チョコレート事件
<短歌>
〜チョコレート事件〜
チョコレート
甘い誘惑
捕らわれて
奪った彼を
血に染め眠る
映画。チョコレート事件。
ある日、チョコレートケーキを食べてしまった旦那は妻である美奈子に激情され殺される。
妻である美奈子は冷静になった後に警察に行き、自首をするが・・・。
刑事「そもそも、美奈子さんが異常なまでにチョコレート依存性であることは旦那さんも承知だったはず、
勝手に食べてしまうとは考えにくい」
助手「あ!じゃあもしかしてこの事件は誰かが旦那さんがチョコレートを食べたように見せかけた?」
刑事「ああ、そんなことができるのは妹である華さんだけだ、
事件の日、家を訪問していたようだしな、
夜は部屋のどこかに隠れ、機会を伺う、
そして、寝ている旦那さんの口にチョコレートを付け、残りは自分が食べたんだ」
しかし、チョコレートケーキを旦那が食べたように見せかけたのは妹の華だった。
美奈子「でも、どうして華がそんなことを・・・」
刑事「華さんはお姉さんの旦那さんが浮気を繰り返していることに気付いたんじゃないですか?」
華「はい・・・」
刑事「それで今回の計画をを思いついた、
だが、殺してしまうとまでは予想していなかったんじゃないですか?」
華「はい、まさかお姉ちゃんが殺すなんて思ってなかったの、依存性を甘く見てた、ただ別れてくれればいいと思って・・・」
美奈子「知ってたわ、彼が浮気を繰り返してること」
華「え?」
美奈子「彼、セックス依存性だったのよ、
そのことは私以外に言っていなかったみたいだから華が知らないのも無理はないわ、
そして私はチョコレート依存性、だからお互い目を瞑りましょうということで関係を維持していたわ」
華「そんな・・・じゃあ私は上手くいってる二人にあんな・・・ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
美奈子「顔を上げなさい華」
華「だ、だって私のせいでこんな・・・
お姉ちゃんは私を恨んで罵倒するなり殴るなりしてよ!」
美奈子は首を静かに横に振った。
美奈子「私はきっとこうなることをどこかで望んでいたのかもしれないわ、
浮気とチョコレートじゃ割が合わないと思っていたのは確かだし、
正直、彼との関係は疲れていたの」
刑事「では美奈子さん、そろそろ行きましょう」
美奈子「ええ」
華「待って下さい刑事さん!殺したのは私!私なんです!お姉ちゃんは何も悪くありません!」
美奈子「華いいのよ、いつかこうなる気がしてたわ、
それよりも人を殺した私が言える立場じゃないけど体には気をつけなさいね」
華「待ってお姉ちゃん!お姉ちゃん!連れて行かないでぇ!!」
遠ざかっていく姉の背中。
事件現場で妹の悲痛な叫びが響いていた。
助手「悲しい事件でしたね」
刑事「ちゃんと話し合っていたらこんな結末にはならなかったかもな」
助手「そうですね」
刑事「お前も伝えたいことは伝えられるうちにちゃんと伝えた方がいいぞ、
家族であれ恋人であれ、友人であれな、
人は死んでしまったら伝えることはできないからな」
助手「身に染みます」
ガーネット「ぐすっ、ぐすっ、もう涙止まらないよ」
マーガレット「大丈夫?」
マーガレットがティッシュを取り出してガーネットに渡す。
ガーネット「ありがと、チーン!!
はぁ、スッキリした」
二人は公園に移動し、ベンチに座った。
マーガレット「それにしても依存性って怖いわね」
ガーネット「たかがチョコレートでしょ?って周りは嘲笑って馬鹿にしてたね」
マーガレット「ええ、でも私はそうは思わないわ、
依存性ってそんな簡単な話じゃないのよ」
ガーネット「私もそう思う!誰だって何かに依存して生きてるんだもん」
マーガレット「そうなの、それは家族だったり恋人だったり、友人だったりペットだったり・・・それを奪われたと思ったら考える間もなく沸点が頂点に達することだってあるはずよ」
ガーネット「ん〜!やっぱりマーガレットは話が分かるね!」
マーガレット「ただ、最初から話し合っていたらもっと別の結末もあったんじゃないかって、あの刑事さんみたいに思ったのも確かね」
ガーネット「うんうん、やっぱり話し合いって大事だよね!キースにも言ってやらなきゃ!」
マーガレット「あら?キースと喧嘩しちゃったの?」
ガーネット「そうなの!キースってクールな感じでしょう?
言葉が足りないところがあるからすれ違いが時々あってさ、
この間だって私のプリン勝手に食べちゃうし!」
マーガレット「それはすれ違いではない気がするけれど・・・」
ガーネット「私が怒ったら申し訳ないと思ったのかプリン10個も買ってきたの」
マーガレット「まぁ、10個も??それはさすがに食べ切れないわね」
ガーネット「一つ残らず全部食べてやったわ!」
マーガレット「あら・・・そう言えばガーネットは甘いものは大食いだったわね」
ガーネット「そうそう!食べ物の恨みは怖いんだからってふんぞり返って言ってやった!」
マーガレット「そしたらキースは何て?」
ガーネット「そしたらキース、凄く安心した顔してて、
その顔見たらなんだか申し訳なくなってきちゃったんだよね、
私って子どもじみたことしてたなぁって」
マーガレット「じゃあ、和解はしたのね?」
ガーネット「うん、私からも謝ってね」
マーガレット「素直に謝れるのも子どもっぽいところも含めてキースはガーネットのことが好きなんじゃないかしら?」
ガーネット「そうかな?
マーガレットのとこは喧嘩無さそうだよね、したことある?喧嘩」
マーガレット「う〜ん、ないわね」
ガーネット「凄いねそれも、何か秘訣でもあるの?」
マーガレット「秘訣なんてないわ、ヘレンが大人なだけよ」
ガーネット「あー、ヘレンは優しいからねぇ」
マーガレット「私が何かやらかしても怒らないし優しく慰めてくれるの、なんだか私の方が子どもみたいね」
ガーネット「あは、私たちまだベビちゃんだもんね!」
マーガレット「"もう"30になるのよ私たち」
ガーネット「"まだ"30だよ!私たちの人生はまだまだこれからなんだから」
マーガレット「相変わらずガーネットはポジティブね」
ガーネット「・・・」
マーガレット「ガーネット?どうかした?
私何かまずいこと・・・」
ガーネット「この間、ポジティブなのは良いが俺の気持ちが分かってないって言われた」
マーガレット「あら・・・それじゃあさっき言ってたすれ違いってそのことだったのね」
ガーネット「うん、キースはナイーブなところがあるから、
私のゴーイングマイウェイな精神が鼻に付いたみたい、
私って時々暴走しちゃうから」
マーガレット「和解はしたの?」
ガーネット「ううん、まだ」
マーガレット「・・・ガーネット、今すぐ伝えるべきよ」
ガーネット「え、今?」
マーガレット「ガーネットは自分にも非があったなってちゃんつ思ってるんだもの大丈夫よ」
ガーネット「マーガレット・・・なんだか今日はマーガレットの方がお姉さんみたい」
マーガレット「うふふ・・・ほらガーネット、今がチャンスよ」
ガーネット「で、でも・・・」
マーガレット「伝えたいことは伝えられるうちに」
ガーネット「!」
マーガレット「そう刑事さんも言っていたでしょう?
らしくないわよ、ガーネットがくよくよ悩むなんて」
ガーネット「うん、ありがとマーガレット、私行ってくる!」
そう言って立ち上がったガーネットにマーガレットは細い両手の拳を丸めてガッツポーズをした。
マーガレット「行ってらっしゃい」
大丈夫、きっと上手くいくわ。
だって二人は互いに想い合っているんだもの。