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【完結】神様に元の世界に帰りたいと願ったら身体を要求された  作者: 仲津山遙
第1章 幼少期編

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043話 若き将軍、愛に目覚める?

 俺と剣聖は恋愛成就ダンジョンからギルドカードのアーティファクトを取って来ると、全てのギルド長達6人に有無を言わさずに冒険者ギルドの会議室に連行されてしまった。


「何の用? 言わなくても分かるけれど……」

「「「「「「ギルドカードのアーティファクトを売ってください!」」」」」」


 魔石伯の臨検徽章の件を揉み消すために、神託でギルドカードのアーティファクトの希少価値を引き上げたのが裏目に出たのかも知れない。


「売るのは良いんだけれど、普通はいくらなの?」


 ギルド長達は色々な値段を言い合っていたが、結局は相場がなさそうだった。


「オークションとか仕組みないの?」

「ありますよ」


 冒険者ギルド長のエレガンターが代表して教えてくれた。今日もアメリカンショートヘアーの顔が可愛い。


「それならオークションに出すから準備とか丸投げで平気かな?」

「準備とか告知とかはこちらでやらせて頂きます。それと普通は所定の手数料は頂きますが、優先で売って頂けるなら手数料は要らないのでどうですか?」

「「「「「冒険の! 抜け駆けは狡いぞ!」」」」」


 他のギルド長に冒険者ギルド長は責められた。


「別に台数は沢山あるんだから、皆でオークション手伝いながらやれば良いんじゃないの?」

「え~と、そんなに沢山あるのですか?」

「百二十九台あるよ」

「「「「「「!!!」」」」」」

「取りあえず領都の皆さんにはお世話になっているから、1ギルドに2台をオークションの開始値で優先的に売るので、仲良くやってよ」


 俺は収納からギルドカードのアーティファクトを机に並べた。十七台は先約用に確保して、十二台を各ギルド長に2台ずつ配ったら、オークションに出すのが百台になったのを皆で確認する。


「これはソータさんのギルドランクを上げないと駄目ですね」

「「「「「賛成だ!」」」」」


 ギルドカードのアーティファクトをギルドにもたらしたので、貢献度が上がった扱いになるらしい。俺のギルドカードを収納から渡すと、新しく手に入れたギルドカードのアーティファクトで各ギルド長がギルドランクを上げる操作をしてくれた。6ギルドのランクが1ランク上がって全てDからCに上がったので、護衛系の依頼も受けられるようになったようだ。受ける気はないけれどね。


 俺は折角、広い場所があるので、1台のギルドカードのアーティファクトに契約魔法を施した。俺かここの領主か闘技場のオーナーの許可がないと持ち出し禁止にして、盗もうとすると神罰が下るようにした。


「そのギルドカードのアーティファクトはどうするのですか?」

「闘技場の出場者の確認用にレンタルする予定」

「ソータさんは自分で契約魔法が使えるので便利ですね。神殿から神官の派遣を要請(ようせい)しているのですが、滞っていて困っています」

「「「「うちのギルドもだ!」」」」」


 全ギルドで困っているようなので、俺は手助けをする事にした。


「じゃ俺に無報酬で指名依頼にしたら良いんじゃないの? 冒険者ギルドで他のギルドのをまとめて持って来てくれればやるよ。ただあまり頻度が高いと次のは時間を置きたいかな」

「今、滞っている物が完了するだけでもありがたいので、まとめて依頼にして来ますね!」


 ギルド長達が慌てて駆け出そうとするが、俺は待ったをかけた。


「ちょっと待って。このギルドカードのアーティファクトを放置できないから護衛と、ギルドカードにメッセージを送りたいのと、荷物を送りたいので手配できる人を連れて来てくれると助かる」

「喜んで手配します!」


 ギルド長達は急いで会議室を出て行く。


「しかし神殿は仕事をサボり過ぎじゃないかな」

「普通は魔素症があるので魔法を連発できんからな」

「父さんは知っているけれど、俺が近くに居たら魔素症は治せるから言ってね」

「何だと! 魔素症は法王にしか治せないはずだが」

「アルティウスは穢れた魔素を浄化するのも役割なんだって。高みに至ると、その能力が付与されるみたい」

「それでは魔法が使い放題ではないか!」

「そうみたいね」


 俺達が雑談していると、会議室の扉がノックされたので入室を許可すると、受付のお姉さんと教官のグリとグラ兄弟が入って来た。


「「「剣聖!」」」

「あれ、皆、会うのは初めてなの?」


 3人は激しく頷いた。


「俺のパーティメンバーだからよろしく!」

「「「剣聖とパーティとか凄い!」」」

「グリグラはギルドカードのアーティファクトの護衛?」

「護衛で呼ばれましたが、この台数は凄まじいですね」

「もしかしてソータさんが手に入れたんですか?」

「うん、貰った……いや、恋愛成就ダンジョンの宝箱から出たんだよね。剣聖」

「そ、そうじゃな。儂も驚いたぞ」

「それで、お姉さんにメッセージとか雑用を頼んで良いの?」

「はい。ギルド長からソータさんが送る物があるのと、メッセージを飛ばしたいと聞きました。送り状はこちらで、メッセージはこちらの用紙にお願いします」

「荷物は2個あって、1個は剣聖が送る。俺は1個を預けるのとメッセージを2通飛ばすね」


 メッセージの用紙1枚は闘技場の新オーナーのアデト宛てにギルドカードのアーティファクトが入手できたので、冒険者ギルドまで取りに来て欲しいと書いた。契約魔法の注意書きも付け足した。

 もう1枚のメッセージの用紙にはルキウスの叔父の現将軍オケアヌス宛てで、「叔父さんとのお近づきの記念に十五台のギルドカードのアーティファクトを贈ります。将軍職は大変だと思うので、政治的に配慮が必要な方面に差し上げて下さい。送った箱は叔父さんが直接に開けないと契約魔法で神罰が下るので注意」と書いた。それを見た剣聖は噴き出したので、ギルドの3人はビクリと身体を震わせた。


「それはオケアヌスの(おい)愛が爆発してしまうぞ」

「結構、思慮深そうなイメージを受けたけれどね」

「ああ見えて家族には甘えん坊なのじゃよ」


 俺は野菜が入っていた空きの木箱に十五台のギルドカードのアーティファクトを詰めると、間に稲藁(いねわら)を敷き詰めて釘で蓋をした。箱にオケアヌス以外が開けると神罰が下ると目立つように注意書きをして、契約魔法で封印する。


「はいこれ。このギルドカードのアーティファクトは強力な契約魔法がかかっているから注意ね。盗んだりすると神罰が下るよ」

「ひぇっ!」


 受付のお姉さんは荷物と用紙を受け取ると、恐々と会議室を出て行った。入れ替わりに冒険者ギルド長が職員を数人引き連れて入って来る。


「ソータさん、これだけ契約魔法をして欲しいの」


ドカッ、ドカッ、ドカッ! ドカッ、ドカッ、ドカッ!


「おいっ! 木箱が6つも見えるけれど!」

「スタンピードで半年分くらい貯まっているのよね」

「ミネルヴァ召喚!」

「はい、マスター。お呼びですか?」

「これ契約魔法したい書類らしいんだけれど、人族との契約とアルティウスが関わる契約に分類してくれないか? 契約の精査も頼む。俺は契約魔法を頑張る!」

「承知しました。このように分類しましょう」


 ミネルヴァの指示でギルド職員が、机を作業しやすいように並び替えた。俺は手元に書類を取って契約魔法をして、処理済みの所に置けば良いらしい。


「これはここの契約内容が曖昧なので契約魔法が発動しません。差し戻しです」

「あ、はい」


 ミネルヴァは慣れた感じで書類を精査していく。アカシック・レコードで多数の事例を参照できるので、超AI顔負けの働きぶりだった。

 俺は面倒になって来たので、契約魔法を無詠唱で次々と熟した。


「契約申請、契約承認。契約承認だけ、契約承認だけ。契約申請、契約承認……」


 最後の差し戻しが戻ってきて契約魔法をすると全てが終わったので、各ギルドの束に仕分けしてもらってからミネルヴァを送還する。


「ミネルヴァありがとう、送還」

「マスターのお役に立てて嬉しい限りです」

「剣聖、疲れた……」

「ソータ殿は神殿の尻拭い要員ではないぞ」


 終わったお礼にやって来た6ギルド長は剣聖に睨まれて、蛇に睨まれた蛙の状態になった。6ギルド長に丁寧にお礼を言われてから、俺達は魔石伯の城に帰る事にした。


「実はね…魔石伯の領政を手伝っちゃったんだよね」

「政治は領を預かる貴族の大事な務めじゃ。ワンコを甘やかすではないぞ」

「スタンピードで忙しかったんじゃないかな。母さんに呼ばれて伯爵の執務室に行ったら、凄い事になっていたから、今日みたいにミネルヴァと、あとアルグラも出して手伝っちゃった」

「儂の孫は優しいのう」

「そんなんじゃないんだよね。スタンピードは半分くらい俺のせいだから、罪滅ぼしみたいな感じ」

「何か関係があったのであるか?」

「俺がこっちに来たせいで創造神が忙しくなって、原初の海の通常作業が滞っていたみたいなんだよね。そのせいで海が荒れて、穢れた魔素が世界樹の浄化能力を超えて生命の庭に流れ込んでいたので、魔物が大量発生した感じ」

「そのような背景があったのであるか……今は平気なのであろう?」

「うん。忙しくて寝所に引き籠っていた創造神に、俺ばかりにかまけないでと発破をかけてからは問題ないみたい。俺が来てから大変だったみたいだから、魔石伯に手心を加えてもらえるとありがたいかも」

「分かったのだ。奴の両親に頼まれているので貴族としての心構えは説くつもりであるが、責めるようなことはしないでおこう」

「両親は健在なの? 犬顔?」

「父親は犬顔であるな。母親は優しい感じの人族だ。帝都の屋敷で隠居しておる」

「へぇ。ディスペンサーさんみたいな感じ?」

「ああ、良く似ておると言うか、同じ服を着ていたら見分けがつかん!」

「それは見てみたいね!」


 城に帰って使用人に聞くと、魔石伯は執務室に居るようなので向かう。執務室には魔石伯と伯爵夫人と家令のディスペンサー、父と母とマレ婆、ミーティスが居た。


「ミーティス帰っていたんだね。帝都はどうだった?」

「お陰様で盛況でした。アクアヴィータは帝都を含めて十一の領で販売が決まりました。予想外だったのは調味料が好評ですね。それから晩餐(ばんさん)会でドーナツを振る舞ったのですが、魔聖が我先にと確保されてソータ殿を名指しで指名してレシピが欲しいと言われたのですが、お知り合いだったのですか?」

「あースタンピードの後にここに来ていて、冒険者ギルドでちょっと話したんだよ。帝都から遥々来てくれたんだからと、帰り掛けのお土産にドーナツを渡した」

「そうなんですね。流石にレシピは渡しませんでしたが、ドーナツの袋の魔法陣が貴族院の教授連中の研究対象になったので、帝都に来たら連行しますと言っていました」

「それは不味いわよ……」


 母が顔を青ざめた。


「研究対象にはジャイアント・タートルのように食らいついて離さないから。ソータさんなんて丸呑みされてしまうのではないかしら」

「うへぇ! その手の人種は知っているから怖い……」


 父に聞くとジャイアント・タートルは大きなスッポンのような魔物らしい。俺が研究者の道を諦めた時も色々とあった。原因の幼馴染の胃に穴が開いたのは懐かしい思い出だ。


「起きてしまった事は仕方がない。はい、ミーティス。これがウルスメル商会の去年の決算書とその説明書に、クッキーのレシピね」

「えっ?! 決算書は、これから帰って徹夜して作ろうと思っていたのですが。……この項目は何ですか?」

「それは複式簿記(ふくしきぼき)と言って、資産と負債も記載しているんだ。そのように記述すると商会内でどれだけのお金が動いているか、パッと見て分かるでしょ」

「確かにこれは素晴らしいですね! 今年もこの複式簿記でやりたいです。しかし良くこんなうちの商会の細かいお金のやり取りまでご存じですね」


 俺はミーティスと妻のモーリスに神託を降ろした。


「あ、アルティウス……なのですか」


 ミーティスは急いで椅子から立ち上がって片膝を跪く。


「モーリスにも神託したから。それから父さんの親友に畏まられたくないから、前と一緒の感じでよろしく」


 俺はミーティスに手をやって立ち上がらせた。


「父さんとは誰ですか?」

「父さんと母さん、爺と婆ね。そして俺はルキウスでもある」


 俺は父と母、剣聖と婆を指さしてから、最後は自分を指さす。赤子ルキウスに変身してミーティスを納得させた。そして俺は全く違う科学文明の遠い星の人だった事と、高みに至ってからルキウスに転生した事を伝えた。


「もう少し早く言おうかなと思っていたんだけれど、遅くなってごめんね」

「いえ、打ち明けて下さって光栄です。しかし私とモーリスに話してしまって大丈夫ですか?」


 念話だけで創造神から伝えられる。


『もうしたよ。ソータ』

「仕事が早いな。創造神の力で、ミーティスとモーリスは俺の秘密を話したりできなくなったので注意ね」

「ソータ殿は……本当ですね。凄い」

「本当は帝都に行く前に渡したかったんだけれど、皆に渡しているイージス・ペンダントを渡して置く。こっちがミーティス用で、こっちがモーリス用ね」

「アーティファクト並みのアクセサリーじゃないですか! ありがとうございます」


 危険が迫ると結界魔法イージスが展開されるペンダントを、俺は説明して渡した。ペンダントの形はミーティスが牛で、モーリスはタンポポの綿毛にした。


「ソータよ。その複式簿記の決算書を領単位で作れんのか?」


 俺は収納からドンドンと、この領の決算書と説明書を魔石伯の机の上に置いた。


「それで領の方は去年含めて過去5年分ある。ちなみにウルスメル商会もだけど、去年までのしか俺やらないからね。これはスタンピードのお詫び的な奴ね」

「ソータ凄いぞ!」


 俺は剣聖にしたスタンピードの背景を皆に語った。


「他の領でも魔物が強くなっていたと社交界で話題となっておった。そのような原初の海の背景があったのだな……」

「もう大丈夫だから安心して」


 ディスペンサーと剣聖に魔石伯がお説教されるターンとなった。


「ソータ様は坊ちゃまを甘やかし過ぎていらっしゃいます」

「儂もそう思うぞ。伯爵家を継いだのだから有事の際でも、通常通りに領政は熟すべきだな。統帥権の錫杖なんぞを孫に預けて領を乗っ取られていたら、どうするつもりだったのじゃ?」

「ソータはそんな事しないではないか!」

「信用してくれるのは嬉しいけれど、俺、父さんに悪い子って言われているから、時間があったら乗っ取っていたかもね」

「私は時々、息子は悪魔ではないかと思います」


 俺は収納から闘技場関係の書類を、魔石伯の机にドサドサと置いた。


「これは何だ?」

「貧民街にあった闇の闘技場を領有して運営するための書類。早く読んでサインしてね」

「認可していない闘技場があるのは承知していたが、領有の意味が分からん」

「脱税していたから乗っ取っちゃった」

「!!」


 俺は父とした賞金稼ぎの件から脱税を告発する時に、統帥権の錫杖が役に立ったと魔石伯に説明した。


「それから領の決算書をまとめている時にミネルヴァと見つけたんだけれど、この男爵達のお金の動きが怪しいんだよね。後で問い質した方が良いよ。あとこの騎士爵は収支と支出が逆に記載しているみたいなので、払い過ぎだから俸給で払い戻してあげて。本人には言ってあるので次は大丈夫だと思うよ」


 決算書の添付資料を広げて魔石伯に見せ、俸給で払い戻す指示書を渡した。


「ぐぬぬ……横領であるか」

「脱税と横領を見つけたんだから、報奨金くらい貰えるよね?」

「!!!」

「クククッ! 儂の孫の魔手からは逃れられんな!」

「脱税だけでなく横領も報奨金ですか……息子の金稼ぎは凄いですね」

「父さんはドラゴン狩りして素材を売れば良いんじゃないかな」

「それは今度一緒に行きましょう。それでギルドカードのアーティファクトは売るのですか?」

「ギルド主体でオークションしてくれるみたい」

「息子が大金持ちになって行く……」

「ここでオークションするのよね? 帝国中から人が集まって大変になりそうね」

「それは商機ですね! 商会としては来て頂いた方に色々な物を売りたいです」


 母の懸念に魔石伯が慌てだした。


「この領都でそんな大掛かりなイベントを行ったことがないので、宇宙港の許容量が足りぬのではないか?  あと宿泊施設も足りぬぞ。それらの費用も足りん……」

「お金だけなら平気じゃないかな」


 俺は決算書の去年の分の収支のページを開いて魔石伯に見せた。


「ウルスメル商会のお陰と闘技場の脱税に対する追徴課税で、2割も純利益が上がっているから」

「「「「「「「「2割!」」」」」」」」

「これだけ増えれば大規模開発の2~3個を、同時にやってもお釣りが来るはずだよ。しかも公共事業なので景気が良くなって今年の税収が増えるはず。それにオークションの税収ってこの領に入る訳でしょ?」

「そうだな」

「更に人が訪れるって事はお金を持って来て使ってくれるじゃない。それは回りまわって税収になるので伯爵としては得しかしないよ。ついでにドラゴン素材もオークションに出す?」

「それは良いですね。それなら私も稼げそうです」


 父がやる気を出してくれたので良かった。


「それから新しい武器と武具の宣伝もして、ドワーフの貴金属四兄弟に受注させて儲けさせて税収アップ狙うのも良いね。父さんと爺は宣伝に協力してくれるでしょ?」

「それは何をするんですか?」

「儂がドワーフ共を儲けさせられるのか?」


 俺は父と剣聖を立たせて全身鎧を収納から着させた。


「何じゃこれは!」

「まあっ! とても素敵な鎧ですこと!」

「ホリゾン格好良いよね。私、この鎧見て惚れ直しちゃった」


 新しい全身鎧を見たことがない伯爵夫婦は驚き、母は父を褒めた。兜のバイザーを上げて、母にデレデレな父は笑える。俺は略式鎧にも父と剣聖を着せ替えさせ、アダマンタイトとマギウスチタンとドラゴニアの説明をした。オリハルコンとアダマンタイトの超硬合金化は秘匿(ひとく)するつもりだ。父と剣聖の優位性は保っておきたいからだ。


「材料を貴金属四兄弟に卸して、魔石炉を俺が改良すれば同じような武器と武具ができるはず。父さんはドラゴンスレイヤーだし、剣聖は言わずもがなの知名度だし、2人がオークション会場で宣伝してくれたら来場者は欲しくなるよね」

「まあ次から次へとお金儲けのネタを考えられるよね。私の息子ながら感心しちゃうよ。前の星でもお金持ちだったんじゃない? どのくらい稼いでいたの?」

「1つの星に二百くらいの国があったんだけれど、中堅上位の国の国家予算くらい?」

「「「「「「「「国家予算!!!」」」」」」」」


 元手は幼馴染だが、運用の指示は俺がやっていた。それだけの金が止まると経済に悪影響を及ぼす恐れが高かった。凄く稼いだから隠居したい幼馴染を、周囲の者達に経済的な恐慌(きょうこう)が起こると脅されて無理やり働かせたが、そのために研究者の道を諦めた後悔よりも、今はもう少しゆっくり過ごせていたら良かったと思うようになった。


「それからマギウスチタンは魔鉄より軽くてアダマンタイトと同じくらい硬いし、伯爵の曲刀に良いんじゃないかな?」

「ソータよ……んぐっ!」


 俺に抱きついてペロペロしようとした魔石伯を、剣聖が頭を掴んで防いでくれた。


「あとこの領だけど、どう見ても文官が足りないよね」

「どちらかと言うと騎士の方が多いのは認めるぞ」

「折角、税収が増えたんだから奨学金の制度を設けて文官を育てたら?」

「何じゃそれは?」


 俺は地球にあった貧乏で学校に通えない子供に自治体が支援して学校に通わせて、将来の働き手を育てる制度の説明をした。成績が優秀な人材は無償で、成績はそれなりだけど成り上りたい人材は低利子とメリハリをつける話も添える。


「それは良い案だな」

「これが検討用の資料ね。俺の元居た星での問題点なんかも付けてあるから、導入するなら良く検討するように」

「ソータ様は坊ちゃまを甘やかしていませんね。教育に感謝します」

「儂の孫は甘くないようだ。頑張って書類と格闘するのだぞ」


 ディスペンサーと剣聖は、魔石伯の机の上に積み重なった書類を見つめながら感心していた。


「この量を処理しないといけんのか……」


 魔石伯は伯爵夫人と母を見て助けを求めたようだが、2人から援護は得られそうもなかった。


「ソータさん。旦那様は大量の書類仕事が苦手なので、息子達と遊ぶ事に逃げそうですわよ」

「それは阻止しないとね。そうだ! 統帥権の錫杖の罰もあるから、爺、伯爵を持って来て」

「承知した」


 俺は収納から白虎ソファーを出すと、爺に魔石伯をソファーにしばらく押し付けるようにお願いする。


「ギャーッ! この匂いはヤバイぞ!」

「このソファーは何ですの?」

「白虎の抜け毛を毛皮風に縫い付けたソファーで、四神と創造神から貰ったの。白虎の匂いが付いているとスマラとクリス兄弟から避けられるんだよね……」

「まあっ! サボり魔の旦那様にピッタリのソファーですこと!」


 剣聖は面白がって魔石伯をソファーの上で転がしていた。


『マスター。ギルドカードにメッセージが届いております』

「ギルドカードにメッセージだって、どれどれ……」


 俺は収納からギルドカードを取り出すとメッセージを表示させる。皆も気になったのか覗き込まれた。


「ソータ様、結婚して下さい! オケアヌスより」

「オケアヌスに気に入られたようじゃな!」


 俺は剣聖に肩をバシバシと叩かれた。大量のギルドカードのアーティファクトが送られるので変な作用を起こしたようだ。まあ俺は既婚者なので断るけれどね!

次回の話は2025年1月24日(木)の19時になります。

馬に人参、ワンコ伯爵に曲刀です!


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