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【完結】神様に元の世界に帰りたいと願ったら身体を要求された  作者: 仲津山遙
第1章 幼少期編

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018話 ノイジーな錬金窯

『加工しないと食べられない食材の方が多いな……』


 先日の食品植物ダンジョンで収納内が爆増(ばくぞう)したので整理していたのだが、増えすぎて魔境(まきょう)になりそうだ。収納は取り出そうとすると入っている物がイメージで浮かぶが、中を見てみたいけど自分を収納できないのでお手上げだった。


『あれを忘れていないか、ソータ』


 玄武の指摘に疑問符(ぎもんふ)を浮かべるが思い出して、いつかやろうが、今やろうに変化した。


『……あ、錬金窯を取りに行くのを忘れていた!』

『力作を忘れられていて、少し悲しかったぞ。(くせ)が強いが良い出来の作品だ。宝箱からアイテムを入手できるダンジョンでなら、どこでもソータ限定で今回作成した錬金窯が出るようにしてもらった』

『癖?』

『会えば分かる』

『会う?』


 玄武と会話がかみ合っていない気がするが、取りに行く算段をする。冒険者ギルドで受付のお姉さんに聞いてみた。


「ソロでアイテムが一番簡単に取れるダンジョンが近くにないかな? 取れるアイテムは何でも良いんだけど」

「ソロはお勧めしませんが、ご要望通りのダンジョンなら領都内にありますよ」

「ソロは駄目なの?」

「駄目…と言う事はないのですが、とても居づらいと言うか、場違いと言うか…表現が難しいです」

「良く分からないけど、そこで良いから教えてくれるかな」

「当ギルド入口を出た前にあるターミナルから、レビタス車で送迎(そうげい)があります。ピンク色の車なので、すぐに分かると思いますよ。このダンジョンは人気なので並ばれている方が多く、待ち時間に注意が必要ですね」

「ありがとう、行ってみるよ」


 俺は冒険者ギルドを出るとピンク色のレビタス車を探して乗った。何故かカップルが多い気がするのは気のせいだろうか? 車は三十分くらいかけて目的地に到着した。領都カストルムの東の外れにダンジョンがあるようだ。一応は結界モニュメントの有効範囲内なので、ここは魔物の心配がない。

 小高い岩山の前にダンジョンの入り口があって、その周りには東洋の龍のレリーフが刻まれている。入口方向と出口方向にロープが張ってあって、千葉県だかカリフォルニアだかの某電気とお金の国のアトラクション前のように入場待ちの列が出来ていた。冒険者ギルドの職員が列の整理をしている。


「恋愛成就(じょうじゅ)ダンジョンの最後尾は、こちらです! 本日は四十分待ちとなっています!」


 ダンジョン名に違和感(いわかん)を覚えるが、今更別の所に行くのも手間だ。仕方がないので列の最後尾に並んだが、やはりカップルが多い。凄くやり切れないので、青龍を睨んだ。


『もしかして星のマークが1~7個入った7個の球を集めて、願いを叶えたりできるとかじゃないよね?』

『それは何かしら?』

『入口に龍が彫り込んであるから』

『ああ、あれは私なの』

『やっぱり……。どういうダンジョンなんだ?』

『中には宝箱があって、カップルにはお互いに記念になる物。思い人が居る場合には、相手へのプレゼントになりそうな物が出るのよ。出て来るのは他愛(たあい)ないアクセサリーとか置物とかで金銭価値は低いわね』

『ここは青龍の趣味がダンジョンになっているのは良く分かったけど、そもそもダンジョンって何なの?』

『簡単に言うと人間の欲望を叶えられる場所で残存魔素の除去装置ね。

 元々は生命の庭には魔素が存在しなくて、人間が魔法を使うために世界樹から原初の海の魔素を供給しているじゃない。魔法を使うと残存魔素が発生して魔獣や魔物が産まれるのだけれど、残った魔素の濃度が高すぎると魔人(まじん)や魔王といった人間の天敵(てんてき)になりうる存在が産まれる事があるの。

 ダンジョン・コアと言う創造神様が作った魔物が、残存魔素を吸収して作り出した魔物退治をさせたいけれど、人間って欲がないとそんな面倒な事をやってくれないでしょ? 私も人間だったから分かるし。

 その欲求を生み出すためにダンジョン・コアはアカシック・レコードを参照して人間に有用な素材を持っている魔物にしたり、宝物にしたりしているわね。それがダンジョンよ』

『その重い話を青龍風にアレンジすると、この洞窟(どうくつ)になる訳?』

『人間は男と女で構成されているのだから、良い人と結ばれたいって言うのは根源(こんげん)的な欲求でしょ? ちなみに同性同士も勿論(もちろん)ありよ』

『1人で来るんじゃなかった……』


 しかし妻は遠い場所だし、ダンジョンだからって父と来ていたら気まずかったはずで、ミーティスのウルスメル商会の手伝いに行っていてもらって良かったかも。だから受付のお姉さんは、あんな言い方だったのか……。


「あら、ソータさん、こんにちは。こんな所で会えるとは思いませんでした」


 出口方向から冒険者ギルド長の猫獣人エレガンターがやってきた。腕を組んでいる人が居るので恋人か何かだろうか。


「こんにちは。ギルド長こそ、こんな所に来るんだね」

「今日は休日なので、彼女と遊びに来ました」


 腕を組んでいたのはギルド長と同じ猫獣人で、白毛にピンク肌の金青色のオッドアイで、頭と尻尾が美猫だった。凄くモフモフしたい……。


「奇麗な人ですね」

「ありがとうございます。私のパートナーのプルクルムよ」

「ソータです。ギルド長には冒険者ギルドでお世話になっています」

「プルクルムです。プルとお呼びください」

「お2人は良い品が出ました?」

「私達はネックレスでした。ミスリル製なので当たりかしら」


 見せてもらうとペンダントトップが猫型をしている銀色のペアネックレスだった。可愛らしいので俺もちょっと欲しいかも。それよりもミスリルとか言うファンタジーな金属が気になる。


「ソータさんは奥様へのお土産目当てか何かかしら?」

「いえ、貰い物を拾いに来たので違いますね」

「貰い物を拾うのが良く分からないけれど、面白そうな予感がしますわ。プル。ソータさんを待っていても、よろしくて?」

「エレが言うなら面白そうだね。特に用もないから待とうか」


 何か期待しているようだけど、ただの錬金窯なので面白いものじゃないと思う。そうこうしている内に俺の順番が来たのでダンジョンの中に入った。

 このダンジョンはワンルームくらいの広さの石室って感じだった。床に進行方向の矢印があって、よりアトラクションな雰囲気が強い。奥に進むと古ぼけた宝箱が床にあって、前の人が開けたままだったようだが、勝手に閉まった。


「しばらくお待ちください。宝箱が再充填(じゅうてん)されますので」


 冒険者ギルドの係員が宝箱前で、俺を手で遮って止めた。もう俺には電気とお金の国のアトラクションにしか見えない。ニヤついている俺に玄武が注意した。


『何をニヤついているのか分からないが、錬金窯は重いので取り出す前に身体強化をして欲しい』

『了解』


 身体強化をかけると、宝箱が一瞬光った。すると係員の制止が解除される。


「宝箱が再充填されましたので、中からアイテムを入手したら出口に進んでくださいね」


 俺は宝箱に近づいてしゃがんでから蓋を開けた。中は真っ暗で見えないので手を突っ込んでみると、金属製の固い物の感触があったので取り出す。身体強化をしていても結構重い。取り出した物の全容(ぜんよう)が現れると、係員と俺の後ろに並んでいた人々が騒ぎ出す。


「ウソッ!」

「きれい……」

「何だあれ」


 宝箱の中から取り出したのは、どう見ても宝箱の大きさより大きな黄金色に光輝く(さかずき)のような形をしていた。杯自体が光を発しているようで、黄金色の(きら)めきが室内を照らしだす。予想外の豪華(ごうか)さに俺は驚いて、黄金色の杯を床に落としてしまった。


キィーーーーーーーーーーーーン

「おいっ! 丁寧(ていねい)に扱いやがれ!」


 思いのほか甲高い落下音と共に、口汚い低い(ののし)り声が黄金色の杯から聞こえたような気がした。


「無視かよ。わいを薄暗いこんな狭っ苦しい所に置き去りにしたら許さんからな!」

「錬金窯?」

「おうよ!」


 俺は自称錬金窯を収納にしまおうとしたが入らなかったので、抱えてダッシュでダンジョンを出た。ギルド長とプルが待っていたので、足元に錬金窯を置いた。


「あらまあ凄い」

「キラキラだね」


 俺は玄武を睨んだ。


『癖が強いって聞いていたけど、しゃべるのは想定外なんだけど』

『会えば分かっただろ?』

『……錬金窯、なんだよね?』

『錬金窯だな。台座にしゃもじが付いているだろ』

『確かに付いているけど、イメージしていたのと違う。いや、全然違う』


 錬金窯は六角推(ろっかくすい)の台座に六角推の支柱が立っていて、その上に丸い器が乗っている。横から見ると杯に見える。台座の四方には巨大な魔石がはめ込まれ、丸い器の四方に、この前に言っていた青龍の鱗、朱雀の羽根、白虎の牙、玄武の甲羅が、透明なガラスのような物で覆われて装着されている。


『本当に作るのが大変だったんだ。その黄金色に輝いている金属はオリハルコンで……』

『オリハルコン!』

『俺達の身体の素材を封入してある透明なのがテクタイトで……』

『テクタイト!』

『台座の巨大魔石は魔人のだ』

『魔人!』

『最後の仕上げに創造神様の魔力で練り上げられている』

『……ありがとう』

『喜んでくれて作った甲斐があったよ』

『所でこいつは収納にしまえないんだけど?』

『そりゃ魔物だからな』

『魔物!』

『収納は生きている動物は入らないんだ。それからダンジョン・コアと一緒で、アカシック・レコードの参照権限(けんげん)を創造神様が付けたら、しゃべるようになったんだ。創造神様も驚いていたよ』

『どうやって持ち運べば? 身体強化しても重いよこれ』

眷属(けんぞく)化すれば召喚(しょうかん)で出し入れできるはず』


 俺は屈みこんで錬金窯を睨んだ。


「おい、眷属にしてやる」

「落とした奴に眷属にされたくない」

「オリハルコン何だってな」

「それがどうした?」

「俺はそーいう特殊な材質は大好きなんだよ」

「変な趣味だな」

「その透明なのはテクタイトだって?」

「だからどうした?」

「そんな不思議でファンタジーな素材が目の前にあって、材料工学的にサンプル取って調べたい欲求が抑えられない」

「どういうことだ?」

「ちょっと穴を開けて穿(ほじく)り返して調べるんだ!」

「そんな事したら傷が付くじゃないか!」

「素直に眷属になったら考えてやらないまでもない」

「名前がないのに眷属になれる訳ないだろ」

「名付けすりゃ良いのか?」

「気に入る名前だったらな!」

「……きんちゃん」

「ふざけてるのか!」

「こんちゃん、ぴかちゃん」

「……」

「れんちゃん、かまちゃん」

「……」

「面倒くさいな。アルケミー・グラス」

「もう一捻(ひとひね)り」

「アルケミア・グラール。略してアルグラ」

「それがいい!」


 俺から光の粒が飛んで、アルグラを包み込んだ。感覚的に眷属化に成功したようだ。


旦那(だんな)、魔力が欲しいぞ」

「なぜ?」

「そりゃ、わいは魔物だから魔力がないと死んでしまう!」

「それは可哀想(かわいそう)だな」


 俺はニヤリと笑い、アルグラを小指で突いて、魔力をほんの少しだけやった。例えると魔法の調味料をパラパラと鍋に入れた時と同じくらいだ。


「少ないぞ! 酷い!!」

「働かざる者、食うべからずだ。働きに応じて(えさ)はやろう」

「ぐぬぬぬぬ……」

「分かったら送還(そうかん)だ。召喚するまで静かにしてろよ」


 アルグラは見えなくなった。まったく……幼馴染がもう1人増えたような感じだ。でも懐かしい感じで少し楽しかった。


 ギルド長とプルにアルグラとの会話は聞かれていたよね。隠すことでもないし正直に行くか。


「さっきのが宝箱から出て来たやつ」

「魔物とおっしゃっていましたけど、危険はないのですか?」

「自分じゃ動けないから何もできないはず」

『だよね?』

『錬金窯の生成物は危険な物も作れるが、あれ自体が他に危害を与える恐れはない』

『玄武、信じたからね……』

「何なのですか、あの杯は?」

「錬金窯って言ってた」

「神話に出て来るベトスの民が様々な物を作り出していた窯が、そんな名前でしたね」

「オリハルコンとかテクタイトで出来ているって言っていましたが本当ですか?」

「そうらしいね」

「エレ、あの大きさのオリハルコンなんて国宝でも見たことがない」

「そうよねプル。剣聖の剣がオリハルコン製らしいけど、先ほどの杯の方が重そうよね。少なくとも伝説級のアーティファクトなのかしら」


 横を見るとダンジョンに進む列が止まってしまっていて、俺達の方を伺っている。係員も中から出て来て聞き耳を立てているようだ。凄い注目の的になってしまった。分かっていたらこんな人手が多いダンジョンに来なかったのに……。


 その後、恋愛成就ダンジョンは伝説級のアーティファクトが出ると噂になり、宝箱待ちの列が膨れ上がったと風の噂で俺は聞いた。

次回の話は翌日の19時になります。

カレーは日本の国民食ですよ!


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