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神様に元の世界に帰りたいと願ったら身体を要求された  作者: 仲津山遙
第2章 貴族院編

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100話 脱毛した白虎

節目の100話になりました!


お読み下さる皆様に感謝と共に、お付き合い下さり、ありがとうございます。

まだ続きますので、引き続きお読み頂けると幸いです。

 夏希休暇が終わる前に集めて来た部材で、俺の宇宙船の形だけでも作ろうかなとモフモフ街の造船所に向かおうとすると、父と剣聖に止められた。


「待って下さい。ソータ殿」

「待つのじゃ」


 俺としては白虎に身体を貸した影響で匂いが染みついたので、匂いが抜けるまで獣人に避けられるのでルキウスになって宮殿で過ごそうと思っていたが、何故か父と剣聖に連れられて蒼汰で隠居伯の屋敷に泊まっていたのだ。2人が泊っている目的を聞いても答えてくれなかったので、やっと動きがあってスッキリした感じだ。


「何? 俺は造船所に行ってやる事があるんだけれど」

「着いて行きます」

「お供するのじゃ」

「一緒に来てもつまらないと思うけれど……」


 脳筋の2人が宇宙船に興味がある訳はないだろうし、スピード狂のウェルテクスや貴族院の航法科教授達くらいしか興味がなさそうで、しかも建造中の宇宙船とか飛べる訳もないので見ても仕方がないと思う。

 剣聖が珍しく歯切れが悪そうに言った。


「ソータ殿の宇宙船を作るのであろう?」

「そうだけど」

「とても頑丈な船になると聞いているが」

「そりゃあ二百億光年も旅するからね」

「「攻撃して見たいのじゃ(です)!!」」


 最後は父と剣聖から声を被らせてお願いされた。どうやら白虎と一緒で破壊が出来ない物があると聞くと攻撃してみたいらしい。おそらく剣聖の突進技を使うと思うが、あんなものを造船所でやったらモフモフ街に壊滅的な被害が出るので、止めて欲しかった。


「父さんと爺が造船所で本気に攻撃したら、折角、新しく作ったモフモフ街が潰されちゃうよ……」

「それは大丈夫です。貴族院の演習場の使用許可を取りました」

「取ったのじゃ」


 父と剣聖が胸を張ってドヤ顔をする。ちょっと強い材質の破壊に対する本気度に俺はドン引きした。


「凄いやる気だね……」

「本当はスーパー・ルキウス君モードでも殴って欲しいですがね」

「ちょ! 白虎に星を破壊できるって言われたのを忘れたの? 例え演習場でも、貴族院のある連星ジェミノスサークルムが粉々になっちゃうよ!!」

「そうであるので今回はスーパー・ルキウス君モードを我慢なのじゃ」


 我慢の為所(しどころ)が違うのではないかなと思った。転移しようとしたら魔聖も連れて行きたいようなので、仕方がなしに魔聖の個人研究所の前に2人を連れて転移する。門番に見つかると直ぐに魔聖が出て来た。


「良かった! このままスルーされなくて」

「姫様経由で頼まれたので断れませんよ」

「まったくじゃ」


 魔聖は母経由で父と剣聖に頼んでいたようだ。まあ中性子星を錬成して中性子構造体と名付けた物の耐久試験だと思えば良いかと思い、俺は3人を連れて演習場の中央部に転移した。

 そして中性子構造体を収納から出した。手を頭上に伸ばすと楽に届く位の位置に浮かばせる。漆黒で赤黒い光の渦が淡く波打つように蠢いている球体は、直径が二十キロメートルもあるので別の天体が衝突寸前のように空に地平線ができたような印象を受ける。


「「「でかっ!!!」」」

「ああ、そう言えば3人は見るのが初めてか」


 採取してアルグラで加工してから収納してしまったので、見た事があるのは母と白虎とアルグラとミネルヴァだけだった。


「私はこんな強大な物体が収納に入っていたのも驚きよ!」

「収納した中では過去最大だねぇ」


 魔聖が驚愕の表情で上を見上げた。


「ノックス・ステラなのでしょ? 触っても平気?」

「うん。母さんも触ったよ」


 ノックス・ステラとは、ここの中性子星の呼び名だ。3人は恐々と触って感想を共有し出した。

 俺は3人の気が済むまで付き合わないとならないので長丁場になると思い、収納からロッキングチェアとサイドテーブルを出してサイドテーブルの上におやつと飲み物を用意した。今日は揚げ餅と麦茶だ。ミネルヴァに結界魔法イージスを頼む。


「ミネルヴァ。イージスを俺の周囲に展開して」

『はい、マスター』


 これで心置きなく放置で良く、まもなく夏希休暇が終わってしまうと少しだけ心の中で嘆いた。

 まずは魔聖が攻撃魔法を放つようで、風属性魔法から撃ち始めた。流石に帝国最高峰の魔導士だけあって、嵐並みの突風が吹き抜ける。父と剣聖がしゃがんだくらいなので、結構な風量と風速なようだ。


「ビクともしないわね……」


 次に土属性魔法で岩塊(がんかい)をぶつけた。魔法覚えたての貴族院の生徒は小さい石礫だったが、魔聖の物は砕けた破片が当たっても致命傷になる大きさだった。父と剣聖は破片を器用に避けていた。


「う~ん。城壁位は軽く穴が開く威力なのだけれど……」


 最後に火属性魔法のようで、流石に父と剣聖は俺の結界の中に逃げ込んで来た。


「父さんと爺なら避けられるんじゃないの?」

「火はヤバいですね」

「無謀と勇敢は同じ舞台には登らないのじゃ」


 歴戦の騎士の剣聖は引き際が分かっているようで、サイドテーブルの揚げ餅を摘まみだした。

 魔聖の呪文が完成すると、金色に光る両手棍ユグドフェルラから爆炎が立ち昇り、中性子構造体を舐めた。直系二十キロメートルなので極一部を火魔法が舐めた程度だが、魔聖の近くから見ているので結構な迫力だった。


『TNT火薬換算で三百グラムの破壊力になります』

『へぇ』


 ミネルヴァが魔聖の火属性魔法の威力を算出してくれた。魔法覚えたての貴族院の生徒で数グラムだったので、十分に殺傷力のある威力になる。

 魔聖はユグドフェルラを魔法鞄にしまって、お手上げのポーズで俺の結界内に入って来た。


「まったく歯が立たないわ。これは大規模演習で行う一斉発動でも無理じゃないかしら」

「どれ。次は儂がやってみるかのう」


 剣聖が名乗りを上げて結界外に出て行った。魔法鞄から金色に光る両手剣グラムクルッジを出して突進技の構えをする。

 俺はアルグラを召喚した。


「アルグラ召喚!」

「……旦那。まさかあの突進技を、わいに食らわせる気じゃないでやすか?」

「中性子星を飲み込めるお前を、普通に破壊できる方法を俺は思いつかないな。今日は剣のメンテナンスで呼んだんだよ」

「それなら安心でやす!」


 剣聖が突進技を放つが、結界が突進技の轟音を遮っているようで、スピーカーを通して聞いているような超音速の高周波音が駆け抜けた。地面も抉れて突進技の進行で筋が出来ていた。剣聖は右腕をプラプラさせながら、グラムクルッジを左手で杖を突くようにしながら歩いて来た。左足も引きずっているので様子が可笑しいと思い、俺は剣聖に駆け寄る。


「爺!」

「捨て身の超本気であったが駄目であった」


 ミネルヴァが新記録だと教えてくれた。


『新記録です。最大瞬間的にマッハ十五を記録しました』

『うへぇ!』

「もう! 無茶しないでよね……」


 俺は収納からエリクサーを出すと剣聖にかけた。服がボロボロなのは直らないが、身体は即座に治療されたようで右腕を肩で振り回し、短くジャンプして左足の調子も確かめて問題なさそうになった。申し訳なさそうに俺にグラムクルッジの刃先を見せる。大きく欠けているので修理が必要だった。


「多分、無茶してこうなるんじゃないかと思って、アルグラを出して置いたよ」

「助かるのじゃ」


 俺はグラムクルッジを受け取ってアルグラに突っ込んだ。材料のオリハルコンも突っ込むと、しゃもじでかき回して修理をする。分子レベルで新品同様になって吐き出されたので剣聖に返却した。


「何でも直せる孫が居るので無茶ができるぞい!」

「私も男の見せ所ですね!」


 父はそう言って魔法鞄から超硬合金アダマンタイト製の片手剣を出すと突進技の構えをする。父の突進技も剣聖の突進技と同じように超音速の高周波音が駆け抜けた。片手剣らしく切り返しがあって2回の高周波音が鳴り響くと、構えた位置に父は戻ったようだ。父が地面に倒れ込んだので慌てて駆け寄る。


「ちょ、ちょっと大丈夫……じゃないね……」

「少し無茶をしてしまいました……」


 父は右肘と右足があらぬ方向に曲がっていて、見ているだけで痛そうだったので急いでエリクサーをぶっかけた。エリクサーのお陰で右肘と右足が元に戻るのも痛そうに見えて、俺は目を逸らした。

 父の服も無残にボロ切れになっていて、超硬合金アダマンタイト製の片手剣も半ばから折れていた。


「ここまで壊れたの直るかな……」

『問題なく修復できます。マスター』

「良かったね。ミネルヴァが直せるって」

「自分の身体より剣の方が心配でした」

「2人共、次にこんな無茶をしたら剣の修理は、しばらくお預けにするからね!」

「すみませんでした……」

「分かったのじゃ……」


 ヤンチャな2人を渋々と納得させ、俺は超硬合金アダマンタイト製の片手剣と材料のインゴットをアルグラに突っ込んで、しゃもじでかき回して修理をする。分子レベルで新品同様になって吐き出されたので父に返却した。

 ミネルヴァが新記録を、また塗り替えたと教えてくれた。


『新記録を更新しました。最大瞬間的にマッハ十八を記録しました』

「うわぁ! もう人間の出せる速度じゃないね!」

「私達の速度が分かるのですか?」

「うん」

「教えるのじゃ」

「教えると、また競争になっちゃうから秘密で!」

「息子が反抗期ですね!」

「孫に秘密を持たれたのじゃ!」


 ミネルヴァによると速度だけだと父が優勢だが、打撃力は剣聖の方が上で、それらを加味すると同じくらいの攻撃力になるようだ。剣聖の見た目は四十代だがベトスの民化して中身が若返っているので、父と遜色ない動きが出来るようになったと喜んでいた。

 中性子構造体に攻撃をした3人は見上げながら溜息を付いた。


「傷一つ付いていないわね……」

「そうですね……」

「そうじゃな……」


 まあ俺的には結果は科学的に分かっていたので、慰めの説明をしてあげた。


「そりゃあ中性子構造体はスプーン1杯で、帝都の宇宙港のある湖の水と同じくらいの重さだしね」

「「「なっ!!」」」


 3人は仰天した。それを更にスーパー・ルキウス君モードになって余裕で星を破壊できるくらいの魔素を注ぎ込んで強化してあるので、壊せる訳ないよなと思っていると白虎がそっと現れた。


『ソータよ……我に隠れて面白い事をしているではないか』

「えー? 別に隠れてないけれど」

何方(どなた)かいらっしゃったのですか?」

「うん。白虎が父さん達を羨ましがっているの。約束していたし今度は白虎に攻撃して貰うよ」

『分かっているではないか! ソータよ』


 演習場でのお遊びはお開きにして、約束していた白虎に中性子構造体を攻撃させる事にする。今度は3人に羨ましがられた。


「白虎様の攻撃とか見てみたいわ!」

「私は原初の海に行けないのですか?」

「儂も行きたいのう」

「え~と、原初の海には生きたままの生物を人間も含めて持ち込めないんだよ。仮に持ち込んだとすると魔人とか魔王化するから創造神に怒られちゃう」


 父と剣聖の魔王とかシャレにならないよね……。そう思っていると創造神まで現れた。


『怒りはしないよ、ソータ。やり直し案件ではあるけれど』

「ああっ! 創造神も来ちゃった。取りあえず絶対に無理みたい」

『そんなに見たいなら、ホリゾン達にはミネルヴァ経由で動画でも見せて上げたら』

「それだ!」


 俺は父達3人に後で動画を見せる事で納得させて、宝箱に中性子構造体とエリクサーと新ナノ・ゴーレム薬を入れて後片づけをして転移魔法で送った。魔聖を個人研究所に送ってから、父と剣聖と隠居伯の屋敷に戻ってくると剣聖にお願いする。


「爺、原初の海に行ってくるから抱っこ!」

「後で白虎様の活躍を見せるのじゃぞ」

「うん。楽しみにしていて!」


 俺は剣聖に抱き上げてもらい原初の海に向かうと、創造神の寝所ルクスネブラの近くの何もない広場に着いた。創造神と白虎だけでなくて、朱雀と玄武と青龍まで四神が全て揃っていた。


『僕も来ちゃった!』

『白虎に言われて宝箱を持って来たぞ』

『白虎が壊せないってのが信じられないわ』

『我にかかれば壊せぬ物などないわ!』

『ソータ!』


 創造神が俺に飛び込んで来たので、久しぶりにモフフカの感触を楽しんだ。

 流石に原初の海開きで出来た新しい大地である惑星に被害を与えたくないので、宇宙空間に行く事にする。


『衛星軌道上くらいだと危ないかもね。もう少し離れた方が良いかも。ここって衛星が6個もあるから避けられるかな』

『マスター。最適なポイントを計算済みです』


 視界にミネルヴァが計算した、この惑星と衛星から距離を取った最適なポイントが表示された。


『白虎が頑張るから、俺が転移魔法で連れて行くね』

『頼むのだ。ソータよ』

『私が風属性の結界を張るわね』


 青龍の風属性の結界が張られたので、ミネルヴァが計算した宇宙空間に転移した。遠くに四神達の集落や創造神の寝所ルクスネブラがある青い惑星が見えて、その周りを周回する衛星が4個見えていた。ミネルヴァの地図によると残りの2個の衛星は惑星の裏に隠れているようだ。

 ここならば多少暴れても問題がなさそうなので、玄武が持って来た宝箱から中性子構造体とエリクサーと新ナノ・ゴーレム薬を取り出した。


『『『『『でかっ!!』』』』』


 四神と創造神は驚きの声を上げた。直径二十キロメートルは迫力があるからね。四神が中性子構造体を触って騒ぎ出した。


『キャー! 気持ち悪い変な感触。僕、こんなのに捕まっていたなんて悔しい!』

『この表面をびっしりと覆っている赤黒い光の渦は魔法陣なのか? 俺では理解ができん!』

『硬そうに見えないけれど私の爪で傷が付かないわ』

『我は腕が鳴るわ!』


 過去に中性子星の重力圏に捕まっていた朱雀は悔しがり、玄武は物質的に安定するように科学的な問題を解決している魔法陣が理解できないようだ。青龍は手だけ龍化して爪で引っ掻いているが、そのくらいでは傷は付かないだろう。白虎は腕試しにワクワクしているようだ。

 俺は創造神に聞いて見た。


『創造神なら、これを傷つけられるよね? 触ってみる?』

『私は……見せた方が早いか』


 創造神が俺の胸元からフヨフヨと漂って離れて行くと、中性子構造体に触れたように見えた。不思議な事に創造神の光の球が欠けたように中性子構造体にめり込んで行ったので驚いた。


『創造神!』

『ふふっ! 心配してくれてありがとう。ソータ、大丈夫だよ』


 創造神が中性子構造体から出て来て俺の胸元に戻った。上下左右にモフフカを確かめて何ともないので安心する。不可思議な現象なので創造神に疑問を訪ねた。


『え~と、どうして?』

『ソータに分かりやすく説明すると、私は物質に相互干渉しない身体だからだね』

『え? 俺は触れるけれど?』

『そこは私も分からないんだ。誰かに触られると言う感触は新鮮だからソータに触られると嬉しいし』

『実は高次元生命体で、この光の球は影のような物?』

『どうだろうね。私は自分自身が、この原初の海に意識があると思っているけれどね』

『まあモフフカで気持ち良いから、OK!』

『それも愛なのかしら……』


 青龍が俺と創造神のやり取りを見て呟いた。白虎は待ち侘びたように創造神にお伺いを立てた。


『創造神様。我は攻撃を初めても良いでしょうか?』

『うん。ソータと戯れていて悪かったね』

『創造神様の御心のままに』


 白虎はやっと出番が来たと感じたようで、人型から大きな白い虎に変身した。


『え? 白い虎でやるの?』

『前に我が星を割ったのは、この姿なのだ』


 白虎から距離を離れて、念のために結界イージスを張るようにミネルヴァにお願いした。


『ミネルヴァ。イージスを多めによろしく』

『はい、マスター』


 通常はマルチ・レイヤー5層のイージスを3重にして、俺達は包まれて守られた。


『では参る!』


 白い虎バージョンの白虎はそう念話で言って輝き出し、スーパー・ルキウス君モードのように全力で身体強化の魔法がかかったようだ。白虎が咆哮をするが宇宙空間なので、こちらでは聞こえないが聞こえたら俺はビビリそうだね。白虎は宇宙空間に空間魔法で道を作り出し疾走して光の筋になった。


『白虎様の速度は光速の九十九.九九パーセントに達しました。内包する魔素量が多すぎて衝撃力の計算が出来ません』

『凄いね……』


 白虎の光の筋が中性子構造体に衝突すると光が溢れた。宇宙空間に広がる光の渦が惑星や衛星まで照らし出す。凄まじい光量なのでイージスが自動的に光を遮断してくれているようだ。

 光の渦が止むと無傷の中性子構造体と、白虎がぐったりして漂っているのが見えた。


『白虎!!』


 俺は白虎の近くに転移して状態を確認した。白虎の前足が拉げて肉球が潰れていた。頭からも血が流れていて右耳が千切れてどこかに飛んで行ってしまったようだ。自慢の白い毛皮が血に濡れているので、俺は急いでエリクサーを振りかけた。


『んんっ……。これはエリクサーであるか。用意が良いなソータよ……』

『まったくだよっ! 父さんと爺と一緒で脳筋だから困っちゃう』


 エリクサーが効いて血が止まって右耳が復活し、拉げていた前足も元に戻った。モフツルな毛皮の次に好きな白虎の肉球が元に戻って俺は安心したが、白虎はピクピクと震えていた。


『白虎。震えているんだけれど大丈夫?』

『こ、これは魔素反撃症だ……』

『成程!』


 ルキウスは剣聖一家なので剣聖遺伝子を持っていて、強力な身体強化耐性遺伝子があるので平気だが、蒼汰はないので全力の身体強化をすると身体の中を電撃が走るように痛くなって動けなくなり大変になる奴だった。どうやらエリクサーでも治らないようで、治験が出来て良かった感じだ。


『ふふっ! エリクサーでも治らないんだね』

『師匠に聞いた事があるな。身体強化は強化であって病気ではないので魔法薬が認識できないそうだ』


 玄武が師匠から聞いていたようで話してくれた。


『ぐぬぬ……。ソータが居れば何とかなるやと思っておったのに不覚だ』

『俺だって万能じゃないからね。創造神ならどうにかできるの?』

『魔素生物のアルティウスから魔素を取り上げたら、どうなるかやった事がないから分からないね。存在を保てなくなって玄武の師匠のようになってしまうかも』

『怖くて実験できないね。しばらくそのままだね白虎は』

『傷も付けられなかったのだぞ。骨折り損ではないか! いたたっ!』


 俺は笑いながら後片付けをして、白虎の集落に転移で戻った。朱雀と玄武と青龍は自分の集落に戻って行った。創造神は俺と一緒じゃないと集落までは出て来ないようで、集落の皆に囲まれて話をし出した。その中に子虎が居てピクピクしている白虎を見つけると駆け寄って来た。


『びゃ、白虎様!!』

『全力の身体強化をして魔素反撃症中だから、しばらく寝ていれば治るよ。血で毛皮が汚れているけれど、エリクサーで治療したから中身は大丈夫ね』

『そ、そうなのですね、良かった……。もしかしてさっき空が光っていたのですが、それですか?』

『うん。白虎でも壊せない物が出来たって言ったら、ムキになって全力で身体強化をして返り討ちにあったんだよ』

『ソータよ。恥ずかしい事を子虎にバラすでないわ』

『少し反省しないと!』

『まったくです! 白虎様』


 俺は創造神に別れを告げて、子虎と一緒に白虎の寝所に向かった。重力魔法で浮かして押されて運ばれるのは嫌らしいが、巨大な虎を担ぐと前が見えないので他に方法がないので諦めてもらった。

 寝室に入れて血で固まった毛皮をどうするか悩んだが、新ナノ・ゴーレム薬で脱毛してから再び生やした方が早いと思って作業した。白虎は脱毛に最初は反対したが一時的なので我慢してもらう。


『ここは父さん達に見せられないね』

『何故にホリゾンが関わってくるのだ?』

『白虎が中性子構造体を攻撃している所を父さん達が見たいって言うから、創造神に動画で見せたらって言われたの』

『これは除外であろう』

『白虎様は恥ずかしがらないと無茶をお止めにならないので、見せてしまって下さい。ソータ様』

『子虎よ。それはあんまりではないか……』


 子虎に言われて白虎は嘆いた。頭から右前足にかけて脱毛したが、猫科は毛がなくなると可愛くなくなるよね。新ナノ・ゴーレム薬で元に戻ったけれど、思い出し笑いをしていたら白虎に睨まれた。

次回の話は2025年7月2日(水)の19時になります。

夏希休暇が終わり貴族院での講義の再開です。


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