表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界逃亡者の無双建国・NEXT STAGE ~神無き世界で始める新たなる創世譚~』  作者: ねこあし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/113

第六十五話 忘却神の座〈ネメシア・スローン〉

 ――光が、消えた。


 世界は無音だった。

 風も、時間も、色すら存在しない。

 あるのは“終わった後”の静寂だけ。


 蓮は、何もない空間に立っていた。

 足元も、天もない。

 まるで、現実そのものが削り取られたようだった。


「……ここが、“忘却層の中心”か」


 声を出しても、音が返ってこない。

 だが、確かに仲間たちの気配は感じる。

 リーナ、イリス、ネフェリス、シャム、ミスト……

 全員が同じ“無”の中に存在していた。


 ――だが、カムイだけは違う。


 遠く、黒い光の柱が立ち上っている。

 その中心に、彼の姿があった。


 彼はゆっくりとこちらを見た。

 その瞳には、もう迷いがなかった。


「ようやく来たな、蓮」


 その声は穏やかで、どこか懐かしい。

 だが同時に、圧倒的な力が混じっていた。

 人間の域を超えた――神性の気配。


「カムイ……お前、もう……」


「そうだ。俺は“忘却の代弁者”となった。この場所の全てを統べる存在――“ネメシア”。」


 黒い光が彼の背に広がる。

 まるで翼のように、夜そのものを象った二枚の影。


 イリスが震える声で言った。

「ネメシア……神代において“創造神たちの失敗”として封印された名……!まさか、それがカムイと融合したなんて……!」


 ネフェリスが祈るように呟く。

「“忘却神”――この世界が誕生する前に排除された、因果の廃棄体……」


 蓮は一歩、前に出た。

「……カムイ、やめろ。お前はそんな存在じゃない。“誰かを救う”ために、ずっと戦ってきたはずだ」


 カムイは静かに首を振る。

「違うんだ、蓮。俺は“救えなかった”。お前たちが創った新しい世界で、俺は居場所を見つけられなかった。

 だから――“忘れられた側”に、手を伸ばした」


「それが“神になる”ことだっていうのか!?」


「神じゃない。“均衡”だ。お前たちが創る側なら、俺は“消えたものたち”を守る側になる」


 その瞬間、空間が震えた。

 黒い環が広がり、蓮たちの周囲に無数の幻影が現れる。


 ――失われた世界の断片。


 戦乱の末に滅んだ国、存在を忘れられた民、召喚に失敗して消えた命。

 彼らが、形を持たないまま漂っていた。


『私たちは、確かに存在した……』

『だが、誰も覚えていない……』


 リーナが涙を流す。

「……こんなの、酷すぎる……」


 カムイの表情がわずかに曇る。

「俺は、彼らを“忘れさせない”ためにここにいる。たとえ、この世界そのものが崩壊しても――それが、彼らの証明になるなら」


「違う!」

 蓮が叫んだ。

「お前の選んだ道は、ただの“消滅”だ!“思い出すために、世界を壊す”なんて……それは救いじゃない!」


 その瞬間、黒い光が激しく脈打った。

 カムイの身体が半分ほど、影に飲まれる。


『彼ノ意志ハ既ニ我ラト一ツ。忘却神ノ座ハ、彼ヲ介シテ顕現スル』


 声が響く。

 天に巨大な玉座が出現した。

 それは金属でも石でもない――“概念”そのもの。


 座が形成されるたびに、現実の構造が崩壊していく。

 ミストが叫ぶ。

「世界律が反転してる! このままだと、“上層世界”まで崩壊する!」


 蓮は一歩踏み出した。

「だったら、止めるしかない――!」


 星命の核〈スターノード〉を掲げる。

 光が奔り、黒の世界を照らす。


 カムイが目を見開いた。

「……それは……!」


「神々が残した“創造の残響”だ!お前が“忘却の理”を選ぶなら――俺は、“再生の理”で挑む!」


 二人の力が激突した。

 光と闇が交錯し、次元そのものが裂ける。


 雷鳴のような衝撃。

 イリスたちは防御結界を展開しながら、必死に立っていた。


 リーナが叫ぶ。

「蓮っ、無理しないで! あの力は神域級よ!」


「わかってる! でも――止めなきゃいけない!」


 黒と白が交錯する。

 世界は、創造と忘却の二つの理に引き裂かれていく。


 そして――


 刹那。


 蓮の脳裏に、微かな声が届いた。

 それは、確かにカムイ自身のものだった。


『蓮……頼む。俺を、止めてくれ……』


 次の瞬間、蓮はその願いに応えるように、全力で光を放った。


 閃光が闇を貫く。

 世界が白に包まれ、全ての音が消える。


 やがて――


 光が収まった時、蓮はひとり、玉座の前に立っていた。

 そこにカムイの姿はなく、ただ黒い羽が一枚、静かに舞い落ちた。


「カムイ……」


 その羽が、光に溶けるように消えていった。


 リーナたちが駆け寄ってくる。

「蓮! 大丈夫!?」


「……ああ」

 蓮はゆっくりと頷いた。

「終わったよ。けど……まだ、彼は消えてない。“忘却神の座”は、完全には崩壊していない」


 イリスが顔を上げる。

「ということは……」


「そうだ。次は、“神座そのもの”を再構築する。忘却も、創造も――共に生きる世界を、俺たちの手で創り直す」


 蓮の瞳に、再び光が戻っていた。


 世界は崩壊の淵にありながらも、

 その中心で確かに“希望の芽”が芽吹こうとしていた。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ