第四十五話 虚王都決戦〈カオス・ドミニオン〉
砂漠の虚王を討ち果たし、蓮たちは再び浮遊大陸へと戻った。
残された最後の虚の門は――中央都市〈レグナス〉。
かつて帝国の栄華を誇った首都は、今や黒い瘴気に覆われ、虚の領域と化していた。
◆ ◆ ◆
蓮たちは浮遊大陸から転移門を使い、レグナス近郊の台地に降り立った。
遠くに見える都は、まるで黒い炎に焼かれているかのように、常に揺らめいている。
「……あれが最後の虚門か」
リーナが苦々しく呟く。
「都市全体が結界化しているわ。虚そのものが、都を支配している」
イリスが剣に手をかけ、表情を引き締めた。
「中央都市を失えば、世界は再生の中心を失う。絶対に落とせない戦いだ」
蓮は仲間たちを見渡し、深く頷いた。
◆ ◆ ◆
夜明けと共に進軍を開始。
街の外縁には既に虚に侵食された魔物たちが群れを成していた。
「数が多い……!」
カイエンが目を見開く。
「けど、俺たちの進む道は一本だ!」
蓮が叫ぶ。
ルアが星光を放ち、先陣を切る。
イリスとリーナが左右から敵を薙ぎ払い、カイエンとマリルが結界で守りを固める。
ネフェリスの歌声が響き渡り、仲間たちの体力を保ち続けた。
そして蓮は無限アイテムボックスを展開し、膨大な兵器を召喚する。
「今こそ――全部使い切ってやる!」
魔導砲、飛行艇、古代兵器。
これまで集めてきたあらゆる兵装が出現し、虚の軍勢を蹂躙する。
「これが……無限アイテムボックスの真価……!」
ルアが驚きの声を上げる。
「俺一人の力じゃない。みんなで積み重ねてきた力だ!」
蓮はそう言い、さらに前進を続けた。
◆ ◆ ◆
ついに一行は都市の中心、皇宮跡へと到達する。
そこには黒き王座が築かれ、虚の王が待ち構えていた。
全身を黒い鎧で覆い、頭上には虚空を象徴する冠。
その存在は、ただ立っているだけで空間を侵食していく。
「虚王……!」
ミストが息を呑む。
「名を問う必要はない。だが、記録に残す。
――我は《カオス・ドミニオン》。すべての虚を統べる王」
低い声が響くと同時に、都全域が震動し、虚の門が開ききった。
「奴を倒さなければ、世界は終わる……!」
イリスが叫ぶ。
「行くぞ、みんな!」
蓮が剣を掲げると、仲間たちは一斉に頷いた。
◆ ◆ ◆
戦いは熾烈を極めた。
虚王の一振りで大地が裂け、空が崩れ落ちる。
その攻撃はあまりにも規格外で、通常の防御魔法では到底耐えられない。
「カイエン、マリル、結界を重ねろ!」
「了解!」
二人が同時に詠唱を開始し、結界を二重三重に展開する。
そこへイリスとリーナが切り込み、隙を作る。
ルアが星光を放ち、虚王の動きを封じる。
「今だ、蓮!」
蓮は無限アイテムボックスから星命共鳴装置〈アカシック・リゾナンス〉を取り出した。
「これで、お前の虚を閉じる!」
星命の光が爆発し、虚王の体を縛り上げる。
「馬鹿な……この我を縛るだと……!」
「俺たちが選んだ未来を、喰わせはしない!」
蓮の剣が虚王の胸を貫いた瞬間、凄まじい衝撃が都全域を走った。
◆ ◆ ◆
虚王が崩れ落ち、虚の門が閉じていく。
黒い瘴気が消え、都に光が差し込む。
「……終わったのか?」
リーナが呟く。
「いや、まだ完全じゃない」
蓮は剣を下ろし、空を見上げた。
「虚は消えたが……この戦いの先に、まだ何かがある」
イリスが静かに頷く。
「ええ。だけど確かに、世界は一歩、救われた」
仲間たちは互いに笑みを交わした。
長い戦いの先に、ようやく希望の光が見えてきたのだ。




