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【完結】神様に元の世界に帰りたいと願ったら身体を要求された  作者: 仲津山遙
第2章 貴族院編

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089話 第2の詩篇[前半]

 帝都の宇宙港に着水しているアダムスキー型の銀色の円盤「オルビス・オデン」に乗り込んだ。今日は大公達が昔から狙っていたベトスの都に行くつもりだ。

 とっくに出発する時刻を1時間も過ぎたのに、俺は操縦室の制御装置を床から引き出して、魔術基盤の魔法陣を読み込んでいた。

 痺れを切らした大公カルディアが俺に詰め寄って来た。


「ちょっとソータさん! もう1時間も出発の時刻を過ぎているのだけれど!?」

「う~ん。どうせ直ぐに着くから、もうちょっと見させてよ」

「直ぐにって目的地のオクシヌーラムまでは、宇宙船で飛ばしても2日もかかるのだけれど?」

「そうなったらソータ殿は梃子(てこ)でも動きませんよ。ウノです!」

「ぐぬぬ……」


 父と剣聖は慣れた物で、銀色のおチビちゃんことアルゲヌス族のオデン達3人と考古科教授マギステルも含めて、俺が作ったUNO(ウノ)で賭け事をしていた。父が優勢なようで、先程にワイルドドロー4攻撃をトールから食らって剣聖の手札が増えていた。こちらの銀河はカードゲームもないようなので、そのうちに売ろうかなと画策していた物だ。トランプでも良かったけれどUFOでUNOを遊ばせたい気分だった!

 俺はこの船の魔法陣は全て読み込んだので、近くに侍らせていたオデンの精霊達を返した。


「精霊達、ありがとう。これで魔法と科学のハイブリッド部分が楽に構築できるようになったかな」

「気が済んだなら早く行きましょう!」

「そうだね。オクシヌーラムまで1時間くらいで着くって、フライト・プランを航宙者ギルドの航宙管制官に出し直して」

「冗談よね?」

「それが冗談ではないのがソータ殿なのですよ」


 カルディアは父に諭されたが半信半疑なようだ。オデンが操縦するようでUNOの後片付けと操縦室の制御装置を床にしまうと、オルビス・オデンは周回軌道上に上がった。空飛ぶ円盤で飛ぶのは、ちょっと楽しい。しかも操縦者がグレイにソックリな銀色のおチビちゃんだ!

 俺はこの船の世界樹の若木に聞いてみた。


「若木。俺の母さんの船の若木から、こっちへ来た時のやり方は聞けるか?」

『はい。コンコルディア・アーラの若木からソータ様の移動手段の方法は聞いております』

「話が速くて助かるね。それじゃあ転移魔法でオクシヌーラムまで一飛(ひとっと)びだからね!」

「「「「「転移魔法!!」」」」」


 俺達は西方中継点のオクシヌーラムと言う名の惑星に向かう所だ。転移魔法が初めて組の大公達は驚きの声を上げた。オデンと若木から宇宙船の操縦権を借りて、俺とミネルヴァで転移魔法を発動させた。船の下方に転移魔法陣が光って奇麗だなと思っている間に到着する。

 大公達は帝星テラサークルムからオクシヌーラムに、一瞬でスクリーンに映る惑星が移り変わって言葉を失った。


「俺が魔法陣で遊んでいた時間なんて、2日と比べたら誤差の範囲でしょ?」

「「「「「…………」」」」」


 父に大公達を放置するように言われた。


「私も初めはそうでしたが気持ちが追い付いていないと思うので、そっとして置きましょう」

「う~ん、そうだねぇ……。船の操縦権とかオデンに返したからね」


 しばらくして大公達が我に返ると行動は早く、オクシヌーラムの宇宙港に入港して湖に着水した。宇宙船の外に出ると、オクシヌーラムの世界樹銅から挨拶があった。


『は、初めての御挨拶をアルティウスの方に差し上げますが、よろしいでしょうか? 私はここオクシヌーラムの世界樹銅オクシドゥーヌムでございます』

「やあ、世界樹銅オクシドゥーヌムよろしく。俺は蒼汰ね。何か用かな?」

『特に用はございません。ソータ様にご挨拶をと思い立った次第です』

「世界樹であるか?」

「うん」


 外から見るといきなり独り言を発しているように見えるが、剣聖に問われたので答えた。世界樹ならばこの惑星に魔素を供給しているので、ベトスの都の入り口が分かると思うので聞いてみる。


「あ、オクシドゥーヌムならベトスの都がどこにあるか分かっているよね?」

『はい。水属性の結界モニュメントの近くにある崖上に、ベトスの都に通じるマギウス・ポータルがございます』

「崖上だね。ありがとう」

『どうも致しまして。それでお願いがございます。よろしいでしょうか?』

「ん? 時間かからなければ良いよ」

『ありがとうございます! お時間は取らせません! 以前にメリディヌーラムに行かれたと思いますが、そこの世界樹銅からソータ様に挨拶を省略されたので、ずっと泣いていると相談を受けたもので……』

「ああっ! そんなので悲しいんだね。名前だけ聞いておこうかな。何て言うの?」

『名前はメリディドゥーヌムなのでお見知りおきを! との事です。名前を伝えられて大変喜んでおります!』

「ふふっ! 仲が良いんだね。二人共によろしくね」

『恐縮です!』


 結構、世界樹同士でコミュニケーションをしているみたいだ。基本的に若木は名前がないらしいけれど、マギウスジェム領の世界樹銀は名前を聞いていなかったので、今度帰った時に聞いてみるかと心に留めた。

 世界樹との会話の間に入領手続きは終わったようだ。まあ大公に剣聖侯爵と皇女配の殿下が3人も揃って辺境伯も居るからね。最優先で手続きしてくれたようだ。

 俺は世界樹から仕入れた情報を、大公と擦り合わせをする。


「カルディア。ベトスの都に入れるマギウス・ポータルは水属性の結界モニュメントの近くにある崖上だって聞いたけれど」

「あら良く知っているじゃない」

「世界樹に聞いたからね」

「……ただの樹木よね? 船で転移する時と、船から降りた時は独り言じゃなかったのかしら?」

「その話は駄目です。世界樹との契約を停止されてしまいます!」


 父がカルディアに警告した。カルディアは世界樹と会話が出来るのが信じられないようだ。


「世界樹との契約をソータさんが小細工できるのは身に染みて知っているわ。それでオデン達が死にかけた訳だし。樹木と会話ができるのが信じられないだけ」

「私と仲間だったのですね!」


 父は喜んだ。前に試しで世界樹との契約を一時停止されたのは、余程トラウマだったようだ。


「創造神と会話していたでしょ。創造神と会話するのと世界樹と会話するのは、どっちが難しいんだよ。ちなみに世界樹は若木以外、それぞれに名前があるからね。俺も最近に知ったんだけれど」

「もういいわよ。世界樹様、いつも魔法を使わせてもらってありがとうございます。で良いのかしら?」

『感情が籠っていないので悲しいです……。ディヴェシータスがカルディアは世界樹の契約の時には感動して泣いて喜んでいたのに、大人になって擦れてしまったと嘆いています』

『へぇ。教えてやるか』


 俺が貴族院にある世界樹金ディヴェシータスが言っていた事をカルディアに伝えると、顔を真っ赤にして叫んだ。


「貴族院にある世界樹金が、カルディアは世界樹の契約の時には感動して泣いて喜んでいたって言っているけれど?」

「ちょっ! な、何をバラしてくれますかね!」

「カルディアにも可愛らしい時期があったのだねぇ……」


 夫のマギステルは感心したように呟いた。まあ貴族院入学時の十歳だと子供だからピュアだよね。これで信じてくれたようだから、マギウス・ポータルまで行こうと思う。


「じゃあマギウス・ポータルまで転移するね」

「その転移魔法でベトスの都には直接入れないのかね?」


 オデンが疑問を呈した。


「転移を阻害する仕組みが組まれてあって、一度入って登録しないと無理だね」

「成程。了解した」


 水属性の結界モニュメントの近くにある崖上に転移魔法で転移すると、ベトスの都に入れるマギウス・ポータル前に団体がテントを張ってキャンプを築いていた。旗を見ると世界樹と一緒に手の平を上にして腕を頭上に押し上げたポーズが図式化された紋章が描かれているので神殿のようだ。神殿とは関わり合いになりたくないので取って引き返そうとしたけれど、マギウス・ポータルから運び出された担架に乗った人を父が呼んだので様子を伺った。


「ファルサ?!」

「知り合い?」

「貴族院では同学年で、同じ騎士科を選択していました」

「親しかったの?」

「いえ、そういう訳では……」


 父の目が担架に乗った人の胸を凝視してから泳いだので、そう言う事かと自分で納得する。担架に乗った人は女性で胸が母より育っているようで、父の貴族院時代の青春を彩ったようだ。俺達が近づくと担架を担いでいる神官服を着た男2人に誰何された。


「何だね、君達は?」

「ここは神殿が発掘作業をしている所だ。用がないなら立ち去るが良い!」

「神殿省には発掘の許可を得ているよ。私は大公カルディア」

「私は貴族院の考古科教授マギステルです」

「私は皇女配のホリゾンです」

「儂は剣聖じゃな。爵位は侯爵である」

「私はオデン辺境伯だ」

「俺は辺境伯の従者トール」

「僕は同じく辺境伯の従者ロキ」

「俺は……付き添いの蒼汰ね」

「「神殿の敵ソータ!!」」


 他の皆の身分や剣聖を無視して、俺に対する言われ方にムッとした。父に揶揄われる。


「ソータ殿に二つ名が付きましたね!」

「嬉しくない二つ名だね……」


 神官服を着た男2人が俺に驚いて、担架を落としそうになったので重力魔法でゆっくりと地面に降ろした。病人だか怪我人だか知らないけれど、俺を見て落とすのは酷いと思う。


「酷い火傷だね」

「ソータ殿……」


 ファルサと言う名の女性は両足に酷い火傷を負っていた。服も焦げているので両足がむき出しになっている。父が治療して欲しそうだったので水鉄砲を改良したホーミング水鉄砲を取り出した。中にはエリクサーが入っている。


ブシュッ!


 ホーミング水鉄砲から飛び出した液体弾は、本体にある魔法陣で撃った者の魔素を付与して標的を追尾するホーミング機能を追加した。さらに液体弾の切り替え機能も付けたので、旧ナノ・ゴーレム薬に切り替えて神官服を着た男2人に撃った。


ブシュッ! ブシュッ!


「「うわっ!」」

『ミネルヴァ、この2人は眠らせて』

『了解しました。マスター』


 2人は俺が銃口を向けたら逃げるが、旧ナノ・ゴーレム薬は追尾して命中した。2人は意識を失って眠って倒れ込んだ。父が水鉄砲の動きを見て驚く。


「何か先程は水鉄砲から発射した液体が、標的を追いかけたように見えたのですが?」

「対神殿用に改良したんだよ! 追尾機能と旧ナノ・ゴーレム薬とエリクサーの液体弾を切り替えられるようにね。良いでしょ!」


 俺が自慢すると無言で父と剣聖が手を差し出したので、俺はホーミング水鉄砲と補充用の液体弾の容器を2人に渡した。2人から前に渡した水鉄砲は返却されたけれど、また収納の肥やしが増えた気がする……。

 ファルサが目を覚ましたようで身じろぎした。両足の酷い火傷もエリクサーで治療されたようで、奇麗な肌に戻っている。


「私……死んだのかしら?」

「ソータ殿がエリクサーで治療してくれました」


 父がファルサに告げると父と剣聖を見直して目を見開いた。


「ホリゾン……と剣聖!!」

「治療の報酬として中で何が起きているか、話してくれても良いのですよ」


 父はファルサに要求した。ファルサは自分の両足を見て驚愕する。


「な、治っている! 本当にエリクサーなの?」

「うん。一杯作ったからね。病気も怪我も全部治療されたはずだよ」


 実はエリクサーを使った事がなかったので実験台にしたとは言わなかった。ちなみにエリクサーは父達にも言っていないけれど、十樽くらいあるのでジャブジャブ使っても問題ない感じだ。

 ファルサは自分の両足とマギウス・ポータルを見て逡巡したが決断したようで話してくれた。父が相手をするようだ。


「私と姉妹は神殿騎士になって、ここのベトスの都の調査団の護衛に来たのだけれど、都の魔物が強くて私は両足をやられて運ばれたの」

「あいつら2人も中に居るのか?」

「ええ。気を失う前までは戦っていたはずよ」

「魔物は何が出たんだ?」

「メジェドよ」

「それは……」

「何それ? 強いの?」


 父が言い淀んだので聞いてみた。何か地球でも聞いた事のある名前だけれど思い出せない。剣聖が答えてくれる。


「メジェドは白い布を被って目と足だけ出した格好の人型の魔物じゃ。素早い動きと目から光線を出すので厄介じゃのう」

「あっ! 古代エジプトの神様だ! 道理で聞いたことある名前だと思ったんだよね」

「神なんて生易(なまやさ)しい代物じゃないわよ! 光線を浴びると火傷で済めば良いけれど、下手すると当たった所が炭になって消し飛ぶのよ!」


 ファルサに窘められるが、古代エジプトって言ってしまったけれど突っ込まれなくて良かった。地球との違いはなさそうなので興味が出て来た。特にその白い布の下がどうなっているか気になる。クエスチョンなお化けの中身とか、某空飛ぶ鉄道の車掌(しゃしょう)さんの中身とか気になって仕方がない俺である。

 俺達はファルサから少し離れて話し合った。


「俺的にはメジェドを無力化して捕まえたいんだけれど」

「ちょ、ちょっと何さらっと、とんでもない事を言っているのよ!!」


 カルディアに突っ込まれる。


「そうすると神殿を間接的に助ける事になるのですが良いのですか?」


 父に重要なポイントを詰められた。


「どうせメジェドを何とかしないとベトスの都を見て回れないからね。その次いでに神殿を助けちゃう事になるのはしょうがないよね」


 俺は乗りかかった船なので押し通した。


「ソータ殿には策がありそうですね」

「儂は構わぬ」

「そこまで言うなら仕方がないわね。ただ私、戦闘は無理よ」

「私も戦闘職ではないのでお任せします」

「我々も従おう」

「戦闘なら任せてくれ」

「それで良いが、僕は戦闘向きじゃないぞ」


 父と剣聖とトールは戦闘に参加してくれるようだ。俺も戦闘職じゃないんだけれどね……。

 父はファルサに近寄ると俺達の目的を告げた。


「我々もベトスの都に用があります。通りかがった所に姉妹が居るようでしたら助けられるかも知れませんね」

「まあっ! ホリゾンが助けてくれるのね!」

「助けるとは言っていませんよ……」


 ファルサは父にすり寄って、大きく発達した胸の果実を押し付けた。満更でもないのか父が鼻の下を伸ばす。同じ男としては理解できるが、息子としては理解したくないかな……。それを見たカルディアがニヤ付いて父を揶揄った。


「アーラちゃんに告げ口しようかなぁ」

「こ、これは勝手に押し付けられただけです!」

「息子が鼻の下を伸ばすのは見ておられんな……」

「父上だってベトスの都でインサニアに会ったら、そう言っていられますかね!」

「なにっ! それは急がねば!」


 どうやら剣聖の性癖にドストライクな女性が姉妹2人のどちらかのようだ。父が鼻の下を伸ばすのと親子喧嘩は見ていられないので、俺は先に行くのを促した。


「ほら。見苦しい性癖の争いはよして、先に行こうよ」

「ベトスの都にモフモフがあったらソータ殿も冷静じゃいられませんよね?」

「今日は銀色のおチビちゃんの戦いと、メジェドの中身が見られればお腹一杯かな」


 丁度、テントの外が騒がしいのに気づいた神官がテントの外に出て来たので、俺は水鉄砲で旧ナノ・ゴーレム薬を撃って無力化する。


「怪我人はエリクサーで治療して、煩いのは旧ナノ・ゴーレム薬で眠らそうか」

「「了解した」」


 俺と父と剣聖は手分けしてテントを周回し、治療と睡眠をばら撒いた。神官だけでなく、エリクサーで治療して煩そうな神殿騎士にも、旧ナノ・ゴーレム薬を追加で撃って眠らせる。粗方片付いたのでベトスの都に向かう事にした。


「さあ、ベトスの都に行こうか!」

「手際が良くて恐ろしいわね……」


 カルディアに感心されるが、自分が敵と呼称される相手を説得するだけ時間の無駄だと思った。

次回の話は2025年5月24日(土)の19時になります。

クエスチョンなお化けの中身が気になります……。


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