表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界逃亡者の無双建国・NEXT STAGE ~神無き世界で始める新たなる創世譚~』  作者: ねこあし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/113

第九十三話 黎明の果てに立つ者〈ジ・オリジン・アーク〉

 ――光が終わり、音が生まれた。


 世界が再び鼓動を取り戻す音。

 それは、まるで新しい宇宙が生まれる瞬間のようだった。


 蓮は、ゆっくりと目を開けた。

 そこは、見知らぬ空――だが、確かに“この世界”だった。

 大地には草が芽吹き、遠くの地平にはまだ形を成していない都市の輪郭が浮かんでいる。


「……ここは、どこだ?」


 イリスが隣にいた。

 彼女の銀髪は淡い光を帯び、まるで星の雫を纏っているかのようだった。


「再創世第二段階……“黎明相”が始まったのよ。ここは新世界の最初の層、“根源大地〈オリジン・フィールド〉”」


 リーナ、シャム、ミスト、ネフェリス、ノア、マリル、カイエン――皆も同じ光の中で、再び姿を現した。


「……ちゃんと、全員いるな」

 蓮は胸を撫で下ろす。


「でも、見て」

 リーナが指を伸ばした先、空の一部が揺らめいていた。

 まるで“世界そのもの”が波打つように。


「創世の安定化が間に合ってないの。再創世が進むにつれて、因果の接合部が露出しているのよ」

 ミストが携行装置を展開し、解析を始める。

「特にこの空間の上層部、“創造因子核”が暴走し始めている……」


「つまり、また何か起きるってことか」

 カイエンが短く息をつく。


「ええ。放っておけば、新しい世界そのものが崩れる」

 イリスの声には焦燥が混じっていた。


 その時、地面が震えた。

 遠くの空から、黒い光柱が落ちてくる。

 それは地平を貫き、空気を震わせ――空間そのものを“書き換えた”。


 崩壊の中から、黒い影が現れる。

 歪んだ翼、透き通る鎧、そして無数の瞳を持つ女神のような存在。


「――再創世因子、確認。識別:創造の拒絶体。名を問う必要はない。我は“レクシア・ネガ”。この世界を否定する最後の神格である」


 空気が凍る。

 その名を、誰もが聞いたことがあった。

 再創世を担う原初神格〈レクシア〉の、否定側の人格。


「来たか……神そのものの“裏側”が」

 蓮は剣を構える。


「あなたが創造を選ぶというなら、私は“破壊”を以って均衡を取る」

 レクシア・ネガの声は、どこまでも静かだった。

 だが、その静けさの奥には無限の断罪が潜む。


 風が止まり、音が消えた。

 次の瞬間、世界が裂けた。


 黒と白の光が交錯し、大地が崩れ、空が裏返る。

 “黎明相”の不安定な空間が悲鳴を上げるように振動した。


「全員、距離を取れ!」

 蓮の叫びに、仲間たちが一斉に跳躍する。

 ミストが障壁を張り、シャムが地面を槍で貫いて姿勢を保つ。

 リーナは剣を構え、イリスが星光を纏う。


 ネフェリスが歌声を放ち、ノアが魔力干渉式を展開。

 マリルとカイエンは補助結界を編み込み、全員が一瞬で戦闘陣形を取った。


「――始まるぞ。これが、本当の“創造の戦い”だ!」


◆ ◆ ◆


 空間そのものが戦場となった。


 レクシア・ネガが放つ光の刃は、因果を断ち切る。

 ひとたび触れれば、存在そのものが“なかったこと”になる。


 リーナの剣が閃き、刃を受け止める。

 だが一瞬の遅れで、彼女の左腕が光に呑まれた。


「リーナッ!」


 シャムが叫び、瞬時に“因果固定槍”を投げる。

 槍が裂け目を貫き、時間が凍結する。


「へへ……これぐらい、慣れてるっての!」

 リーナは歯を食いしばりながら笑う。

 彼女の腕は光の粒となり、再び再構築されていった。


「すげぇ……再創世空間の自己修復機能を利用してやがる」

 カイエンが舌を巻く。


「だが、長くは持たない!」

 ノアが叫び、巨大な魔法陣を展開。

 それは“過去の記録”を読み込み、現在の因果を書き換える式――“アーカイブ・スプライス”だった。


「これで……少しは持ちこたえられる!」


 ネフェリスの歌声が響き、戦場に淡い光が満ちる。

 その声は、仲間の記憶を繋ぎ、希望を呼び戻す“魂の旋律”。


「あなたたちは、まだ理解していない」

 レクシア・ネガが手を掲げる。

「創造とは、選択を殺す行為。あなたたちが未来を選べば、無数の可能性が“消える”。――それを、許せるの?」


「許すよ」

 蓮が剣を構え直す。

「だって、選ばなければ何も残らない。無限の可能性より、一つの“いま”を信じる。それが、俺たちの生き方だ!」


 光と闇が激突する。

 衝撃波が空を裂き、大地を貫く。

 星々が落ち、時間が砕ける。


◆ ◆ ◆


 戦闘の最中、イリスの意識が過去の記憶に触れる。


 ――創造とは、愛だ。

 神が世界を創ったのも、孤独を埋めるため。

 ならば、人が創る世界もまた、誰かを想う優しさから始まる。


 イリスの胸の中に、蓮との無数の記憶が流れ込んでくる。

 笑い、戦い、支え合った時間。

 そして、何度も命を賭けて選び続けた“絆”。


「そう……私たちはもう、神じゃない。でも、神を超える愛を知ってる!」


 星光が彼女の周囲を包み、翼が広がる。

 その瞬間、イリスはレクシア・ネガの攻撃を受け止め、蓮の背を守った。


「イリス!」


「レン、行って! あなたの剣は、世界の意志そのもの!」


 蓮は頷き、両手で剣を握る。

 刃が光を帯び、空間が震える。


「来い、レクシア・ネガ――これが、俺の答えだ!」


 白と黒の光が交わる。

 世界が、再び形を変え始めた。


◆ ◆ ◆


 閃光が収まったとき、空は澄み渡っていた。


 レクシア・ネガは膝をつき、静かに笑っていた。

「……これでいい。創造と否定、どちらも必要だったのね」


 彼女の身体が光に変わり、空へと溶けていく。

「人の創造が、神の役目を超える日が来るなんて……皮肉ね。でも、嬉しい」


「ありがとう」

 蓮が小さく頭を下げた。


「さあ、進みなさい。黎明の果てに、真の創世が待っている――」


 レクシア・ネガが消えた後、空には巨大な光輪が残った。

 それは新世界の“創造核”。

 再創世の最終段階――“アーク・システム”が起動しようとしていた。


◆ ◆ ◆


 リーナが肩で息をしながら笑う。

「……ようやく、一区切りってとこね」


「いや、ここからが本番だ」

 蓮は空の光輪を見上げた。

「あれが……俺たちが辿り着くべき“原点〈オリジン・アーク〉”。創造の最終局面だ」


 イリスが隣で微笑む。

「じゃあ、もう迷わないわね。行こう、レン。――私たちの新しい世界へ」


 仲間たちが頷き、彼らは再び歩き出した。

 黎明の果てへ。

 そして、創造の頂き――“全創の地平線〈アルティメット・ホライズン〉”へと。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ