第百二話 白と黒の創世式〈デュアル・オリジン〉
光と闇が階梯の上でぶつかりあい、世界そのものが震えていた。
蓮の背後で六つの光輪が回転し、その光が仲間たちへと繋がる。
黒蓮は対照的に、深い闇から黒い“創造式”を生み出していく。
その目は冷たいまま、しかし怒りにも似た微かな揺らぎがあった。
■ 世界が「白」と「黒」の二つに割れる
階梯の空間が左右に裂け、蓮側は白い未来世界の気配を、黒蓮側は無機質で冷たい秩序世界の気配を帯びていく。
リーナが息を呑む。
「……これ、完全に世界が“二つ”に分かれようとしてるの?」
「ううん……違う」
ミストが解析式を広げる。
「『二つの世界観そのものが、蓮と黒蓮を通して今、設計されている』のよ!」
「つまり、勝ったほうの理念が――新しい世界の根本になるの?」
ネフェリスが震える声で言った。
イリスは真剣な目で蓮の背中を見る。
「蓮――世界創造は、“理念の衝突”を避けて通れない。あなたが選んだ未来を守りたいなら――あなた自身が“証明”しなくちゃいけない」
「ああ。わかってる」
蓮は深く頷く。
■ 黒蓮、創造式を展開
黒蓮が手をかざす。
その指先から黒い光が糸のように伸び、空間に巨大な円環を描く。
ミストが声を上げる。
「――創造陣!? それも、通常の魔術式じゃなく……!」
「世界そのものを“削減”して無駄を排除する式だ」
ノアが青ざめた顔で言った。
黒蓮が告げる。
『“選択肢”を持つ世界に、安定はない。だから削る。削り、削り……最適化した“完全秩序世界”を創る』
「そんな世界、誰が幸せになるんだよ!」
リーナが叫ぶ。
「誰も不幸にならない。誰も迷わない。誰も選ばずに済む」
黒蓮が淡々と言う。
「それは……“生きる”って呼べないんだよ……」
ネフェリスが震える。
■ 蓮の創造術が進化する
黒蓮の闇世界が形を取っていくのを見て、蓮は胸の奥が熱くなるのを感じた。
「……だったら、見せてやるよ」
蓮は片手を前にかざし、六つの光輪を回す。
イリスが驚いたように言う。
「蓮……あなた、仲間たちの“心象世界”を取り込んで……!」
「俺ひとりの“創る世界”じゃない。みんなの想いを重ねて――“未来”を創るんだ!」
◆
蓮の背後に六つの“世界片”が浮かび上がる。
リーナの世界片は――温かな草原の風と、自由を象徴する剣。
シャムの世界片は――仲間を守る強さと、誇りの炎。
ネフェリスの世界片は――歌と笑顔が弾む、光のきらめき。
ノアの世界片は――記録と未来への橋渡しとなる青い軌跡。
ミストの世界片は――理と論理が美しく交差する幾何学の光。
イリスの世界片は――蓮への想いと、世界を包む深い銀光。
◆
蓮は手を振り上げ、叫んだ。
「――創造術・第二式!」
「多心未来境界〈マルチハート・ホライズン〉!!」
六つの世界片が融合し、蓮の足元から巨大な創造陣が輝きを放つ。
「これが……蓮の創造力……!」
リーナが息を呑む。
「世界を“ひとり”で作るんじゃない。“仲間と一緒に作る世界”だ!」
蓮が踏み出す。
■ 創造理念の衝突
黒蓮の創造式が放つ黒の波動。
蓮の多心未来境界が放つ白の奔流。
二つが正面からぶつかり――階梯そのものが悲鳴をあげる。
「っ……この衝撃……!?」
シャムが踏ん張る。
「二つの創造理念が“世界の根本コード”に干渉してるのよ!」
ミストが叫ぶ。
白と黒――
未来と秩序――
自由と最適化。
互いの理念が、力として世界を書き換えようとする。
『世界は統制を求める!人間は弱い。だからこそ、完全秩序こそ正義!』
「違う!!」
蓮が叫ぶ。
「弱いからこそ――繋がって、信じて、支え合うんだ!!
それが“生きる世界”だろ!!」
白光が爆発し、黒蓮の創造式を一部打ち砕く。
黒蓮が初めて、怒りにも似た感情を浮かべる。
『……理解不能。“仲間”という不確定要素が、なぜそこまで力を……!』
「お前には一生わからないよ」
蓮は静かに言う。
「だって――お前は“ひとりの俺”の亡霊だから」
■ そして、階梯が動き出す
二つの理念が衝突し続ける中、階梯そのものが震え、天へ向かって伸びる。
文字が空に浮かび上がる。
《創世階梯、第三段階へ移行》
《概念・世界観の統合を開始》
「階段が……上がっていく……!」
ネフェリスが指をさす。
ミストが小さく呟いた。
「つまり――次は“理念の統合”……お互いの世界観が、直接ぶつかり合うフェーズに入る」
「蓮……!」
イリスがそっと手を握った。
「いよいよ“核”に触れる戦いよ」
黒蓮が静かに言う。
『次の階梯は――“根源理念の直撃戦”。ここから先は、一切の加護も仲間の干渉も通用しない』
蓮は目を細め、深く息を吸う。
「……俺ひとりの戦い、だな」
「違うよ」
リーナが強く首を振る。
「蓮がひとりで戦うなんて、誰も望んでない!」
「蓮くん、絶対に戻ってきてね……!」
ネフェリスが涙ぐむ。
「蓮。あなたは一人で階段を登るけど――あなたの“核”には、私たちが必ずいる」
イリスが肩に手を置く。
蓮は皆を見渡し、微笑んだ。
「ありがとう。必ず勝って――未来を創る」
影の蓮が背を向け、次の階段を上り始める。
創造主としての“最終理念”――次の階梯で、すべてが決まる。
お読みいただき、ありがとうございます!
よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!




