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【完結】神様に元の世界に帰りたいと願ったら身体を要求された  作者: 仲津山遙
第2章 貴族院編

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096話 魔法のフルーツ

 メリディコマーシア領の領主が結界モニュメントとマギウス・ポータルの強引な設置で、世界樹からの魔素供給が止まった事件は領主交代と共に帝国中にニュースとして駆け巡った。取りあえず俺は取り扱い注意人物として貴族連中には認識されたようだ。

 アモルとリーリを誘拐した実行犯は貴族院の元教師だった。この件は魔聖が対応してくれるようで、もう実行犯も捕まっているので処分するだけのようだ。聞いた所によると金に困っていて元子爵から多額の金を受け取って実行したらしい。まあどこにでもこういう(やから)は居るよね……。


 この頃、父が城を抜け出して1人でどこかへ行っているようだ。ボロボロの恰好で帰って来るので気が付いた感じだ。剣聖に聞いても良く分からない答えが返って来る。


「男には1人でやらねばならぬ時があるのだ」

「う~ん。俺は同じ男だけど良く分からないよ」


 心配と言うよりは好奇心が強い感じで、蒼汰で後を着けようと思ったけれど、例え認識阻害をしていても何故か父母にはバレるので、どうしたものかと考えていると夏なので収納から出して食べていた濃厚練乳ジェラートを嗅ぎつけたのか朱雀が現れた。


『あ! ソータ狡い!』

『朱雀か。濃厚練乳ジェラート食べる?』

『うん!』


 宝箱に入れるのは面倒だったので原初の海に持って行ってやるかと思っていたら、マレ婆が俺の部屋に入って来た。掃除道具を持っているので掃除をしに来たようだった。


「まあ! ホリゾンと一緒ではないのですね」

「父さんは、また出かけたの?」

「ええ。ホリゾンが出掛けたので、ご一緒したのかと思い込んでいました」

「えー? また父さん出かけたのか……」


 俺は朱雀を見上げると思い付く。


『朱雀。その原初の海から生命の庭を見下ろすのは俺でも出来るのかな?』

『アルティウスならできるんじゃないかな』


 物は試しとばかりにやって見る事にした。この方法で父を尾行したら絶対に気づかれないよね!


「婆。朱雀の所に遊びに行ってくるね」

「いってらっしゃいませ」


 俺はベッドに横になると、収納から朱雀の分の濃厚練乳ジェラートを出してから、原初の海に向かった。鳥人の集落の朱雀の寝所に出たようで、俺は朱雀に濃厚練乳ジェラートを渡した。


『うわっ! 何これ生乳かな? 冷たくて甘くてトロリとしていて美味しい!』

『生乳に砂糖を入れて煮詰めた奴を凍らせたお菓子だよ』

『後で鳳凰にレシピ教えて!』

『分かった。簡単なんだけれど自分で作るって言わないのが朱雀らしいね! それよりも生命の庭を見下ろす方法を教えてよ』

『行きたい所とか見たい場所を強く思い浮かべると見られるよ。最初は僕が行くから、ソータが僕に着いて来るイメージの方が覚えやすいかも』

『それなら父さんの所に行きたいんだけれど』

『ホリゾンね。じゃあ着いて来て』


 朱雀が近くの椅子に座って生命の庭に向かったようだ。その前にジェラートは凄い勢いで食べられて数秒でなくなった。俺も椅子に座って朱雀の所へ行きたいと願う。城から商業区の方へレビタス・バイクで向かっている父が見えた。隣には朱雀が浮かんでいる。


『成程。皆に身体を貸した時と同じような感じなんだね』

『あ、ソータはそれで経験があると言えばあるよね』

『うん。これで1人でも同じことができそう』


 商業区の冒険者ギルド前で父はレビタス・バイクを降りた。冒険者ギルド前で待ち合わせをしていたようで、そこには熊人パーティのメンバーが5人揃っていた。熊人パンダのアイルも居て勢ぞろいしている。


『ぐむぅ……俺も混ざりたいモフモフしたいのに』

『帰りに白虎の所に寄って行ったら?』

『白虎は匂いがついて生命の庭のモフモフ獣人から避けられるから最後の手段だね』


 父はグロスに挨拶をした。


「グロス殿。何回も付き合わせてしまって、すみませんね」

「冒険者ギルドのクエストで稼がせてもらっているからな。良いって事よ!」

「それにしてもソータさんと剣聖と一緒の方が楽じゃないですか?」


 アイルは父がパーティを組んでいる俺と剣聖に頼まないのを疑問に思ったようだ。


「あの2人が居ると移動や戦闘に苦労しないので、満足感が薄くなるので今回はパスですね」

「そうなんですね。僕は楽な方が好きなので、人数合わせで楽をさせてもらいます!」


 白熊人のアルブムが父の肩を叩いた。


「俺は財布が軽くなっちまったんで、当てにしているよ!」

「お前、また闘技場でスッたのか?」

「金は貸さねぇぞ!」


 プーレとテネルにアルブムは言われた。父は呆れながらアルブムにアドバイスをする。


「ソータ殿にモフモフさせれば、お小遣いくらいくれそうですが」

「それはもうやった!」

「「「「「はやっ!」」」」」


 アルブムはギャンブラーで稼ぎの殆どを闘技場に使っている。帝都からこちらに帰って来てモフモフさせるから小遣いをくれと言われて上げてしまった。こんな感じなので帝都にレビタス・レース場が出来るとは言わないで置いてある。

 冒険者ギルドのロビーに入って受付に声をかけた。受付のお姉さんが担当してくれて、父に声をかけてくれた。


「ホリゾン様。また行かれるのですね?」

「はい。手続きお願いします」

「畏まりました。しばらくお待ちください」


 父が受付のお姉さんの手続きを待とうとすると、後ろから声を掛けられる。


「あら、ホリゾンさん。また行かれるのですね」

「これも愛の成せる技だねぇ」


 声をかけて来たのは冒険者ギルド長のエレガンターで、解体長のプルクルムと一緒に居て猫人の美人パートナーの2人だった。


「はい。お2人は今日お休みですか?」

「そうなのよ。問答ダンジョンに行ってみようかと思っているの。途中までご一緒してもよろしいですか?」

「構いませんよ。美人と途中まで行けるなんて張り合いが出ますし」

「あら? 奥様に怒られてしまいますよ」

「パートナーのお2人を褒めても姫様は気にしませんよ。逆にどうしたら嫉妬してくれるのか謎です」

『愛と聞いて私、青龍が参上よ!』

『もう……。良い所なんだから邪魔しないでよね』


 朱雀の隣に青龍が現れた。恋愛脳バリバリなので嗅ぎつけたようだ。


『ソータのお父様とお母様の愛の行く末は、祝福した身としては気になるじゃないの!』

『はいはい。見るのは良いけれど静かに見てね』


 父さんのプロポーズ前に青龍が祝福していたので、父母はお気に入りのカップルのようだ。

 父の疑問にプルクルムが答えた。


「ホリゾンさんの目は節穴だねぇ。アーラさんからの独占欲を求めたら駄目よ。慈母の鏡みたいな目をして見ているよ」

「姫様は昔からそうですね」


 まあ姫って立場だから公平に人を評価するよね。でも俺と剣聖がパーティメンバーとして仲良く活動していると、父に対して構ってちゃんを時々に発動しているので独占欲がない訳ではないと思うけれどね。


 受付のお姉さんのダンジョン行きの手続きが終わったので、父達は冒険者ギルド前の宇宙港行きレビタス車に乗って宇宙港に向かった。宇宙港で定期便に乗り換えてダンジョンパークに着く。宇宙船の発着場から北の丘の上に行くとエレガンターとプルクルムとは別れた。


「それでは気を付けて下さいね。ホリゾンさん」

「はい」


 エレガンター達は宝箱狙いで問答ダンジョンに行くようだ。

 父と熊人一行は丘の上から海岸に降りて試練のダンジョンに向かった。まさかこのメンバーでドラゴン戦とかやらないよねとか思っていると、1本路を抜けて大きな広間に出ると遠くに鎮座していたのは巨大な亀のような魔物だった。


『フライングタートルだね。僕、何が欲しいか分かっちゃった!』

『朱雀が気づくって事は食べ物?』

『ソータは僕を何だと思っているんだよ! 悔しいけど当たり』

『愛の予感がヒシヒシと感じられるわ!』


 フライングタートルの口には大きな牙が生えていて、背中の甲羅の上にはヤシの木のような植物が複数生えていた。背中の甲羅の植物を無くすと有名な怪獣映画のガ○ラに見える。

 父と熊人達は慣れた物で特に打ち合わせもなく戦闘を始めた。父がフライングタートルに突っ込むと口から青い炎のブレスを吐かれる。父は盾でブレスを防ぎながら自分に注意を向け、甲羅から出ている頭に片手剣で切りかかった。切られたら堪らないとフライングタートルは甲羅の中に頭を引っ込めた。


「今です!」

「「「「「おうっ!」」」」」


 父の合図で熊人達は左右に分かれてフライングタートルの甲羅によじ登ろうとした。フライングタートルはそれを察知したのか足が引っ込んだ所から青い炎を拭き出して浮かび上がった。大きな広間と言えども天上があるので、それ程高くは浮かべないが熊人達が甲羅によじ登るのは阻止した。

 フライングタートルは頭を甲羅から出して強敵と定めた父を見据えると父に突っ込んで来た。父は一瞬の貯め動作をして剣聖の突進技を短期間、移動の為に発動させる。狙いとしてはフライングタートルの真下に移動したかったようで、目論見は見事に成功して、直後に剣を持った右肘を上に大きく突き出しながらフライングタートルの腹にエルボーを食らわせた。


ガグギャャャャァァァァ!!!!


 フライングタートルは凄い叫び声を上げながら地面に落ちて来た。父は突進技を使ってフライングタートルの下敷きになるのを回避する。熊人達がそれを好機として甲羅によじ登ろうとするが、父が制止する。


「グロス殿! 棘が来ます!!」

「「「「「うわぁぁっ!!」」」」」


 熊人達は回避しようとするがフライングタートルの背中が青く光って、棘状の突起が熊人達に襲い掛かった。父は予測していたのか突進技を2回発動し、2グループに分かれていた熊人達の前に迫っていた棘を盾で叩き落とした。流石にこの短期間に突進技を4回も使うと父の顔色が悪くなった。


『魔素症だ! 回復しないと!』

『待ってソータ。何か策があるみたい』


 俺は急いで生命の庭に戻って転移魔法で駆け付けようとしたが、朱雀に止められた。父は腰にぶら下がっている銃のような物のトリガーを引くと、水状の噴出物が父に降りかかった。どうやらホーミング水鉄砲をエリクサーにして自分に撃ったようで、父は魔素症が回復されて顔色が元に戻った。青龍が感心する。


『魔素症が治療できる薬品とか凄いわ!』

『あれエリクサーだよ』

『えっ!? エリクサーを飛ばせる魔術具なのかしら?』

『うん。ホーミング水鉄砲って言うんだ。旧ナノ・ゴーレム薬とエリクサーで切り替えられて、標的を追いかけて撃ち出せるよ。まさか自分を回復するために使う発想が俺にはなかったけれどね』

『玄武に見せたのかしら?』

『まだだねぇ。見せると作り方だとか色々聞かれて捕まるから黙っている所』


 青龍と無駄話をしていると、父がフライングタートルの頭に突進技で近寄って、ヘッドロックをかけて拘束していた。


「グロス殿、よろしく頼みます!」

「「「「「おうっ!」」」」」


 今度こそ熊人達は甲羅によじ登って背中に生えているヤシの木のような木に到達し、手分けしてヤシの実そっくりな実をもいでいた。グロス、プーレ、アルブム、テネルの4人が木によじ登って実を地面に落とし、アイルが拾って魔法鞄に詰めていた。それが終わって熊人達が入口の方に退避すると、父は腕に力を込めてフライングタートルの意識を刈り取った。父がグロスの所に寄って行って尋ねられた。


「殺したのか?」

「いいえ。少しの間、失神して貰っているだけです」

「そうなのか。では目的は達成したし帰るか」

「そうですね」


 父と熊人達は互いに戦闘を讃えながら帰路に就いた。財布がまだ軽いアルブムだけは、もう何回か戦闘したかったようだが、皆に呆れられていた。俺は食べ物について詳しい朱雀に聞いてみる。


『それでフライングタートルの背から木の実を取っていたけれど何なのアレ?』

『あれはペルシコスって言う名前の果物だよ。フライングタートルが死んじゃうと直ぐに枯れるから、取るのが難しいんだよね』

『へぇ。そんな果物を何に使うんだろう?』

『食べるんでしょ』

『それは愛よ!』


 青龍が暴走し出したので、俺は生命の庭に戻った。父が熊人達にペルシコスを母に持って行くと言っていたので、城の居間に移動して母を捕まえて置いた。居間に小細工をして剣聖一家しか辿り着けないように認識阻害をかけて置いた。母にニヤニヤした顔を向けていると不審がられた。


「ソータさん。何かあったの?」

「ううん。そろそろ父さんが帰って来るかなと思って」


 剣聖と婆は父が何をしていたのか知っていたようだ。


「でかした息子よ!」

「まあっ! 用意をしますね」


 剣聖が拳を握り、婆は居間を出て行くと食器の乗ったトレイを運んで来た。

 しばらくすると父が帰って来たようで、居間に来る前に身なりを整えたようで冒険の出で立ちではなく貴族服に着替えていた。母の近くに寄ると魔法鞄からペルシコスを取り出して片膝を跪いた。甘い香りが居間に漂い出した。


「姫様。結婚祝いに召し上がって下さい」

「あっ! 取って来てくれたの?!」

「ええ。少々手古摺りましたが、食べたいとおっしゃっていたので取ってまいりました」

「覚えていてくれたのね……。昔にお父様に献上されたペルシコスのお裾分けを、少しだけ頂いて美味しかったのを昔話として話しただけなのに。ありがとう! ホリゾン」

「喜んで頂けて何よりです!」


 母が立ち上がって父と抱きついて2人の世界に入ってしまった。青龍が涙目になって喜んでいた。朱雀はペルシコスを食べたそうだ。


『良い愛の育み方ね!』

『僕も食べたいな……。ペルシコス』


 キスをし出して2人の世界が発展しそうだったので、無粋と思いつつ俺は咳払いをした。


「ゴホンッ!」

「あ、すいません。ソータ殿も居たのですね」


 2人がイチャつく前から母の隣に座っていたんだけれど、父は眼中になかったようだ。


「悪いのですが、これを冷やしてくれると助かります」

「はいはい。俺は冷蔵庫代わりね。朱雀と青龍にもお裾分けして良い?」

「……もしかして見ていたのですか?」

「朱雀は甘い物好きだし、青龍の恋愛脳の養分になったよ」

「まあソータ殿のホーミング水鉄砲とエリクサーがなければ苦戦したので、お裾分けにいくつか差し上げますよ」


 父は魔法鞄から3個のペルシコスを出して俺に渡した。1個を残して収納にしまい、残った1個を重力魔法で宙に浮かべて、運動魔法で食べごろに冷却した。運動魔法で半分に割ると婆から貰ったスプーンを突き立てて皿に盛って母に渡す。受け取った母は喜んで食べ始めた。


「美味しい!」

「苦労した甲斐がありましたよ……」


 母の満面の笑みに父がはにかんだ。母はスプーンでペルシコスを掬って父にも食べさせていた。俺の持っている半分をさらに半分に割って、剣聖と婆にも渡した。ソラリスは婆に食べさせてもらっていた。

 俺も残った4分の1をスプーンで掬って食べてみた。表層に近い方は桃のようなあっさりとした食感で甘く、中心部に向かって行くとパパイヤやマンゴーのようなトロリとした食感になって仄かな酸味が加わった。中心の大きな種の周りはアボガドのようなクリーミーでまったりとした食感になり、ミルクのような濃厚な甘さになった。


「こ、これはジェラートにしたら美味しそう!」

「ソータさんが閃いた時は絶対に美味しい奴よ!」

「作って下さいソータ殿」

「儂も欲しいのじゃ」

「私も食べてみたいです」

「兄上。僕も食べてみたいです!」

『さっきの濃厚練乳ジェラートも美味しかったし、ペルシコスのジェラートも美味しそう! 僕も食べたい!』

『ソータは分かっているわよね?』


 皆に言われ、朱雀と青龍に後押しをされた。これは作るしかないと思い、アルグラを召喚する。アルグラは皆からの只ならぬ期待の目に黙ってしまった。


「……」

「アルグラ。これでジェラートを作ってくれ」


 アルグラに父から貰ったペルシコス2個を投入して、しゃもじでかき混ぜると完成した品が俺の手元に飛び込んで来た。重力魔法で浮かせたまま不要な分は収納にしまって皆に渡した。朱雀と青龍には宝箱経由で渡す。


「じゃあ食べてみようか」

「「「「「「『『うまっ!!!』』」」」」」」


 3つの美味しい層が合わさると、美味しさのランクが上がって幸せな甘さが広がった。僅かなフルーツ特有の酸味で後味も良く、何個でも食べられそうだ。魔法のフルーツはヤバイね……。父の魔法鞄にあったペルシコスも提供されて、あっという間にジェラートに加工して皆の腹の中に消えて行った。

 後で犬人達に居間に残った甘い香りについて問い詰められた。

次回の話は2025年6月18日(水)の19時になります。

帝都に帰る日がやって来ましたが?


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