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『異世界逃亡者の無双建国・NEXT STAGE ~神無き世界で始める新たなる創世譚~』  作者: ねこあし


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第九十五話 全創の門〈アルティメット・ゲート〉

 光の階段を登るたび、世界が静かに変化していった。


 まるで、階段を進むごとに空気そのものが軽く、そして透明になっていくようだった。

 重力や温度といった物理法則が徐々に薄れ、

 “概念”の方が強い存在感を持ちはじめる。


 ――ここは、もはや「世界」ではない。

 新しい世界を定義するための、何もない場所。


「……変な感覚。歩いている、というより……“意思が進んでいる”ような」


 リーナが周囲を見渡しながら言った。


「この階層は、存在の形そのものが曖昧なんだ」

 ノアが答える。

「思考や感情が空間の揺らぎに影響する。つまり――心が強いほど、世界を踏みしめられる」


「なら、俺は心配ないな」

 シャムが胸を張る。

「こういう時のためにメンタル鍛えてきたしな!」


 カイエンが苦笑しながら肩をすくめた。

「単純で助かるぜ、シャム」


「単純じゃねぇ、素直なんだ!」


 ネフェリスは緊張を紛らわせるようにくすりと笑い、

 マリルは手帳に何かを書き付けながら歩く。

 ミストはいつの間にか空間解析を始めていた。


 蓮は、そのすべてを後ろから見つめていた。


(……俺は、どれだけ救われてきたんだろうな)


 誰かと歩く未来など、日本にいた頃の自分には想像すらできなかった。

 逃げることで精一杯だったあの頃――。

 けれど、いまは違う。


 イリスと目が合う。

 彼女は柔らかく微笑んで言った。


「レン。あなたが一歩踏み出したから、私たちはここにいるのよ」


 胸の奥が熱くなる。

 蓮は短く頷き、再び前を向いた。


◆ ◆ ◆


 どれほど登っただろうか。


 白と金の光が混ざる空間の先に、それは現れた。


 宙に浮く、巨大な門。

 片側に“創造”、もう片側に“破壊”のルーンが彫られ、中央には全てを統べる“零”の紋が刻まれている。


 ――全創の門〈アルティメット・ゲート〉。


「でかっ……」

 シャムが素直に感嘆の声を漏らす。


「門というより、これは……一つの世界ね」

 ネフェリスが息をのむ。


 確かに、その巨大さは常識を逸していた。

 山脈よりも高く、都市よりも広い。

 その奥には、光が流れる“創造神域”が広がっている。


 蓮が一歩踏み出すと、門が反応して輝いた。

 まるで蓮の到着を“待っていた”ように。


「来たな、“創造の継承者”よ」


 静かな声が空間に響いた。

 それは男とも女ともつかない声で、音ではなく“意味”そのものが心に流れ込んでくる。


 光が集まり、一つの存在が姿を成した。


 白いローブ。

 顔は光に隠され、輪郭さえ曖昧。

 だが、その佇まいは圧倒的だった。


「お前は……?」


「我は“原初管理者〈オーバー・コード〉”。神が生まれる前に世界を運行していた、最初の『法則』だ」


 蓮以外の全員が身構える。


「安心しろ。争うつもりはない」

 オーバー・コードは静かに言った。

「この門は、破壊でも試練でもない。“創造の最終認証”だ」


「最終認証……?」


「蓮。お前が新世界を創るというなら、“創造の核心”を知る必要がある。そして、門を開く資格を持つのは――お前一人だけではない」


 その言葉に、蓮は思わず目を瞬いた。


「どういう意味だ?」


「創造とは、一人の意志だけで成されるものではない。共に歩む者の想いがあって初めて、“世界は形を持つ”。」


 オーバー・コードは、仲間たちの方へ手を向けた。


「お前たち八人――蓮、イリス、リーナ、シャム、ミスト、ネフェリス、ノア、マリル、カイエン。全員が、“世界の核”に触れてきた。未来に対する想いも、恐れも、希望も、罪も――その全てが“創造因子”となっている」


「つまり、俺だけじゃない……みんなで創る世界、ってことか」


「そうだ、蓮・ヤシロ。創造神とは、決して孤独ではない。“共創者”がいて初めて誕生する」


 その言葉に、蓮は胸の奥が温かくなるのを感じた。


 ――俺は、独りじゃない。


 イリスが静かに蓮の手を取る。


「レン。私たちも……あなたと一緒に未来を創りたい」


 リーナが背中を叩く。

「当たり前でしょ。ここまで一緒に来たんだから」


 シャムが槍を回す。

「お前が作る世界、見てみてぇしな」


 ミストが眼鏡を押し上げる。

「私の解析結果が、あなたの世界の基礎になる。悪い気はしないわ」


 ネフェリスが優しく歌う。

「レンが紡いだ道を、私も歩きたいの」


 ノアが頷く。

「創造の未来は、君と皆が正しいと信じた世界にある」


 マリルが手帳を揺らす。

「この国の文化、全部書き残してあげるからね!」


 カイエンが笑う。

「まぁ、最後まで付き合ってやるよ。お前が立てた旗、見届けたいしな」


 蓮は深く、ゆっくりと息を吸った。


「……よし。なら、全員で門を開こう。新しい世界の扉を」


 オーバー・コードが手を上げた。


「認証を開始する。“アルティメット・ゲート”を開くには、創造因子を一つに束ねる必要がある」


 空間全体が光に包まれ、

 八人の胸元から輝く粒子が溢れ出した。


 それはそれぞれの“想い”――

 喜び、憧れ、愛、怒り、誓い、決意、希望、未来。


 光が一つに集まり、門がゆっくりと震え始める。


「――開け、“全創の門”。これが俺たちの世界だ!」


 蓮の叫びが響き渡り、門が轟音と共に開かれた。


◆ ◆ ◆


 門の向こうに広がっていたのは、星々が流れる“空白の宇宙”。

 それはまだ何も決まっていない、

 “全創の地平線〈アルティメット・ホライズン〉”――世界が生まれる前の純粋な空間だった。


 そして、中心に一つの玉座が浮かんでいた。


「……行こう。世界を創る場所へ」


 蓮は仲間たちと共に、光の中へ踏み出した。


 その瞬間――。


 世界の根源で、新たな創造神話が始まった。

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