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【完結】神様に元の世界に帰りたいと願ったら身体を要求された  作者: 仲津山遙
第1章 幼少期編

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051話 ルキウスでお散歩

「いたた、痛い、いたいよっ!!」


 俺はベッドの上で父と剣聖にマッサージを受けていた。原初の海で全力の身体強化をしてモレストゥスを引きずった後に、生命の庭に帰って来て1晩寝たら筋肉痛のような症状で動けなくなっていた。新ナノ・ゴーレム薬を使ってミネルヴァに治療してもらうが、治しても直ぐに痛くなるという訳が分からない状態になっていた。

 白虎が心配して来てくれて、筋肉痛ならマッサージが良いのではと進言してくれたので、父と剣聖にお願いしてやってもらった所、激痛が駆け抜けた感じだ。


『この症状はもしや……。どれソータよ、身体を貸してくれぬか』

「喜んで!」

「ンギャーオッ! 交代でっ!」

『はやっ!』


 俺は白虎に身体を貸すと、直ぐに戻された。


『これは自分の魔素に身体が攻撃されているようだ。我も星を割った時になった事がある』

「ほ、本当に白虎様は星を割った事があるのですね……」

「儂も伝説で盛っていると思っておったが……」


 既に感覚共有して白虎との念話を聞いていた父と剣聖が、白虎にドン引きした。星を割るとか、破壊魔の剣聖がドン引きしても可笑しくないよね……。


「身体の痛みを止めても駄目だから、麻酔みたいに意識を飛ばすしかないね。分身を出すから、それでよろしく。ミネルヴァ」

『はい、マスター』

「変身と分身!」


 俺はルキウスに変身してから、蒼汰の分身をベッドに寝かせて置いた。剣聖が意識のない蒼汰に毛布を掛けてくれて頭を撫でてくれた。


「う~ん、ルキウスの方は平気なんだよな。どうなっているんだか」

「そんな凄い身体強化だったのですか? 赤ちゃんの方が耐えられない気がしますが」

『その時のソータは創造神様のように光輝いておった』

「それは見てみたいですね。あと腕相撲で力比べもしてみたいです」

「えー。ルキウスでも痛くなったら逃げ場がないんだけれど、ちょっと試して見たくもあるね。身体強化!」


 俺はルキウスで宙に浮いたまま全力の身体強化をしてみた。


「「おおっ!」」

『あの時と同じで光輝いておるな』


 これはスーパー・ルキウス君と名付けようか。父が机に手招いたが絶対に壊れると思い、アルグラを召喚する。


「アルグラ召喚!」

「わいは……錬金する雰囲気じゃないでやす」

「ちょっと机代わりね。父さんこっち」

「分かりました」


 アルグラの上部の入り口は生きている動物は絶対に通さないので、机代わりに肘を乗せた。父も同じようにするが父の手の平まで俺の手が届かないので、手首のかなり下辺りを掴んでいる。


「初めっ!」

「ぎゃぁっ!」


 剣聖の合図で腕相撲が始まってしまったが、父は大人気なく全力の形相でやり始めた。アルグラが下で騒いでいるが聞こえないふりをする。


「わ、わたしの……ぜ、ぜんりょくで…勝てないっ!!」


 3分くらい待ってもピクリとも動かないので、俺は父の腕に力を入れて倒した。


ドォンッ!


「ハワワワ!?」


 とても父の腕とアルグラがぶつかった音に聞こえない轟音が響いた。面食らったアルグラは意味のない声を呟いた。


「凄いのじゃ! 勝者は儂の孫!」

「はあっ、はあっ……魔素症です」

「父さんの魔素症の治療! アルグラ送還!」

「ひどい旦那や……」


 俺は神聖魔法で父の魔素症を治療してアルグラを送還した。父の頭上から光が指して、床に突っ伏していた父は起き上がれるようになった。


「ルキウスは何ともないのですか?」

「うん。蒼汰の時は全力の身体強化の後に違和感があったんだけれど、ルキウスだとまったく平気みたい」

「ホリゾンで勝てんとは儂でも無理だな。腕相撲で初めて負けたのではないか?」

「そうですね。兄上達とか貴族院や騎士団でも負けたことありませんね。息子が強いのは喜ばしいですが、複雑な気分です」


 父は複雑な表情で俺を見つめた。


「な、なにごとだーーーーっ!!」


 部屋の扉がバンッと開いて、魔石伯が駆け込んできた。その後ろから家令のディスペンサーがあたふたしながら付き従って来た。


「ちょっと腕相撲していただけだよ」

「ちょっとな物か! 凄まじい魔力量と轟音が城内に鳴り響いていたぞっ!」

「音はごめんね。物は壊してないから許して」

「床が凹んでいるように見えるのだが……」


 魔石伯に指を指された所を見ると、アルグラが居た所が円形に近い形に凹んでいて、その周辺にひび割れが発生していた。


「ご、ごめんなさい。修理費用は出すよ」

「私の悩みを解決してくれるなら許してやらんこともない!」

「うわぁ、そう来たか」


 いつも俺がお説教しているので、逆の立場だと貴族らしく尊大な態度に出るね。魔石伯に促されてソファーに皆で向かった。魔石伯の背後にディスペンサーが立ち、俺達は対面に座る。2人掛けなので俺は剣聖の膝の上だ。


「ソータはなぜ寝ておるのだ?」


 魔石伯はベッドに寝ている蒼汰を見て首を傾げた。俺は原初の海で全力の身体強化をしてモレストゥスを引きずった件や、スーパー・ルキウス君で父と腕相撲をした経緯を説明すると、魔石伯は興味を持ったようだ。


「私も腕相撲をやってみたいのだが?」

「止めておけ。ホリゾンには儂でも敵わぬ。お主はオケアヌスに負けておるだろう。ホリゾンはオケアヌスに圧勝しているので帝国で一番強かったのではないか? そのホリゾンが魔素症を起こしてもピクリとも動かなかったのだ。勝てる訳がない」


 剣聖が冷静に腕相撲の分析結果を告げると、魔石伯の尻尾が下がった。


「ど、どれだけの魔力を込めた身体強化なのだ?」

『マスターの全力の身体強化は、大規模な殲滅魔法に使った魔力を超えており測定不能です』

『先ほどに身体を借りた時の魔素の攻撃具合からすると、我が星を割った時を超えているのではないか?』


 ミネルヴァと白虎の言葉に父はギョッとして俺を見つめた。


「大規模な殲滅魔法超えで、白虎様が星を割った時を超えているとおっしゃっていますね。私の腕、無事で良かった……」

「そ、そんな危険な事を私の城の中でするでない!」

「スーパー・ルキウス君は封印かな。で、伯爵の悩みって何よ? 俺、神様じゃないから何でも解決出来る訳じゃないからね」

「空を飛ぶ赤子が何を言っておるか……。まあ、それは本筋ではないのでどうでも良いが、カリダがアーラ様と出掛けたいようなので、息子達の面倒を見てくれんか?」

「それなら使用人が居るじゃない。別に嫌じゃないけれど、何で俺が?」

「それが城の外に出たいようなのだ。息子達の動きに使用人では付いて行けんのだ」

「あー、大人の背丈以上ある塀とか登っているから、使用人が追うのは無理かもね」


 魔石伯の息子達は中庭の塀の上に軽々と登ったりしているので、使用人は目で追うのも大変そうだった。外に出たら絶対に見失うだろう。


「母さん達は誰が面倒を見るの? 流石に2人じゃ危ないよ」

「それは私が着いて行くので問題ない。妊婦用品とベビー用品を見たいそうだ。確実に財布を期待されておるが、私と役割を交換でも良いぞ?」


 父と剣聖は魔石伯から目を反らした。俺は仕方なく魔石伯の息子達の御守(おもり)を選択した。


「スマラとクリスと一緒に遊ぶからいいよ」

「そうしてくれ。爺、床の修理の手配を頼む」

「承知しました。坊ちゃま」


 魔石伯とディスペーサーは慌ただしく出て行った。俺達は魔石伯の息子2人の所に行くと、使用人達には話が通っていたようで2人を預けられた。スマラにどこに行くか尋ねられる。


「今日はルキウス? どこへ行くの?」

「蒼汰は身体が痛くてお寝んね中ね。城のお外に行きたいんでしょ? 連れて行ってあげるよ」

「「やったーっ!!」」


 伯爵夫妻の部屋の廊下の突き当りに行くと、父と剣聖に俺達子供組を抱えさせて隠し通路の出入り口に魔力を通した。


「こんな所に隠し通路が!」

「こんな仕掛けはワンコも知らぬのではないか?」

「どうだろうね。この通路は領主に連なる者が近くに居る時に、魔力を流すと通れるようになっているね。こっちは水属性の結界モニュメントに出て貧民街に近いね。あともう1本あって、土属性の結界モニュメントに出て商業区に近いのもある。そっちは領主本人が近くに居る時に魔力を流すと通れる」

「もしかして私に会う時とかに、この隠し通路を使って外に出ていました?」

「うん。スタンピード前で城の門が閉まっていたから、外に出られなくて探したんだよ」

「領主に連なる者とか領主本人の魔力認証はどうやったのですか? 今日は息子が居るので分かりますが……」

「じゃーん。モフモフが俺を救う!」


 俺は収納からクリスと魔石伯の抜け毛を出した。スマラとクリスは匂いを嗅いできた。


「クリスとパパの匂い! あとルキウス臭い」

「ぼくのにおい? パパのにおい! ルキウスくちゃい」

「ええっ?! やっぱり白虎かなぁ」

『な、何だとっ!』


 モレストゥスの騒動の後に白虎をモフツルしていたのを思い出した。俺は良い機会だと思い、魔石伯の息子2人を感覚共有した。


「スマラ、クリス。俺が臭いんじゃなくて、この白虎おじちゃんが臭いんだからね」

「臭いおじちゃん!」

「おじちゃん、くさいの?」

『ぐぬぬ。我は臭くないぞ!』


 父と剣聖が笑いを堪えているのが白虎に見つかって睨まれていた。俺は魔法で通路を照らし、魔石伯の息子2人と手をつないで隠し通路を進んだ。


「かなり放置されていたんでしょうね。(こけ)とか凄いです」

「蜘蛛の巣とかがあるのう」

「爺、背が高いから引っかかるのか! これでも結構、収納に入れて掃除したんだけれど、暫く通ってなかったから、また張ったのかな。そう言えば商業区の方の隠し通路には骸骨(がいこつ)があってびっくりしたけれど」

「そ、それは本当ですか?」

「ワンコには言ったのか?」

「あ、忘れていた。収納に入っているんだよね……」

「前から聞きたかったのですが、収納にどれだけ入っているんですか?」

「ミネルヴァが来てくれてリスト化されるようになったから見てみる? ミネルヴァよろしく」

『はい、マスター』


 俺は収納リストを表示して、父の前に移動する。三千ページくらいあるので1日で見られないんじゃないかな。


「聞いた私が悪かったです。この要らない物リストの方の岩山は、城のやつと商業区のやつですか」

「うん。捨てる場所がないからね。このリスト化の時に骸骨が本物じゃないかって、ミネルヴァに指摘されて初めて本物だと分かった時には驚いた。それまで作り物だと思っていたもの。そろそろ外だね」

「「わあっ!」」


 水属性の結界モニュメントは崖の上にあり、春なので日差しが気持ち良い感じだ。魔石伯の息子2人は駆け出して遊び出した。


「2人共、遊んでいて良いけれど遠くに行かないように! ミネルヴァ、見張っていて」

『はい、マスター』

「折角だから骸骨を出して見るか」


 俺は収納から骸骨を取り出して見た。日の光の元だと暗い通路の時より細部が確認できた。金属製の全身鎧を着ていて犬顔をしているので犬人と思われる。


「この紋章はマギウスジェム家の物ではないか?」


 剣聖が鎧の胸の紋章を見つけたようだ。確かにゴールデンレトリバーが魔石を咥えている紋章なので、魔石伯の縁者かも知れない。


「鑑定!」


【名前:アルバス・コミティス・マギウスジェム

 性別:男

 年齢:三十六歳

 概要:サピュルスから遡って3代前の領主

    スタンピードで魔物の大群に襲われて深手の傷を負い

    土の隠し通路から城に戻る途中で亡くなる】


「サピュルスって魔石伯だよね。魔石伯から遡って3代前の領主みたいだから曽祖父(そうそふ)だね」

「パパに似ている匂い」

「パパおきて?」


 いつの間にか近くで遊んでいた魔石伯の息子2人が、曽祖父に近寄って来た。


「この人はパパのパパのパパだからパパじゃないよ」

「「そうなの?」」

「これは帰ったらワンコに言わねばならんな」

「そうだね。隠し通路と一緒に報告しようか」


 俺は魔石伯の曽祖父を収納にしまうと、皆して目的地の崖下に向かった。崖下の川沿いには原っぱが広がっていて、春になったら花が咲き乱れていると思っていたら当たりのようだ。


「「わあっ!」」

「「おおっ!」」


 魔石伯の息子2人は花の絨毯に突っ込んで行った。赤いポピーが一面に広がっているので、俺は花を避けて端の方にツインテールフォックスの敷物を敷いた。アルグラとミネルヴァを召喚する。


「アルグラとミネルヴァを召喚!」

「川の岸辺に咲いた、赤いポピー♪ アルグラ参上!」

「お呼びですか、マスター」

「アルグラで作りたい物があるんだ。ミネルヴァは状態が良い奇麗な花を持って来て」

「はい、マスター」

「何を作るのじゃ?」


 剣聖が俺の手元を覗き込んで尋ねて来た。俺は収納からテクタイトを取り出す。


「ずっと枯れない花を作ろうかと」

「そのような物が作れるのか。儂の孫は凄いのう!」

「そんな物ある訳ないじゃないですか」

「父さんに疑われた……。出来たら罰ゲームね」


 ミネルヴァに取って来てもらった大量のポピーとテクタイトをアルグラに突っ込んだ。


「急速で真空にしてフリーズドライ化してから、これでコーティングして」

「がってん承知! んぐぁぐぐ……ペッ!」


 俺は1本を父に渡して様子を見てみた。


「枯れてはいませんが奇麗に乾燥した花をガラスに閉じ込めたのですか?」

「ガラスじゃなくてテクタイトね。数千年は余裕でその見た目を保つはず」

「凄いです、負けました……。罰ゲームは何ですか?」

「こっちの人が食べられるか試食してみて欲しい物がある」


 俺は収納からご飯と納豆と醤油を取り出した。納豆に醤油をかけてスプーンでかき回すとご飯の上に乗せる。父と剣聖は露骨に嫌な顔をして鼻を摘まんだ。


「何ですか、その臭くて腐った豆は? 下の白いのはカレーライスのライスですね」

「それは本当に食べ物であるか?」

「納豆って言う列記とした食べ物だよ。大豆と言う豆を発酵させて作るんだ。実はこの醤油って調味料も同じような工程で作られている」

「いや、だって糸引いていますよ! 腐っています!」

「もうそんなこと言ったら、父さんが好きなチーズとかヨーグルトだって発酵食品だから腐っているんだけれど?」

「うう……。息子が悪魔ですね。……分かりました、食べますよ」

「はい、あ~ん」


 俺は父の口に納豆ご飯が乗ったスプーンを突っ込んだ。絵面的には赤子が大人の男にスプーンで食べさせているので、普通は逆だと思う。


「いどがぐじのながでびいでいまず(糸が口の中で引いています)……」

「もう、泣かなくても良いじゃん!」


 父は涙目になって咀嚼(そしゃく)して飲み込んだ。珍しく剣聖が父の頭を撫でていた。


「いいよ、後は俺が食べるから」


 折角、用意したので俺は残りを食べた。ルキウスだとこれだけでお腹一杯になる。俺的には満足な食事だったが、口直しとばかりにお茶の用意をした。収納から出したのはコカイン入りと噂されていた黒い炭酸飲料と、細長いビスケットにチョコレートをコーティングした例のお菓子だ。


「マスター、闘技場でお知り合いになったオビスさんとアモルちゃんです」

「「「わあっい!」」」


 ミネルヴァに促されて子供の歓声が1人分増えたような気がして、歓声のした方を見ると女の子が増えていた。女の子の母親で羊人のオビスが声をかけて来て、父が受け答えする。


「あら、剣聖に息子さんだね。ソータさんは来ていないのかい?」

「ソータ殿はちょっと筋肉痛で寝込んでいます」

「あらあら。筋肉痛で寝込むなんて柔だね。あたいは闘技場が休業日なので娘と散歩だよ」

「こちらも散歩ですね」

「あの子達の御守かい。こっちにも子供が居るじゃないか。息子か何かかい?」

「こちらは私の息子のルキウスです」

「こんにちは、おねえちゃん」

「あら、立派な息子さんだねぇ。あたいはオビスで娘はアモルね。よろしくね。じゃあ、あっちもそうなのかい?」

「あちらは伯爵の息子達ですね」

「えっ!? 粗相があっちゃいけないね!」

「ここではただの子供達なので気にする事はないぞ」

「……それなら良いんだけれど」


 剣聖が優しい目をして諭したのでオビスは安心したようだ。


『ソータじゃないルキウス狡い!』


 お菓子センサーを持っている朱雀が現れた。このまま無視して飲み食いすると煩いので、原初の海に行くと朱雀と手を繋ぎ、「我も」と絶妙なタイミングで俺の肩を掴んで朱雀と白虎を感覚共有する。白虎も飲み食いしたいようだ。生命の庭に戻ってお茶にする事にした。


「パパ、2人をお茶に誘って」

「そうですね。オビス殿と娘殿もお茶にしませんか?」

「いいのかい? じゃあご馳走になろうかね」

「スマラーっ! クリスーっ! お茶ですよーっ!」

「「は~いっ!」」

「アモルーっ! お茶だってーっ!」

「は~いっ!」


 (ちょう)を追っていた魔石伯の息子2人は戻ってくると、俺と父を指さした。


「ルキウスとおじちゃん臭~い」

「るきうすとおじちゃん、くちゃい」


 犬人の獣人にも納豆は不評なので、罰ゲーム以外では出せそうもない料理として封印する事にした。そしてコカイン入りと噂されていた黒い炭酸飲料と、細長いビスケットにチョコレートをコーティングした例のお菓子は見た目で酷評される。


『黒い……美味しいのかなぁ』

『不気味である』

「それにしても色が気持ち悪いですね。これは食べ物と飲み物ですよね?」

「確かに色が悪いのう」

「変わったお菓子と飲み物だね」


 朱雀と白虎、父と剣聖から酷評された。オビスは気にしている様子はなかった。アモルも来たので子供達は、お菓子と飲み物の色は気にせずにパク付き飲み出した。


「美味しい! ゲプッ!」

「おいちぃ! げぷっ!」

「これ美味しいね! ゲプッ!」


 それを見た大人達はお菓子と飲み物に手を出す。


「美味しいですね!」

「これは旨いではないか!」

「これは旨いね!」


 俺が口にすると朱雀が騒ぎ出し、白虎も興味を持ちだした。


『キャーッ! 凄い美味しいね』

『この泡の飲み物は青龍の所の酒に追加していた物と同じような物か?』

『炭酸飲料って言って二酸化炭素って言う気体が水に溶け込んでいる。独特の飲み口で爽やかでしょ。お酒をこれで割って果汁を入れるとスッキリして良いよ』

『この炭酸水が欲しいのだ』

『僕はこのお菓子と飲み物ね』

『後で宝箱に入れて置くよ』

『『やったー!』』


 お茶の後にも子供達と遊んだ。父と剣聖に身体を放り投げられる遊びもルキウスで参加したが、慣れると遊具のようで面白かった。最悪は浮かべるし、身体強化がなくても着地が可能なのが分かったので安心して慣れたのもある。

 日が暮れそうなのでオビス親子と別れると、隠し通路で城に戻った。居間で寛いでいると魔石伯達が帰って来た。


「ソータよ。結局、城外には出なかったのか? 門番に聞いたら見かけていないと言っておったぞ」

「隠し通路から出たから門番は見ていないだろうね」

「「「「「隠し通路!?」」」」」


 俺は隠し通路の存在をネタバレして、魔石伯の曾祖父の件も打ち明けた。


「それは本当だとしたら一大事ではないか!」

「う~んと詳しく言えないんだけれど、アルティウスが使える方法で確認したから間違いないよ」


 俺は鑑定で見た結果を魔石伯に話した。


「確かに曾祖父はスタンピードの対処中に亡くなったと聞いておる。遺体が無く魔物に食べられたのではと言われておったが、まさか隠し通路に逃げおおせていたとは……。爺、霊廟(れいびょう)から曾祖父の棺を取り寄せよ」

「はい、坊ちゃま」


 ディスペンサーが大慌てで居間を出て行った。棺の取り寄せは貧民街近くのマギウスジェム家の霊廟からなので、しばらくかかるようで俺達は先に夕食を済ませた。

 夕食を済ませると広間の方に棺が運び込まれた。広間には俺がアルティウスだと知っているメンバーしか入れないようにして、俺は豪華に彫刻されている石の棺の中に収納から魔石伯の曽祖父を出した。


「我が家の家紋が鎧に彫られておるな……」

「ソータさん、良く見つけてくれました」

「私と旦那様の共通の先祖になりますね」


 魔石伯と伯爵夫人とディスペンサーは感無量の表情で棺の中を見つめていた。俺は原っぱで作ったポピーの赤い花をドライフラワーにしてテクタイトでコーティングした物を皆に渡した。


「棺があるって事は葬儀もう終わっているんだよね。その花でも添えて霊廟に安置したら」

「凄く奇麗ね」

「キラキラしているわ」

「何で覆っているのかしら?」

「急速に乾燥させてからテクタイトでコーティングしてあるから数千年は痛まないはず。俺が居た地球では花言葉って花に意味を持たせた風習があるんだけれど、そのポピーは感謝、慰め、眠りなのでピッタリかなと」

「「「凄くピッタリね!」」」


 花なので女性陣が興味を持ったようなので、俺は質問に応答した。皆で1輪ずつ棺に納める。


「生命の庭に咲いた1輪の花が原初の海に返った。親子よ。伴侶よ。兄弟姉妹よ。血族よ。親しき友や仲間よ。良き隣人よ。全ての魂は死と共に回廊を通じて高みへと至って逝く。原初の海で相見(あいまみ)えるその日まで、安らかな門出を祝おうではないか」


 俺は神聖魔法の葬送(そうそう)祝詞(のりと)を捧げた。棺から光の柱が立ち昇り、犬人の男性が上に浮かんで消えて行った。尻尾を振っていたので喜んでいたように思われる。


「アルティ……言えん。まさか曾祖父も高みの者に葬送されるとは思わんかっただろうな。喜んでおった」

「ありがとうございます。ルキウス様」


 魔石伯とディスペンサーが棺の蓋を閉めて領軍の人達を呼んで、棺は霊廟に運ばれる事になった。

 あとで父に長い祝詞を何故かスラスラと言えたのか聞かれたけれど秘密にして置いた。ミネルヴァがカンペとして俺にしか見えない画面を、目の前に表示させていたなんて言えないよね。

次回の話は2025年2月9日(日)の19時になります。

ワンコが増えて招かれざる刺客が忍び寄る……。


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