044話 働かない領主にお仕置きを
ギルドカードのアーティファクトのオークション開催に向けて、領都の拡張工事をしなければならなくなった。宇宙港の拡張と宿泊所の増設なので、魔石伯の許可を取った方が良いと思って城の執務室で聞いてみた。
「宇宙港の拡張と宿泊所の増設だけど、これが計画書ね」
俺は収納からドサドサと資料を、魔石伯の机に山積みした。魔石伯は仰け反って、うんざりするように尻尾がゆっくりと垂れて行った。
「城内とか領内の地形改造とかは、許可が必要なのか分からなかったから、許可証を作って来たんだけれど?」
「いくらソータでも直ぐには出来まい。資料を読むのは後で良いだろう。この書類にサインすれば良いのだな?」
魔石伯は中身も見ずに、地形改造の許可証にサインして俺に渡した。
「ありがとう」
俺は執務室を後にすると父達と合流して、城の西側の岩山に向かった。父と母と剣聖とマレ婆と家令のディスペンサーが着いて来ている。あとはミネルヴァを召喚している。
「前からこの岩山が邪魔だと思っていたんだよね。伯爵の許可は貰ったから迎賓館の用地にしよう!」
城壁内に岩山があって、城内の高台の平地を圧迫している感じだ。高額のオークションになるので貴族が沢山訪れると宿泊する設備が必要なので、迎賓館を建てる事は急務だ。
「坊ちゃまから本当に許可を頂けたのですか?」
「はい、これ。地形改造の許可証」
「坊ちゃまの筆跡のサインがありますね。こんなに短時間にあれだけの資料を読まれたのでしょうか?」
「後で読むってサインだけしていたよ!」
「困った坊ちゃまですね……」
「自分のサインが引き起こす事態を、軽く見過ぎなので良い薬となろう」
ディスペンサーは呆れ、剣聖は後押ししてくれた。
「ミネルヴァ。念のために確認だけれど、この岩山にはトンネルとか隠し部屋とか無いよね?」
「魔素で探査しましたが存在しません」
「じゃ、皆は下がっていてね。ミネルヴァ、岩山を削るイメージのサポートよろしく」
「はい、マスター」
ミネルヴァが俺の視覚に岩山を削るイメージを、濃い点線で示してくれた。俺はそのイメージに従って岩山を収納する。
「「「「「おおっ!」」」」」
岩山が消えて広い平地が現れた。
「昔からあった岩山が消えてしまいました」
「まともに工事したら半年はかかりそうなものを一瞬で……」
「話は聞いていたけれど凄いね」
俺達はディスペンサーと別れ、ミネルヴァを送還してから伯爵家のレビタス車で宇宙港に向かった。
「母さん。外出は久しぶりなんじゃないの?」
「そうね。プロポーズの時以来かな」
それを聞いた父と母は2人の世界に入った。早く弟が欲しい物である。
「母さんは宇宙船の修理の打ち合わせと、中破した時に乗り合わせていた乗員の慰安でしょ? これはエルフとドワーフ達にお土産」
俺は収納から袋を出すと婆に渡した。中にエルフにはメイプルシロップたっぷりのアップルパイと、ドワーフにはウイスキーが入っている。
「うわぁ! これ絶対に美味しそうな匂い!」
「メイプルシロップたっぷりのアップルパイなんだけど、沢山あるから皆で食べたら良いよ。あとドワーフには新しい酒でウイスキーね」
父と剣聖の目がキラリと光ったような気がした。
「父さんと爺には後で飲ませるから心配しないで」
「「ご馳走になる!」」
レビタス車が宇宙港に着いたので、父と母と婆の組み合わせと、俺と剣聖の組み合わせで分かれた。俺は魔石伯の宇宙船からドラゴンの骨を回収しに来たのだ。魔石伯の船に乗り込むとエルフ男とドワーフ男に囲まれて片膝を跪かれた。何故か手の平を俺の方に向けてじっと待っている。
「ちょっと通りたいんだけれど」
「ソータ様は恵みを与えて下さる神様と聞きました」
「何だろ、それ……」
代表してエルフの男が答えるが、意味が分からない。
「ほれ。ソータ殿はホイホイ人に物を上げるから、何かくれると思っているのではないか?」
「ええっ! 普通は逆じゃないの?」
神に貢物を差し出すのは良く聞くけれど、神から物を恵んでもらうのもありなのか? まあ自分は神じゃないし面倒くさくなったので、エルフにはアップルパイ、ドワーフにはウイスキーを渡したら凄く喜んでくれたので良しとしよう!
「しかし母さんの船は女の乗員だけど、伯爵の方は男なんだね」
「普通は持ち主の性別と同性を乗員にするのが慣例だな。男女だと外聞が悪いのでな」
「へぇ。じゃ俺が船を手に入れたら男で集めないと駄目なのか」
「男の乗員を集めるのは難しいかも知れんな。戦って命を落とすのは男が多いのでな。全体的に男の数が少ないのだ」
「ああ、やっぱりそうなのね。伯爵の城の使用人は女しか居ないし、ギルドの職員も戦闘職以外は女が多いから気になっていた。伯爵の女の使用人は伯爵の趣味かと思っていたけれど」
「騎士で男を取られるので、そうなってしまうのではないか? 帝都の宮殿も同じ傾向であるし。ソータ殿の星では違うのであるか?」
「魔物の脅威がないから大体の男女比は半々だね。少ないけれど軍に女も居るから、こっちとの違いが面白いね」
俺がドラゴンの骨を収納すると、宇宙港の東側に向かった。宇宙港の東側は湖近くまで樹海が突き出ているので、拡張するのに邪魔な感じなので切り開きたいのだ。
「爺。ここら辺の樹海の魔獣とか魔物を狩ってくれるかな。魔石を残して倒せる?」
「儂だって冒険者なのだぞ! 魔石を残して倒すのは朝飯前なのだ」
少し不安だったので何体か倒すのを見ていたが、きちんと手加減ができるようで超硬合金アダマンタイトのナイフで魔石も取り出していた。感覚共有してミネルヴァに方向だけ指示して貰えれば倒してくれるので、俺は剣聖が倒した後に樹木を収納でしまって土属性魔法で穴を埋めて、樹海を切り開いていった。
「樹海がなくなっておる!」
「収納にしまって進んだからね」
剣聖は後ろを振り返ると驚いていた。湖の北東側を5平方キロメートルくらい切り開いたので、宇宙港を拡張する用地としては十分だろう。
「宇宙港の近くにある光属性の結界モニュメントを北側に移動するから手伝って」
「結界を維持したまま移動できるのか?」
「うん。宙に浮かせるから、押すのを手伝って欲しい」
「あのような巨大な物が浮くのか……」
俺は光属性の結界モニュメントを移設するために、切り開いた樹海の北端に収納で穴を開けた。
「ミネルヴァ。安定した地盤とモニュメントの埋没部分の長さのイメージをよろしく」
『了解です』
穴は安定した地盤まで掘ってあり、モニュメントの埋没部分の下端の位置まで土属性魔法で岩を生成する。これでモニュメントは安定した地盤まで直結なので、地震等の災害でも問題なくなった。
「ミネルヴァ。運動魔法の出力調整をよろしく」
『了解です』
光属性の結界モニュメントまで戻って周辺の土を収納すると、俺は運動魔法でモニュメントを持ち上げた。元のモニュメントが埋まっていた穴は土属性魔法で埋め戻した。
「浮いておる……」
「爺。さっき掘った新しい穴までモニュメントを押して行って」
「分かったのだ」
流石にこれだけ巨大な建造物を運動魔法だけでゆっくりと動かすのは難しいので、剣聖の化け物じみた身体強化が役に立つ。運動魔法は加速して敵にぶつけるとかは簡単だが、動かす対象が巨大になると破壊しない微妙な力加減の動きが難しい感じだ。
「魔素症じゃ……」
「爺の魔素症を神聖魔法で回復!」
剣聖に天から光が降り注ぎ、魔素症が回復された。
「流石に爺でも長時間の身体強化は無理なんだね」
「当然じゃ! しかし本当に魔素症を治せるとは無敵ではないか」
樹海を切り開いた北端の新しい穴にモニュメントを立てると、土属性魔法で下の方を埋めた。
「世界樹の銀。領都の結界の北側が広がったけれど、問題なさそう?」
『はい。その程度の出力増ならば問題ありません』
「ちょっと結界の魔法陣を最適化する」
俺は結界の魔法陣を呼び出して、積層魔法陣に組み替えた。
「世界樹の銀。これで強度は一緒で消費魔素量が半減したはずなんだけれど」
『凄いですね。他に魔素を回せるので助かると思います』
「他の世界樹にも同期してくれるかな」
『喜んで!』
「帝国の歴史で都市が広がったのは初めてではないか?」
「へぇ。こんなに簡単なのにね」
「しかしあのワンコがこれを知ったら騒ぎ出すのが楽しみじゃ!」
「伯爵位を継ぐにしては若いよね。まだ三十歳になってないでしょ」
「これも教育の一環じゃ。自分の決断が及ぼす影響を思い知らせてやると良い」
「湖岸周回道路が途切れちゃったから、歩きながら作成するね」
俺達は樹海を切り開いた端を歩きながら、土属性魔法で道路を作った。途中で通行しようとしていたレビタス車が途切れた道路と無くなった結界モニュメントに驚いて、立ち往生していたので交通案内しながら完了した。
「ミネルヴァ。湖の拡張イメージをよろしく。爺。俺の近くに居てね」
『了解しました』
「分かったのじゃ!」
樹海を切り開いた中央付近に来ると俺は湖を北に拡張するべく、両手の平を正面でパンッと音を立てて打ち合わせてから地面を手の平で叩いた。某錬金術師の真似で収納を使ってみる。
ザバーーーーーーーーン!!
湖が抉れて北側に広がる。急に土砂が消失したので、湖の水が俺達の方に押し寄せるが、結界魔法イージスで避けた。
「一瞬で湖が広がってしまったのう……」
「ここに宇宙船用の桟橋を作るね」
今度は同じ動作で宇宙船用の桟橋を、土属性魔法で岩を生成して大量に作った。これだけあれば今ある宇宙港の3倍以上は離着陸可能になったはずで、後は港湾設備の建設をすれば宇宙港として機能する。
今日は冬の終わりかけの暖かい日なので、収納から布の敷物を出して湖畔でピクニックをする事にした。
「爺。おしぼりで手を拭いてね」
「おお、すまぬな」
「今日はドラゴン焼肉を挟んだサンドイッチとコーンスープね」
俺はバスケットを収納から出して、剣聖にコーンスープをコップへ注いで渡した。ちなみにサンドイッチは葉物野菜もサンドされている。
「このスープは旨いな!」
「冬に良いよね。定番のスープ」
「こっちに着いて来て正解じゃった」
「あっちはあっちで2人の世界を堪能中じゃないの。婆は良く耐えられるよね」
「マレは若い者が仲睦まじいのを見るのも楽しいそうだ」
サンドイッチを食べてもお腹に余裕があるみたいなので、エルフ向けのメイプルシロップたっぷりのアップルパイも完食する。
「これも旨いぞ!」
「お髭にパイの皮の破片が付いちゃうのが玉に瑕だけれど」
俺は笑いながら剣聖の口周りの髭から、パイの皮の破片を取ってあげた。
「うおっ! 湖が広がっとる!」
湖岸周回道路を通りがかったレビタス車から1人の男がやって来た。前に生乳を買いに行った牧場を近くで営んでいる牛人だった。
「あれ、ソータさんでねぇか。うおっ! 剣聖!」
「こんにちは。剣聖とパーティメンバーになったんだ。こちらは俺の料理にでてくる生乳を売ってくれて、この近くで牧場をやっているラクさん。息子さんは元気かな?」
「剣聖とパーティを組むとは凄いな。お陰様で息子は元気だが、今度は娘が病気で神殿に行って来たんだが治療を断られた所だ」
「ソータ殿……」
「うん、分かっている。見せてもらえるかな?」
「こっちだ」
前の時の息子は怪我だったので回復魔法だけで治療が済んだが、今度は神聖魔法もあるしナノ・ゴーレム薬もあるので、ほとんどの病気は治療できるはずだ。ラクが乗って来たレビタス車の後部座席に向かうと、風邪のような症状の少女がぐったりと横たわっていた。俺は新ナノ・ゴーレム薬を収納から出して少女にかけた。
『ミネルヴァ、病名は何だろう?』
『……ポリオウイルスが検出されたのでポリオです』
「それは何じゃ?」
「ああ、まだ感覚共有が繋がっていたのか。小児期に良く感染するんだけれど、ポリオウイルスって目に見えない小さな悪魔に取りつかれるとなる感染症で、治っても麻痺が残ったりして厄介なやつ」
「子供がかかる有名な病気であるな」
「そ、それは治せるんですか?」
「もちろん! 今、無害化して悪魔に攻撃された身体を治療するから」
『既に無害化して、現在は体組織の治療中です。念のためにラク様にも新ナノ・ゴーレム薬の投与をお勧めします』
「ラクさんも念のために見させてね。ちょっと冷たいけど我慢して」
俺は新ナノ・ゴーレム薬を収納から出してラクにかけた。
『ラク様はポリオウイルスに抗体を持っているので問題ありません。いくつかの軽微な怪我や病気を治療して置きます』
「ラクさんは問題ないって。軽微な怪我や病気を治療しといた」
「うおっ! 一昨日の打ち身が治っている! 病気って何かあったか……あっ! 口内炎が痛くない!」
「お父さん」
娘が治ったようなので念のために妻と息子の診断をしたかったので、レビタス車に乗せてもらって牧場へ向かった。
「怪我を治してもらった兄ちゃんと、剣聖!」
俺はラクの妻と息子に断って新ナノ・ゴーレム薬をかける。息子はポリオウイルスに感染していたが無症状だったので抗体を残すために無害化して、その他は健康そうで良かった。妻は腰痛があったので治療する。
「皆を治してくれてありがたいが、娘の治療費さえ払えるかどうか……」
「俺は生乳を買いに来たのね。治療なんてしてないよ!」
歓声が聞こえたので見てみると、剣聖が子供達をお手玉の要領で放り投げていた。
「それじゃ申し訳ないが、ありがたいのも事実だ。せめて生乳をオマケするので持って行ってくれ!」
「お言葉に甘えて頂くよ」
生乳を手に入れてお暇しようとすると、レビタス車で乗せて行ってくれるというので、商業区の北端の岩山まで連れて行ってもらった。
ラクと別れると城の岩山と同じように、商業区の北端の岩山を収納する。湖岸周回道路と商業区からの道路を土属性魔法で接続すると、商業区が倍くらい広がった感じになる。これで一般向けの宿泊所を増設する用地を確保したので一安心だ。商業区から岩山が無くなった事を知った見物人が押し寄せて来たので、俺達はドワーフの貴金属四兄弟の店舗に逃げる事にした。
「ソータ様、北の方で騒ぎがあっただが知らんだべ?」
「そっちから来たんだけれど、人が集まっていたね。何かあったのかなぁ、剣聖は知っている?」
「わ、儂は知らんぞ……」
長男のプラティウムに尋ねられるが、白を切る事にした。ふと商談スペースの方を見ると、ここに居てはいけない人物がソファーに座ってお茶を飲んでいるのが見えた。
「伯爵!」
「何でワンコがここに居るのだ!」
「ソータ! 剣聖!」
城で執務に忙殺されているはずなのに、こんな所まで来て優雅にお茶を飲んでいる魔石伯を見つけてしまった。剣聖が怒りに我を忘れそうになったので肩を抑えて落ち着かせると、俺は収納から水鉄砲を出して剣聖に持たせた。その意味を理解した剣聖はニヤリと笑い、目にも止まらぬ素早さで水鉄砲の旧ナノ・ゴーレム薬を魔石伯と付き人の2人に命中させた。
『ミネルヴァ。伯爵と付き人を拘束して』
『了解しました』
魔石伯は立ち上がって逃げようとしたが、一瞬、身体がビクッと震えた後にソファーに背筋を伸ばして座り直した。付き人は魔石伯と同じように震えてから気をつけの姿勢で固まる。この付き人はアクアヴィータのお披露目の時に魔石伯と一緒に来て、魔石伯にアクアヴィータの試飲を奪われた領の財務担当の犬人だったはずだ。
俺と剣聖は魔石伯の向かいのソファーに座ると尋問する事にした。
「さて、城で執務に忙殺されていらっしゃいましたよね? 伯爵」
「か、身体が動かんのだが、これは何でだ?」
「さっきの剣聖が撃った水鉄砲には、怪我や病気を治療するナノ・ゴーレム薬が入っているのね。この薬は千切れた身体とか治せるじゃない? 実は身体を治すだけじゃなくて、自由に操ったり偽の感覚を与えたりできる薬でもあるの」
「そ、それで身体が動かぬのか!」
「そっちの財務担当の人。妻とお子さんは犬人ですか?」
「そ、それが何か関係があるのか?」
「正直に話した方が良いぞ。ソータ殿は甘くないぞ」
「……皆が犬人だ」
『マスター。嘘ではないようです』
剣聖に脅された財務担当の人は、正直に話してくれたようだ。
「財務担当なのに去年の決算の途中で伯爵を出歩かせちゃ駄目でしょ。白虎ソファーの刑に処す」
俺は収納から白虎ソファーを出すと、ミネルヴァが財務担当を操ってソファーに身体を擦り付ける動作をさせた。
「ギャー! この匂いは何だ!」
「その匂いが付いていると、しばらく妻と子供達から避けられると思うよ」
「ソータ様は、実は悪魔だべ?」
貴金属四兄弟はドン引きしていたが、肝心の魔石伯が終わっていない。
「伯爵は統帥権の錫杖から反省していなさそうだね。ちなみに収支と支出が逆に記載していて、払い過ぎの騎士爵の人への手続きは終わったの?」
「ま、まだである」
「俺、伯爵にお願いして早めに返してもらうようにするねって言ってしまったんだよね。相手のミスだけどお金の話は忠誠心に直結するから、早く処理してあげて安心させてあげないと駄目だよ。俸給の支払日はいつ?」
「き、昨日である……」
「最悪だ!」
「例えばだ。お主が国に払い過ぎていて返すと言われて待たされたら不信感を募らせるであろう? それと同じ事をお主はしておる」
「ぐぬぬ……」
「ミネルヴァ召喚!」
「マスター、処置は決まりましたか?」
「伯爵はお酢1マイクログラムを鼻に1分間の刑に処す」
「了解しました」
「……フンギャー!!!」
魔石伯の鼻にお酢が1マイクログラムかかったと同じ刺激が発生している。孤児院の犬もお酢の匂いを嗅ぎつけるとどこかに身を隠していたから、犬人の魔石伯にも効くと思ったら大当たりのようだ。目から涙を流し、鼻から鼻水を垂らして悶えている。
「ずびばぜんでじだ(すみませんでした)……」
「ソータ様は、やはり悪魔だべ」
「財務担当の人も伯爵のイエスマンだけじゃなくて、駄目な事は駄目って言ってあげないと」
「わ、分かりました。以後は注意します!」
「ミネルヴァ。2人を城の執務室まで連行して」
「了解です。分身が向かいます」
ミネルヴァの本体は送還して分身が現れて、魔石伯と財務担当の人を操って城に帰って行った。
「それで伯爵は何しに来ていたの?」
「曲刀2本をマギウスチタンで作って欲しいと言われただべが、材料がないので鋳型だけ作っただべ。後でソータ様に材料は持ち込ませるとか言っていただべが、ソータ様は聞いていただべか?」
「欲しそうなことは言っていたけれど、材料の持ち込みは頼まれてないよ」
「鋳型の料金も貰ってないのでタダ働きだべ……。それで今日のソータ様は何の用事だべ?」
「近いうちにギルドカードのアーティファクトのオークションを、この領都で開催するんだけれどドラゴニアとマギウスチタンとアダマンタイトの武器と武具を父と剣聖…あと伯爵で宣伝するから、ここで受注できるようにしてくれないかなと相談しに来た」
「材料がないし溶かせないので扱えないだべ」
「材料は俺が卸すよ。それとここにある魔石炉を改良するから溶かせるようにするから」
「それはありがたいだべ!」
俺達は作業場に向かうと、俺は3基ある魔石炉の魔法陣を書き換えた。坩堝を取り出す時に使う特製のハサミもセットで置いていく。
「火属性の火を出すのを止めて、積層魔法陣にして運動魔法で魔素を直接熱に変換するようにしたから魔石の消費が3割は減ったはず。あと結界魔法のイージスの簡易版を炉内に展開して熱を反射増幅するようにしたから、俺が渡す材料が余裕で溶ける出力まで出せるようになった。それから超高圧にできるようにしたからドラゴニアを焼き固められるようになった。
これが坩堝を取り出す時に使うハサミね。超硬合金アダマンタイトに魔法陣を組んで熱を通さないようにしてある」
「熱出力が上がって魔石の消費が3割も減っただべ?」
「うん」
「超高圧とか、もう別次元の炉になった気がします……」
長男プラティウムは使う魔石が減って喜び、操作を聞いた四男キュープラムが炉のスペックアップに呆れた。
「あと硬くて削れないからメンテナンスできないと困ると思って、新しい砥石を作った。材料も置きたいから空いている場所は?」
作業場の外の材料置き場に案内されたので、収納から目の細かさが違う何種類かの砥石と、材料を出す。砥石は人工ダイヤモンドを魔素で強化して配合し、超高圧にして高温で焼き固めた物だ。材料はドラゴニアの袋と、マギウスチタンとアダマンタイトはインゴットで山積みにする。
「ドラゴンの素材にアダマンタイトとか夢のような高額素材だべ。盗まれたら大変だべ」
「この材料置き場に契約魔法しようか? 盗もうとすると神罰が下るように。あとで注意書きの看板を建てた方が良いよ」
「儂らには良い神様だべ!」
材料置き場に契約魔法をすると、4人のドワーフにすり寄られてありがたがられた。ドワーフの男は皆おっさんに見えるが、背が低めなのでちょっと可愛い。剣聖がジェラシーを感じたのか俺の肩に顎を乗せて来た。しばらく髭モフモフを堪能してから、魔石炉の試運転でマギウスチタンを使って魔石伯用の曲刀2本を作ってもらうことにした。
「料金なしだと可哀想なので、今日お姉さん達にあげた新しいお酒のウイスキーで良い?」
「「「「新しい酒!!!」」」」
4樽を物置に置くとウキウキな貴金属四兄弟は、速攻で曲刀2本を完成させた。
「良い出来ではないか」
剣聖は略式鎧に身を包んで、外に出て曲刀二刀流で剣舞を舞った。流れるような動きと豪傑さが合わさって思わず見とれてしまった。剣の動きを見せるための動きなので剣圧は高くないが、剣を振る爽快な音が辺りに鳴り響く。
ヒュン! ヒュヒュン! ヒュヒュヒュンッ! ヒューーーーン!
音で気づいたのか、通行人や住人が集まってしまった。剣舞が終わると拍手と歓声に包まれた。
「ワンコ用なので仕方がないが、もう少し刀身が長いと良いのう」
「それ伯爵用の餌だから!」
素材やらの代金精算は武器と武具が売れてからで良いと話し合いで決め、俺達は貴金属四兄弟の店を後にすると、冒険者ギルド前で剣聖が剣舞を披露して貴金属四兄弟の店を宣伝して置いた。
城に帰ると父達が帰って来ていたので、中庭で父と剣聖が組んで剣舞をして貰った。ミネルヴァの分身に念話で魔石伯に中庭を見るようにと伝えると、剣聖が持つ曲刀二刀流に歯ぎしりをした。
「私の曲刀が!」
「早く書類仕事を終わらせないと、爺に取られちゃうよ!」
馬に人参のような魔石伯用の釣り餌は効果覿面で、馬車馬のように働いて貯まっていた書類仕事を片付けて剣聖から曲刀2本を奪うと頬ずりをしていた。
その後に俺が行った地形改造の報告が相次ぎ、説明に忙殺された魔石伯が見られたので、お仕置きとしてのお灸は大成功だった。
次回の話は2025年1月26日(日)の19時になります。
レビタス・バイク(浮かぶバイク)の登場!
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