第百六話 創造理由衝突〈レゾンデートル・クラッシュ〉
ゼロ・レイヤーの空間がゆっくりと震えた。
白と黒が入り混じった世界は、まるで心臓の鼓動に合わせるように脈動し――“二人の蓮”の存在理由を測ろうとしていた。
影の蓮は無彩色の光をまといながら、蓮を真っ直ぐ見据える。
『お前はまだ、答えていない。“なぜ未来を創るのか”を』
蓮も前へ一歩踏み出す。
「理由ならある。……だけど、言葉じゃなくて――その“姿”で証明する」
影の蓮はわずかに目を細めた。
『ならば――理由の衝突を始めよう』
◆ ◆ ◆
■ 世界が戦闘空間へ変質
ゼロ・レイヤーが泡のように歪み、次の瞬間――世界が一気に“戦闘に最適化された空間”へと変貌した。
「これは……!」
ミストが声を上げる。
「概念が、蓮と影の蓮の“戦いの意思”に合わせて変形しているのよ」
イリスが静かに説明する。
重力、光、音――あらゆる物理則が、二人の蓮にのみ最適化されていく。
リーナが息を呑んだ。
「二人の存在理由そのものが、いま世界の形を作ってる……」
◆ ◆ ◆
■ 影の蓮、真の戦闘形態へ
影の蓮は両手を広げ、黒白のエネルギーを収束させた。
『俺の理由は――“逃避”。自分が傷つかないため、責任から逃れ続けるため、期待されないために世界を拒んだ。』
空間がひび割れ、冷たい風が吹き抜ける。
『その理念が、俺の“存在理由”そのものだ。』
影の蓮の姿が変わった。
身体は細く鋭く伸び、背には影と光が反転する二対の翼。
胸には、否定の核――虚白の球体が脈動する。
「っ……これが、“影の蓮”の……本性……」
リーナが震える声を漏らした。
◆ ◆ ◆
■ 蓮もまた“理由の形”を得る
蓮の背後に七つの光輪が浮かび上がる。
その光輪は互いに回転し、中心に“蓮の心”そのもの――淡い希望の光が宿っていた。
「俺の理由は――」
蓮は静かに言う。
「“守りたいから”。弱かった俺が、仲間に救われて、ようやく“誰かを救える側”になれたからだ」
その言葉に、全員の胸が熱くなる。
「蓮……」
リーナが思わず顔を綻ばせる。
イリスも目を閉じ、胸に手を当てた。
「その答えこそが……あなたの創造主としての核なのよ」
◆ ◆ ◆
■ 最初の衝突
『ならば――見せてもらおう。本当に“守るために戦う”のかを!』
影の蓮が駆け出した。
その速度は光に近い。
無音で空間を切り裂き、蓮へ迫る。
「蓮っ!」
リーナが叫ぶ。
「大丈夫だ――!」
蓮の七輪が一斉に輝き、その身を包む光が巨大な盾の形に変わった。
『光盾構造体ッ!』
影の蓮の一撃が盾にぶつかり、ゼロ・レイヤー全体が轟音で揺れた。
衝撃波が外周にまで走り、ミストが急いで防御障壁を張る。
「ぐっ……なんて出力……!」
◆ ◆ ◆
■ 影の蓮、連続攻撃
『逃げる理由を捨てたお前が、本当に“守る理由”だけで強くなれるのか――!』
影の蓮が腕を振る。
空間が裂け、黒白の軌跡が四本、蓮へ襲いかかる。
「来い……!」
蓮は盾を消し、逆に前へ踏み込んだ。
両腕に光輪が収束し、拳に七重の光が巻きついていく。
『光拳構造体!!』
拳と刃が激突した瞬間、ゼロ・レイヤーの地平線が波打ち、
空間そのものが破れかけた。
◆ ◆ ◆
■ 激戦の中、影の蓮の本音が漏れる
衝突の余波で二人は後退する。
影の蓮は微笑んだ……いや、歪んだ。
『……お前は忘れたのか?誰にも期待されなかった、あの孤独を。“助けたい”なんて言葉が嘘くさく見えた、あの日々を』
蓮は拳を下ろし、まっすぐ影の蓮を見る。
「忘れてない。忘れるはずがないだろ。だって――それが“お前”なんだから」
影の蓮の瞳が揺れた。
『俺を……否定しないのか……?』
「しない。俺はお前も、全部抱えて前に進むんだ」
『…………。甘い。そんな理由で未来を創れると思うな』
「甘くないさ。甘い世界にしたくて“戦うんだ”」
◆ ◆ ◆
■ 第二の衝突が始まる
影の蓮の翼が広がり、世界が震える。
『――ならば証明しろ。お前の未来が、俺の“逃避の理由”よりも価値があると』
蓮も光輪を展開し、拳を握る。
「来い――俺が“俺自身の未来”を創る!」
二人の蓮が同時に跳び、ゼロ・レイヤーの中心で光と影が衝突する。
世界の外側でリーナたちが叫ぶ。
「蓮ーーーーッ!!」
巨大な光の柱と黒い反転波が空間を貫き――
世界が、ふたつの存在理由の狭間で震え続けた。
お読みいただき、ありがとうございます!
よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!




