040話 騎士の忠誠に胸と尻
父と剣聖に鎧をプレゼントしようとしている。明日には鋳型が出来るようなので、東にある職人街の貴金属四兄弟の店舗から帰って翌日に再び訪れた。父と剣聖も試着があるので、翌日も同伴してもらっている。
「鋳型が出来ただべ。過去1番の最高傑作だべ」
ドワーフ兄弟の長男のプラティウムと次男のアウルムに作業場へ案内されると、鎧の鋳型が所狭しに並べられていた。俺は眷属の2精霊を召喚する。
「アルグラとミネルヴァ召喚!」
「久しぶりの登場に心沸き立つ、黄金色の錬金窯のアルケミア・グラール参上……きゃー!」
「作業中じゃなければ観察して良いだべ?」
「壊さなければ何しても良いよ」
「酷い旦那や……」
アルグラはドワーフ兄弟に囲まれて弄り回され始めた。
「マスター。鎧の作成ですね」
「うん、サポートよろしく。全身鎧の方から始めようか」
「お任せください」
俺は収納からマギウスチタンのインゴットを出した。宇宙船の部材にチタンが欲しかったので、アルグラで抽出した純チタンに魔素で強化した物を、そう呼ぶ事にした。アダマンタイトに近い性能で重さが3分の1と軽いのが特徴だ。魔素で強化してあるので純チタンよりも硬くなったので、鎧としても良い素材になりそうだ。
四男のキュープラムがサポートしてくれるようで、魔石炉を操作してくれている。
「ミネルヴァ。超硬合金アダマンタイトの時と同じように、魔石炉内をイージスのベクトル・リフレクターで内向きに覆ってくれ」
「了解しました」
俺はマギウスチタンのインゴットを坩堝に入れて魔石炉に投入するが、溶けないので運動魔法で炉内を加熱する。
「熱耐性も上がっているな」
「前の超硬合金アダマンタイトもそうですが、この魔石炉で溶けないなんて帝国内で誰も溶かせない金属って事ですよ」
キュープラムが驚愕の表情で炉内を伺った。やがてマギウスチタンのインゴットが溶けだした。
「ミネルヴァ。炉内は何度だ?」
「3千5百度です」
「良い性能だ。それじゃ全身鎧は早く終わらせるか」
魔石炉と鋳型を何度か往復して、全身鎧の2着分を流し込んだ。
次に違う坩堝を用意して、超硬合金アダマンタイトを溶かして略式鎧の金型を作るための鋳型に流し込む。
全身鎧の方は冷えたようなので、キュープラムが鋳型から取り出した。銀色に光る鎧のパーツは恰好が良い。そして略式鎧の方も冷えたようなので、キュープラムが鋳型から金型を取り出した。
「次はアルグラを使いたいんだけれど、そろそろ解放して」
「流石、神様が作った物だけはある。良い品だべ」
「四神が作るのに半年かけたって言っていたからね」
「それでソータ様……あの黄金色の両手剣が見たいだべ」
「剣聖のグラムクルッジ?」
「んだ」
「爺、その剣をドワーフ兄弟に見せてもらって良い?」
「構わんが、どうせ修理できんぞ」
剣聖からグラムクルッジを受け取ったドワーフ兄弟は、作業台に乗せて検分しだした。
俺は次の作業に移って略式鎧の素材のドラゴニアを収納から取り出した。それを見たキュープラムが疑問を訴える。
「何ですかそれは?」
「ドラゴンの鱗を粉上にして魔素で強化したんだ。俺はドラゴニアって名付けた。金属と言うよりは陶器のジルコニアに近いので軽い。これを金型に入れて超高圧をかけて高温にすると固まって焼き上がる」
「この金型に入れれば良いのですね。面白い製法ですね」
キュープラムがドラゴニアを金型に入れるのを手伝ってくれたので、俺はアルグラに金型を投入するのに専念できた。しゃもじでアルグラをかき回す。
「んぐぁぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ……ペッ、ペッ、ペッ、ペッ、ペッ、ペッ……ふひぃ」
「これを父と剣聖で分けてアルグラに再度投入する」
キュープラムは金型から鎧のパーツを外してくれて、俺はアルグラにそれぞれ鎧のパーツを投入する。金型は壊れた時に、また使うので収納にしまった。最後に父の方は超硬合金アダマンタイトのインゴットを入れてオリハルコンを少々、剣聖の方にはオリハルコンのインゴットを入れて、しゃもじでアルグラをかき回すと完成だ。
ちなみにオリハルコンは金貨を鋳つぶしたりゴールドインゴットを買ったりしたのを、アルグラで魔力注入してオリハルコン化した物だ。
「んぐぁぐぐぐぐぐぐ……ペッ、ペッ、ペッ……ふひぃ」
「んぐぁぐぐぐぐぐぐ……ペッ、ペッ、ペッ……ふひぃ」
「「「「「「おおっ!」」」」」」
父の略式鎧はドラゴニアを超硬合金アダマンタイトのナノ・ハニカム構造で薄く覆っているのでベース色は青色だ。
剣聖の略式鎧はドラゴニアをオリハルコンのナノ・ハニカム構造で薄く覆っているのでベース色は金色だ。
それぞれの鎧の胸の部分に帝国の紋章があって、2本の世界樹に六芒星の模様がある。父の紋章だけオリハルコンの金色にした。双子の世界樹の金らしいので、金色が正式な紋章カラーだからだ。
さっそくドワーフ兄弟が鎧のパーツを接続部品で繋ぐと、父と剣聖に着せてみる。最後の仕上げに俺はマントを2人にかけて上げた。夜鍋して作ったのだが、父は剣盾の色に合わせて青の布地に帝国の紋章が金糸で刺繍してあり、剣聖は髪の色に合わせて赤色の布地に帝国の紋章が金糸で刺繍してある力作だ。
「格好良いね!」
「凄く軽いですね」
「今までのも粗悪品ではなかったが、これを着てしまうと戻れんな」
次に全身鎧で、俺はアルグラにそれぞれ鎧のパーツを投入する。略式鎧と一緒で最後に父の方は超硬合金アダマンタイトのインゴットを入れてオリハルコンを少々、剣聖の方にはオリハルコンのインゴットを入れて、しゃもじでアルグラをかき回すと完成だ。
「んぐぁぐぐぐぐぐぐ……ペッ、ペッ、ペッ……ふひぃ」
「んぐぁぐぐぐぐぐぐ……ペッ、ペッ、ペッ……ふひぃ」
「「「「「「おおっ!」」」」」」
全身鎧の方にも略式と同じように帝国の紋章が胸に入っている。父のベース色は青色で紋章だけ金色。剣聖のベース色は金色だ。
俺は試しに父と剣聖の略式鎧を収納してみた。
ドワーフ兄弟が全身鎧のパーツを接続部品で繋げている。
「あれ? 略式鎧がなくなりましたね」
「どうしてだ?」
「俺が収納してみた。もう一度、着させてみるね」
父と剣聖の鎧を簡単に脱ぎ着ができるようになった。
「これは便利ですね」
「ソータ殿が居れば漏らさなくて良いの」
略式鎧はそれ程でもないが、やはり全身鎧を着ていると排泄を催した時に大変なようだ。男は小用の時は立ってすれば良いが、大きい時は脱がないと難しいので漏らしたことがあるそうだ。
「全身鎧の接続が終わったので着てみるだべ」
父と剣聖に全身鎧を着せて、収納からマントを羽織らせた。
「凄い恰好良すぎ! 俺も着たいよ、悔しい……」
「これは思ったよりも軽いですね。魔鉄より軽いです」
「軽いのう。強度は問題ないのか?」
「はい、テスト用の板ね。外で試してね。アルグラ放置だと可哀想だから、ミネルヴァ運んであげて」
「はい、マスター」
皆で外の空き地に出ると、2人は超硬合金アダマンタイトのナイフを取り出した。
「ミネルヴァ。2人の周りをイージスで囲って」
「了解です」
2人の右手だけ消えたように見えると、イージス内が轟音に包まれる。
「2人の右手が消えたように見えて凄い音だべ。何しているだべ?」
「テスト用の板にナイフで高速に切り付けているね」
「平均すると音の速度の2倍なので手加減されているようです」
「音の速度が分からないだべ」
「あそこの建物の角から、あっちの角まで1秒の十分の2くらいの時間で移動できるくらいの速度」
「それで手加減しているだべ? 化け物だべか?」
「ハハハッ! ミネルヴァと同意見だね!」
何度か繰り返すと飽きたのか、2人はイージスから出て来た。
「略式も全身鎧の部材も、これだけ耐えれば問題なさそうです」
「これは両方共に軽くて頑丈で凄いぞ!」
2人にテスト用の板を返されたので確認する。それぞれに浅い傷と深い傷がいくつも出来ているが、板を貫通していなかった。比べると浅い傷は表面のナノ・ハニカム構造が陥没していて、深い傷は中の部材まで傷が到達している。平均すると略式のドラゴニアの方が傷は深く、全身のマギウスチタンの方は傷が浅い感じだ。マギウスチタンの方が硬いので概ね性能通りと言えるだろう。
「このくらいの傷の状態ならば修理できるから言ってくれれば直せるよ」
「ソータ様。もしかして剣聖の剣も修復できるのではないだべか?」
聞くと剣聖のグラムクルッジは鍛冶屋から避けられているようで、材料が手に入らないので皇帝に下賜されてから1度も修理をした事がないようだ。ドワーフ兄弟の見た所、見た目は問題がないが修理をしないと、そのうちに起こりうる大規模な破損を待っている状態だった。
「どうだろ。アルグラとミネルヴァできそう?」
「アルグラ先輩と私が組めば分子構造を調整できるので、材料を頂ければ新品同様になります」
「先輩のわいに任せてがってん!」
「じゃグラムクルッジとオリハルコンを投入」
「んぐぁぐぐ……ペッ!」
アルグラから戻って来たグラムクルッジを、ドワーフ兄弟に渡して確かめてもらった。ドワーフ兄弟は検分してから、剣聖にグラムクルッジを返す。
「これは見事だべ。本当に新品にしか見えないだべ」
「儂はこの剣が壊れる時が、騎士としての人生の終わりだと思っておった。まさか直せるものが孫で現れるとは……しかも危うく孫を手にかけてしまう所じゃった」
剣聖は俺の前に両膝を跪いて兜を地面に置き、グラムクルッジの柄を俺に向けながら頭を垂れた。
「我が剣と命をソータ様に捧げる事をお許しください」
「へ、陛下にも誓いをしなかった父上が……」
「え~と、どうすれば良いの?」
父はゴクッと喉を鳴らして唾を飲み込み、作法を教えくれた。
「これは騎士の誓いなのですが、剣を受け取って許すと言ってから、剣を返すだけです」
「それをすると何かあるの?」
「ソータ殿は主になり、父上はソータ殿の騎士になります。絶対の忠誠を受け取られるならば受けて上げて下さい。その代わり、父上の騎士としての死に場所を提供する義務が、騎士の主に発生します」
思ったよりも重い誓いだった。中世の騎士が出て来る映画で見たような華やかな感じではなくて、命の重みが見え隠れしていて嫌になる。
父も剣聖に習って俺の前に両膝を跪いて兜を地面に置き、超硬合金アダマンタイトの剣の柄を俺に向けながら頭を垂れた。
「ソータ様に命を救われた時にしておくべきでした。私の剣と命をソータ様に捧げる事をお許しください」
俺は少し迷ってから、2人の剣を受け取る。2人は感極まったように俺を見上げて言葉を待った。
「……剣聖フォルティスと息子のホリゾン。忠誠は許すけれど、変に畏まったりしたら怒るから。それに死に場所なんか絶対に提供しないからね! 寿命以外で死ぬことも許さないから。俺と一緒に生きてもらうから泣いて許してって言っても、もう死なせないから覚悟して!」
2人にそれぞれ剣を返すと、俺から光の粒が飛んで2人を包み込んだ。眷属化のような祝福のような、自分でも良く分からない光の動き方だった。俺は2人の間に跪いて、2人の頭を両腕で抱き寄せた。
俺は気づいていなかったが、テスト中の轟音が気になった職人街の人々が集まって俺の後ろを囲んでいて、騎士の誓いの一部始終が見世物になっていたらしい。2人の頭を両腕で抱き寄せた瞬間に、歓声に包まれて祝福の声が上がる。
「剣聖親子が伯爵の愛人の軍門に下った!」
俺は恥ずかしくなって父と剣聖の手を取って挨拶もそこそこに貴金属四兄弟と別れると、ギルド方面に向かうレビタス車に乗って帰る事にした。父と剣聖は全身鎧が気に入ったようで、着て帰りたいと言うので全身鎧の2人に挟まれて帰ることになる。こちらに来て地球では決して味わえなかった父と爺と言う繋がりを持てたことに喜びを噛みしめつつ、子供がするように2人の手をずっと握っていた。しかしレビタス車の中でも注目を浴びているような気がするのは気のせいだろうか?
冒険者ギルド前に着くと、主に獣人の冒険者達に囲まれた。
「ソータさんをどこに連行するつもりだ!」
「帝国の犬め! ソータさんを返せ!」
帝国の全身鎧なんて普通は見かけないので、俺が帝国の騎士に連行されているように見えたらしい。
「ホリゾン、剣聖。兜を取ったら?」
「とんだ勘違いですね」
「儂らがソータ殿を捕まえる訳がなかろう」
父と剣聖が兜を脱ぐと、状況が一変する。
「剣聖と息子のドラゴンスレイヤー!」
「その鎧はどうしたんですか?」
「ソータさんが連行される訳じゃなくて良かった」
「俺達、闘技場でドラゴンスレイヤーが剣聖の技を使っているのを見ていたぜ! 巻き込まれて死ぬかと思った!」
冒険者ギルド長のエレガンターが、教官のグリとグラ兄弟を引き連れてやって来た。
「騒ぎになっていると思って来てみたら、やっぱりまたソータさんなのね」
「俺が騒ぎを起こした訳じゃなくて、皆の勘違いだったんだよ。さっき貴金属四兄弟の協力で作ったんだ。恰好良いでしょ?」
俺は我が事のように父と剣聖の鎧を自慢する。自分で着られなければ、仲間に着させて眺めるのが正解だね。
「この金色はオリハルコンで、こっちの青色はアダマンタイトか?」
「全部がそれだと重すぎるので、表面だけオリハルコンとアダマンタイトにしてある。中はこんな感じになっているの」
収納からテスト用の板を出して断面を見せた。
「中はマギウスチタンって名付けた新しい金属にした。アダマンタイト並みの硬さで魔鉄より軽い」
「確かにこの板は軽いな。しかしそんな凄い金属があるのか?」
「俺にしか精製できないけれどね。それと略式鎧も作ったの」
俺は父と剣聖の鎧を全身から略式に変更した。
「「「「「おおっ!」」」」」
「こっちのが冒険者には良さそうなんだよね。動きを妨げないし。これも表面だけオリハルコンとアダマンタイトにしてある」
収納からテスト用の板を出して断面を見せた。
「中はドラゴニアって名付けたドラゴンの鱗の素材を超高圧と高温で焼き固めた物なんだ。金属って言うより陶器に近い」
「これはさらに軽いな。重さ的にはミスリルと同じくらいか?」
「うん」
「しかし材料がドラゴンとか高級素材過ぎて、普通の冒険者には手が出ないぞ」
「ホリゾン、稼ぎ時じゃない?」
「まさか私に狩ってこいと言っているのですか?」
「その略式鎧があればソロでも余裕なんじゃないかな」
ギルド長にそれは止められた。
「ソロは駄目です。そこは冒険者ギルドの規則なので変えられないのよ、ソータさん」
「じゃ、俺も着いて行くよ。そう言えば素材運びも俺が行かないと大変だし、パーティ組んでいるから手伝いたいかな」
「では儂も行こう。パーティを組んだのに仲間外れはないであろう?」
「ソータさん! 剣聖ともにパーティを組まれたのですか!」
「うん。組みたいって言われたし」
「ホリゾンさん。お聞きしたかったのですが、報告では剣聖の技を使えるそうですね?」
「ええ。教わった訳ではないので見様見真似で恥ずかしいのですが、使えますね」
「あれは狡いのじゃ。ホリゾンがあの技を使って良いのならば、儂が闘技場に出ても良かったじゃろう」
「ホリゾンに真似られて悔しがっていたと思っていたけれど、理由がそれなのね……」
「息子が父を真似してくれるのは嬉しいぞ。出られなかったのが悔しかったのじゃ」
俺はギルド長に引き寄せられて小声で聞かれた。
「ソータさんは魔王とでも戦うおつもりですか?」
「えっ?! 魔王が出たって聞いていないけれど?」
魔王なんて現れたら血相を変えて、四神とか創造神が俺の所に来るよね? そう言えばこの頃は見ないけれど、強引に海開きしたから忙しいのかな?
「いえ、現れたわけではないですけれど、魔王とも戦える戦力のパーティをお持ちだと言う事です。無限の回復と神聖魔法に、魔人の攻撃を余裕で跳ね返す結界魔法に、百万の魔物を瞬殺する魔法の使い手のソータさん。帝国内で最高の剣の達人の称号を持つ剣聖。そしてその息子でドラゴンスレイヤーですよ」
「え~と認識がちょっと違うかな。剣はホリゾンの方が強いんじゃないかな? 剣聖は次にやったら負けるって言っていたし、闘技場での剣聖の技の模倣は、ホリゾンの方が強力で手加減されてなかったら結界魔法がやばかった」
「……ちなみに参考にお聞きしたいのですが、何と戦うおつもりですか?」
「別に強敵と戦うつもりはないよ。結果的に強い人に恵まれただけだし。あえて言えばこの領は好きなんで、守れそうなら守りたいかな」
「素敵な答えです! スタンピードから救ってくれましたし信じます」
俺達は冒険者ギルドを後にすると、全身鎧が着たいと2人が言うので戻してから魔石伯の城に向かったが、城の前でもいつもは素通りできるのに門番に推挙された。仕方がないので兜だけ2人から預かって収納にしまうと、門番は恐縮してから2人の鎧が羨ましそうな目を向けて騎士の敬礼をして通してくれた。場内の騎士達も父と剣聖にいつもより丁寧に敬礼して通してくれる。
「格好って意外と重要なんだね」
「この鎧の出来はアーティファクト並みですからね」
「いやそれ、四神でも作れないよ。俺の前に居た所の知識がふんだんに使われていて、オーバーテクノロジーすぎる」
「そんな物を気軽に頂いて良いのですか?」
「格好良い鎧を着た父さんと爺を自慢したいじゃない」
「良い息子です!」
「良い孫じゃ!」
父と剣聖に両側から肩抱きにされた所で、母とマレ婆に鉢合わせた。
「まあっ! 素敵な鎧ね!」
「フォルティス様。こんな豪華な鎧を孫に強請ったのですか? あら、このマントはソータ様が夜に一生懸命と刺繍していた物ではないですか?」
「婆! それは言わないでって言ったのに!」
そう言えば婆にはマントに刺繍する夜鍋を見られていたのを忘れていた。俺は恥ずかしくなって、収納に2人の全身鎧とマントをしまうと、自分の部屋に駆け込む。
「もうファンタジーっぽいファッション諦めるかな。まあここは異世界じゃない遠い銀河系だし、ちょっと前に作った地球のファッションにするか」
俺は収納からTシャツとジーンズを出すと着替える。着替えている所に父と剣聖がノックもせずに部屋に入って来た。
「もう……ノックもしないで入って来ないでよ」
「着替え中でしたか、失礼しました。母上に言われてお礼がまだだったのを忘れていて気づいて急ぎました。鎧とマントをありがとうございました」
「ありがとうなのじゃ。まさか夜鍋してマントに刺繍をしてくれるなんて嬉しいぞ!」
父と剣聖は満面の笑みを浮かべていた。
「うう……それは恥ずかしいから言わないでって婆には言っていたのに」
「隠す事ないではないですか。認識阻害の刺繍もしてくれていましたし」
「あれも孫の手製だったのか。羨ましいのう」
「ここが異世界じゃないのが分かったから、ファンタジーっぽいファッション諦めた。どうかなこれ?」
白いTシャツの胸の所と背中に「遠い銀河系に参上!」と日本語でプリントしてしまった。ミネルヴァが頑張って極太毛筆フォントと言う名前で文字を作ってくれた。絶対に妻が喜びそうなのでネタとして作ったので、勢いがないと着られなかった物だ。
「もしかしてソータ殿の元の場所で着ていた服ですか?」
「まあそんな感じ」
「その胸と背中の模様は何じゃ?」
「これは日本語って言う文字」
「やたら複雑な文字じゃな!」
「元居た場所にも複数の言語があったけれど、一番複雑だって評判だったね」
もしかして日本語は宇宙で一番複雑な疑惑がこれで浮上した。調べたわけじゃないけれど。
「もしかして欲しいの?」
「その文字は魅力的で欲しいです」
「その文字は不思議と引かれるのう。儂も欲しいぞ」
「う~ん、ジーンズはサイズが合わないから新しく作らないと無理だけれど、この上着のTシャツならフリーサイズで大きいから着られると思うけれど、上着だけで良い?」
「もらってばかりで、すみません!」
「孫からもらうものは、いくつあっても嬉しい物じゃ」
「アルグラとミネルヴァ召喚!」
「旦那? 着やがりましたね。年貢の納め時でやすね」
「マスター。着て頂いて嬉しいです」
『それが父さんと爺もTシャツだけ欲しいって。文章どうしようか?』
『念話にしたという事は、内容は知らせないおつもりですか?』
『多分、興味ないと思うよ。模様としての文字が気に入ったみたい。どうせ日本語なんて分かる人居ないし、面白いネタで行こうかなと』
『ここは性癖を暴露するネタでどうでやす?』
『アルグラ……お前意外とエグイな。でもその案は好き』
『やったー! 報酬は旦那の母君に抱えて貰いたいでやす!』
『お前、本当に触られた感触あるの?』
『創造神様から魂を与えられたので、一応は生物でやすよ。感覚共有して見てくだせい』
『どれどれ……感覚共有。ミネルヴァ、アルグラを触ってもらえるか?』
『はい』
ミルネヴァがアルグラのしゃもじに触ると、俺も触られたように感じた。
『ミネルヴァ、ストップ! そこは駄目だ! 感覚共有の解除! 何かしゃもじは変な所の触覚に繋がったんだが……ごめんよアルグラ。これからはもう少し丁寧に扱うよ。母の件は頼んでみるけど、本人が嫌がらなかったらだからね』
『初めて旦那と分かりあえた気がしやすぜ!』
『私も先輩を抱えたことがあるのに、先輩は私じゃ満足して頂けなかったのですね?』
『『えっ?!』』
眷属を呼んでから結構な時間を考え込んでしまっているように見えたので、剣聖が心配し出した。
「ソータ殿? 作るのが難しいなら無理はせんでも良いぞ」
「いや、見て奇麗な文字を探し合っていただけだよ」
「それは楽しみですね」
ごめんね。実は酷い事を考えていたなんて俺からは言えない。
『じゃ、両方の文字フォントを俺と同じにして、位置は胸と背中に入れて、色は白抜きで。父は生地を青色で染めて、爺は赤色で染めよう。父の文章は胸が好き! 爺の文章は尻命!』
『『了解!』』
俺は収納から無地のTシャツと染料をアルグラに突っ込むと、2セット分をしゃもじで優しくかき混ぜた。父の性癖は本人が俺に告白しているので間違いないだろう。剣聖は婆の尻を時々目線で追いかけているから分かりやすかった。
「んぐぁぐぐ……ペッ!」
「んぐぁぐぐ……ペッ!」
「「おおっ!」」
父と剣聖は受け取ると喜んで着替えたので、ちょっと罪悪感に苛まれた。変な日本語のTシャツを買っても、読めずに喜んで着ている外国人を思い出して似ているなと笑ってしまったけれどね。
次回の話は2025年1月19日(日)の19時になります。
ワンコ伯爵が帰ってきますね。
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