表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界逃亡者の無双建国・NEXT STAGE ~神無き世界で始める新たなる創世譚~』  作者: ねこあし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/117

第八十話 語られざる創造者〈ナラティブ・ゼロ〉

 ――すべては、語られた瞬間に存在となる。


 それが、この世界の根幹に刻まれた法則。

 けれど今、その“語り”の外側から、もう一つの意思が目を覚まそうとしていた。


◆ ◆ ◆


 再生都市レグルス。

 “無観測領域”の消滅から数日後。


 蓮は政務棟の執務室で書簡に目を通していた。

 各地の復興報告、交易路の開設、そして新しく発見された魔導鉱脈の調査結果。

 国が動き出している。世界が再び息づいている。


 そんな中、扉が控えめに叩かれた。


「蓮、少し……いい?」

 入ってきたのはイリスだった。

 彼女の表情はいつになく硬い。


「どうした?」

「……少し、妙な記録が見つかったの」


 イリスは机の上に古びた水晶板を置く。

 それは、かつて蓮たちが訪れた“星詠の神殿〈セレスティアル・オラクル〉”の記録装置だった。

 はるか昔、神々が残した“世界の原典”の一部。


「これ……誰かが、書き換えた痕跡があるの」


「書き換え?」

 蓮は眉をひそめる。


「“再生者・蓮”という項目に、別の記述が追加されているの。――“創造者・蓮”」


 その言葉に、部屋の空気が凍った。


「俺……が、“創造者”? それは……どういう意味だ?」


 イリスは静かに首を振る。

「わからない。でも、記録上では“再生者”と“創造者”は別存在。つまり、同一名を持つ“別のあなた”が……存在する」


 沈黙が落ちる。


「……まるで、もう一人の俺が、どこかにいるような……」

 蓮が小さく呟いた。


 その時、ミストが駆け込んできた。

「蓮! 観測異常発生! 北方大地に、未登録の“都市構造”が突如出現!」


「未登録……? 誰の領地でもないはずだろ?」


「ええ。しかも、その中心から“あなたと同じ波動”が観測されてるの」


 蓮の瞳が鋭く光る。

「……まさか、本当に――もう一人の俺が?」


◆ ◆ ◆


 蓮たちは即座に北方へ向かった。

 氷雪が舞う荒涼の大地に、突如として建造された都市があった。

 名も知らぬその都は、完璧に整備され、中央に巨大な尖塔がそびえている。


 まるで、蓮が築いたレグルスを“鏡写し”にしたかのような光景。


「これは……模倣じゃない。再現だ」

 ミストが目を細める。

「しかも、設計思想も魔力構成も、すべて“蓮の国造り”と同一」


 その中心、尖塔の頂に一人の青年が立っていた。


 ――蓮と、同じ顔。


「……来たか」

 その声は、確かに蓮の声だった。

 だが響きには冷たさがあった。


「お前は……誰だ?」

「名乗るまでもない。俺は“語られざる創造者”。――お前が“再生”を選んだ瞬間に、“創造”として弾かれたもう一つの可能性だ」


「可能性……?」

 リーナが息を呑む。


 “もう一人の蓮”は静かに頷いた。

「この世界は、お前の“再生”によって形を得た。だが、“創造”としての道は閉ざされた。――俺は、その閉ざされた道の果てに残された“語られなかった蓮”だ」


 空間が揺らぎ、周囲の建造物が歪む。

 都市全体が、彼の思考に合わせて形を変えていく。


「お前……この都市を、“創造”してるのか?」


「ああ。俺は、“物語の外”で生まれた創造主。語られることなく、記されることなく、ただ“結果”だけを紡ぐ存在」


「そんな存在が、この世界に干渉できるはずが――」

 イリスが言いかけた瞬間、空間が裂けた。


 背後に現れたのは、虚の残滓とは異なる、透明な“歪み”。

 その中から、無数の影が浮かび上がる。


「“観測されなかった存在たち”だ」

 創造者の蓮が静かに言う。

「お前が救った世界の“外”に、まだ無数の“語られなかった命”がある。俺はそれを、記録し、形にするためにここにいる」


「それは、救済なんかじゃない!」

 蓮が叫ぶ。

「語られなかった命を“書き換える”なんて、それこそ神の驕りだ!」


 創造者の蓮は笑う。

「驕り? 違う。“語られた物語”の中に留まるお前たちこそ、虚構の奴隷だ。俺は、枠を超えた自由そのものだ」


 その瞬間、彼の背後に無数の光が集まる。

 それは神代の記録の残滓、失われた神々のコード。


「お前は“語る側”。俺は“創る側”。同じ名を持つ以上、どちらかしか存在できない」


 蓮は剣を構え、静かに応えた。

「――なら、俺は“語り続ける”。どんな絶望も、痛みも、すべて“物語”として生かすために」


 イリス、リーナ、ミスト、そして仲間たちが背に立つ。

 彼らの瞳には、確固たる意志が宿っていた。


「創造者の蓮よ。――お前の創る世界を、俺たちは“語り”で超えてみせる」


 空が裂け、光と闇が交錯する。

 二つの“蓮”が、世界の基盤を揺るがす激突の瞬間へと向かっていく。


◆ ◆ ◆


 この世界が、“誰の物語”であるのか。

 “語られざる創造者”と、“語る者としての再生者”。

 その境界は、いま、完全に崩れ去ろうとしていた。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ