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【完結】神様に元の世界に帰りたいと願ったら身体を要求された  作者: 仲津山遙
第2章 貴族院編

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066話 3歩進んで2歩下がる

分割すると区切りが良くないので、分割せずに長文になっております。

お時間のある時にお読み下さい。

 母の宇宙船でマギウスジェム領の領星アヌルスの衛星軌道上に上がった。魔石伯から通信が入っていて、俺から貰った通信の魔術具にご満悦で凄い笑顔なので釘を刺した。


「伯爵。その通信の魔術具だと費用がタダだからって派手に使わないでね。神殿に睨まれるよ」

「分かっておる。私用の通信だけは、こちらでさせてもらうつもりだ」


 通信の魔術具は領都にあるウルスメル商会の社屋にも置いて来た。別の船で帝都に向かうミーティスにも渡したので、帝都と領都で通信が出来るように配慮した感じだ。ウルスメル商会は通信の魔術具が初めてなので神殿から睨まれる心配はしなくて良い。

 領都の世界樹銀に別れの挨拶をした。


『世界樹銀。俺は帝都に移住するので、領都をよろしく頼む』

『はいっ! ソータ様のご健勝をお祈りしております』


 母の船には父と母、剣聖とマレ婆、分身ルキウスと弟ソラリスにスマラ、貴金属四兄弟と船員のエルフとドワーフ達が乗っている。操縦室には俺とミネルヴァと母だけが居て、母が心配そうに声をかけて来た。


「ソータさん。本当に大丈夫なの?」

「玄武のお墨付きだから問題ないよ」


 今回の帝都行きは初の転移魔法で向かうつもりだ。母は初めての試みに心配そうにしているが、元々は世界樹の真祖から世界樹の苗を宇宙中にばら撒く宇宙船で使っている物を改良しただけなので実績が高い。

 俺は船の動力源になるべく、この船の世界樹の若木にお願いした。


『世界樹の若木、こんにちは』

『お久しぶりですね。ソータ様』

『この船を転移魔法で帝都まで転移させたいんだけれど、魔素が足りないので俺が供給するよ。サポートをしてもらえるかな?』

『まあっ! 転移魔法を覚えられたのですね! それは素晴らしいです! 是非、私にサポートさせて下さい。龍脈をソータ様と眷属に触れる事をお許し頂けますか?』

『必要であればどうぞ』

『ありがとうございます』


 俺の肩に世界樹の幹に触れたような感触がしたので、魔素の振り分けをした。船内の生命維持は若木に任せて、船の推進や結界等を俺とミネルヴァの担当とする。


「ミネルヴァ。通常の結界からイージスに変更してくれ」

「はい、マスター。結界魔法イージスの展開を完了しました」

「空間把握のサポートもよろしく」

「はい」

「転移元を指定……転移魔法陣の展開完了」


 宇宙船の下方に転移魔法陣が光って展開された。母は窓から覗いて感嘆の声を上げた。


「魔法陣が奇麗ね!」


 俺は転移先をアカシック・レコードで空間把握して問題なさそうなのを確認した。


「転移先の帝星テラサークルムの衛星軌道上を指定……転移魔法陣の展開完了」

「マスター。魔法陣への魔素供給をお願いします」

「了解。パーセンテージで報告を頼む」

「はい。現在三十パーセントです」


 俺は原初の海から魂の回廊を通じて魔素を取り込み、転移魔法陣に供給した。母が驚きの声を発した。


「ソータさん。身体が光っているけれど大丈夫?」

「自分では見えないね。どこも不調を感じないから大丈夫じゃないかな」

「現在五十パーセントを超えました」

「流石にこれだけの体積と3万光年の距離を転移する魔素は膨大だね! 魔法陣を改良して置いて良かったよ」

「現在八十パーセントを超えました」


 通信中の魔石伯が心配して来た。


「ソータよ。アーラ様の船が光り始めたそうだ」

「もしかして近くに居る船って領軍の巡視艇(じゅんしてい)?」

「そうだ。初めての事であろう? 万が一の事態も想定せねばならん」

「心配してくれて、ありがとう」

「現在九十パーセントを超えました。まもなく転移可能です」


 ミネルヴァのカウントが1パーセント毎になった。


「百パーセントに到達しました。転移可能です、マスター」

「了解。これより帝星テラサークルムの衛星軌道上に転移する!」


 俺は転移魔法を発動した。視界が一瞬、光に包まれると窓の外が全体的に明るくなり、領星アヌルスのリングと衛星で指輪のような星から、2つの青い星が大気を共有する連星が現れた。俺は母に聞いてみた。


「これが帝星テラサークルム?」

「そうよ。ここから見て左手がジェミノスサークルムで右手がテラサークルムね。ジェミノスサークルムには貴族院があって、テラサークルムには帝都サルトゥスユグドラシルがあるの。それにしても帝星まで本当に一瞬で驚いたわ」

「気分悪くなったりしてない?」

「まったく問題ないわ」


 やはり生身でやるより宇宙船でやる方が転移酔いの心配がなさそうだね。


「それなら帝都までは慣れている母さんに頼んで良いよね?」

「ええ。でもソータさんには操縦室を出てもらわないと。私の精霊達が怯えているのよね」

「仕方がないね。言い聞かせるよ。ミネルヴァ、母さんの精霊達の説得とサポートの交代をして送還で」

「了解です。マスター」


 ミネルヴァが精霊達の説得をして、母の周辺に光の粒が現れた。俺は若木に船の操作を返した。


『若木。到着したので操作を返すよ』

『転移お疲れ様です。凄いですね一瞬でした!』

『またお願いする事があるかも』

『はい。アルティウスの御心のままに』


 俺は魔石伯へ無事に着いた事を伝えて通信を終了する事にした。


「伯爵。無事に帝星に着いたので、通信を切るね」

「速いな! 社交界の時に送り迎えを……」

「流石に船団を転移とか、やっていられないからお断りね」

「……残念なのだ。それでは達者でな!」

「うん。そちらもお元気で!」


 俺のミネルヴァ経由の通信が切れると、母の船に通信が入り込み、女性の声が操縦室に鳴り響いた。


「こちら帝都の航宙者ギルドの航宙管制官です。帝都並びに連星の衛星軌道上に突然出現した船に、フライト・プランの提出を求めます。これは帝国軍からの要請に基づいており、求めに応じない場合は撃墜(げきつい)される可能性がある事を警告します」

「こちら宇宙船コンコルディア・アーラ。フライト・プランは昨日、提出したわよ」


 母が眉間に皺を寄せて返答した。


「お、皇女殿下の船っ! た、大変失礼しました。確認しますので、お待ちください……」

「何かトラブル?」

「宇宙船は勝手に飛べないのよ。航宙者ギルドにフライト・プランを提出しないとならないの。昨日、提出して受理されたので、何かの間違いだと思うのだけれど」

「俺、領都を飛んでいたけれど怒られた事ないけれどね」

「きっと伯爵が揉み消してくれていたのよ。感謝なさい。帝都の周辺は厳しいので駄目よ。それから普通は飛べないから!」

「は~い」


 急いでいた時は生身で領都を飛び回っていた。向こうは大らかで良かったね。まあこれからは転移魔法があるので飛ぶことは減るだろう。

 通信してきた女性が確認できたようで謝罪して来た。


「大変申し訳ありませんでした。航宙者ギルドでのフライト・プランの受理を確認しました。大本(おおもと)は帝国軍からの要請ですので、帝国軍に繋いでよろしいでしょうか?」

「結構よ。私の方から連絡して見るわ」

「ご協力に感謝します。皇女殿下」


 航宙者ギルドとの通信が切れたので、母は俺をじっと見つめた。通信費を払いたくないのね……。母と感覚共有はしているので、ミネルヴァ経由で帝国軍統合作戦本部のオケアヌス将軍を呼び出した。優先回線なので強制的に繋がる。


「……姫様っ! それにソータ様っ!!」

「オケアヌス。私を見た時よりソータさんを見た時の方が反応は良いのね」

「め、滅相もございません!」

「まあ良いわ。帝都の航宙者ギルドを経由して、帝国軍から私の船のフライト・プランにイチャモンが入ったのだけれど?」

「えっ?! まだマギウスジェム領にいらっしゃいますよね?」

「もう帝星の衛星軌道上に居るわよ」

「そんな馬鹿な! 今、確認します。お待ちください……」


 オケアヌスは怒鳴りながら統合作戦本部で確認し出した。しばらくしてオケアヌスが疑問な顔をしながら質問して来た。


「姫様。領星アヌルスから帝星までのフライト・プランは間違いないですか?」

「ここで足止めを食らうまでは間違いないわよ」

「その……大変言いにくいのですが、短すぎませんか? 1時間未満になっているのですが、ありえないと思います」

「ソータさんの転移魔法であっという間で拍子抜けしちゃったくらいだから、三十分もかかってないわよ」

「て、転移魔法!!」


 オケアヌスが仰け反って俺を凝視した。そんなに凝視されてもおやつは出さないぞ。


「し、信じられません!」

「かあ…じゃないアーラさん。オケアヌスの所に行って来て良い?」

「オケアヌスが良いって言えば大丈夫じゃないかしら。責任者だし」

「そちらへ伺っても大丈夫? オケアヌス将軍」

「ここは難攻不落の帝国軍統合作戦本部です。いくらソータ様と言え来るのは無理です」

「オケアヌス! 返事は?」


 母がイラついたようで、少しキツイ口調で返事を促した。オケアヌスは背筋を正して了承する。


「はい。無理だと思いますが、来られるなら来てください」

「じゃあ、ちょっと行ってくるね」

「昔から頭が固かったから、ちょっと現実を突きつけて上げてね」

「は~い」


 俺は転移魔法を発動して、統合作戦本部のオケアヌスの後ろに転移した。幻影だと思われるは嫌なので、オケアヌスのマントを後ろから引っ張った。後ろを振り返ったオケアヌスは口を大きく開けて驚愕の表情で固まる。


「そ、ソータ様……」


 統合作戦本部に居る人々が剣や杖を取り出して、俺に向けて来た。招かれざる客って感じだね……。


「皆、この方は私の客だ! 攻撃してはならない!」


 オケアヌスが手を上げて部下達を制した。部下達は渋々と剣や杖を降ろして様子を(うかが)うように見守った。


「ソータ様。その転移魔法は船団を運べますか?」

「多少の時間をかければ出来ると思うけれど、俺の事を知らない奴を運ぶ気はないぞ」


 オケアヌスの問いに、俺をアルティウスだと知っていないと転移するつもりがないと答えた。運び屋になる気はないからね。


「姫様の船には父上とホリゾンが乗っていますか?」

「もちろん」

「私はソータ様の知らない人ではないですよね?」

「そうだね?」

「私をアーラ様の宇宙船に乗せて転移をしてくれますよね?」

「ええっ?! アーラさんが良いって言えば別に構わないけど」

「私をメリディヌーラムまで運んでください」

「「「「「将軍!!」」」」」


 オケアヌスの願いを聞いていた部下達が非難の声を上げた。オケアヌスによると南方中継点のメリディヌーラムと言う名の星の結界モニュメントが機能停止して、魔物の大群が都市を襲っているようだ。


「う~ん、俺にも予定があるんだけれどね……」


 大変な事態なのは分かったが、貴族院の入学式までに帰って来られるのだろうか? 俺の事情を説明すると、オケアヌスは納得したように頷いた。


「分かりました。既に先発部隊は送っているので、後始末はその部隊にやらせます。ソータ様は俺を送ってくれるだけで良いです」

「魔物の大群が襲っているんだろ。お前1人でどうにかなると思えないけれど」

「将軍! この無礼者を黙らせましょう!」


 将軍思いなのは良いが、部下の1人が俺に剣を向けて来た。他の部下達も賛同するように戦闘態勢を取った。オケアヌスが手を上げて部下達を再び制した。


「この方は父上のパーティメンバーだ! 私より確実に強いぞ!」

「「「「「剣聖のパーティメンバー!!」」」」」


 部下達は納得していないようだが、武力行使の実現が不可能だと知ったようで戦闘態勢を解いた。オケアヌスは俺にとって大事な事を説明した。


「この後にメリディヌーラムを経由してウルスメル商会の船が帝都にやって来ますよね? その船にホリゾンの友人一家が乗っているはずですが」

「それを早く言え! アーラさんの船に行くぞ」

「よろしくお願いします!」


 このままだとミーティス一家が帝都に来られなくなってしまうのは一大事だ。それとメリディヌーラムは人と物流の大動脈を結ぶ中継点のようで、そこが使えないと南方のマギウスジェム領が孤立するようだ。俺は母の船に転移する事にしてオケアヌスに手招きをすると、嬉しそうに俺に抱きついて来た。


「そんなに引っ付かなくても転移は出来るんだけれど?」

「そうなんだ。怖いのでこのままで!」


 母の船の操縦室に転移すると、父と剣聖が不機嫌な母を宥めている所だった。オケアヌスの登場を予想していたのか、母が不機嫌な態度をオケアヌスにぶつけた。


「オケアヌス。謝罪を聞きましょうか」

「何の謝罪ですか? 姫様」

「ここで足止めを食らっている事に決まっているじゃないの!」

「あっ! それは申し訳ありませんでした。転移魔法の存在が知られていなかったので、フライト・プランの間違いだろうと思い込んでいたのが原因です」

「それならば受理せずに訂正を促すべきよね?」

「ごもっともです。今後は徹底させます」

「それでソータさんが貴方を連れて来たという事は、何か別の用事があるのかしら?」


 オケアヌスが事情を説明すると、母は条件を出した。


「まずは帝国軍の用事にソータさんを巻き込まないで頂戴。私の息子でもあるのよ。ただ今回はミーティスが巻き込まれそうな事情があるので全力で行きましょう。帝国軍からは見返りに何を頂けるのかしら?」

「見返りとは何ですか? 姫様」

「宇宙船はタダでは動かないのよ!」


 今回の帝都への渡航の費用は、ルキウスが主体なので俺が出している。お姫様のくせしてお金の事にはしっかりしている母だった。オケアヌスは見返りを提示する。


「もちろん今回の渡航とメリディヌーラム行きの費用は帝国軍がお支払いします。それで全力の意味が知りたいのですが……」

「ソータさん。メイド達は元気かしら?」

「えっ?! 別に故障もしていないし元気だけれど」

「メイド達とホリゾンと爺が魔物の露払いをすれば良いわ。ソータさんが結界モニュメントの様子を見れば解決でしょ?」

「結界モニュメントはベトスの民の遺産だから修理したりすると目立つよ」


 俺は身バレを防ぐために派手な行動は控えたいのだが、母は考えがあるようだった。


「どうせ転移魔法で目立つのだから、今更、結界モニュメントの1つや2つ増えたって問題ないわよ。それに今後だけれどベトスの民の生き残りだと思わせた方が良いじゃない?」

「う~ん、魔聖とか貴族院の教授達にもそう言われているんだよね。でも俺、地球人だし……」

「誤解しているのだから、させて置きなさい」


 こうなると誰も母に文句を言えないので、俺はベトスの民の生き残りと言う事にする。まあその方が都合は良いので、俺としても助かるが。オケアヌスはアダマス・メイドが何か聞いて来た。


「メイド達とは何だ?」

「私も実力を見てないので知らないのですが、九十隻以上の宙族船を瞬く間に制圧したソータ殿のゴーレム達ですね」

「儂とホリゾンの鍛錬に時々付き合ってもらっておるが、中々良い動きをしおって良い鍛錬相手じゃ」


 父と剣聖の鍛錬にメイド達が借り出されて、多数を想定した戦闘鍛錬に使われる事が多かった。オケアヌスが疑問な表情を浮かべた。


「父上とホリゾン相手にゴーレムが役に立つのか?」

「私も実戦は見たことないのよね。丁度良いので私にも見せなさい」

「母さん! 地上に降りるつもり?」

「もちろんよ」


 母はメイド達の戦闘が見たいようで、地上に降りる気のようだ。俺は父にお願いする。


「父さん。母さんの護衛に専念して貰えるかな? メイド達と爺が居れば戦力的には問題ないだろうし」

「そうですね。私もメイド達を見たいだけなのでそうします」


 父と母と剣聖は魔法鞄から、イヤーカフ型の念話魔術具を取り出して装着した。俺は収納から1つ取り出すと、オケアヌスに渡した。


「これは?」

「遠くからでも念話ができる魔術具だよ。お前専用にするから上げるよ」


 俺は魔紋の登録や使い方をオケアヌスに教えてテストさせてみた。


『聞こえる?』

『こ、これはヤバくないですか!』

『何かあったら、これで連絡してね』

「ミネルヴァ」

「はい、マスター」

「メリディヌーラムに向かって都市を襲っている魔物の殲滅と、結界モニュメントの修復に向かう」

「了解しました」


 俺はまた母から宇宙船を借りて、南方にあるメリディヌーラムに転移した。3歩進んで2歩下がった感じが解せない……。


「ほ、本当に一瞬だ……」


 オケアヌスは驚いて絶句する。俺はアダマス・メイドを6体収納から出して整列させた。今日は春物のワンピース姿なので、とても戦闘に行くようには見えないが、着せ替えは面倒なのでこのまま行かせるつもりだ。


「メイド達。地上に転移したらスーパー・メイド・モードになるように。人命救助が優先で落ち着いたら魔物の殲滅に専念してくれ。それとアクアを俺の護衛に付ける」

「「「「「「了解しました。マスター」」」」」」

「しゃ、しゃべっている!」

「ソータさん。くれぐれも服は汚さないようにね」

「は~い」


 始めて見るオケアヌスは驚きの連続みたいだが、母の着せ替え人形でもあるので服の心配をされた。俺は地上の都市に転移する事にする。


「ほら。驚くのは後でいいから、地上に向かうよ。父さんと母さん、叔父さんと爺をメイド達と一緒に都市の中心地に降ろしたら、俺は結界モニュメントを見て来るね」

「「「「了解!」」」」


 俺が皆を地上に転移すると、メイド達はスーパー・メイド・モードになって光ってから飛ぶように散って行った。中央の広場に集まっていた人々は、剣聖と将軍の到着に歓声を上げた。剣聖は緑色のレビタス・バイク参号機を魔法鞄から出して都市を巡るようだ。それを見たオケアヌスは狡いと連呼していたのを無視して、俺はアクアと共に結界モニュメントに転移した。

 止まっているのは北西にある風属性の結界モニュメントで、転移すると近くに灰色のフードとマントを羽織った怪しげな3人組が居たのでお互いに驚いた。


「こんな所に居ては危ないよ!」

「……」


 逃げ遅れた人かと思って声をかけるが無言で、怪しげな3人組は踵を返すと走り去ってしまった。


「変なの……」


 俺はアクアに護衛させて結界モニュメントをチェックしてみた。結界の魔法陣を宙に映し出してチェックするが、どこも異常がないので不振に思った。ここから他の結界モニュメントもチェックしてみるが全て正常だ。こんな事は意図的に止めないと起こりえない。

 俺はこの星の世界樹銅を呼んでみた。


『世界樹銅』

『アルティウスの方! この地にお越しになられて光栄です』

『挨拶は省略で。結界モニュメントが止まっているんだけれど、何で?』

『停止する呪文を受けました』

『えっ?! そんな事が出来るの?』

『はい。結界に使っている魔素を他に一時的に振り分けたい時等に使われます』

『う~ん。そうすると正規の手順でどうにもならないね。取りあえず結界を張ってよ』

『承知しました。結界の再展開が完了しました』


 アクアが俺の周辺に居た魔物を()(はら)っていたが、結界が発動すると外からの魔物の侵入が途絶えて、ここから見える結界内の魔物が駆逐された。


『誰だ? そんな事をしたの』

『アルティウスの方の眷属が該当者の情報を要求して来ましたが、お渡ししてよろしいですか?』

『うん。よろしく』


 ミネルヴァが先回りして人物照会をしてくれたようだ。俺の視界に結界を停止した人物が映し出された。


『神官……』

『『『『えっ?!』』』』


 念話魔術具で聞いていた父達が驚いたようだ。俺も神官の自殺行為に意味が分からなかったが、気を取り直して神官を処罰する事にした。


『世界樹の契約管理で、ここの結界を停止させた神官の契約を破棄し、再契約不可としてくれ』

『アルティウスの求めにより最優先として、該当する神官の契約を破棄し、再契約不可としました』

『これで結界を停止させた神官は、魔法が使えなくなったので次は同じ手は無理になった』

『世界樹との契約を破棄させる事が出来るのですか!』


 オケアヌスが驚いたようで念話に驚きが感じられた。


『ソータ殿に逆らうと世界樹との契約を停止されて魔法が使えなくなります。私は体験しました』


 父が昔の話を蒸し返すが、別に逆らった訳ではなくて信じなかったから一時的にやっただけだし。


『む、無敵じゃないですか!』

『無敵かどうかは知らないけれど、今回のように魔法を悪用した時にしかしないよ。父さんの件は出来るって信じなかったから試しにやっただけだし! 取りあえず後で叔父さんに情報は渡すけれど、俺がアルティウスだってバレないように追及するのが難しいね』

『そうですね。ソータ様』

『お父様に言って暗部に調べさせるので、私にも資料を頂戴』

『了解、母さん。ミネルヴァ、魔物の殲滅状況を教えてくれ』

『はい、マスター』


 俺の視界に都市の地図が現れ、魔物が赤色の点で表示されていた。高速に移動している青色の点がアダマス・メイドのようで、かなりの地区が殲滅されていた。後はメイド達と剣聖で殲滅できそうなので、俺は回復が必要な人の所に行くことにした。


『ミネルヴァ、要治療者の順位を付けて表示してくれ』

『はい、マスター』


 地図が切り替わって治療が必要な人が居る位置が、黄色の点で順位が付いて表示される。俺はアクアと共に転移して治療して回った。転移に驚かれ、治療費が払えないだのと色々と煩い事を言われるが、問答無用で治療して行った。

 住民は転んで捻挫(ねんざ)したとか軽傷だったが、帝国軍の駐留部隊が魔物の進行を抑えていたようで、結構な被害が出ていた。魔物の殲滅が終わったのでメイド達にも手伝ってもらって、水鉄砲でナノ・ゴーレム薬をかけていく。ミネルヴァのトリアージのお陰で死者が出ずに済んだ。部位欠損者が7人出たので、応急処置をしてから治療についての守秘を契約で済まして、後から来る先発部隊で帝都まで移送してから治療する事にした。

 最初に転移で降りた都市中央の広場に皆で集まり、オケアヌスを置いて帝都へ帰る事になった。父は呆れたようにメイド達を見た。


「何ですか。あの遠くから魔物を穴だらけにする武器は? 小さな物が物凄い速さで飛んで行っているようですが」

「えっ!? 弾が見えるの?」

「父上も見えますよね?」

「見えるぞ。飛んで行ったと思ったら無数に散らばったりするので面白い武器であるな」


 弾速マッハ二十の弾が見えるなんて、どれだけの身体強化をしているのだろうか? 俺は超硬合金アダマンタイト弾を収納から出して説明した。


「この小さな弾が高速で回転しながら、父さんや爺の技より速いスピードで敵に飛んで行くの。こっちが散弾って言って、標的に近づくと周辺に無数に散らばる奴」

「そんなの避けられないじゃないですか!」

「卑怯であるな」

「そういう武器だからね」


 剣聖がメイド達の超硬合金アダマンタイト・ブレードのジョイン・ブレイカーを欲しそうに眺めた。


「儂はこの何でも切れる剣が欲しいのだが」

「だから魔素を馬鹿食いなんだって。この前に試しに使わせて5秒くらいで魔素症になっていたでしょ」


 母がオケアヌスにドヤ顔をしていた。


「全力だと早いでしょ?」

「これ報告のしようがないんだけれど……。腕が千切れても生やせるとか反則じゃない?」

「移動と回復は俺で、お前と父さんと爺で倒したことにすれば良いじゃん。それよりも問題がある!」


 オケアヌスに治療費を請求したい所だが、金が駄目なので文句を言った。


「治療費はモフモフ払いなんだけれど、ここって獣人が少ないね……」

「私の髭では駄目ですか?」

「無精髭は問題外。爺くらいに奇麗に生え揃わないと」


 何故か項垂れるオケアヌスを、剣聖が肩を叩いて慰めていた。

次回の話は2025年3月15日(土)の19時になります。

蒼汰君が捕まる?


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