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004話 神々の危険な遊びと宙族退治

「フハハハハハッ! 我、復活!!」

「……ルキウス様、如何(いかが)なさいましたでしょうか。甲板にお急ぎ下さい」


 宙族退治のために寝室から甲板へ移動中に白虎に身体を貸すと、俺は自分の身体を見下ろすという奇妙(きみょう)な体験をした。白虎が俺の口を使って急に(さけ)び出したので、マレ婆は驚いたように口に手を当てた。


『俺が変態だと思われるから、止めて欲しいのだが……』

『高みに至って幾年月(いくとしつき)…この日を、どれ(ほど)、夢見て来たか!』

『しかし身体を貸す時だけど、何かその……』

『あ、白虎(ずる)い、もう身体を借りてるのね。気持ち良かったでしょ』


 俺の隣に青龍が現れて(うらや)ましがられた。


『我も、この身体で()ちそうになった』

『おいっ! 身体は俺のなんだ。モッコリな変態と思われるのは、もっと困るぞ!』

『青龍よ。何故、気持ち良いのだ?』

『原初の海で2柱が重なり合って(ただよ)っているのを見たことない?』

『ああ、何か居たような?』

『白虎は色恋に興味ないもんね…。肉体があった時に身体を交わったら気持ち良いじゃない? 私達が高みに至って精神体になっても同じってことよ』

『つまり交尾か。戦った後の血が(たぎ)ったのを鎮めるのに良いぞ』

『言い方が下品よ、白虎』


(俺は貞操を神に売って転生したのか……。まあ神達は慣れない異世界生活に心強いし、地球に帰れるなら高くない買い物だが。)


『あまり長く重なり続けていると、個を保てなくなるって創造神様が注意していたわ』

『身体の貸し借りはどうなんだ? 入れ替わった後は特に何も感じないけど』

『先っぽだけで抜け出た感じだから平気ではないか?』

『だから白虎、表現が露骨(ろこつ)過ぎよ……。精神体が重なり続けている訳ではないので問題ないそうよ』


 俺たちが下品なやり取りを念話でしながら甲板に出てみると、母アーラがピンチだった。


「アーラ様!」


 婆が叫んだ先には、ぐったりと甲板に仰向(あおむ)けで寝そべっている母に、宙族らしき男が覆いかぶさっている。弟か妹の義理の父が宙族は嫌だな。俺は前世?の父母を知らないのもあり、まだアーラが母だと実感の湧かない頭で不謹慎(ふきんしん)にそう考えていたら、尻尾付きの白虎が隣に現れた。すると動画を一時停止したように、実体を持つ者たちが止まったので驚く。


『皆が止まって見えるな』

『我らの実体は原初の海に漂っていて、生命の庭と時間の流れの認識を変える事が出来るのだ。今は、こちらの海の方が時間の流れが速いので、あちらの庭は時間の流れが遅くなっているように見える』

『思考加速のようなものか!』

『逆に庭の時間を速くするのも可能だが、時間を戻すことはできない。ちなみに速くするのは創造神様の許可が必要だ。それで宙族は殲滅(せんめつ)で良いか?』

『生け捕りは難しいのか?』

『話が通じると思わないな。それに我は身体を借りたのは初めてで、力加減が出来そうもない』

『俺は戦闘経験ないので、そこら辺は白虎に任せるよ』

『お主の今生の母君の安全は保障しよう』


 そう言って白虎が俺の身体に戻ると一時停止を解除したように動き出し、まずは母に覆いかぶさっている宙族に飛び()りを食らわせた。


ドシャッ!!


 白虎の余りの速さに、飛び蹴りを食らった宙族は後ろに立っていた宙族を巻き込みながら、身体のパーツを()き散らしつつ船外に飛んで行った。グロいけど精神体なので吐き気が起きないのは幸いだった。そして素早く着地した白虎は、母の近くを(かこ)んでいた宙族に回し蹴りを食らわして船外に()り飛ばすと、母を抱きかかえて婆の所に戻った。


「強姦未遂で良かったな。(あご)に打撃痕があるので頭を打ったようではないし、気を失っているだけなので、寝室で休ませてやれ」

「ありがとうございます、ルキウス様」

「宙族共、まだ歯向(はむ)かうようならば容赦(ようしゃ)せん!」


 白虎は婆に母を預けると、残りの宙族に向き直った。


『白虎は武器が必要なさそうだし、婆が母をお姫様抱っこして、軽々と船内に戻って行ったが……』

『これは身体強化の魔法ね。白虎が武器を持ったら武器が耐えられないのよ。昔、山を(くだ)いた…違うわ。大陸を割ったくらいだから、後で習ったら?』

『……大陸を割る予定はないから、程々(ほどほど)に教えて貰うかな』


 青龍と念話していると右舷(うげん)接舷(せつげん)していた宙族船から、偉そうに大きな斧を肩に担いだ親玉のような男が乗り込んできた。先ほどの白虎の動きを見ていた残りの下っ端は、親玉の後ろに下がっていく。


「派手にやらかしてるやつが居るようだが、お前か」

「瞬殺だとつまらんから、かかってこい」


 白虎の挑発に親玉は目を()くと、呪文を唱えて白虎に手を振りかざした。炎の球が白虎に着弾し、炎の柱に包まれる。


ゴォォォォ!!


『俺の身体が!』

『大丈夫よ、大人しく見ていなさい』


 青龍に(さと)されるが、自分の身体が炎に包まれるのは心臓に悪いので勘弁(かんべん)して欲しかった。白虎は右足を持ち上げて、甲板に叩きつけるように足を()みつけると、足元から砂塵(さじん)の柱が渦を巻いて巻き上がり、炎の柱が相殺(そうさい)されて消え去った。


「魔法はショボいな。その肩のデカ物は飾りか?」


 無傷の白虎の更なる挑発に、親玉は顔を真っ赤にして大斧を振りかぶってきた。白虎は手の平をジャンケンのチョキの形にすると、大斧の刃先を指で掴んで止めた。親玉は(あせ)りながら大斧に力を()めるがビクともしないようだ。


「武器の戦闘もショボいな、ハァ……」


バキッ!


 白虎が親玉に(あき)れたように溜息を付くと、指先で掴んでいる所を中心に大斧が砕ける。それを見て呆気にとられた親玉の顔を、白虎がガシッと掴んで下っ端の方に放り投げる。親玉は下っ端を()ね上げながら船外に飛んで行った。人間ボーリングだなと引き気味(ぎみ)に思っていたら、白虎から申し訳なさそうな念話が届いた。


『やはり加減が……。高みに至る前よりも使える魔素量が多いので調整が難しい。船も傷付けてしまったので、修理費用を稼いでくる』


 白虎はそう言って宙族の下っ端を蹴散(けち)らしながら、接舷された甲板越しに宙族船に飛び移った。こちらの船の損傷具合としては、甲板の一部が焼け焦げていたり凹んでいたり、右舷側の甲板の手すりが崩落(ほうらく)していた。

 しばらく宙族船から工事でもやっていそうな轟音(ごうおん)が立て続けに出ていたが、音が止んで白虎が戻ってくると、宙族船はゆっくりと遠ざかって行った。


「宙族は退治が終わって、船は航行不能にしてきた。戦利品は金貨が少しと銀貨が多めにあったくらいでショボいが、船の修理費の足しにしてくれ」


 白虎が丁度良く戻って来た婆に、(ふく)らんだ布の袋を2つ渡す。


「まぁっ! アーラ様もお喜びになると思います」

「母君には通りがかりの誰かに助けてもらったと言っといてくれ」

「それで、よろしいのですか?」

「我らのことは、あまり広めたくないので頼む」

「アルティウスの神々の御心(みこころ)のままに」


 婆は手の平を上して腕を頭上に押し上げた。前もやっていたのを見かけたが、宗教的なポーズなのだろうか?


「あれが目的地の惑星であろう? 我らが負担をかけたので世界樹の若木が()を上げてしまったのだ。船が航行出来るように回復をしてから寝室に戻るとする」

「お心遣(こころづか)いに感謝致します」


 白虎が指さした船首方向には青い惑星が見えた。地球以外の青い星に俺は感動する。しかも(しま)模様のある輪が惑星を取り囲んでいて、輪の中ほどに衛星が浮かんでいる不思議な光景だった。


『玄武よ、()らぬか?』

『……ソータはこちらに居るし、身体の中身は白虎か?』


 玄武が(いぶか)しそうに現れると、白虎を睨んだ。


『ソータが魔法の練習中に我が伝え忘れて、この船の若木から魔素供給をしてしまったので、若木が根を上げてしまったのだ。回復を頼めるか?』

『ソータの身体を借りられるならお安い御用だ。しかも世界樹を(いじ)るのは何年ぶりだか』

『世界樹はお主の玩具(おもちゃ)じゃないのだがな』

『見た所、白虎は戦闘を楽しんだのだろう? 俺だって楽しんだって良いだろ』


 白虎と玄武が入れ替わると、俺の顔で玄武が(まゆ)をしかめる。


『何でこのような感覚が……』

『我らは穴兄弟であるか』

『今回は出番がなかったけど、次は私に身体を貸して欲しいわ』

『俺の身体こそ、玩具じゃないんだが……』


 青龍が神々の危険な遊びについて玄武に説明しつつ、船内に戻った。

次回の話は翌日の19時になります。

ルキウス君は、ようやく地上へ。誕生の秘話が語られる……。


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