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追放された俺、【神農具】で最強農家に! ~聖女も令嬢も俺の野菜に夢中。今さら実家(雑草)に泣きつかれても遅いんだが?~  作者: うはっきゅう


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第5話:『超回復ハーブと聖女候補』

 C級冒険者パーティの一件以来、テルマ村の評判は、さらにとんでもないことになっていた。


「テルマ村には、魔物も冒険者も歯が立たない最強の農民がいるらしい」

「トマトが爆発するってマジかよ」

「カボチャで剣が折れるって、どんな鋼鉄だよ!」


 そんな噂が、あっという間に近隣の村や街、さらには王都にまで広まっていった。

 もちろん、眉唾ものだと笑う者が大半だったが、中には「もしかしたら……」と期待する者もいた。

 特に、王都の貴族街で蔓延する不作と疫病に苦しむ人々は、藁にもすがる思いだった。

 俺はというと、そんな噂話など気にせず、ひたすら畑を耕し、作物を育てていた。

【神聖農業】スキルのおかげで、もはや畑仕事は苦行ではなく、最高の娯楽だ。

 ガイアと共に土をいじっていると、心が満たされる。

 そして、俺の育てた作物たちは、毎回、俺の想像を超える奇跡を起こすのだ。



 ある日のこと。

 俺は、いつものように畑で新種のハーブを育てていた。


 【超回復ハーブ】と名付けたそれは、魔力と生命力を凝縮したような不思議なハーブだった。

 小さくちぎって傷口に貼るだけで、どんな深い傷も数秒で完治する。

 ガイア曰く「本来、この星には存在しない奇跡の薬草」らしい。


「いい匂いだな、ガイア」

 《うむ。主の生命力と、大地のエッセンスが完璧に融合した証拠よ。しかし、これほど完璧なハーブは、かつて神代の時代にしか存在しなかったはずだが……》


 ガイアも、俺の成長に驚いているようだった。

 その時、村の入り口の方から、ひときわ豪華な馬車が近づいてくるのが見えた。

 馬車の紋章を見て、リック村長が息を呑んだ。


「あれは……王都の教会の紋章だ……! しかも、あれは枢機卿様クラスが使う馬車じゃ……!」


 馬車から降りてきたのは、護衛の騎士を数名引き連れた、一人の若い女性だった。

 純白の神官服を身にまとい、その顔には聖なる光が宿っている。

 腰まで伸びる金色の髪、吸い込まれるような碧い瞳。

 彼女は、まるで絵画から抜け出してきたかのような、完璧な美しさを持っていた。


「も、もしや……聖女候補の『セレナ』様では……!?」


 村人たちが、ざわめき始める。


 聖女候補。

 それは、数年に一度選ばれる、奇跡の力を持つ者。彼女の治癒魔法は、あらゆる病を癒やし、傷を完治させると言われている。


 その聖女候補が、なぜこんな辺境の村に?

 セレナは、まっすぐに俺の畑へと歩いてきた。

 その視線は、俺……ではなく、俺が育てている【超回復ハーブ】に釘付けになっていた。


「……この香りは……!」


 セレナは、大きく息を吸い込むと、陶酔したように呟いた。


「間違いない……! これは、失われたはずの『生命いのちの息吹』の香り……! 伝説に謳われる、奇跡の薬草……!」


 セレナは、ゆっくりと畑に近づき、俺が育てているハーブの一株に手を伸ばした。

 その指先が、ハーブに触れた、その瞬間。

 ピカッ!

 ハーブが、まるで呼応するかのように、淡い光を放った。

 セレナの顔が、驚愕に見開かれる。


「な、なんてこと……! 私の聖なる魔力が、この植物から溢れ出てくる……!?」


 彼女は、自らの掌からハーブへと、光の粒子が吸い込まれていくのを感じていた。

 それは、まるでハーブが彼女の聖なる力を吸い上げているかのような光景だった。


「ま、まさか……私とこのハーブが、共鳴している……?」

「あの、ハーブに触らないでください。まだ育成中なんで」


 俺は、セレナの行動を咎めた。

 まさか、王都から聖女候補が来るとは思わなかったが、俺のハーブにむやみに触られるのは困る。

 俺の声に、セレナはハッと我に返った。


「あ、あなた様は……?」


 セレナの護衛騎士たちが、一斉に剣に手をかける。


「無礼者! セレナ様に何をする気だ!」

「下がれ! 平民風情が!」

「まあ、待ちなさい」


 セレナは、静かに騎士たちを制した。

 そして、まっすぐ俺の目を見つめた。


「あなたは……このハーブの栽培者ですか?」

「まあ、そうっすけど」


 俺は、ガイアを肩に担ぎ、答えた。


「これは……失われたはずの奇跡の薬草。これを育てられる者は、この世には存在しないとされていました。ましてや、これほどの規模で……」


 セレナの碧い瞳が、俺の全身を舐めるように見つめる。

 まるで、俺の存在そのものを鑑定しているかのように。


「あなた……もしや、神の使徒ですか!?」


 セレナは、ついにその言葉を口にした。


「いや、農家ですけど」


 俺は、真顔で答えた。


「「「「は?」」」」


 セレナとその護衛騎士たちが、呆然とした声を上げた。


「の、農家……? これほどの奇跡を、一介の農家が……?」

《フハハハ! 主よ、その反応、面白かろう!》


 ガイアが、脳内で楽しそうに笑っている。


「失礼いたしました……! しかし、これは、まさに神の御業に匹敵する奇跡です……!」


 セレナは、興奮したように語り続けた。


「実は、王都では謎の疫病が蔓延し、多くの人々が苦しんでいます。私の治癒魔法でも、一時的に症状を抑えることはできても、完治までは至らないのです」


 セレナの顔に、苦悩の色が浮かんだ。


「そして、不作も重なり、食料も枯渇寸前。バルフォア子爵領では、特に深刻な被害が出ていると聞いております……」


(バルフォア領、またか)

 俺は、内心で舌打ちをした。

 俺を追放したせいだ。自業自得だろ。


「私の治癒魔法は、肉体的な傷や病には有効ですが、魂の疲弊や、大地の不調和から来る病には効果が薄い。ですが、このハーブは……! このハーブがあれば、王都の人々を救えるかもしれません!」


 セレナは、まるで祈るように、俺に懇願してきた。

 その顔は、聖女候補という立場ではなく、ただ純粋に人々を救いたいと願う、一人の少女のそれだった。


「どうか……! このハーブを、王都にお分けいただけないでしょうか!? 私が、全責任を持って、その対価をお支払いします!」

「……」


 俺は、一瞬迷った。

 王都の人々を救う?

 俺を追放した貴族どもや、俺を捨てたイザベラのことを考えると、正直、気が進まない。

 だが、セレナの瞳は、あまりにも純粋で、力強かった。

 そして、俺は思い出した。

 俺は、雑草なんかじゃない。

 俺は、大地を耕し、生命いのちを育む『農家』だ。

 俺の育てた作物が、誰かの役に立つなら、それは最高の喜びだ。


 「いいぜ」


 俺は、小さく頷いた。


「全部、持って行っていい。どうせ、俺が収穫したそばから、また生えてくるんで」


即時成長ブースト】と【奇跡の豊穣】が発動しているから、いくら収穫しても、すぐに次の実がなるのだ。


 「え……!? よ、よろしいのですか!?」


 セレナは、目を丸くして驚いた。


「こんな貴重なものを、無償で……!?」

「別に無償じゃねえよ」


 俺は、ニヤリと笑った。


「その代わり、王都で俺のハーブを広めてくれ。そして、このテルマ村の名前を、王都中に轟かせてほしいんだ」

「! もちろんです! むしろ、光栄です!」


 セレナは、感極まったように、キラキラとした瞳で俺を見つめた。

 その頬は、ほんのり赤く染まっている。


(あれ? またモテフラグ立った……?)


 俺は、自分の無自覚なモテっぷりに、若干戸惑いを覚えた。


「ありがとう、アルトさん! あなたは……あなたは、まさに神の恩寵です!」


 セレナは、まるで聖母のように微笑んだ。

 そして、俺のハーブを丁寧に収穫し始めると、護衛の騎士たちに指示して、大量のハーブを馬車に積み込ませた。


「では、私はこれで。必ずや、王都の人々を救い、あなたの名前を広めてみせます!」


 セレナは、深々と頭を下げると、馬車に乗り込み、王都へと帰っていった。



 聖女候補との出会い。

 そして、俺の【超回復ハーブ】が、王都の疫病を救う切り札となる。

 王都の貴族たちが、俺の存在に気づくのも、時間の問題だろう。

 俺は、ガイアを肩に担ぎ、空を見上げた。

 青い空に、白い雲が流れていく。

 雑草だった俺は、今、このテルマ村で、着実に伝説への階段を上っていた。

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