032話 プロポーズはドラゴンを添えて
領都の商業区の東端近くにある職人街で、貴金属四兄弟の上3人のドワーフの髭を編み込み終わった。
「3人も居るとやりがいがあるね!」
「酷い神様だべ……」
「悪夢のようだ……」
「ごめんなさい……」
超硬合金アダマンタイトなんて用意できない発言の罰で、上の兄弟3人の髭を三つ編みにした。本当は「剃ってもいい」と三男のアルゲントゥムが言っていたけれど、可哀想なので編み込みで許してあげた。父と編み込みを免れた四男のキュープラムは近くで笑い転げている。
「遊びは終わりで鋳型を作ってよ」
「剣と盾はさっきダンジョンへ行っている間に終わっただべ」
「お、仕事が早くて良いね」
『ソータ。ドラゴンを倒して解体するならば解体道具を、その超硬合金アダマンタイトで作るべきだ。普通の道具では耐えられないからな。後はナイフがあると戦闘で有利なので作るのをお勧めする』
『確かにそうかもね。助言ありがとう玄武』
「後、解体道具を一式かな。それとナイフが2本ね」
「どちらも既にあるが、解体道具は何に使うだべ?」
「ドラゴン倒すから解体に使うんだよ」
「また冗談だべ」
「またって凄いアダマンタイトは用意したじゃないか」
「兄貴! このインゴット溶けないぞ!」
アダマンタイトも溶ける魔石炉らしいが、超硬合金アダマンタイトは魔素でスペックが爆増しているのでどうやら溶けないようだ。確かアルグラ内で4千度になっていたからな……。
「ミネルヴァ召喚!」
「はい、マスター」
「魔石炉内をイージスのベクトル・リフレクターで内向きに覆ってくれ」
「畏まりました」
追加でインゴットを運動魔法で加熱すると、ようやく坩堝の中のインゴットが溶けだした。
「神の御業を見ているだべ」
「神かどうかは分からんが、鉄が溶ける温度の3倍弱だからな。取り出せないと思うので、こちらで鋳型に流し込むぞ」
「ああ、そうしてくれだべ」
運動魔法で坩堝を鋳型まで運んで流し込んだ。凝固に少し時間がかかるので、しばらく離れてから戻って来ると、鋳型が外されて剣や盾っぽい青い金属の物がお目見えできた。
ガギィィィィィン!!
「これ硬すぎて削れないだべ」
「だから言っただろ。超硬合金アダマンタイトだって」
「どうするだべ?」
「アルグラ召喚!」
「……旦那。ドワーフに囲まれるのは、ごめんだぜ」
「もう作業中は大丈夫だぞ。それより、この鋳型で成型が出来たやつを使えるようにしてくれ」
「んぐぁぐぐ」
「持ち手の巻革をくれ」
「ほらよ」
「んぐぁぐぐ」
俺はしゃもじでアルグラをかき回す。アルグラが光ったので完成したようだ。
「ペッ、ペッ、ペッ、ペッ、ペッ……」
インゴットの時も思ったがアダマンタイトは身体強化していないと、とてもじゃないけれど持てない重さだ。
「完成!」
「「「「「おおっ!」」」」」
「鞘はこちらを使って下さい。あと解体道具の箱はこちらです」
「はい、ホリゾン」
四男のキュープラムから貰った鞘に剣とナイフを納刀して、剣と盾とナイフを父に渡した。もう1本のナイフは自分用で、解体道具は箱にしまって両方共に収納にしまった。
『ソータ。私、お父上と作成した品に祝福したいのだけれど、身体を貸して欲しいわ』
『それはこっちからもお願いしたい』
「青龍が祝福してくれるって」
俺は青龍に身体を貸した。父と貴金属四兄弟は慌てて片膝を跪いた。
「貴方の一途な思いが相手に届き受け入れられますように。ソータの作成した品が、その懸け橋になりますように。私、青龍からささやかな祝福を送ります」
青龍の手から青色の風が吹いて、父を優しく包み込んだ。青色の風は父や剣盾やナイフに吸い込まれるように消えて行った。
「凄い……祝福は初めて見ただべ」
「奇麗だな」
「本当にアルティウスが地上に降りて来ているのか」
「他の精霊族に自慢できるよね」
「ありがとうございます。青龍様」
「ソータがお世話になっているし、それに個人的にも応援しているから。それでは気を付けてドラゴンを倒してらっしゃい」
青龍が父に手を振ったので、俺は身体を返してもらった。アルグラとミネルヴァを送還して、俺達は販売スペースに戻ると精算を始めた。
「プラティウム。流石に無償はないと思うので、ある程度は支払うよ」
「ソータ殿。私の武器なので私が支払いします」
「アクアヴィータとかで貯まる一方なんで、息子に奢らせてくれないかな? 俺はほら、赤ちゃんだから生活費かからないし」
「……ではお言葉に甘えます。しっかり稼げる父親になりたいです」
「小白金貨1枚でどうかな?」
「鋳型くらいしか用意してないのに、それだけ貰えれば十分だべ」
俺とプラティウムはギルドカードで決済した。それから約束のスピリタス4樽を収納から床に出した。
「「「「おおっ!!!!!」」」」
「1人1樽なら喧嘩しないだろ? 無くなったらギルドカードに連絡くれれば、冒険者ギルド経由で売ってやるよ」
俺達は夜が更けて来たので解散して、ドラゴン戦は明日に持ち越すことにした。
翌朝、城の客室にルキウスで寝ていると、浮遊感がしたので起きてみると剣聖が俺を抱っこしていた。
「おはよう、じい」
「おはよう。良く挨拶できた。賢い子じゃ」
「その演技は必要?」
母はマレ婆をお供に湯浴みしているようで、ここには俺と剣聖だけだった。結局、剣聖は母からルキウスの件を説明されたようで、昨夜から城に厄介になっていた。
「孫と戯れる爺を噛み締めたいのじゃ」
「剣聖、ホリゾンはドラゴンに勝てるかな?」
俺がそう弱音を吐くと、近くのソファーに向かって座り、俺を膝の上に降ろした。
「剣と盾はできたのであろう?」
「これが同じ材質のナイフね」
収納から超硬合金アダマンタイトのナイフを出すと、剣聖は空中で掴んだ。やばい……ルキウスにあの重さは厳しかったので助かった。
「ほほう、これは……」
剣聖はナイフの鞘から刀身を出して眺めたり、振りかぶったりしている。剣圧が室内の布をはためかせているし、孫を膝の上に乗せたまま刃物は扱わないで欲しい。
「欲しい」
「えっ?!」
「ホリゾンだけ狡い! くれるまでお髭で攻撃じゃ」
「ちょっと!」
俺は剣聖から髭で顔を埋められた。伸びた髭なのでチクチクしないので良いが、くすぐったいので直ぐに降参した。
「いやーっ! じいのおひげくすぐったいの! ないふあげるからゆるしてっ!」
「ふふふ、これは良いナイフじゃ。ナイフの礼に教えてやるかの。ホリゾンがドラゴンに勝てるかどうかは分からんが、実は儂よりホリゾンの方が粘り勝ちできれば今までも強いくらいじゃった。前までは装備を壊さないように慎重に戦っておったが、それが無くなったのだ。次は儂が負けるであろう」
「やっぱホリゾン強いんだね。俺、剣とか分からないから少し不安だった」
「このナイフの素材はヤバすぎではないか? これで盾を作ったのであろう?」
「うん。ホリゾンが持っている方は青龍に祝福もしてもらった」
「何っ! それは羨ましいぞ」
剣聖が俺の事をじっと見つめた。祝福くれって事なのかな?
「高みに至って日が浅いから、祝福の仕方は知らないからね」
「残念じゃ」
「他にホリゾンにアドバイスない?」
「儂もドラゴンは1度だけしか戦った事はないからの……。神話ではドラゴンの顎の下に1つだけ逆さ向きに付いている鱗があって、それが弱点だとされておる」
「逆鱗ってこっちの世界のドラゴンにもあるんだね」
「ソータ殿の世界にもドラゴンが居るのか?」
「俺の所でも昔話で伝わっていた感じで、実際に居たかは分からない」
「では試して見るのも良いかも知れぬな。ホリゾンであればドラゴンの懐に入るのは容易かろう」
「ありがと、じい」
剣聖を抱きしめようとしたら、ルキウスの腕周りだとお腹の表面しか届かない。幼馴染と同じで贅肉がなく腹筋の弾力と温かさが冬には気持ち良かった。剣聖が頭を撫でてくれていたので、しばらくそうしていると、マレ婆が朝食を運んできたので、朝食を食べて分身を置いて冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルド前に着くと父が既に待っていた。剣聖との話を伝えると父は「父上も無茶を言う」と苦笑いしていた。
そして受付でドラゴンを倒しに行くと言ったらひと騒動が起きた。久しぶりに会った受付のお姉さんが慌てて他の職員に報告すると、夜勤明けなのか眠そうなグリとグラだけか、ギルド長まで出て来た。
「ここまで大事になる?」
「兄貴は強いかも知れませんが、ドラゴンは別格です」
「しかも2人でとか無謀ですぜ」
「そうですよ。ドラゴンと言うと試練のダンジョンに行かれるのですよね? 冒険者ギルドとしても用意が必要です」
何か面倒臭くなってきたので、俺は父のマントにある認識阻害の魔法陣を指さした。
「ホリゾン。もうそれは必要ないよね?」
「そうですね。逆にドラゴンを倒した後に何者かって話になりますし」
「じゃ解除する」
「今まで助かりました。お願いします」
俺は父のマントにある認識阻害の魔法陣を解除するために、手の平を乗せて英語で解除ワードを唱えた。
「ブレイク・マジック」
「あ、こいつ見たことあるぞ。帝都の武闘大会で剣聖と良い勝負していたはず」
「確か剣聖の一番下の息子じゃ?」
「悪いね。今まで訳あって認識阻害をかけていたんだ。彼は剣聖の3番目の息子のホリゾンね。ちなみに今朝、装備を一新した彼に、剣聖は次の勝負では自分が負けるだろうと太鼓判を押していた」
「ひいっ! この盾、青い……。もしかしてアダマンタイトじゃ?」
「剣も見せてくれ!」
父が片手剣を鞘から引き抜くと、周囲が息を呑むのが分かった。朝の騒がしかった受付付近が静寂に包まれる。
「……その剣もアダマンタイトじゃ?」
「正確には超硬合金アダマンタイト製。アダマンタイトより硬くて割れにくくて熱に強くした。今回はホリゾンが主でドラゴンを倒す予定だけど、回復魔法と神聖魔法は俺が連射できるし、最悪の場合は魔人の攻撃を弾き返した結界魔法のイージスがある。勝てるかは分からないけれど、負けても敗走は問題ないと思うよ」
まあホリゾンで駄目ならイージスをドラゴンの内向きに覆って二酸化炭素で窒息させても良いし、運動魔法で引き裂いてもいいし、やりようはいくらでもある。今回のドラゴン退治は父のプロポーズ用だから意味ないのでしないが。
「分かったわ。そこまで考えているのならば許可しましょう。ただし規則で試練のダンジョンは立ち合いが必要なので、グリとグラを同行させます。良いですね?」
「まあそれくらいならいいよね?」
「私も問題ありません」
「「俺ら同行!?」」
試練のダンジョンは以前に行ったミネルヴァが居た問答ダンジョンの北の丘の上から、海岸に降りると入口があった。洞窟は1本路で特に迷う事もなく、大きな広間のような場所に出ると、青色をしたドラゴンが鎮座していた。
「これ倒したい魔物が出て来るの?」
「ええ、そう聞いていますね。その仕様のせいか試練のダンジョンと呼ばれているそうです」
「作戦的にはさっきギルド長に説明した感じで。グリとグラは俺から離れるんじゃないぞ」
「損な役回りすぎる……。立ち合いがドラゴンとか酷すぎる」
「俺らはここで死ぬのか……」
「じゃあやろうかホリゾン」
「はい。ソータ殿、回復よろしくお願いします」
「任された!」
2人は精神的に酷く憔悴しているようだが、まあ見ているだけだしと思って戦闘開始する事にした。父がドラゴンの右側面に回り込むと、やっと気が付いたのかドラゴンは首を父の方に向けてブレスの構えを見せた。ドラゴンの口から青い閃光のブレスが放たれるが、父は盾を回避中に展開して事なきを得た。超硬合金アダマンタイトはドラゴンのブレスの直撃にも耐えられるようで、良いスタートとなった。
ブレスの余波がこちらにも押し寄せるが、イージスのボイドモードで無効化される。
「ひいっ!!!」
「うぎゃっ!!!」
「もう煩いな」
俺はホリゾンの持つ盾をゆっくりと運動魔法で冷却する。父は怪我とか火傷とかしていなさそうなので、回復は不要なようで盾を少し上げてくれた。次にドラゴンは右腕を父に狙いを定めて振り降ろした。父は盾で受け流しつつ、剣でドラゴンの右腕を切りつけた。
ゴギャーーーーーーーーーッ!!
ドラゴンは傷を負ったのか右腕を庇いつつ叫び声を上げた。その声に驚いたのか、グラが奇声を上げて駆け出した。
「チュピッ!」
「おいっ! そっちはヤバイッ!」
父と相対したドラゴンの射線上にグラが向かっている。ドラゴンは再びブレス攻撃をしようと口を開いた隙に、父はドラゴンの懐に飛び込んだ。俺はグラを追って駆け出し、グラにタックルして地面に伏せた瞬間にドラゴンのブレスが俺達の上を通過した。俺は背中にヒヤッとした感覚がした後に、激痛が走る。直後にミネルヴァがイージスを展開してブレスの余波は防げた。
「ああ……兄貴が死んじゃう!」
「いた、た……。このくらいじゃ死なないよ。これを俺の身体にかけてくれ」
俺はグラに新ナノ・ゴーレム薬の瓶を渡して身体にかけてもらった。
『ミネルヴァ。どの程度の火傷だ?』
『深度Ⅱ度の深達性ですが、既に痛覚は遮断しました。治療に四十分程度は頂きますが、念のために神聖魔法で細菌等の感染症対策を行う事をお勧めします』
『分かった。ありがとう』
『申し訳ありません。移動によるイージスの個別対応を失念していました』
『いや、あれはグラがビビリだったからで、ミネルヴァは悪くないよ。悪いけど次からは護衛対象もイージスに入るように見張ってくれると助かる』
『承知しました』
父を見るとドラゴンの懐に飛び込んだ後に、首に痛手を負わせたようだ。自分に抗生物質イメージで神聖魔法をしてから、父の右腿の裂傷を回復魔法で治療する。父は剣を僅かに上げて謝意を伝えてくれた。グリは元の位置で蹲っていて、グラは俺の腰を掴んでブルブルと震えている。俺は剣聖の本気の殺意を受けたことがあるので、その時に比べれば楽だと感じた。
父とドラゴンは膠着状態になるかと思いきや、父がドラゴンの右後背に素早く回り込んで右脚を切りつけて深手を負わせる。
ゴギャーーーーーーーーーッ!!
ドラゴンは首と右腕右脚に傷を負ったので、咆哮を上げると翼を広げて広間の空中に浮かんだ。俺は嫌な予感がしたのでグラを身体強化で無理やりに引きずってグリの所に運ぶと、ミネルヴァにイージスの防御を引き上げるように指示した。
『ミルネヴァ。イージスをベクトル・リアクティブモードにして反射倍率2倍だ』
『了解です』
やはり弱い方が狙われる自然界の法則で、俺達が父より弱者と定めたのかドラゴンがブレスを吐きながら突っ込んできた。イージスのベクトル・リアクティブモードでブレスは反射されて2倍になってドラゴンに跳ね返って行くが、そんな事をお構いなしにドラゴンはイージスに体当たりした。
ドガシャーーーーーーーーンッ!!!!
トラックが空から降って来てぶつかると、こんな音がするかも知れないと頭の片隅で思っていたら、その突進を好機と見た父は、イージスに2倍の圧力で反撃を受けてのた打ち回っているドラゴンの首元に潜り込んで、逆鱗と思わしき場所を定めて剣を突き上げた。直後にドラゴンはのた打ち回るのを止めて、ピクリとも動かなくなったので、父と一緒に恐る恐るドラゴンに近づいた。
『マスター。念のために新ナノ・ゴーレム薬をドラゴンにかけて下さい』
『あ、そうだね』
俺は新ナノ・ゴーレム薬を収納から取り出して、ドラゴンにかけた。
『ドラゴンは生命活動を停止しています』
「やったっ! 倒せたよホリゾン!」
「やりましたね!」
俺と父は抱き合って喜んだ。
「しかしソータ殿にブレスが直撃した時は焦りました」
「俺も死ぬかと思ったけど、何か剣聖の本気の攻撃に比べたら、ドラゴンの攻撃が怖くなくて身体が勝手に動いた」
「その背中、治るのですよね?」
「今は痛みを止めてもらっているし、ミネルヴァが言うには四十分くらいかかるって。しかし服はボロボロだな」
「無茶はしないで下さい……」
俺は父に強く抱きしめられた。父の心配が染みてくるように俺に伝わって、強敵に勝った実感がやっと湧いて来た。
「ずびまぜんでじだ……」
グラは泣きながら立ち上がると誤って来た。グリはドラゴン特攻の時に気絶していたので、新ナノ・ゴーレム薬をかけてミネルヴァに気付けして貰った。
「うう……。ここは原初の海?」
「ドラゴン倒したぞ」
「俺、生きている!」
何かグリは急に元気になって、ドラゴンに蹴りを入れ出した。
「死体蹴りとか恥ずかしいから止めろよ」
「兄貴も殺されそうになっていたじゃないですか」
「魔物だって生き物なんだから、殺されたくなくて必死だったんだからな。健闘を称える事はすれど、死してから貶すのはどうかと思うぞ」
「成程。兄貴は心が広いっすね」
『先ほどのドラゴン攻撃でデータが取れました。剣聖が3人がかりの全力でもイージスは破られなくなりました』
「さっきで実戦の記録が取れてミネルヴァ曰く、イージスは剣聖3人がかりの全力でも破れないってさ」
「ドラゴンは最後に弱者を狙っていましたよね?」
「そうだね」
「弱者……なのでしょうか?」
「う~ん、定義にもよるかな。俺、赤ちゃんだし良く分かんない」
「またそれですか!」
俺と父は笑ったが、赤ちゃんの意味が分からないグリとグラは首をかしげていた。
「じゃドラゴン収納して帰るか」
「こんな巨大な物が収納に入る訳ないですよ。いくら兄貴でも」
「そうそう。ギルドに戻って解体要員を連れてきた方が良いです」
「君達、もし俺の収納の中を覗けたら、ショック死しちゃうぞ」
「「えっ?!」」
「収納!」
ドラゴンが光って収納に消えると、グリとグラが固まった。父も唖然としているので、少しやり過ぎたかも知れない。尻尾も含めて体長二十メートルくらいあったからね。
俺達が冒険者ギルドに帰ると、お祭り騒ぎの様相を呈していた。ドラゴンを収納して来た事とドラゴンの体長を冒険者ギルド長に伝えると、ギルド加入時に試験を受けた裏の戦闘訓練広場に案内された。手際の良い事に母と剣聖と婆と伯爵夫婦が揃って見物の輪に入っていたので、父と一緒に近づいた。
「ホリゾン……」
「姫様、久方ぶりでございます」
「探していたのよ。1年もふらついて、どこに行っていたのよ」
「剣の修行をしていました。今日は姫様にその成果をお見せしたく思います」
俺は父から目配せを受けたので、広場に収納からドラゴンを出した。土煙を上げて巨大な青いドラゴンが横たわる。驚愕している母に父は続けた。
「姫様。ドラゴンを単独討伐とは行きませんでしたが、こちらのソータ殿の回復を受けつつ私が討伐致しました。私の求婚を受けて頂きたく、ドラゴン討伐の名誉を姫様に捧げます!」
父は母の前に更に近づいて片膝を跪いた。そっと右手を母の方に差し出して答えを待った。
「えっ?! 私のために倒してくれたの?」
母が俺と父を交互に見たので、俺は静かに頷く。母はモジモジとして恥ずかしそうにしていたが、伯爵夫人に小声で後ろから囁かれると、意を決したように父の手の平に自分の手の平を重ねた。
「謹んでお受け致します」
その瞬間、広場に歓声が上がった。
次回の話は翌日の19時になります。
ドラゴン焼肉は食べてみたいですね。
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