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【完結】神様に元の世界に帰りたいと願ったら身体を要求された  作者: 仲津山遙
第1章 幼少期編

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052話 葬送と来訪

 魔石伯の曽祖父アルバスの白骨遺体が見つかったのを、帝都に隠居している両親に報告したら、墓参りするそうで領都カストルムに来るようだ。

 宇宙港の貴賓室(きひんしつ)で待っていると、宇宙船が到着したようで桟橋へ出迎えに向かった。魔石伯の大人の家族全員と家令のディスペンサー、俺の父母に剣聖とマレ婆とフルメンバーとなった。伯爵家のプライベート宇宙船でやってくるのかなと期待していたら一般の客船で来たようで、一般の乗客は俺達に注目しつつ遠巻きにされていた。剣聖が有名人なので凄く目立っている気がする。

 一般の乗客が出尽くして最後に降りて来たのは、犬人の男性2名と、どこかで見たような気がする人族の女性が1名だった。

 母が婆を促した。


「婆、久しぶりなのだから私達は気にしないで行って良いのよ」

「アーラ様、ありがとうございます。ではお言葉に甘えて……ラクス姉さんっ!」

「マレっ!」


 婆は駆け出して降りて来た女性に向かった。


「え~と、2人は知り合いなの?」

「2人は姉妹なのよ。婆が妹で、伯爵の母親が姉のラクス」

「うへぇ! ルキウスの大叔母(おおおば)さんか。そうすると伯爵は遠い親戚だよね」

「ルキウスから見ると、そうなるわね。でも貴族なんて皆そんなものよ。どこかで血が繋がっていたりするの」


 道理で見たことがあると思ったらラクスは婆に似ていたのか。茶髪茶眼で優しい顔立ちをしている女性だ。

 犬人の男性2名が魔石伯の所にやって来た。


「サピュルス、社交界以来だな。元気にしておったか」

「はい、父様」

「カリダよ。身籠ったようだが体調に変わりないか?」

「はい、義父様」

「それで祖父の発見者は……あ、アーラ様!」


 犬人の男性2名が母を見つけて跪こうとするが、母は手で制した。


隠居伯(いんきょはく)。私は伯爵の客人なので礼儀は不要です」

「こらっ! サピュルス。何故この様な大事な事を言わなかったのだ!」

「伯爵に口止めをしていたのは私なので、(しか)らないで上げて下さい」


 魔石伯の父親は隠居伯と呼ばれていて名前はインディコと言うようだ。確かに剣聖の言っていたようにディスペンサーと似ている。もう1人の犬人の男性もディスペンサーとソックリと言うか瓜二つなので、3人が同じ服を着ていたら誰か分からない感じだ。


「フォルティス殿と…確か一番下の息子だったか、ホリゾン君まで居るではないか。国盗りでもするつもりか?」

「出来るであろうが、それを求めない主に感謝すべきなのだがな」


 隠居伯の国盗りに反応して、剣聖は俺を見てニヤリと笑った。


「それでそちらの黒髪の少年が祖父の発見者かね?」

「そうです、父様。少年ではありませんが」

「ソータと申します。伯爵の城でお世話になっております。四十一歳なので剣聖の2つ下ですね」


 出迎え組は俺の年齢に最初の反応はそうなるよねと同情の顔をするが、来訪組は唖然として驚いていた。


「父様。立ち話も何ですから、入領手続きを済ませてから霊廟に向かいませんか」

「そ、そうだな」


 俺はもう1人の犬人の男性をディスペンサーに紹介された。双子の兄のヴァサルスと言うようだ。2人は執事(しつじ)のような同じ恰好をしているので、俺には見分けがつかなかった。ミネルヴァに2人の頭上にネームタグを表示して貰うことにした。

 入領手続きを済ませてからレビタス車で霊廟に着くと、領軍の隊長が待っていて霊廟を案内してくれた。石造りの重厚な建物で、この前の棺は奥の方に配置されていた。棺の蓋は開けられていて、ポピーの赤い花をドライフラワーにしてテクタイトでコーティングした物が鎧を着た白骨遺体と一緒に供えられていた。

 隠居伯は疑問を口にする。


「神官に葬送の祝詞は捧げて貰ったのか?」

「いいえ。神官では無くてソータが執り行いました」

「ソータ殿は神官なのであるか?」

「神官ではありません」


 俺は説明すべきか迷ったが、話すと長くなるのでここでは止めて置いた。魔石伯が簡単に説明を引き継いでくれた。


「父様。ソータは神聖魔法を使えるので神官の魔法は大体使えますね。スタンピードの時も神聖魔法で領軍が助けられました」

「おお。スタンピードの時に助けて頂いたのもソータ殿であったか。そう言えばそのような名であったな。しかしこの赤い花は枯れぬのか?」

「それもソータが作ってくれたので皆で供えました」

「皆さんも1輪どうですか?」

「「「そうさせて頂く」」」


 俺は収納からポピーをドライフラワーにしてテクタイトでコーティングした物を出して、隠居伯達3人に渡した。3人はありがたく受け取ってくれて棺の中に供えた。


「確かにこの鎧は子供の頃に見たことがある。まさか今になって爺様と一緒に見つかるとは思わなんだ……」


 隠居伯は考え深げに鎧を見下ろした。


「さて孫達に会いに向かうか」


 しばらくすると隠居伯の号令で霊廟を後にして、城に向かった。城の城門を抜けると隠居伯はレビタス車を止めさせた。


「西の岩山が無くなっておる!」

「まあ本当! 立派な建物になっていますね……」

「景色に違和感があると思ったら……」


 隠居伯達は驚愕の表情になり、元岩山で今は迎賓館を見つめた。用地さえあれば岩山は収納に入っているので出せるけれどね。魔石伯は事情を説明した。


「父様。領都で大規模なオークションが開催されるので、迎賓館を建てたのですが不味かったですか? 報告はしていたはずですが」

「城に新しい建物を建てるとは確かに聞いていたが、まさかあれだけ巨大だった西の岩山を削って建てるとは思わなんだ。凄く大変だったであろう?」

「そ、そうですね……」

「それと上空から見たが宇宙港の湖が北に広がっておったし、商業区の北の岩山が無くなって建物が建ち始めておった。商業区の北の岩山はここの数十倍はあったはずだが、いつ工事をしたのだ?」

「す、数ヵ月前です」

「老人を揶揄うでないぞ」

「そうですよサピュルス」

「坊ちゃまは嘘が下手でしたからね」


 魔石伯が困ったように俺を見つめた。流石に昔から現地を知る人達は(だま)せないよね。


「伯爵。立ち話も何だから応接室にお通ししたら? 俺の事、説明するよ」

「た、助かるのだ……。父様、母様、ヴァサ爺。取りあえず領主館の応接室に」


 隠居伯達は納得していなさそうだが、魔石伯に背中を押されてレビタス車に乗せられた。

 領主館の応接室に着くと、母は使用人に預けていた分身ルキウスを抱えて来た。


「この子は私の息子でルキウスよ」

「「「アーラ様の息子!!」」」

「父親はホリゾンね」

「「「剣聖の息子!!」」」

「そ、それは我々が知っていい話なのですか?」

「私が言えるのはここまでで、ここからが実は本題なの。ソータさんよろしく」

「ありがとう、母さん」

「「「母さん?!」」」


 俺は母から話を引き継いで、母の膝の上に居る分身を消した。


「分身を統合」

「「「消えた!!」」」


 分身を消すと母は自分の膝の上をポンポンと叩いているので、その上に座れと言う事だろうか? 父が嫉妬を含んだジト目で俺を見るので止めて欲しいが、室内に座る場所がもうないので仕方なく母の膝の上に座った。そして蒼汰からルキウスに変身する。


「変身」

「「「ルキウス様になった!!」」」

「俺はルキウスと魂が一緒のアルティウスのソータなんだ」


 蒼汰はこことは違う科学文明の発達した星で産まれ、アルティウスとなってからは創造神の願いでルキウスに転生した事を全て暴露した。神託を隠居伯達3人に行いアルティウスだと証明すると、3人は立ち上がって片膝を跪こうとするので止めた。


「ルキウスから見て親戚なので、畏まられると困るから平民のソータとして対応よろしく」

『もうしたよ。ソータ』

「仕事が早いな。創造神の力で、3人は俺の秘密を話したりできなくなったので注意ね」


 念話だけで創造神から伝えられた。俺は蒼汰に戻って、隠居伯達3人が話せないのを口パクして確認している間にアルグラを召喚して、イージス・ペンダントを作成した。ちなみにアルグラは煩いので召喚直前にミネルヴァに図案を伝えてアルグラに同期させた。前回にディスペンサーに渡し忘れていたので犬顔の3人のペンダント・トップはゴールデンレトリバーが名前のイニシャルを咥えている形にして、ラクスは桜にした。


「呼ばれて飛び出てアルグ……んぐぁぐぐ……ペッ!」

「アルグラ送還」

「出番が……シクシク」

「あ、アーティファクトがいとも容易く……。最近の我が領から伝え聞いている目覚ましい躍進はソータ…殿のお陰なのか?」

「そうです、父様。スタンピード解決もウルスメル商会のポーション代替品飲料や料理に調味料から、都市の魔素不足解消までソータのお陰です」


 隠居伯の疑問に魔石伯が答えた。

 そして玄武から念話が入る。


『ソータよ。神殿に獣人治療拒否を止めさせるために、薬品がダンジョンから出ている件について、これから神託を行うつもりだ』

『それは朗報だね』

「今から玄武が神殿に獣人治療拒否を止めさせるために、薬品がダンジョンから出ている件について神託するみたい」

「その件にもソータ殿が関わっていらっしゃるのですか?」

「高位薬品を頑張って作ったからね」


 隠居伯達にラク親子が神殿の獣人治療拒否で困っていた事を話す。


「サピュルスが子供の時に病気を患って神殿に治療拒否された事がある。あの時は剣聖に万能薬を譲って頂かなかったら、ここには居らんだろうな」

「あの時は領軍で神殿領を攻めるとおっしゃっていて、宥めるのも大変でしたわ」


 隠居伯と夫人のラクスが苦い思い出話をしてくれた。

 唐突に荘厳(そうごん)なイメージで頭にモヤがかかったようになり、玄武の念話が聞こえて来た。俺は神託を受けるのは初めてだが、この荘厳なイメージを強制的に植え付けられるのは神を信じてしまうね。


『世界樹の恩恵を受ける生命の庭の民よ。俺は玄武。同じアルティウスのモレストゥスが同胞に挑み倒されたので、今後の神託と祈りは俺が担当する事になった』

「ブフッ!」


 別にモレストゥスを倒した訳じゃないし、ちょっとお仕置きしただけじゃん……。まあ彼女は神託が創造神によって封じられたので、生命の庭から見ると居なくなったも同然だから、そういう説明になるのかな。


『アルティウスは神殿の獣人差別による治療拒否を黙認していたが、今後は断じて許すことはない事を示すためにダンジョンより運が良い者は高位薬品を下賜し、それ以外の者には中位薬品を下賜するようにした。これは神殿の獣人治療拒否が続く限り続ける事とする。以上だ』


 獣人組は涙を流して喜んでくれた。その他の人族は荘厳な神託が終わって息を付いた。隠居伯は落ち着くと祖父を見つけてくれた礼をしたか尋ねた。


「サピュルス。祖父を見つけてくれた礼をソータ殿にしたのか?」

「まだです。ソータよ、何か望みがあるか?」

「特にないけど……モフモフ?」

「だ、誰をモフモフしたいのだ?」


 魔石伯は戸惑いながら聞いて来た。父と剣聖はまた言いだしたと胡乱な視線を向けて来る。


「そりゃ新参の老犬シリーズは外せないよね!」

「父様、爺、ヴァサ爺。ソータのお眼鏡に叶ったそうです」


 魔石伯と伯爵夫人は心得たとばかりにソファーを移動し、隠居伯とディスペンサーとヴァサルスを1つのソファーに座らせた。


「モフモフとは何だ? 説明をしてくれんのか?」

「わ、私もですか? 旦那様が受けていたのは見たことがありますが……癖になりそうで怖いです」

「ディスペンサー。癖になりそうで怖い事を、これからソータ様から受けるのか?!」


 俺は隠居伯から順番に、孤児院で飼っていたゴールデンリトリバーを陥落させた技にプラスして、新技を披露した。首と顎を右手でかき回しながら、尻尾の付け根を揉んでマッサージしてから尻尾を掴んだまま尻尾の先まで手を移動させる高等テクニックだ。


ワッシャ、モミモミ、ワッシャ、モミモミ、ワシャシャシャシャシャ……モミモミスススーーーン


「ヤバイ! これ超楽しい!」

「はぅふ……ラクスにもこんな事をされた事がないぞ」

「坊ちゃまは、これに良く耐えられますね……」

「私は汚されたような気がします……」


 3人はソファーの背もたれに、ぐったりと身を投げ出してしまった。俺はモフモフを堪能し尽くした。


「伯爵もやって欲しい?」

「わ、私は遠慮して置く!」

「そう言えば遠い帝都から来てくれたのにお茶が出ていないね」

「旦那様にしばらく放って置けばソータ様が出すだろうと止められていましたから」

「伯爵はそう言う所がセコイよね。素直に持て成したいからお茶を出してくれって頼めば良いのに」

「セコクて良いのでお茶を出してくれ、ソータ」


 俺は収納からコカイン入りと噂されていた黒い炭酸飲料と、細長いビスケットにチョコレートをコーティングした例のお菓子を皆に配った。初回組はやはり色に難色を示したが、2回目の父と剣聖が食べ始めたので、やっと手を出してくれた。


「「「「「「「「うまっ!!」」」」」」」」

「ここではこんなに旨い物が飲み食いできるのか?」

「概ねそうですね。食べ物や飲み物だけでなく、女性の気になる化粧……あっ!」


 隠居伯の疑問に答えるついでに婆は口を滑らしたようで、姉のラクスが突っ込んできた。


「マレ。どう見ても貴女の肌がいつもより白い肌に見えるのよね。カリダとアーラ様も白い肌だし何でかしら?」

「そ、ソータ様。すみません……」

「婆のお姉さんだって聞いてから、どうせ上げるつもりだったから良いよ。はい、これ。番号の順番通りに使ってね。多めに渡すけれど、無くなりそうになったら婆経由で帝都に送れば良いよね」

「助かります、ソータ様」

「ありがとうございます。ソータさん」


 俺はラクスに収納から化粧品セットを出して渡した。婆から使い方を聞く際にオークションで売り出す予定と聞いて、値段を聞いたらラクスは声を上げて驚いていた。

 珍しく応接室の扉がノックされ、魔石伯が入室を促した。


コンッ! コンッ!


「入れ!」

「失礼します。宇宙港より至急のご連絡がございます。フラステス公爵がいらっしゃいました」

「「「「「「「「「「「えっ?!」」」」」」」」」」」


 ミーティスの父親の軍団長が入って来ると、突然の来訪を告げられた。応接室に居たメンバーは大物の来訪に驚いて一瞬言葉を失った。

 魔石伯が現状を聞いて、軍団長が答えた。


「……既に宇宙港に入港して居るのか?」

「はい。伯爵にもお会いしたいそうですが、ソータさんを強くご指名です」

「うへぇ! 何で俺?! 会った事もないのに……」

「私に糸を引いた豆なんて食べさせた罰じゃないですか?」

「あの糸は凄く健康に良いんだけれどね!」


 父は納豆を罰ゲームで食べさせた事を、まだ根に持っているようだ。

 魔石伯は軍団長に指示を出した。


「取りあえず公爵を迎賓館に案内せよ。我々は迎賓館で出迎えるぞ」

「はっ!」


 魔石伯の指示に軍団長は応接室を出て行った。


「父様と母様は長旅でしたので、ヴァサ爺と部屋で休んで下さい。部屋は依然と同じように整えてあります」

「サピュルス、感謝する」


 隠居伯とラクスはヴァサルスと一緒に応接室を出て行った。まずは孫に会いに行くようなので、分身ルキウスを預ける。


「他は私と共にフラステス公爵を出迎えてくれるか?」

「何の用事か知らないけれど、フラステスなら私が出た方が早そうね」

「アーラ様、感謝します。ソータは逃げるでないぞ」

「別に逃げないよ。やましい事してないもの」

「その心意気は良いけれど、私はソータさんにとって嫌な予感がするわ」


 母は俺を脅すように首をかしげて腕を組んだ。


「やっぱり隠し通路で城を出てミーティスの所に匿ってもらうかな……」

「駄目だ。伯爵家の威信(いしん)に関わるのだ!」

「ソータ様。逃がしませんよ」


 俺は魔石伯とディスペンサーに脇を固められて、迎賓館に向かうことになった。ディスペンサーの身体強化は結構強かった。

 迎賓館の入り口でしばらく待っていると、レビタス車が2台やって来てエントランスに横付けされる。ドアがバンッと開いて、剣聖に似た偉丈夫の男が俺に抱きついて来た。


「ソータ様!」


 偉丈夫の男は頬を擦り付けて来るので、無精髭(ぶしょうひげ)がチクチクと刺さって痛かった。何故、ここに居るのだろうか? オケアヌス将軍……ルキウスの叔父さん!

次回の話は翌日の19時になります。

珍獣にメロメロな蒼汰君!


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