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『異世界逃亡者の無双建国・NEXT STAGE ~神無き世界で始める新たなる創世譚~』  作者: ねこあし


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第二十二話 補給線奇襲作戦

 黎明城の作戦室に、夜の灯火が揺らめいていた。

 広げられた地図の上に赤い印がいくつも打たれている。

 それは帝国軍の進軍路、そして補給線の拠点を示していた。


「帝国軍は総勢五万。だが、その全てを一度に維持できるわけじゃない」

 カイエンが地図を指でなぞりながら言った。

「必ず食料と物資の供給に頼る。その補給路を断てば、進軍は止まる」


「問題は、護衛がどれだけ厚いかだな」

 蓮は頷き、無限アイテムボックスを開いた。

 中には星詠の神殿で手に入れた結界具や魔導爆薬が収められている。


「幸い、補給部隊は前線ほどの精鋭じゃない。守りは堅いが、奇襲で混乱させれば崩れる」

 イリスが分析する。


「だからこそ、俺たちが行く」

 蓮は強い声で言った。

「国の守りは守備軍に任せる。俺たちは精鋭部隊として補給線を叩く」


「つまり、敵陣の奥深くに突っ込むってことね」

 リーナが剣を握りしめる。

「面白いじゃない。どうせ正面からやり合ったら勝ち目はないんだから、奇襲で一気にかき乱してやる」


「歌で兵を混乱させるくらいなら任せて!」

 ネフェリスが拳を掲げる。


「補給線の座標はすでに特定済み。移動は転移門を使うと敵に感知される可能性が高いから……」

 ノアが冷静に言った。

「徒歩と少数の魔導騎獣で夜陰に紛れて行動するのが最適だ」


「じゃあ決まりね」

 イリスが頷いた。

「黎明国の命運を背負った奇襲作戦――始めましょう」


◆ ◆ ◆


 深夜。

 月明かりを背に、蓮たちは密かに城を発った。

 リーナ、イリス、カイエン、ネフェリス、ノア――黎明国の精鋭たち。


 息を殺し、闇の中を進む。

 帝国軍の哨戒部隊を避けつつ、補給拠点を目指した。


「敵の動きが多いな……」

 カイエンが小声で呟く。

「帝国も補給線の重要性を理解してる」


「でも、それだけ守りが固いなら――裏を突く価値がある」

 蓮は低く応じた。


◆ ◆ ◆


 数時間後、彼らは帝国軍補給拠点に辿り着いた。

 そこには無数の荷馬車、巨大な倉庫、そして警戒の兵士たちが並んでいた。

 篝火が燃え、夜空に煙が昇る。


「かなりの数だな……」

 リーナが剣を握る手に力を込める。


「正面突破は不可能。だけど、狙いは補給物資そのものよ」

 イリスが目を細める。

「ここを潰せば、帝国軍は数日で動けなくなる」


「なら――やるだけだ」

 蓮はアイテムボックスから魔導爆薬を取り出した。

「分担して倉庫と荷車に仕掛けろ。合図と同時に一斉に起爆する」


「りょーかい!」

 ネフェリスが軽やかに笑い、影の中へ走った。


「僕は結界を解析する。補給拠点を守る防御術式を破壊しないと、爆薬は無意味だ」

 ノアが魔導端末を操作し、倉庫を覆う結界を解析し始めた。


「護衛兵は俺が引き付ける」

 カイエンが魔具を構え、息を整えた。


「よし……始めるぞ」

 蓮は深呼吸をして仲間に頷いた。


◆ ◆ ◆


 闇夜に紛れ、奇襲が始まった。

 ネフェリスの歌声が響くと、兵士たちの意識が揺らぎ、眠りに落ちる者が続出する。

 その隙にリーナが駆け抜け、巡回兵を音もなく斬り伏せた。


「結界解除完了!」

 ノアが叫ぶ。


「よし、爆薬を仕掛けろ!」

 蓮が命じ、仲間たちは次々と魔導爆薬を設置していく。


 だが、その時――轟音と共に倉庫の奥から黒い影が現れた。


「――気付かれていたのか!」

 イリスが叫ぶ。


 姿を現したのは、帝国軍の副将と思しき男。

 漆黒の鎧に炎の槍を携え、瞳に狂気を宿していた。


「愚か者どもめ。我らが帝国の補給を狙うとは……!」


「仕方ない、戦うしかない!」

 蓮が剣を抜き放つ。


◆ ◆ ◆


 激しい戦闘が始まった。

 副将の炎槍が火柱を生み出し、夜空を紅蓮に染める。

 蓮とリーナが連携して斬り込み、イリスの魔法が援護する。

 ネフェリスの歌声が仲間を鼓舞し、ノアの解析が敵の防御を削っていく。


「――今だ、起爆しろ!」

 蓮が叫び、魔導爆薬が一斉に爆発した。


 轟音と閃光が走り、倉庫と荷馬車が次々と吹き飛ぶ。

 補給拠点は炎に包まれ、帝国軍の物資は灰と化した。


「な……ばかな……!」

 副将は呻き、崩れ落ちた。


「補給線、壊滅成功だ!」

 カイエンが叫び、仲間たちの顔に安堵が広がる。


◆ ◆ ◆


 だがその瞬間、地の底から響くような重い声が戦場に届いた。


「……面白い。小国の雑兵どもが、ここまでやるとはな」


 黒い炎が夜空を覆い、戦場の空気が一変する。

 遠くから現れたその巨影――帝国の次なる大将が姿を現そうとしていた。

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