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【完結】神様に元の世界に帰りたいと願ったら身体を要求された  作者: 仲津山遙
第1章 幼少期編

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034話 冬は人肌が恋しい季節

 父母、剣聖とマレ婆、伯爵夫婦にあげた結界魔法イージス・ペンダントの試験を口実に、城の戦闘訓練場で剣聖と父が対決していた。う~ん、脳筋一家は強い物好きだからね。ルキウスはそうならないよね?


ガギィィィィィィィン!!


 剣聖の突進攻撃が父のペンダントの結界で弾かれた。


カンッ、ギャン、カンッ、ギャン!!


 父の連続攻撃も剣聖のペンダントの結界で弾かれている。それを見ていたミネルヴァが、ちょっと無表情を緩めて精神的に持ち直した。


「では、ちょっと本気で行くぞ!」

「ミネルヴァ、戦闘訓練場をイージスで覆って」

「はい、マスター」


 剣聖が後方に移動して、黄金色に輝く両手剣グラムクルッジを掲げた。俺はミネルヴァにサポートされて時間遅延で見ているので剣聖の動きを追えるが、普通の人間の動体視力では追えない動きで、剣聖は父に向かって突進した。戦闘訓練場の地面を抉りつつ、超音速のソニックブームを発生させながら父のイージスにぶつかった。


フィィィィィィィィィィッ!!!!


 父のイージスが唸りを上げて光輝いて、剣聖の突進を相殺した。この動きを見て狐の巣穴ダンジョンでは本気でなかったのが分かった。これを受けていたら、俺は死んでいただろう……。しかもちょっと本気って何? これを見たミネルヴァが、また無表情を深めた。


「これを防ぐかっ! 超本気を出さざるをえまい!」

「ミネルヴァ、戦闘訓練場のイージスを一時的に十層に!」

「はい、マスター……」


チュドォォォォォォォォォォォン!!!!!


 時間遅延でも動きが追えない剣聖は、父が受け流して戦闘訓練場を覆っていた十層のイージスにぶつかった。父のイージスは貫通されていたが、戦闘訓練場のイージスはまだ機能している。


「ミネルヴァ、何層突破された?」

「……9層突破されました」

「それだと原初の海に緊急避難だね」

「いえ、父上のイージスも含めると十層突破されたので、マスターが受けていたら爆散していたはずです。この速度だと緊急避難も間に合わない可能性が高いです」

「俺が受けなくて良かったよ! しかしホリゾンは地味に凄いな。剣聖の超本気を受けて掠り傷1つ負ってないなんて」


 戦闘訓練場は隕石でも落ちたのかと思われるくらい抉れていて、観戦していた領軍の人々は泣き叫んでいた。粗相をしてしまった人もいるようだけれど、十層のイージスで観戦席まで被害が出なくて本当に良かった。近くに居た魔石伯は口を大きく開けて呟いた。


「訓練場が……」


 面白がって許可していたから怒れないよね? 俺は反対していたのに父と剣聖が戦うのが見たくて、戦闘訓練場を使うのを許可していたので自業自得だね。でも身内の不始末でもあるし、白虎が使っていた魔法を使ってみたいのもあって、俺は身体強化をして戦闘訓練場に降り立った。母は既に父の元に駆け寄って抱き着いている。父の強さの再確認としては良かった感じだ。


「ソータ殿。儂の超本気を見たか?」

「じい、すごい! こんなにつよいなんて、おもってなかったっ!」

「そうであろう、そうであろう」


 剣聖は孫に褒められてご満悦の表情だが、後始末をしないとならない。俺は白虎が母の宇宙船でやっていたように、足を地面に数回叩きつけた。すると抉れていた地面が盛り上がり、三十秒もすると元通りの平らに仕上がったので、土属性魔法は成功したようだ。


「何じゃこれは?!」

「土属性魔法だね。初めて使ったけれど成功して良かった」

「おおっ! これで超本気が使いたい放題じゃ! 陛下に止められていたが」

「ちょっと待って。その止められていた所を詳しく説明を」

「強すぎて周辺に被害が甚大なので、命に係わる時以外は使用禁止されておった」

「おったって過去形じゃなくて、使用禁止のままでよろしく! 俺が周辺にイージス張ってなかったら、領軍の観客含めて伯爵とかアーラさんまで被害出ていたかも」

「……駄目?」

「駄目! 今度使ったら超硬合金アダマンタイトのナイフ返してもらうから!」

「仕方がないのじゃ。でも儂、本気が出せなくてさみしい……」

「ソータよ! 直してくれたのだな、ありがとう!」


 魔石伯が駆け寄って来て、俺に抱き着いて顔をペロペロ舐めて来た。もしかして魔石伯は、昔に孤児院で飼っていたゴールデンレトリバーの生まれ変わりなんじゃないかな?


「取りあえずペンダントの性能は問題ないでしょ? この国に剣聖クラスの暗殺者がゴロゴロしていたら考え直すけど」

「此奴は別格だ。しかし息子のホリゾンも凄まじいな。冬の武術大会は出ないのか?」

「出られる状況でないから棄権となるな。公式には剣聖の儂は愚息と共に、剣の修行にしばらく出ておる事になっておる」

「剣聖親子が出ぬならば、私の優勝は間違いないな! しかも今回はペンダントがある!」

「伯爵。その武術大会ではペンダントは外してね。敵に塩を送るのはどうかと思うよ」

「駄目か?」

「特に三十分の制限時間と、2時間チャージの弱点は絶対に知られたくないから駄目」

「分かった……」


 魔石伯は尻尾が垂れた。多分、攻撃力特化で曲刀二刀流にしているから、ペンダントで防御を補えてラッキーとか思っていたのだろう。父のように盾でも持てば良いのに。


「俺はドラゴンの解体品を取って来るね」

「付き合いましょうか?」

「アーラさんと、よろしくやってて!」

「儂がお供する」

「私が付き合おう」


 俺が父に断ると、剣聖と魔石伯が名乗りを上げた。別に断る理由もないので、一緒に冒険者ギルドに魔石伯のレビタス車で向かった。冒険者ギルドの裏の戦闘訓練広場に着くと、プルが清々しい顔で待ち受けていた。


「ソータさん。後は骨の洗浄と乾燥で終わりよ」

「うわ、仕事早いね」

「ソータさんから借りた超硬合金アダマンタイト製の解体道具一式が凄かったのよ」

「ああそれプルさんにあげるよ。どうせ俺は解体なんてできないし」

「えっ!? 良いのかしら!」

「うん」

「ソータさん素敵! モフモフして良いわよ」

「わぁ、美猫さんだ!」


 俺はプルの頭をモフモフした。白毛に桃色肌の金青色のオッドアイなので見た目が美しい猫顔だ。モフモフの興奮が少し落ち着くと、モフモフで忘れそうになっていたメンテナンスに問題があるのを思い出した。


「ただドワーフの鍛冶屋に硬すぎて削れないって言われたから、メンテナンスには俺が必要だけど。でもドラゴンくらい硬い魔物じゃないとメンテナンスは必要ないはず。終わったならメンテナンスして置こうか。アルグラ召喚!」

「絶賛、絶食中の……」

「魔力あげないとしゃべれなくなるのか! 少しは反省したかな? 魔力をやろう」


 俺はアルグラに魔力を注いだ。


「完全復活したわいは、黄金色に輝く美しい錬金窯のアルケミア・グラールだす!」

「一気に煩くなったな。これメンテナンスしてくれ」

「んぐぁぐぐ……ペッ!」


 メンテナンスし終わった超硬合金アダマンタイト製の解体道具一式をプルに返した。


「まあっ! 一瞬で新品同然ね」

「骨の洗浄と乾燥もやっとくね」


 俺はアルグラを持ち上げてドラゴンの骨に近づけた。ドラゴンの巨大な骨が一瞬でアルグラに吸い込まれる。アルグラを地面に置いて、縁を手に持った。


「んぐぁぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ……」

「洗濯機イメージで洗浄!」

「ジャブ、ジャブ、グワン、グワン、グワン、ザバーンッ!」

「3回洗浄したら乾燥!」

「ホワワワワン、ペッ!」


 白く奇麗になったドラゴンの骨が、俺達の前に現れたので収納する。


「排水はそこの側溝に捨てていいかな?」

「ええ……しかし2~3日かかるかなと思っていた作業が一瞬で凄いわ。あとこっちは血が入った樽で、こっちは内臓で、それぞれにラベルが張ってあるわ。肉はこれで、鱗や皮膚はこっちね」


 俺は全部を収納した。戦闘訓練広場が空いたのですっきりとする。


「解体の費用はドラゴン焼肉販売の利益を貰うから必要ないそうよ。しかし焼肉販売は好評で列が途切れないわね」


 プルが目を向けた方に屋台が5軒も連なっている。飲み物1軒にドーナツ1軒で残りが焼肉らしい。ミーティスがやって来た。


「ソータ殿! ドラゴン焼肉は好調です!」

「それは良かった。肉は足りているかな?」

「はい。逆にあり過ぎてもこちらが休憩を取れないので、今ある分で十分ですね」

「了解。後は任せた」

「売り上げは集計が出来たらソータ殿のギルド口座に振り込みますね」

「ありがとう」

「ソータよ。私の宇宙船まで来てくれると嬉しい」

「え? 何で?」

「ドラゴンの骨を積み込んで欲しいのだ」

「ああ、デカイから大変だもんね。いいよ」


 俺達はレビタス車で宇宙港まで行き、魔石伯の宇宙船の貨物室まで行った。途中でエルフとドワーフを見かけて片膝を跪かれた。


「これ伯爵が運転するの?」

「当然じゃ。そのために貴族院の航法科も出たからな」

「その航法科の単位を取ると運転出来るの?」

「そうだ。後は精霊と契約しなければ無理だが、ソータが居ると精霊が怖がって出て来ないのは困るな。ソータは精霊と契約が出来ないので運転は無理と違うか?」

「それは困るね……」

「マスターには私が居ます」


 突如、ミネルヴァが実体化した。


「あ、ミネルヴァは精霊じゃん」

「はい。単体の船舶から艦隊運用までお任せください」

「それならばあとは貴族院を出れば良かろう」

「そんな若い子が通う所におっさんが通いたくないよ」

「通っていても見た目の違和感がないと思うが?」

「ホリゾンより若く見えるのに何を言っとるんだ?」

「え? そこまでかな……。まあどちらにしろルキウスがどうなるか分からないし、ルキウスが通い出すくらいの時期に考えてもいいんじゃないかな。骨を出すのはここでいいよね?」

「ああ、頼む」


 俺はドラゴンの骨を貨物室の隅に出した。収納から超巨大なドラゴンの骨が出て来たので、魔石伯の後ろに控えていた船員はどよめきつつ、固定するために動きだす。


 俺達は魔石伯の宇宙船から城に引き上げて各自の部屋に戻った。俺の客室はルキウスと一緒でも良かったけれど、それだと不自然なので、ルキウスの隣に客室を割り当てられている。


「アルグラとミネルヴァ召喚!」

「さっそうと現れるアル……」

「マスター、お呼びでしょうか?」

「何かドラゴン素材で薬が出来るらしいんだけれど、どんな物が出来るのか知りたい」

「既に調べてあります。候補としてはこちらになります」

「流石ミネルヴァ!」


 俺は目の前に表示されたウインドウを捲って品定めをした。


「魔法な薬でも一発で(はら)むようなやつはないのか。ファンタジーのお約束の媚薬みたいなのもないのね。父さんは若くて精力旺盛(おうせい)だから精力剤は必要ないしな……。何だこれ?」


 ドラゴン素材と薬草を使って錬成すると出来る求魂薬(きゅうこんやく)に目が行った。人肌に触れていないと不安感に(さいな)まれて、触れていると幸福感に包まれる謎の薬だ。


「面白そうだな。作って見るか。アルグラ、素材だ」

「んぐぁぐぐ…ペッ!」

「父母仲良くな~……ゴクッ!」


 アルグラに素材を入れてしゃもじでかき回している最中、直ぐに完成してアルグラが完成品を吐きだしたのは良いが、しゃべっている途中で口を開けていたので、完成品が俺の口に入って飲み込んでしまった。


「おいっ! アルグラ早漏(そうろう)すぎっ!」

「わいは早漏じゃないでやす。旦那のしゃもじ使いが旨くなったでやす」

「それならいいんだが、次からは完成品を吐き出すタイミングは気を付けてくれよ」

「了解でやす!」

『ソータよ。顔色が悪いぞ』


 白虎の指摘通りに何故か寒気がして来た。人肌だからミネルヴァでも良いかと抱きしめてみても、不安感に苛まれて気分が悪い。俺はベッドにうつ伏せで倒れ込んだ。


「取りあえずアルグラとミネルヴァ送還……」

『ソータよ。こちらに来れば肉体の影響を受けぬのではないか?』

『あ、そうしてみる』


 俺は原初の海に行ってみた。しかし不安感は消えずに残っている。


『何を呑んだのだ?』

『求魂薬……』

『また面妖(めんよう)な物を作って……。それは魂に効くので原初の海でも効果がある』

『だって父母に弟を作って欲しかったんだもん』

『確かに求魂薬を飲んだ男女が一緒に居れば子作り必須だが、1人で飲んでしまうとは不運だな』


 白虎は笑って俺をお姫様抱っこしてくれた。


『ああ、抱っこされるだけでも不安感が減るね』

『今日は生憎(あいにく)と我しか居らぬが、我でも良いか?』

『別に減るもんでもないし、白虎なら嬉しい。白虎が居てくれて助かった』


 俺は白虎の耳をモフモフした。


『薬が抜けるまで時間がかかるので、我の集落に行くが良いか?』

『え? 白虎1人だけじゃないの?』

『高みに至った我の同族で集落を作っているのだ』

『うう……。もっと健康な時に行ってみたかった。ここら辺は何もないけど、集落は家とかあるの?』

『ここら辺りはルクスネブラと言って創造神様の寝所の近くなので、何もないように見える。創造神様は完全な精神体なので、物質的な物はあっても使わぬからな』

『成程。何もない訳じゃなかったんだね』

『生命の庭に比べれば何もないのは変わらない。そろそろ着くぞ』


 俺を抱えたまま白虎は何度か跳躍(ちょうやく)して白い集落の前に着いた。平屋がポツポツと建っているが、人の気配が薄い田舎な感じだ。


『白虎様!』


 集落に入ると子供の姿をした白虎が声をかけて来た。可愛すぎる! 俺は子白虎に向けて手をワキワキとさせた。


『ううう、モフモフするう!』

『ソータよ。我の子孫を怖がらせるでない』

『白虎の子孫なのね。可愛いね。おっさんにモフモフされない?』

『……白虎様、そちらは?』

『この前、高みに至ったソータだ。誤って求魂薬を飲んでしまったので、我の寝所で休ませる』

『番にされるおつもりですか?』

『いや、あくまでも治療だ。創造神様に面倒を見るように頼まれているのでな。我が出て来るまで寝所に誰も近づかぬようにしてくれ』

『分かりました』


 白虎は少し大きめな平屋に入ると、奥の部屋に向かった。大きなベッドに降ろされて白虎から離されただけで、不安感に胸が押しつぶされそうになった。白虎はベッドの奥に上がって寝そべると、俺に手招きした。


『ほら、辛かろう。ここなら寝そべれるので楽だぞ』

『迷惑かけるね』


 俺は寝そべった白虎に覆いかぶさった。それだけで不安感が遠のくけれど、まだ足りない気がする。そして白虎のトーガを(まさぐ)って、中に上半身を潜り込ませる事に成功した。良く幼馴染にやられてTシャツを駄目にされたのを思い出した。原初の海は暖かくも寒くもないけれど、冬に人肌は久しぶりで良い感じだ。


『あいつは年中こんな感じだったのかな……』

『ソータの幼馴染か?』

『うん。離れると不安に押しつぶされそうになって、引っ付くと嬉しい感じだね、この薬』

『元々はパートナーが居る時にお互いが使う薬だからな。番から引き離されたドラゴンの呪いのような物だ』

『それなんか分かる気がする。もう離れたくない感じ』

『くくく。パートナーが居ないでは辛かろう』

『白虎はこの薬を飲んだことあるの?』

『あるぞ。まだ生命の庭に居た頃に、番にこの朴念仁(ぼくねんじん)と罵られながら飲まされた』

『うわぁ。凄く修羅場(しゅらば)な感じ……』

『当時は若かったので強さしか求めていなかったのだ。戦闘の興奮を番で慰めるのが正しいと思っておったが、今にして思えば子が欲しかったのだろうと分かる。お陰であの子のような子孫が僅かに残ったが、殆どが高みに至れずに……』

『聞いて良いのか分からないんだけれど、巻き込まれて高みに至った事と関係があるの?』

『ああ。およそ1万2千年前、世界樹から大量の魔素を受ければ、高みに至れると信じていた疎か共がおった。おそらく今も信じているのだろうが、其奴は世界樹の魔素浄化機能を無効にして、全ての世界樹を暴走状態にして魔素を撒き散らしたのだ。

 慌てて創造神様は全世界に影響が広がるのを恐れて、ソータの今いるマギウスマテリア銀河を理の言葉で隔離(かくり)なさった。ただ銀河内にいた生命は一部を除いて浄化されていない高濃度の魔素を浴びさせられたので、高みに至らなかった者は絶命するしかなかった。

 我らはその事件をマギウス・テンペスタスと呼んでおる。我はその時に銀河の辺境で暮らしていたが、我と同じ虎人でマギウス・テンペスタスに巻き込まれて高みに至れたのは極少数で、我とその少数がこの集落に暮らしておる』

『ごめんね。辛い話をさせてしまって……』

『いや、(いず)れ話すつもりであった。他の四神も巻き込まれた側で、この近くにそれぞれの集落があるのだ』

『へぇ。体調が万全な時に案内してもらおうかな』

『それならば創造神様を連れ出せぬか? もう5千年くらいお会いしていない者が多いので喜ぶだろう』

『お安い御用だよ』

『ソータのお陰で創造神様と気軽に会えるようになって我は嬉しいのだ』

『えー、そんなに引きこもりだったんだ。じゃお礼にモフモフさせてね』

『ソータ?』


 俺は白虎の身体に沿って手を背後に回し、尻尾の付け根を掴んだ。一瞬、尻尾が膨らんだかと思うと、今度は付け根を掴んで撫でている俺の手に絡まって来た。


『はうあっ……そこは駄目…だ』

『ほほう。尻尾の付け根はこうなっているんだね!』


 俺は調子に乗って撫で続けていると、白虎の身体が一瞬強張ってからダラリと長い舌を垂らして弛緩(しかん)した。少しやり過ぎたかもしれない?


『まったくソータは行動が読めんのう……。こっちのが良いか?』


 俺が撫でるのを止めて復活した白虎は、俺を懐から出して引き離し、白い大きな虎に変身した。


『こっちも好き!』


 俺は白虎にダイブするとモフツルな毛並みを堪能する。前に出来なかった猫じゃなくて虎吸いをしてみる。


『空気がないのに匂いは感じられるね。白虎はシナモンみたいに甘くてスパイシーな感じで好き』

『人それぞれに魔素の波長や濃淡が違うのが匂いとして感じられるのだ。ソータは日向ぼっこをしている時の草花のような爽やかな匂いだ。草原を駆け抜けていた時を思い出せるので、我は好きだ』

『へぇ。結構違うんだね』


 俺達は寝そべりながら雑談して過ごした。


『あ、父さんが呼んでいる』


 原初の海に来る時に時間停止はしなかったので、父に意識不明の身体が見つかったようだ。


『もう大丈夫であるか?』

『うん。白虎ありがとう』


 白虎に何度か頬を舐められてから、俺は生命の庭に戻った。


「……ソータ殿! ソータ殿!」

「あ、ごめん。原初の海に行っていた」

「意識がないのでビックリしました」

「薬のせいで体調が悪かったから原初の海で白虎をモフモフしていた。急いでいたから時間停止を忘れていたね」

「色々と疑問点がありますが、大丈夫なのですか?」

「もう大丈夫」


 騒ぎを聞きつけたのか剣聖と魔石伯もやって来た。魔石伯は俺に近寄ろうとすると、一瞬、飛び上がって即座に扉の陰に退避した。


「ソータからまた怪しい匂いが!」

「白虎をモフモフして来たからね。そうそう。面白い薬が作れるようになったんだけど、いる?」


 俺は人肌に触れていないと不安感に苛まれて、触れていると幸福感に包まれる求魂薬の説明をした。


「それは使い処が良く分からないのですが?」

「パートナーが居る時に交尾前にお互いが使うのが正しい使い方らしいよ。さっきはアルグラのせいで飲んじゃったけど」

「面白そうな薬じゃ。儂は貰おう」

「……頂きます」

「私にもくれっ!」

「パパ。弟が欲しいなぁ」

「……頑張ります!」


 皆が欲しそうなので、アルグラを召喚して作ってから渡した。

次回の話は翌日の19時になります。

ゆうべは、お楽しみでしたね。


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