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『異世界逃亡者の無双建国・NEXT STAGE ~神無き世界で始める新たなる創世譚~』  作者: ねこあし


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第六十六話 創造の臨界〈ジェネシス・リミット〉

 ――薄明。

 それは夜でも昼でもない、世界の境目。


 蓮たちは、崩壊した忘却層を後にして、再び浮遊大陸の中心――〈創界中枢塔〉へと戻ってきていた。


 黒い空間の名残はまだ残っている。

 だが、空には新しい星がひとつ、静かに輝いていた。


 それは、失われたカムイの魂の残響。

 “忘却”と“創造”の狭間で、なおも存在を拒まぬ光。


「……カムイの痕跡、完全には消えていない」

 イリスが魔力感知装置を見ながら呟く。


「彼の魂は、今も“座”と融合して留まってる。もし、あの神座を破壊すれば、彼も完全に消えるわ」


「つまり、壊すだけじゃ駄目ってことか」

 蓮は星空を仰いだ。


 あのとき、カムイは確かに「俺を止めてくれ」と言った。

 だが、それは“殺せ”という意味ではない。

 彼の想いは、もっと遠く――“誰も消えない世界”を望んでいた。


「……だから、俺たちが“新しい神座”を創る」


 その言葉に、仲間たちは静かに頷いた。


 ネフェリスが前へ出る。

「創造と忘却の両立……理論的には不可能よ。でも、あなたの“異界因子”なら、それを超える可能性がある」


「俺の……異界因子?」


 ミストが説明する。

「蓮、あなたは“この世界の外”から来た。つまり、世界律に支配されない“未定義の存在”。

 だからこそ――新しい理を上書きできる」


「未定義……俺が、“空白”か」


「ええ。そして、その空白を“意志”で満たすことで、忘却と創造を結びつける“第三の理”が生まれるはず」


 蓮は静かに目を閉じ、胸に手を当てた。

 ――心臓の鼓動が、異様に強く響く。

 まるで、何かが呼応しているようだった。


 その瞬間、彼の無限アイテムボックスが微かに光を放つ。


「……ん? 中から反応が……?」


 次の瞬間、光が溢れ、空間に一つの球体が浮かび上がった。


「それは……“アカシック・リゾナンス”!?」

 リーナが驚く。


 以前、星詠の神殿で授かった“星命共鳴装置”。

 だが今、その装置はまるで別物のように輝きを増していた。


「これが……カムイの魂と共鳴してるのか?」


 イリスが息を呑む。

「もしかして……! この装置を媒介にすれば、“神座”の再構築が可能になる!」


「ただし、代償は大きい」

 ミストが冷静に告げる。

「再構築に必要な因果エネルギーは、世界の総量の一部。

 つまり――失敗すれば、世界そのものが“初期化”される」


「……全部、白紙に戻るってことか」


 重い沈黙が落ちる。

 それでも、誰ひとり退かなかった。


「やるしかない」

 蓮は拳を握った。

「カムイを救い、彼が護ろうとした“失われたもの”を取り戻すために」


*  *  *


 〈創界中枢塔〉最上層――

 そこは、かつて神々が世界を設計した場所。


 無数の光の柱が空へ伸び、中央には“虚無の玉座”が浮かんでいた。

 かつてカムイが座していた〈ネメシア・スローン〉の残骸だ。


「ここが……神座の中核」

 ネフェリスが小さく呟く。


 蓮は〈アカシック・リゾナンス〉を取り出し、玉座の中心に置いた。


 光が走る。

 古代の回路が蘇り、天井の魔法陣が輝きを取り戻す。


『再構成プログラム、起動――』


 中枢塔全体が震える。

 天から幾千もの情報の帯が降り注ぎ、

 蓮たちの身体に無数の記号が刻まれていく。


 それは――世界律そのものへのアクセス。


 リーナが息を詰めた。

「う……これ、思考が全部“書き換え”られてるみたい……!」


「耐えて! 自我を失えば、世界そのものに取り込まれる!」

 イリスが叫ぶ。


 だが蓮は、一歩前に出た。

「大丈夫。――俺が“核”になる」


 その瞬間、彼の身体から膨大な光が噴き上がった。


 過去と未来、記憶と忘却、創造と終焉――

 すべての概念が彼の中でひとつに交わる。


 ――眩い。


 光の中に、誰かの影が見えた。

 それは、カムイの姿。


『……蓮。お前、まだ諦めてないんだな』


「当たり前だ。お前が見た“忘れられた世界”も、この光の中に取り込む」


『そんなことをしたら……お前が壊れる』


「壊れない。だって俺は――“空白”だからな。定義されない存在は、どんな理にも染まらない」


 カムイの影が微かに笑う。

『……やっぱり、お前はおかしい』


「お前がそう言うなら、間違ってない」


 次の瞬間、光と闇が溶け合う。


 忘却の黒、創造の白――

 二つの理が螺旋を描き、新しい“色”を生み出した。


 それは、虹のような多層の輝き。

 “定義できない存在”――“無限の理”。


 〈創界中枢塔〉全体が震え、無数の封印が解除されていく。

 天上に巨大な紋章が浮かび上がった。


『――創造の臨界点、到達』


 世界律が再編され、空が割れる。

 その裂け目の向こうに、カムイの魂が静かに漂っていた。


 蓮は手を伸ばす。

「カムイ……もう一度、戻ってこい」


『……お前ってやつは、本当に――諦めが悪いな』


 その声と共に、黒い羽が一枚、光へと変わった。

 蓮の掌の中で、それはゆっくりと“人の形”へと再構成されていく。


「カムイ……!」


 白い光が収束し、そこに現れたのは――

 確かに“彼”だった。


 穏やかな表情で微笑みながら、蓮に言う。

「……帰ってきたよ。ありがとう、蓮」


 イリスが涙をこぼし、リーナが歓声を上げた。


 だがその直後、塔全体が再び激しく揺れる。

 ミストが警告を叫ぶ。

「駄目っ、臨界値を超えた! このままだと世界律が崩壊する!」


「まだ……終わってない!」

 蓮は光の中心に立ち、再び手を掲げた。


「“世界よ、定義せよ――!”」


 その言葉と共に、創造の理が再び上書きされる。

 光が広がり、崩壊していた世界が逆再生のように再構築されていく。


 山が戻り、海が流れ、空が晴れ渡る。

 無数の命が息を吹き返す。


 ――そして、静寂。


 気づけば、彼らは緑の大地に立っていた。

 風が吹き、空には“二つの太陽”が並んでいた。


 リーナが小さく笑う。

「これが……新しい世界……?」


「いや――“共存した世界”だ」

 蓮が空を見上げた。

「創造も、忘却も、もう分けられていない。

 どちらも、この世界を構成する“記憶”として残ったんだ」


 イリスが微笑む。

「これで……本当に、救われたのね」


 蓮は頷いた。

 遠くで、カムイが静かに空を仰いでいる。


「……ありがとう、蓮。

 お前のおかげで、“忘れられた者たち”も、この空の下に還れた」


「まだ終わってないさ」

 蓮は微笑む。

「俺たちがこれから築く世界――“神なき創世”は、ここから始まる」


 光が風に溶け、二つの太陽がゆっくりと交差する。


 それは、新たな世界の夜明けを告げる光だった。

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