075話 貴族院の花火
明日は貴族院の入学式なので隠居伯の屋敷に戻ろうとすると、剣聖が屋敷まで一緒に行きたいと言うので転移した。分身ルキウスを宮殿に戻して蒼汰になり、夜は入学祝としてご馳走を用意してお酒も出して楽しんだ。剣聖はこれが目当てだったのかと思ったら、朝に起きると別の部屋で寝ていたはずの剣聖がベッドに忍び込んで来ていて俺は羽交い絞めされていた。
「ちょっと爺。放してよ!」
「嫌じゃ。一緒に貴族院の入学式に連れてってくれると言うまで放さん!」
どうやら俺の貴族院の入学式に一緒に行きたいらしくて、その話は宮殿で子供でもないから保護者の同伴不要と決着が付いたはずなのにぶり返した感じだ。
「爺が一緒に居ると目立つから嫌だって言ったよね、俺」
「孫の門出を一緒に見たいのじゃ!」
早朝の鍛錬に起きて来ない俺を心配して、隠居伯達が俺の部屋を訪ねてくれた。
「た~す~け~て~!」
「何事じゃ!?」
部屋に駆け込んで来た隠居伯は一瞬で状況を悟ると、剣聖を俺から剥がそうとしたが、ビクともしないので困り果てた。
「フォルティスよ。余りにしつこいと孫に嫌われてしまうぞ」
「!!」
一瞬、剣聖の腕が緩むが俺が抜け出せる程ではなかった。仕方がないので分身ルキウスに助けを連れて来てくれるように念話で頼んだ。
『分身。爺が貴族院の入学式に一緒に行くって言い出して、俺の事を拘束しているんだ! 父さん達を連れて来てくれ!』
『はいよ……』
分身は呆れた感じだった。
しばらくして分身ルキウスは母にマレ婆、剣聖の息子3人を転移で連れて来てくれた。剣聖の息子3人が羽交い絞めをしている腕と足を解こうとしてくれた。父が説得しようと声をかける。
「父上。ソータ殿は子供じゃないのだから、同伴不要で了承していましたよね?」
「ウェルテクスもホリゾンも一緒に行かせてくれなかったではないか! 孫は好きにさせてくれ」
「私の入学式の時は目立って大変だったからな。ウェルテクスとホリゾンの時は行かせないで正解だったよ。ソータ様で再燃するとは思わなかった……」
オケアヌスは困ったように頭を掻いた。ウェルテクスが剣聖の今日の予定を教えてくれる。
「今日、父上は大規模演習です。帝国軍の象徴が帝都に戻って来て、出席しなかったら大問題ですよ」
魔聖は帝国軍にも所属しているので、今日は大規模演習の方を優先すると連絡があった。貴族院の入学式は講堂で式があって、その後に世界樹との契約だけなので、俺としてはスマラの送り迎えする保護者的な立場だった。
今日の剣聖は聞き訳がないので最終手段に出る事にした。
「分身。アレをしてくれ」
「了解」
分身は収納から新ナノ・ゴーレム薬を出すと、剣聖に振りかけた。俺にもかかってしまったが、しょうがないね。
「うおっ!」
剣聖の腕と足が緩まって羽交い絞めがやっと解けた。ベッドの上から脱出すると、剣聖はミネルヴァに正座をさせられる。剣聖が泣き出した。
「嫌じゃ……孫の晴れ舞台を見るのじゃ……」
「爺は若返って幼児退行していたりしない?」
「フォルティスは昔からこんな感じだったぞ」
「フォルティス様には困った事。でも、そこが可愛らしいのですよ」
剣聖を昔から知っている隠居伯と婆は呟いた。俺は剣聖に追加で新ナノ・ゴーレム薬をかけて、アダマス・メイドのテネブレイを出した。
「お呼びでしょうか。マスター」
「テネブレイ。爺の大規模演習を見張っていて」
「了解しました」
「爺。どうせ2年後にはルキウスの入学式に護衛騎士として付いて行くでしょ」
「そ、そうじゃがソータ殿は別枠じゃ」
「予定が被っているんだからお仕事を優先してね」
「うぐぐ……」
「父上。宇宙港に行きましょう」
オケアヌスとウェルテクスに左右から連行されるように剣聖が立たされた。
そして父と母は不穏な事を言い残して転移して行った。
「ソータ殿。この頃の入学式はトラブルがあるので気を付けて下さい」
「ソータさんならトラブルを粉砕してくれるわよ」
「えー。入学式でトラブルとか起きようもないと思うんだけれど……」
イキがった学生に絡まれるとか、教師に指導されるとか、食パンを齧りながら曲がり角で学生とぶつかって恋の始まりくらいしか思いつかない。
俺は貴族院の制服に変身して朝の支度をして朝食を食べた。転移魔法で貴族院まで行くので、居間にスマラと待ち合わせをしていて、入って行くとスマラは待っていた。
貴族院の上の制服は軍服に似た紺色のブレザーなので誰でも似合うと思う。男性は下が灰色のズボンで、女性は灰色のスカートも選べる感じだ。ブレザーの左肩に飾り紐があり、学年で数が増えて行く。俺もスマラも1学年なので今は1本しかない。
ブレザーの左胸にワッペンがあり、貴族院のマークの連星が中央に刺繍されていて、その周りに選択した科目の模様を刺繍する感じだ。スマラは政務科と騎士科と航法科なので羽根ペンと剣と帆船が刺繍されている。俺はそれに加えて魔法科系の杖と侍従科のティーカップが刺繍された感じだ。
スマラは俺の左胸のワッペンを見て笑った。
「ソータは模様が一杯だね!」
「母さんにハメられたからね……」
「本当に私達が行かなくて大丈夫かしら?」
ラクスがスマラの祖母として心配していた。俺はスマラの顎を撫でてモフモフしながら言った。
「今日は入学式と世界樹の契約だけだし問題ないよ。スマラにはイージス・ペンダントも渡してあるし」
スマラの首にはイージス・ペンダントがあり、ゴールデンレトリバーがSを咥えているデザインになっている。魔石伯の子供3人には、それぞれゴールデンレトリバーにイニシャルを咥えさせたイージス・ペンダントを渡していた。
「それではよろしく頼みますね。ソータ様」
「儂の孫を頼みます。ソータ様」
「うん。それじゃ行ってくるね!」
「爺と婆、行ってきます!」
俺はスマラと共に転移魔法で転移した。マギウス・ポータル前駅近くに転移したので、賑わいが凄かった。近くの人々から驚かれるが気にせずに案内施設に向かって、張り紙を見て入学式のある講堂の番号を調べた。百個近くあるので調べないと、どこに行って良いか分からないからだ。そしてスマラが見つけてくれる。
「あった! 僕とソータは3番講堂だね」
「魔聖に一緒にして貰うように頼んで正解だったね」
「ソータは人使いが旨いね」
「あいつ入学試験の後に試験だと偽って、俺を教授達に面接させたんだよ。このくらいやって貰わないと」
「そう言っていたね! アモルとリーリも一緒だから行こうか」
「うん」
同郷の羊人アモルと熊人パンダ模様のリーリも一緒にして貰った。3番講堂の前に転移すると、学生寮住まいの2人が待っていた。女の子なので2人はスカートにしたようで可愛らしい。
アモルは待ったようで責めて来た。
「ソータお兄ちゃんにスマラ遅い!」
「ごめんね。トラブルで出発が遅れたんだよ」
スマラも俺と剣聖のやり取りを見ていたので、俺とスマラはお互いを見て笑い合った。まったく爺には困った物だね……。
「2人の制服姿は可愛らしいよね、スマラ」
「うん。似合っているね」
「お兄ちゃん達も格好良いよ」
「ソータお兄ちゃんは、おじさんに見えないね。凄く馴染んでいるよ」
アモルに格好良いと言われて嬉しかったが、リーリには年相応に見えないらしい。スマラを見たら慰められた。
「ここは貴族院だし、ソータは学生に見えるんだから良いじゃん」
「それならば良いんだけれどね。講堂に行こうか」
皆で3番講堂に入って空いている席に座ったが、凄い生徒数だけれども獣人が少ない感じだった。
入学式が始まると百個近くの講堂があるので、どこかの講堂から中継をしているようで、通信の魔術具のように教壇の上に立体映像が映し出された。何人かの教師や貴族からお祝いの言葉が述べられ、その中には入学試験で出会った教授が何人か出て来た。
欠伸をしながらスマラが呟いた。
「つまらないねソータ」
「まあそうだね」
そう言いながら笑い合っていると、俺が呼ばれたような気がした。
「それでは入試の成績が満点で首席だったソータ君に、新入生代表として挨拶をして貰います!」
「「「「えっ?!」」」」
俺を含めたマギウスジェム領の出身者は、疑問の声を発した。躊躇していると教師の一人が呼びにやって来た。
「ソータ君。教壇に上がって挨拶をお願いします」
「何も聞いていないんだけれど……」
「魔聖が伝えとくと言っていたが、聞いていなかったのかね?」
「ええ、聞いていませんね」
わざとだったら許さんからな魔聖……。入学式の進行が止まって仕方がないので、俺は席を立って教壇に上がった。
「先程、紹介に上がった平民のソータです。入試の首席は俺がおっさんなので、普通に十歳で入学する皆よりも長く生きて来たから、覚える時間があったからです。
まずは惑星が1つ丸ごと学院のような素晴らしい設備環境と、帝国の英知とも言える教師陣が集まっている貴族院に入学できた事を誇りに思いましょう。
そして貴族も平民も、純人族も獣人も平等に学べる機会を生かして、お互いに尊重し合って卒業まで頑張りましょう。それから同じ志を持つ人々が、これだけの人数が集まる機会は早々にないので、交友関係を深めて後の人生の友を見つける場であって欲しいと願います。以上」
講堂のあちこちから拍手が聞こえて来た。元の席に戻るとスマラ達が口を大きく開けて出迎えてくれた。
「ソータがおっさんだって初めて理解したかも。原稿もなしにあんな挨拶ができるんだもん」
「私もビックリしました!」
「凄いよ、ソータお兄ちゃん!」
「おっさんになると、こういう一発芸みたいなのが出来ちゃうんだよ」
外面は余裕に見えただろうが、内面は少し焦っていた感じだ。ちょっと大人な蒼汰を見せたいなと、子供達に見栄を張ったのだ。ただ挨拶の言葉に偽りはない。皆が挨拶の内容のように過ごせると嬉しいね。
最後の挨拶に貴族院領主セネクスがトリを飾り、その後は貴族院の設備や講義の進め方等の説明を受けた。
次は新入生としての最大イベントの世界樹との契約だ。講堂が百近くあるので順番に神殿に案内され、この惑星にも世界樹金があり神殿にはレビタス列車で移動するようだ。俺達は3番目なので早く案内されるので、その点は魔聖に感謝かな。
まだ十歳の子供達なので待ち時間に静かにする事など不可能で、そこらで雑談が始まって講堂が喧騒に包まれた。俺もスマラ達と雑談をする。寮で生活しているアモルとリーリからは、寮の食事が少ないと不満が零れた。
しばらく雑談していると、3人のガラの悪い男の子達が絡んで来た。
「おいっ、平民のおっさん! 首席だからって調子こいてんじゃねぇぞ!」
「ふふっ! 学園イベントの不良に絡まれるが来たよっ!」
「君達じゃ天地が引っ繰り返っても、ソータには敵わないから止めときなよ」
「あん? 何だと!」
スマラが火に油を注いでいるが、どちらかと言うと不良3人組を心配しているようだ。俺はそんな酷い事はしないよ?
俺はミネルヴァを召喚した。
「ミネルヴァ召喚!」
「はい、マスター。このゴミクズを教育しますか?」
「ミネルヴァ、言い方が……。少し人生についてお説教して上げてくれると良いよ。おっさんからより美少女からの方が聞くでしょ」
「それならばアダマス・メイドも良いでしょうか?」
「OK」
俺はアダマス・メイド達を5体、収納から出した。6体居るがテネブレイは剣聖に付けているので出せない。
ミネルヴァとアダマス・メイド達を見て、不良3人組は拍子抜けしたようにポカンとした。
「き、奇麗だ……」
「可愛い……」
「いいな……」
アダマス・メイドの見た目は美しい女性型なので、年頃の男の子としては見惚れちゃうかもね。この子達は声変わりしていないから第二次成長期を迎えていなさそうだけれどね。
アダマス・メイドのイグニスとアクアとテラがマギウス・ガンで、旧ナノ・ゴーレム薬を不良3人組に当てた。
「「「冷たっ!!」」」
次に不良3人組はビクリと身体を震わせてから、ギクシャクと動作し床に正座させられた。剣聖の時もそうだけれど、こちらでは正座を教えてないのにアカシック・レコードで調べたのかな?
まずはミネルヴァが先制攻撃だ。
「忙しいマスターのお手を煩わせるなんて、ウザイのを通り越してキモイです」
「「「!!」」」
そしてアダマス・メイド達に耳元で色々と言われ出したようだ。年頃の男の子にそんなに精神的に来る言葉を投げかけて大丈夫かなと思ったが、彼らは徐々に目がトロンとしてきた。遠くで貴族院を警備している騎士達と教師達が介入しようか迷っているのが見えたが、その間に決着が付いた。
不良3人組は土下座をしながら謝って来た。
「申し訳ありませんでした、ソータの兄貴!」
「俺達がガキだったようです!」
「先輩としてご指導ください!」
「ちょっとミネルヴァ。洗脳とかとかしていないよね?」
「この時分の男の子は性的に成熟している者と、強い者に憧れがあります。マスターは既婚者で娘が居て、剣聖とパーティメンバーだと最後に伝えました」
「嫉妬で捻じ曲がっていた訳じゃないんだね。何か可愛いね! 君達、余り粋っていると女の子達に嫌われるから、程々にね」
「「「はいっ!」」」
ミネルヴァの旧ナノ・ゴーレム薬での拘束が解けたのか、3人組は立ち上がって元の席の方に移動して行った。ミネルヴァに魔素を上げてから送還して、アダマス・メイド達を収納する。
「ミネルヴァ、ありがとう。魔素を渡して送還!」
「お役に立てて何よりです。マスター」
スマラ達が呆れたようだ。
「何かこう、力を見せつけて分からせるのかなと思ったら、予想外の方法だったよ」
「私はソータお兄ちゃんに奥さんと娘さんが居る事実を聞いてビックリよ」
「見た目は若いのにね」
「だから俺はおっさんだって言っているじゃん!」
見た目はどうにもならないから舐められるんだよね……。どうせなら剣聖とかオケアヌスみたいに、偉丈夫でアダルティな筋肉マッチョになりたかった。鍛錬しても筋肉が付かないからお手上げだけれど。
結構な時間が経ったのに神殿への移動が始まらないので、教師達が困った表情をしているので事情を聞くべく近寄ってみた。騎士科教授エクエスの所の助教授が居たので話しかけてみる。
「助教授、どうしましたか?」
「ソータ師匠!」
「師匠は止めてよ……。それで何かトラブルかな?」
父母が言っていたトラブルは、さっきの3人組で打ち止めて欲しい感じだ。
「それが年を追う毎に酷くなっているのですが、今年は神殿の神官が更に少なくなって、2番講堂の途中まで世界樹の契約をして魔素症でダウンしてしまいました。世界樹の契約ができないので困っています」
「1年生の全部で何人くらい居るの?」
「今年は二十万人くらいですね」
「そんなにいるのか!」
「そりゃそうですよ。銀河は広いですからね」
魔素症なら神聖魔法で治療できるけれど、そんな少ない人数の神官の治療をし続けて、世界樹との契約をさせても魔素症を繰り返して神官にとっては拷問に近いよね……。良いのか分からないけれど俺が契約して上げれば早そうなので、聞いてみるだけ聞くことにした。
「神聖魔法なら割と得意で世界樹との契約なら、俺ができるけれど?」
「「「「「えっ!?」」」」」
助教授だけでなく、俺との会話を盗み聞きしていた教師達から驚きの声が上がった。
「ちょっと領主に確認して来ます!」
助教授が他の講堂に居る貴族院領主の元に走って行った。この流れは契約をやらされそうだね……。
しばらく待っていると助教授が貴族院領主セネクスと共に戻って来た。助教授は騎士科で体育会系なので平気そうだが、セネクスは老人なので息を切らしていた。息を整えてからセネクスが俺に詰め寄った。
「世界樹との契約ができるのは本当であるか! ソータ殿!」
「嘘でも本当でも試させれば良いんじゃないの? お互いに損はない訳だし」
「それもそうじゃな。ではこの講堂の生徒をやってみてくれんか?」
「了解」
講堂の最前列から順番に俺の前に並ばせて、世界樹との契約をするようだ。助教授が拡声の魔術具を使って生徒に呼び掛けた。
「今からソータ師匠が世界樹との契約をしてくれるので、最前列から順番にソータ師匠の前に並びなさい!」
「ちょっと助教授! 師匠は止めてよ!」
「騎士科ではそう呼ぶ決まりなので、文句ならば教授に言って下さい」
騎士科教授サクスムの指示か。後で問い詰めないと……。拡声の魔術具は興味があったので少し借りて、魔法陣を覚えて返した。何で扇型なのか不明だけれど、これで作れるようになった。作るならばメガホン型にしたい。
最初の女生徒が俺の前にやって来て、不安そうに俺を見上げた。俺は安心させるように笑いかけて、世界樹との契約をしてみた。
「世界樹との契約!」
女生徒は下方から光に包まれたので契約完了したはずだ。
助教授が机に乗った水晶玉のような魔術具を、女生徒に触らせて確認したようだ。水晶玉が黄色く光る。
「契約されています。魔力量は普通です」
「「「「「おおっ!」」」」」
教師達は契約が完了して喜びの声を上げた。女生徒も安心したのか笑顔が零れた。
セネクスがお願いをして来た。
「ソータ殿。新入生の全員を世界樹との契約をしてくれぬか? 報酬は神殿と同じ額を払おう」
「お金はもう要らないんだよね。そのお金で寮の食事を増やして上げて」
「な、なんと慈悲深き心根の青年じゃ!」
「青年じゃなくて、もうおっさんだからね。それで良いかな?」
「ソータ殿がそれで良ければ、寮の食事を増やす事にしよう」
これでアモルとリーリの寮生活が良くなってくれると嬉しいね。
こちらに転生してから魔法は契約なしに使えているので、普通が分からないので助教授に聞いてみた。
「それから神殿では、こんな感じで1人1人を契約しているの?」
「それ以外に契約する方法があるのですか? ソータ師匠」
「ちょっと待って。もう少し良い方法があるかも」
俺は次の生徒を制止して、作戦タイムを設けた。この惑星の世界樹に呼び掛けてみる。
『世界樹?』
『お呼びですかな。アルティウスの方』
『君は金だよね。帝星のも金だから呼び方どうすれば良い?』
『世界樹には、それぞれ名前があります。私はディヴェシータスです』
『うはっ! 名前があったのか! これは謝らないとね』
『アルティウスの方に謝られるなど、とんでもない事です。失礼を承知でお尋ねしますが、ご尊名をお伺いしてもよろしいでしょうか?』
『俺は蒼汰ね。よろしく!』
『ソータ様ですね。世界樹金のディヴェシータスです。以後、お見知りおきを』
『こちらこそ、よろしく。それで世界樹との契約なんだけれど、多数を一度に出来たりしない?』
『お名前だけだと重複するので、場所を限定して頂ければ可能です』
『やっぱ名前が必要か……。ミネルヴァ、新入生の名前リストは作れるか?』
『マスター。もうあります』
『おっ! 優秀だね。それじゃあディヴェシータス。俺の眷属と連携して新入生の名前リストを受け取ってくれ』
『『承知致しました』』
俺は範囲で世界樹との契約を出来る事を教師達に伝えた。
「世界樹との契約を範囲で出来るようになったので、講堂に居る生徒を一括で契約して良い?」
「「「「「「はっ?!」」」」」」
「で、出来るのならやって欲しいが、他の講堂にも伝えんといかんな」
セネクスが新入生の居る全ての講堂に向かって呼び掛けた。
「貴族院領主のセネクスじゃ。神殿でトラブルがあったので神殿への移動を取りやめる。
代わりに先程、挨拶をしてくれた首席のソータ殿が、新入生を今から一括で世界樹との契約が出来るようなので頼んだ。報酬はいらないそうなので寮の食事を増やしてくれとの要望なので儂は了承した。
契約が済み次第、各講堂の教師は魔力量測定をするように。以上じゃ」
セネクスの呼び掛けが終わると、寮生活をしている生徒の歓声が上がった。遠くのアモルとリーリも手を取り合って喜んでいるので、俺も嬉しくなった。
俺は新入生を一括で契約するように世界樹に頼んだ。
「今から世界樹との契約を行う!」
『ディヴェシータス。頼む』
『完了致しました。ソータ様』
ディヴェシータスからの完了報告の瞬間に、講堂に居る生徒達が下方から光に包まれた。今度は講堂の生徒達と一緒に、教師達からも歓声が上がった。
次々と魔力量測定用の魔術具で生徒達を測定し、問題ない事が確認できた。先程の不良3人組も測定が終わると、俺を兄貴と呼びながら感謝の言葉をかけられた。スマラは流石に領主の子なので魔力が多いようで、青色に光った。アモルとリーリは普通なので黄色だった。
他の講堂も魔力量測定が終わったようで、俺は教師達に囲まれた。
「な、何だろ? 何か問題でもあった?」
「これは貴族院の決まりなのじゃが、魔力量測定は契約済みの生徒も受けなければならんのじゃ」
セネクスに促されて俺は後退りしながら、魔力量測定用の魔術具の前に追いやられる。
「それは俺も測定しないと駄目って事?」
「「「「「「もちろん!」」」」」」
何かどこかで見たような流れだなと記憶を探ってみると、マギウスジェム領の冒険者ギルドでグリから借りた世界樹銅の枝製の魔法の杖が弾けた事件を思い出した。
「絶対に、これ壊れるから止めて置こうよ……」
「それはアーティファクトなので壊れんよ。魔聖でも強く青く光っただけじゃ」
「それならちょっとだけね……」
俺は小指の先を瞬く間くらいの短い時間、魔力量測定用の魔術具に触れてみた。
パァァァァンッ!!
かくして奇麗な花火が打ちあがり、新入生の居る全ての講堂が静寂に包まれた。
次回の話は2025年4月5日(土)の19時になります。
蒼汰君は仕事のし過ぎですね……。
作品が気に入って頂けましたらログインして、ブックマークをして更新通知をオンにすると便利です。
また評価して頂けると作品作りの励みになります。




