奥へ行かないようにしてください。危険ですから。絶対ですよ」


 クソ伯父上のこめかみがピクピクと震えている。

 今にも拳を振り上げようとしたところで、オルスフェス師団長が割って入った。


「そろそろお時間です。ご出立なさってください」

「はい、ありがとうございます師団長殿」


 そう伝えると、彼はニっと白い歯を見せて笑った。


 屋敷から出て馬車に乗り込む。

 八年……俺はここで八年過ごした。


 毒親育ちの前世で、自殺を考えた矢先に人助けをして結局死んで……そしたら異世界に転生した。

 誰かの子供になるなんて嫌だったけど、今では転生できてよかったと思っている。

 優しい家族に恵まれ、ようやく俺の人生がスタートしたんだと、そう思えるほどだ。


 住む場所が変わろうと、家族がいる限りどこでだって生きていける。

 そのために俺の魔法が役立つなら、そんな嬉しいことはない。


 さよなら住み慣れた屋敷。


 そうして馬車が出発する直前――。


「なんじゃこりゃああぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 というクソ伯父上の叫び声が聞こえた。

 ククク。最高の出発式だぜ。

 

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