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【インド戦国時代解説】なぜ織田ノヴァ長はタージマハルの変で討たれたのか

作者: 田島はる

 インド戦国時代を語る上で、織田ノヴァ長を避けて通ることはできないだろう。


 桶カルマの戦いで天下に最も近いとされた武将、ガンジス川義元を討ち、斎藤氏の本拠であった稲葉山を手中に収めた織田ノヴァ長は、稲葉山をエベレストと改称することで、自らがインドの頂きに立つのだと宣言した。


 そうして瞬く間に周辺諸勢力を併呑した織田ノヴァ長であったが、インド統一を目前に家臣のアグニ光秀の謀反に遭い、宿泊先のタージマハルが炎に包まれる中、「人間五十年」で知られる辞世の句を詠み、軽快にインドダンスを踊り自害したというのは、読者諸兄らもご存じの通りである。


 しかし、なぜアグニ光秀が謀反を起こしたのか。その理由に関しては未だ明らかになっておらず、巷では怨恨説や宗教対立説、足カルマ義昭黒幕説など、様々な説が囁かれている。


 中には、織田家有力家臣にして、のちの天下人、羽シヴァ秀吉黒幕説などというトンデモ説まで囁かれており、今日まで多くの歴史学者の間で論争の的となってきた。


 結論から述べると、筆者は「魔が差した説」を提唱しており、大軍を擁して行軍していたアグニ光秀が、偶然にも織田ノヴァ長の宿泊するタージマハルの前を通りかかり、不意に魔が差してしまい謀反に及んだものと考察している。


 論拠としては、その後のアグニ光秀のあまりに杜撰な行動が挙げられる。


 タージマハルの変で織田ノヴァ長を自害に追い込んだアグニ光秀は、自身の娘であるガネーシャを嫁がせた細川氏に対し、自身の元につくよう要請するも断られ、かつての主君であった足カルマ義昭を奉じる間もなく、中国から戻った羽シヴァ秀吉によって討たれている。


 タージマハルの変で織田ノヴァ長を自害に追い込んで以降のアグニ光秀の動向は、あまりに場当たり的で計画性に欠けていたのだ。


 その結果、織田ノヴァ長の後継者に三蔵法師を擁立し、織田家の主導権争いを制した羽シヴァ秀吉が天下人の座を掴み、インド統一を成し遂げたのだ。


 しかし、熱心な羽シヴァ秀吉黒幕説の信奉者は次のように考えるだろう。


「なぜ羽シヴァ秀吉はアグニ光秀を討つことができたのか。タージマハルの変が起こることを知っていたからこそ、前もって準備をしていたのではないか」と。


 一見、この反論にはある種の説得力があるように思える。


 たしかに、織田ノヴァ長亡き後、誰が最も得をしたのかと考えれば、羽シヴァ秀吉の名が挙がることだろう。


 織田ノヴァ長の天下を簒奪し、自身が次の天下人となるべくアグニ光秀を唆したのであれば、わずか10日という短い期間で中国大返しができたのも説明がつき、

()カリーシヴァ田」の異名で知られる猛将シヴァ田勝家や米のように便利なことから「インディカ米五郎左」の異名で知られるニルヴァーナ長秀ら有力家臣に先んじてアグニ光秀討伐ができたのも、自身が裏で手を引いていたのであれば容易に納得がいく。


 しかし、これらは結果ありきの考察であり、当時の羽シヴァ秀吉軍の陣容を考えれば、中国大返しは決して不可能ではなかったと言える。


 通説では、中国攻めを行なっていた羽シヴァ秀吉軍が、織田ノヴァ長訃報の報せを聞き、急ぎ中国からヒマラヤ山脈を越えインドに戻ったとされている。


 これら一連の行軍は中国大返しとされ、羽シヴァ秀吉の電光石火の如き進軍には配下のモンゴル騎馬民族出身の武将である、竹中ハーン兵衛や黒田カーン兵衛らの活躍があったことは間違いない。


 しかし、いくらモンゴル騎馬民族出身の武将の助けがあったからといって、ヒマラヤ山脈を縦断するのは容易なことではない。当然、相当数のシェルパ(ヒマラヤのガイドを生業とするネパールの少数民族、またはヒマラヤガイドの総称)が必要となったことは想像に難くない。


 タージマハルの変を聞きつけてからシェルパを雇おうにも羽シヴァ秀吉軍が必要とした相当数のシェルパを考えると、一朝一夕で用意できたとは考え難く、ヒマラヤ縦断に必要となる準備も考えれば、中国大返しはまさに奇跡の行軍だったと言えるだろう。


 もっとも、これらヒマラヤ縦断の困難さが羽シヴァ秀吉黒幕説に信憑性を与える根拠の一つとなっているのだが、これも羽シヴァ秀吉の出自を考えればいくつか説明がつく。


 まず、羽シヴァ秀吉は天下人でありながらその出自は謎に包まれており、天下人となってからも羽シヴァ秀吉の親族はそのほとんどが謎に包まれている。


 また、桶カルマの戦いでは織田ノヴァ長の配下となっていたものの、それ以前ではガンジス川義元の配下であったとの記述が残されており、それ以前の羽シヴァ秀吉の動向には不明な点が多い。


 こうした羽シヴァ秀吉の出自に関して、近年急速に支持を集めているのが「羽シヴァ秀吉シェルパ説」である。


 シェルパとはネパールの少数民族の一つで、ヒマラヤのガイドを生業とする民族である。当然、インドとネパールを幾度となく行き来しているため、同地の地理に明るく、大将である秀吉自身がシェルパだったと考えれば、中国大返しを成しえたことにもある種説得力を与えられる。


 また、ガンジス川の水源がヒマラヤ山脈であったことも考慮すると、川を下りガンジス川流域に支配権を持っていたガンジス川義元の元に仕官するのも自然な流れのように思える。


 その後、織田ノヴァ長の元に仕えることになった羽シヴァ秀吉は、その類まれなる能力で大いにそのインド統一事業を助けることとなるのだが、これもネパール人特有の屈強な身体を生かしているのは想像に難くない。


 また、中国大返し以降、多くのグルカ兵(ネパールの傭兵)が羽シヴァ軍で活躍したのは読者諸兄らもご存じの通りである。


 代表的なグルカ兵出身の戦国大名といえば、カトマンズ清正の名が挙がるだろう。


 中国大返しでインドに戻って以降、多くの戦役で武功を挙げ、ついには羽シヴァ政権の元で大名となるのだが、こうした武功の陰には多くのグルカ兵が存在しており、羽シヴァ秀吉のインド統一事業を支える上で支柱を担ったことは間違いない。


 中国大返しの裏では、モンゴル騎馬民族出身の竹中ハーン兵衛や黒田カーン兵衛の活躍があったことはもちろんだが、自らシェルパとして軍を導いた羽シヴァ秀吉や、グルカ兵として戦ったカトマンズ清正の活躍があったのも事実であろう。


 こうした多民族を束ね、自らの力とする人望が、「人たらし」で知られる羽シヴァ秀吉たる所以なのではないだろうか。


 もっとも、こうした多民族を用いたことで、羽シヴァ政権下で有力大名であったドゥルガー家康の不興を買い、秀吉の死後、インド人による統一王朝としてデリー幕府が君臨するのだが、その250年後、同じインド人であるガンジーの手によって倒幕されるのはあまりにも皮肉である。


 最後に、インドから遠く離れた日本の文学から以下の文を引用し、本作の締めに入りたいと思う。


 祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。

 本作は「なぜ織田ノヴァ長はタージマハルの変で討たれたのか」と銘打っているものの、その文量の半分がなぜか「羽シヴァ秀吉シェルパ説」の説明に割かれていおり、失望した読者諸兄らもいるかもしれない。


 しかし、前述の通り筆者は「魔が差した説」を提唱しており、アグニ光秀に魔が差したから以上の説明は不要だと考えている。


 そのため、トンデモ説として名高い「羽シヴァ秀吉黒幕説」の否定と、近年急速に支持を集めている「羽シヴァ秀吉シェルパ説」を述べ、「羽シヴァ秀吉シェルパ説」に対する理解を深めてもらいたいと考え、本作の筆を執るに至った。


 また、「羽シヴァ秀吉シェルパ説」はインドでは急速に広まりつつあるものの、日本ではまだまだ受け入れられていないのが現状である。そうした中、本作を読んで「羽シヴァ秀吉シェルパ説」に関する理解を少しでも深めて貰えれば、望外の喜びである。


 最後に、本作を読んで「ためになった」と思った方、「インド人もびっくりだ」と思った方は評価とブクマをしてもらえると嬉しい。

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― 新着の感想 ―
本ガンジー教如黒幕説についての見解をお聞きしたいところであった
織田ノヴァ長を思いついた直後に、中国(地方)大返しじゃなくて中国(国)大返しってのを思いついて、衝動的に書き上げたって言われても信じるくらいにはピッタリで笑う
お!これは新作の布石かな?アナタの作品ニヤニヤ多くて好きなんです。
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