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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
1章

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15/65

15:ほーん。どっか似てると思ったら、そういうことか。

 連行された俺たちは王都、もしくは今回の被害者であるホーヘンベルク侯爵家に連れて行かれるのかと思ったらそうではなかった。

 何故か向かっているのは伯爵家の領地。そして同行する騎士たちも動揺している。

 していないのは部隊長と奴の腰巾着っぽい二人の騎士だけだ。


 まさか結託しているのか? 王国騎士団の部隊長ともあろうものが?

 でもこれは……どう考えても結託しているとしか思えない状況だ。

 通報した貴族の領地に連れて行くなんて、あり得ないのだから。


 父上殿は貴族裁判の申請を申し出た。

 この世界にも裁判制度はあって、ただそれを受けられるのは貴族や金持ちだけだ。庶民が罪を犯した、もしくは罪を着せられた場合、たいした捜査も行われず刑が言い渡される。だから冤罪も少なくはない。

 貴族と金持ちだけが公正な調査を依頼できる。そんなクソみたいな世の中だけど、今はそんなこと言っていられない。使えるものは最大限利用して、罪を着せられることを回避しないと。


 だが、その申請は部隊長の手で揉み消された。

 クソ伯父上と結託しているのなら、まぁそうだろうな。

 さてどうするか。


 一行は伯爵領に向かってはいるものの、まだその領内にも入っていない。

 男爵家から六日の距離にある伯爵領。出発して今日で四日目だ。明日の昼過ぎには伯爵領に入るだろう。


 その夜、俺と父上殿で話し合って男爵家にいくつか指示を出すことにした。

 日頃から父上殿が持ち歩いている、ペン――俺が前世の知識で作った万年筆とハンカチを使って、そこに文字をしたためる。

 後ろ手に縛られているので直接書く事は出来ないが、錬金魔法は使える。

 ペンとハンカチを魔法陣の中に入れ、あとは頭の中で書く事を思い浮かべて――完成だ。

 魔法陣の光が幌馬車の外に漏れないよう、みんなが体で覆い隠してくれたけど……大丈夫かな?


「よし、ジーク、ティファニー。頼んだよ」

「任せてください、兄上」

「うん、ティファ頑張るわ」


 そして二人はせーので、


「「おしっこ行きたい」」


 と声を出す。

 外にいる若い見張りの騎士が顔を出すと、双子がもじもじして見せる。

 上手いぞ、二人とも。


 道中でわかったことがある。

 部隊長と腰巾着の二人、この三人以外の騎士は何も知らないようだってこと。

 伯爵領に向かうと部隊長が話した時も動揺していたし、数人は何故なのかと説明を求めてもいた。

 貴族間の、しかも子供が犯人だという問題に王国騎士団が出動していることにも疑問を抱いている騎士がいる。

 つまり、まともな人がいるってことだ。

 そしてこの若い騎士もそのひとり。


「その、自分が同行しますがよろしいですか?」

「僕は構いません。ティファはどう?」

「ヤダ。し、知らない男の人だから、恥ずかしい」


 と、ティファニーがぷいっとそっぽを向く。

 ここで意地悪なヤツなら「だったらそこで漏らしてろ!」ってなるんだろうけど、彼は違う。


「で、ではディルムット様もご一緒では?」


 と、ティファニーを気遣ってそう提案してくれた。

 これまでもティファニーは、父上殿か母上か俺が一緒じゃないと嫌だと言い続けてきたので、どうせ今回もと思ったのだろう。


「にぃちゃまが一緒なら……」

「わかったよ。じゃあ一緒について行くから」


 そうして上着の袖に隠したハンカチを持って幌馬車を下りて茂みへ向かう。

 見張りの騎士はほんの少しだけ手前で止まって待っていてくれた。

 二人がその場にしゃがみ込み、急いで小さな穴を掘る。そこにハンカチを隠し、上から手頃な石を乗せて終わり。

 何食わぬ顔で馬車へと戻り、翌朝を迎えた。

 

 ロバート卿がこっそり追尾しているはずだ。だからハンカチにも気づいてくれるはず。

 そうして俺たちは移動を開始。


 そして昼頃、ついに伯爵領へ――ではなく、なんと行く手を王国騎士が塞いでいた。

 え……また騎士?


「第一師団長クバートン・オルスフェスである。国王陛下の命により、シュパンベルク男爵一家を王都まで護送する任を仰せつかった。男爵一家をこちらに引き渡して貰おうか」

「なっ。何故国王陛下がこの件を!?」


 こ、国王陛下だって!?


「何故、とは異なことを言う。貴殿は王国騎士であろう。であるならば、貴殿がここにいるのは陛下のご意思ではないのか? あぁ、そうだったな。貴殿は無断で部隊を動かしているのだったな」


 オルスフェス師団長がそう言うと、部隊長の方の部下たちがざわついた。


「た、隊長。どういうことなのですか?」

「出動の時、これは王命だと仰ったではありませんか?」

「陛下からの極秘任務だと!」


 ほーん。そんな見え透いた嘘で部隊を動かしたのか。そんな嘘、後からすぐバレるだろうに。

 ま、極秘だと思わせて、その後もこの件に関して『極秘任務なのだから内密にしろ』ってことで誤魔化すつもりだったのかな?


「ぐっ……そ、それは……」


 冷や汗出てるぞ、部隊長殿。


「おほんっ。アルスフェス師団長。実は俺の方からデランチェ殿に依頼をしたのだ」


 とクソ伯父上が前に出る。

 こいつ、やっぱりバカだな。墓穴掘ってら。

 

「ほぉ。国王の兵である王国騎士団に依頼、と?」

「そうだっ。我が甥が罪を犯した。だが甥はまだ幼く、裁判にかけるのは忍びない。故に、こちらで内々に罰を与え、ホーヘンベルク侯爵家に詫びるつもりだったのだ」


 いや、王国騎士を勝手に動かして良い理由にはなってないんだが?


「王国騎士団を勝手に動かして良い理由にはなってないな」


 ほら。師団長も同じこと言ってる。


「そ、それは……その……デ、デランチェ殿はその……は、母の縁者に当たる者でして」

「は、伯爵!? その件は――」

「黙ってろっ」


 ほーん。どっか似てると思ったら、そういうことか。

 クソ伯父上の母――俺にとって義理の祖母に当たる前伯爵夫人の親戚ってことかぁ。似てるはずだわ。

 

「なるほど、よくわかった」

「お判りいただけましたか。で、では我々は弟一家を――」


 ガシャンっと、オルスフェス師団長が足を踏み鳴らす。


「貴様はわたしの言葉を聞いていなかったのか? わたしは王命を受け、男爵一家を王都へ護送すると言ったのだ。男爵一家を引き渡さないということは、それすなわち王に反逆の意思ありとして受け取るぞ!」


 師団長が抜刀する。彼の背後に控えた騎士たちも、次々と剣を抜いた。

 その行動に、デランチェ部隊長の部下たちは剣を地面に置いて無抵抗の意思を表す。

 クソ伯父上とデランチェ部隊長、それから腰巾着二人の顔は、みるみるうちに青ざめていった。


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