表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界逃亡者の無双建国・NEXT STAGE ~神無き世界で始める新たなる創世譚~』  作者: ねこあし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/121

第八十八話 再誕の種子〈リジェネシス・コア〉

 ――砂海が、光で満たされていた。


 大地が震え、空が裂け、無数の光の粒子が上昇していく。

 それはまるで、世界そのものが再び“誕生”しようとしているかのような光景だった。


「この反応……塔の上層部からだ!」

 ミストがタブレットを睨みながら叫ぶ。

「エネルギー値が臨界突破寸前! このままじゃ……空間が“新たな因果層”に置き換わる!」


「つまり――この世界そのものが、もう一度“書き換え”られるってことか」

 シャムが顔をしかめた。


「そんなの、許せない!」

 リーナが剣を抜き、駆け出す。


 蓮は空を見上げた。

 塔の頂上――そこに、見覚えのある小さな影が浮かんでいた。


「……ルア」


 あの少年。星界の神殿で目覚めた“選定者”。

 今や彼は、光の中心で静かに手を掲げていた。


◆ ◆ ◆


 塔の最上層――。


 蓮たちがたどり着いた時、そこは既に異空間と化していた。

 床は浮遊する石板で構成され、天井は果てのない星空に開かれている。


 その中央、白銀の光を纏ったルアが立っていた。


「……やっぱり、来たんだね。蓮」

 少年は微笑んだ。

 その声は柔らかく、それでいてどこか哀しげだった。


「ルア、やめろ! お前が起動してるその装置――“再誕の種子”は、世界を壊す!」

 蓮が叫ぶ。


 ルアは首を横に振る。

「違うよ。壊すんじゃない。“本来の形”に戻すんだ」


「本来の……?」

 イリスが息をのむ。


「蓮。君たちの世界は、まだ未完成なんだ。創世因子の一部――“魂の同期式”が抜け落ちている。このままじゃ、ノヴァ・テラの存在は百年も保たない」


「そんな……!」

 ミストが青ざめた顔で端末を確認する。

「確かに……地脈の流動が不安定化してる。

 創世時の因果循環が閉じきっていない……!」


 ルアは静かに両手を広げた。

「僕はその欠けた因子を補うために、“再誕の種子”を起動した。――君が創った世界を、永遠にするために」


◆ ◆ ◆


 だが、蓮はすぐには頷けなかった。


「……ルア。それは違う」


「え?」


「お前の言う“永遠”は、変化を拒絶する世界だ。痛みも、喜びも、選択もない――ただの静止だ。俺たちは、もうそんな世界を知ってる。神が全てを定義する世界を、壊してきたんだ」


 ルアの瞳が揺れる。

「でも……君の世界は、不完全なんだよ。いつかまた争いが起きる。誰かが涙を流す。そんな世界を、君は望むの?」


「望むさ」

 蓮は力強く言い切った。


「不完全だからこそ、人は“選ぶ”ことができる。間違えて、立ち上がって、また繋がる。それが“生きる”ってことだ」


 その言葉に、イリスがそっと微笑む。

「ねえルア。私たちは完璧なんか求めてないの。“共に語る時間”こそが、世界の本質なのよ」


 ルアの光が一瞬だけ弱まる。

 だが、その瞳の奥には、別の感情が宿っていた。


「……そうか。やっぱり、君たちは“前の蓮”と同じ選択をするんだね」


「前の……?」

 リーナが呟く。


 ルアは静かに笑った。

「僕は、“原初の蓮”が創った因子の一部。つまり、君の“別の可能性”なんだよ、蓮」


「俺の……可能性?」


「うん。“永遠の世界”を創ろうとした蓮。“終わらない楽園”を夢見た君のもう一つの意思。

 それが、僕だ」


◆ ◆ ◆


 塔の空間が揺れ始める。

 ルアの身体から、淡い金光が広がっていく。


「再誕の種子――起動率、七十パーセント。あと少しで、世界は再構築される」

 ミストが叫ぶ。


「ルア、やめろ!」

 リーナが剣を構えるが、見えない力に弾き飛ばされる。


 蓮は歯を食いしばり、前へと進んだ。

「ルア、俺はお前を倒すために来たんじゃない。お前の“想い”を知るために来たんだ」


 ルアが一瞬、動きを止めた。


「お前が望む“永遠”は、きっと優しさの裏返しなんだろう?誰も傷つかない世界を作りたい――その願い、俺も同じだ」


「だったら、なぜ止めるの!」

 ルアの声が震える。

「君が創った世界は、また壊れる! また誰かが苦しむ!僕は……そんな未来を見たくないんだ!!」


「ルア……」


 蓮はゆっくりと歩み寄る。

 光の暴風が吹き荒れる中、ひとり、ただ前へ。


「俺だって恐いさ。でもな、未来を“閉じる”ことだけはしたくない。だから俺は、“再誕”じゃなく、“継承”を選ぶ」


 そう言って、蓮は無限アイテムボックスを開いた。

 中から光の結晶を取り出す。


「これは、“オリジン・メモリア”。原初の蓮から受け継いだ“語りの記録”だ。これを、お前に託す」


 蓮が結晶をルアに差し出すと、光がふたりを包み込んだ。

 ――まるで、過去と未来がひとつに融け合うように。


◆ ◆ ◆


 やがて、光が収まった。


 ルアはその場に膝をつき、息を整えていた。

「……僕は、君の心の中にいた“永遠への恐れ”だったのか」


「ああ。だが、それを拒む必要はない。恐れがあるから、俺たちは前へ進める」


 ルアが微笑んだ。

「やっぱり、君は……僕よりも強い」


 彼の身体が、光の粒となって空に昇っていく。


「これで……“再誕”は、終わりだ」


 塔の光が静かに消え、世界の時間が再び流れ出した。


◆ ◆ ◆


 夕陽の中、蓮は砂丘の上に立っていた。

 イリスが隣に立ち、空に浮かぶ光の粒を見上げる。


「……行っちゃったね」

「ああ。でも、あいつは消えたわけじゃない」

 蓮は微笑んだ。

「俺の中に、“未来を恐れない勇気”として残ってる」


 イリスは彼の肩に寄り添い、静かに目を閉じた。


 ――こうして、“再誕の種子”事件は終結した。

 だが、その余波はまだ、世界の奥底で蠢いている。


 創世の塔が崩れ落ちた後、

 誰も知らぬ場所で、再び微かな鼓動が響き始めていた。


 > 「創世因子、再構築開始――第零階層、起動」


 それは、誰もがまだ知らぬ“真の創世”の予兆だった。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ